Archive for 8月 14th, 2007

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生き様としての個性

火曜日, 8月 14th, 2007

鬼城竜生

弊衣破帽まで遡る気はないが、人より目立つ格好をするということは、それなりに強固な精神力が求められるということである。しかし、最近のルーズソックスや顔グロ、山姥などという流行物を見ていると、どうやらみんなで渉れば怖くない方式の、流れに身を委ねる浮遊物の様な生き方が見えてくる。

つまり一見個性的に見える格好をしていながら、個性喪失の時代だということが出来るかもしれない。

生き様として、強烈な個性が失われるということは、仕事の上でも強烈な個性が失われ、団栗の背比べ、没個性化した集団が出来上がってしまうのではないか。

元々、薬剤師の仕事はmg単位の仕事であり、桁数の大きな数字には馴染まない性格をしている。更に薬剤師が行う仕事は地味なものであり、調剤ミスでもない限り、派手に目立つことなどはあり得ない。しかし、性格的に地味でることと、没個性化して、仕事をないがしろにすることとは別の話である。

もし、組織的な崩壊があるとすれば、それは何故なのか。まず徹底的な分析が必要である。ただ嘆いているだけでは、組織の建て直しなどできるものではない。それぞれの構成員が、現状を打破するための率直な論議を行うことが必要である。その際にも、お為ごかしな上っ面な論議をしていたのでは、問題解決の糸口を見つけることは困難である。

まず一人一人が、自らの業務内容の分析を行い、その業務が、組織内においてどの様な役割を果たしているのかの認識を、明確にすることが必要なのである。組織が大きくなればなるほど、そこに属する個人が分担する業務は、細分化され、一見平凡な仕事に見えてきたとしても、その歯車の一つがきしんでいたとすれば、組織としての業務全体に歪みか生ずる。

歯車のきしんだ時計は、正確な時を刻まず、時計としての役割は果たさない。病院の薬剤部も、組織である以上、同様な結果を招くことは当然である。

長は明確にリーダとしての役割を果たし、副官は長を補佐すると同時に長と部下との緩衝剤としての役割を果たす。主任はそれぞれ預けられた室の業務に責任を持ち、預けられた部下の育成に専念する。各人が自らの仕事に専念することが、組織の正常化をもたらし、活性化をもたらす。

これらの作業を行う上での基本理念は、「患者への良い医療の提供」であり、医療を担う専門職能であることの自負でなければならない。

[2000.10.6]

いわれたくない話

火曜日, 8月 14th, 2007

魍魎亭主人

いささか古い話になるが、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」という旧厚生省が作った育児キャンペーンの惹句ある。モデルになったのが安室奈美恵の亭主SAMとその息子ということで、マスコミにも取り上げられたが、正直に申しあげれば、この台詞、厚生省にだけは言われたくない台詞である。

少子化社会を迎え、女性も貴重な労働力。更に最近の餓鬼共は少し可笑しくはないかということで、父親も家庭生活に係わり、子供の躾に口を出せ。

父親が家庭に居る時間が少ないのは怪しからんということのようである。この意見、厚生省の省内事情を知らなければ、国を憂えて、知恵を絞ったポスターであると評価することが出来るが、省内事情を知っている立場としては、何のこっちゃとということになる。

国立病院に勤務する職員、特に医師以外の職員は、否応なしの転勤が宿命付けられている。しかもその転勤たるや個人の生活は全く無視、ただただ機械的に動かすというもので、例えば同一施設に5年以上勤務する職員は、転勤させる等という甚だ乱暴なものである。それでも昔はとりあえず意向打診があり、子供が小さいの、女房の勤務の関係で単身赴任になるの、年老いた親の面倒を見ているのと、何等かの理由があれば、転勤が除外されたが、最近の話を聞いていると、転勤出来ないなら退職していただく等という恫喝的な話がされているようである。

事務部門の長である事務部長などは、2年毎に施設を転々とし、本来その施設の医療に対する地域住民の要望や地域医療の中で何を期待されているかの意向を探る等という、地域密着型の医療機関としてのモニターの役割を果たすことができないのが実状である。

薬剤師も同じことで、薬剤部科長は2?3年で異動するため、地域の病院薬剤師会ひいては薬剤師活動に何ら貢献することもなく、薬剤師会の方も何か仕事を依頼しても継続性がないからということで、依頼のしようがないというのが実体であり、全く社会性のない生活を送るということになる。

しかも彼らの殆どは単身赴任であり、そのことが理由で体をこわす人間も出てくるということで、家庭における親の存在を示すなどということが出来ない仕組みになっている。

本来、技術職の転勤などというものは、新しい施設に新しい技術を移入する、そのために最新の技術を持つ人間を派遣する。あるいは最先端の技術を持つ施設に転勤させ、技術を取得した段階で元の施設に戻すというのがあるべき姿ではないか。

また、国の病院に勤務する技術屋には、常に最先端の技術の取得を義務づけ、それを広く地域に広げていく等の仕組みを作り、地域全体の技術の向上を図ることが、国民の奉仕者としての公務員の果たすべき役割ではないかと思うが、現状では、国民の税金で、単なるサラリーマンを養成しているといわれても仕方がないというのが実体である。

[2000.7.8.]

医療事故とはいわない

火曜日, 8月 14th, 2007

医薬品情報21

代表 古泉秀夫

東京慈恵会医科大附属青戸病院(東京都葛飾区)で、前立腺癌の摘出手術を受けた男性患者が、手術の1カ月後に死亡していたことが24日、明らかになった。警視庁捜査一課と亀有署は、この手術で医療ミスがあったとして、手術を担当した同病院泌尿器科の男性医師(37)ら医師6人を業務上過失致死容疑で立件する方針を固めた。医療ミスをめぐり、6人もの医師が業務上過失致死容疑で立件されるのは極めて異例だ[読売新聞,第45798号,2003.9.25]。

この後、次々と関連する報道がされたが、一連の報道で見る限り、この事件を“医療事故“の範疇に入れるのは、いささか問題があるとするのが率直な意見である。つまり医療事故以前の技術未熟、医師としての人間を見る眼の未熟ということである。

はっきり申しあげて、この事件は医療に名を借りた明らかな殺人である。高度先進医療である「腹腔鏡下手術」について、全くといっていいほど経験のない医師が、操作説明書を見ながら高度な技術を要する手術を実施したのである。人間はプラモデルではない。プラモデルを組み立てるように、図面を見ながら生身の人間の手術をするなどというのは言語道断である。

しかも上司である診療部長(助教授)も、相談を受けながら止めることが出来ず、院内倫理委員会に提示する指示もしていないということである。

また、新聞報道によれば、手術中に何回も手術法を変更する機会がありながら、開腹手術に変更するのが遅れ、あまつさえ用意した輸血までが不足する事態を招いている。この様な状況を見ると、病院全体が異常な状況-世間の常識の通用しない思い上がりが常態として存在していたのではないか。

自分たちは何でも出来るという思い上がりで、手術に手を出したとすれば、選ばれた患者はたまったものではない。

大学あるいは病院内での席取り争い、少しでも他人を引き離すためには、学内での優位性を示さなければならない。そのため最も手っ取り早いのが、難易度が高いとされる「腹腔鏡下手術」の実施だったのだろう。しかも今回の事例で恐ろしいのは、『院内倫理委員会』の許可を得ていないにもかかわらず、手術室が使用できたということである。

院内での手術室の運用について、これは手術室を管理している部署(手術室運営委員会等)が機能していないということであり、手術室でどの様な手術が行われているのか、当事者以外は承知していないということである。

今回の事例でも、倫理委員会の承諾書を手術室に提出をしなければ手術室の使用が出来ないような仕組みが作られていれば、この様な馬鹿げた手術は出来なかったはずである。また、手術室の看護師達も、それを理由にして「腹腔鏡下手術」の回避を求めることが出来たはずである。

いずれにしろ相互監視の仕組みを作ることが、医師の暴走を止める最大の手立てである。

[2003.10.15.]

アガリスク、プロポリス………抗癌効果、安全性?

火曜日, 8月 14th, 2007

魍魎亭主人

「がんが消えた」などと虚偽の体験談を載せた本を使い、キノコの一種、アガリクスの健康食品を販売した出版社と健康食品会社が薬事法違反容疑で摘発された。健康食品の市場は急成長している一方、肝心のがんなどへの効果ははっきりしないのが実態だ。だが、わらをもつかむ患者の心理につけ込む虚偽・誇大広告は後を絶たず、商品による健康被害の報告もある

[読売新聞,第46552号,10.20.2005]。

更に健康食品の売り上げは年々伸び、国内で年間1兆円を超えるとされる。多くのがん患者も使っており、厚生労働省研究班が 2002年度に患者約3000人に実施した全国調査では、4割強が健康食品を使用していた。今回問題になったアガリスクが61%と最も多く、次いでプロポリスの29%であった。

医師から「もう治療法がない」、「治らない」いわれ、最後の希望としてすがる患者も少なくない。患者は健康食品などの民間療法に月平均57,000円使っていた。こうした健康食品は「抗がんサプリメント」とも呼ばれるが、効果はあやふやだ。安全性や有効性の資料は、試験管内や動物実験が殆ど。実際に効果があるかどうかを調べるには、ヒトでの臨床試験が必要であるが、健康食品に関する臨床試験資料は極めて少ない。

健康食品による健康被害も起きている。国民生活センターによると、健康食品での「危害情報」は、中国製のダイエット食品での死亡例が相次いだ2000年度に1,200件と前年の3倍に達して以降、昨年度も622件と3年連続でトップだった。 昨年秋の日本肝臓学会では、中国製ダイエット食品を除く健康食品について、長期使用などにより黄疸や発熱等の肝障害を起こした例が89例が報告された。原因となったのはウコン(25%)、アガリクス(8%)の順。アガリクス服用者は全員がん治療中だった等の報告が見られる。

以上が新聞報道の内容であるが、ここで不思議に思うのは、これまで新聞各社は、アガリクスやプロポリスのバイブル本の広告は、一切掲載した経験はないとでもいうのであろうか。先日のTV報道では、『いわゆる健康食品』購入の動機は、バイブル本の新聞広告を見てという回答が最も多かったとされていたが、今頃になって効果がない等という報道をするというのは、バイブル本の広告を新聞に掲載して、効果のない『いわゆる健康食品』の効能を間接的に保証した格好になっていることへの懺悔の気持とでもいうのであろうか。

共同通信の2005年8月2日付の配信では

『「健康食品でがんが治る」などとうたう「バイブル本」には、虚偽誇大広告を禁じた健康増進法に抵触するものがあるとして、厚生労働省は1日までに、日本書籍出版協会、日本新聞協会、日本雑誌協会など7団体に慎重な取り扱いを求める異例の通知を出した。 5月に東京都内の出版社に初めて改善指導をしたが、その後も「バイブル本」が多く出回っていることから、宣伝や販売の過程で関連する主要な団体への大規模な通知に踏み切った。厚労省食品安全部長名の通知は「特定の食品や成分を摂取することで重篤疾病が自己治癒できるかのような情報は科学的根拠に乏しい」として虚偽誇大広告に当たると指摘。こうした内容を盛り込み、健康食品販売業者の連絡先を記載した「バイブル本」も、書籍の形を取った販売促進のための誇大広告としている。 書籍の巻末などに業者名を印刷せずしおりにして挟んだり、連絡先を架空の「研究所」名にしたりしているケースも該当するという。厚労省によると、新聞や雑誌などの媒体に書籍広告として掲載し、その媒体の「ブランド」を利用して消費者を信用させているが、広告掲載料を出版社ではなく健康食品業者が負担しているケースも確認された。』

としている。 厚生労働省が、日本新聞協会にも慎重な取扱とする通知を出したということは、日常的にバイブル本の広告が新聞に掲載されていたということの証明だろう。社会正義を標榜する新聞が、新聞社の信用性に依拠して商売をしようとするインチキ商売に手を貸しておきながら、恬然としているのはいかがなものか。

更に新聞の折り込みで入ってくるチラシの中にも、パーキンソン症候群、糖尿病・自律神経失調症、気管支喘息、坐骨神経痛・膝痛、子宮筋腫(粘膜下筋腫)等について、体験談もどきを掲載し、“頑固な慢性病でお悩みの方へ”なるものが印刷されたチラシが入れられているが、明らかに健康増進法に抵触する”いわゆる健康食品”の広告を、新聞社が配布に協力しているという図式は問題ではないか。

もしチラシの問題は新聞社の問題ではなく、販社の問題であるとおっしゃるのであるとすれば、新聞社には社会正義を振りかざすのを止めてもらはなければならない。

一般の読者には、全てまとめて新聞社なのである。更にいわせていただければ、新聞を購読する契約はしているが、チラシを受け取る契約はした覚えがない。にもかかわらず大量のチラシが入ってくるのはどういう仕組みによるものなのか。

(2005.12.29.)

当たり前といえば、当たり前のことで 

火曜日, 8月 14th, 2007

鬼城竜生

埼玉県川越市にある埼玉医大総合医療センターで、2000年10月に、高校2年生の女子(当時16歳)が、抗癌剤を過剰投与されて死亡した医療ミス事件で、業務上過失致死罪に問われた元同センター耳鼻咽喉科科長兼教授・川端五十鈴被告(70)に対し、最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は、上告を棄却する決定をしたという [読売新聞,第46581号,2005.11.18.]。

決定は15日付で、禁固1年、執行猶予3年とした2審・東京高裁判決が確定した。

甲斐中裁判長は『被告は科長として、医師経験が4年余りしかない主治医に対し、投与計画が妥当かどうかをチェックし、副作用の発生を報告させる義務があったのに、怠った過失がある』との判断を示したようである。

医療チームに加わらず、管理者として治療方針を承認する立場にいた医師について、最高裁が刑事責任を認めたのは初めてとされる。

2審判決では、滑膜肉腫と診断された女子について、川端被告が主治医への必要な指導などを怠った結果、主治医は投与量が週1回と定められた抗癌剤を7日連続で投与し、多臓器不全で死亡させた。

1審では、「主治医より責任が格段に軽い」として罰金刑を言い渡したが、2審では禁固刑になっていたとされる。

従来論からすれば、既に医師免許を持っており、独立した医師である以上、医療行為に関しては、自己責任でおやりになるのが原則とする考え方が、一般的ではなかったか。その意味では、主治医の責任が全面に問われるべきであるとする、1審判決こそが従前の考え方であって、医師といえども僅か4年の経験しかない主治医に対して、科長には監督責任があるという最高裁判例は、医師にとって驚天動地の考え方だということが出来る。

本来医師は、徒弟制度的上下関係は得意とするが、組織としての上下関係は苦手である。

病院という組織の中で、病院長の管理責任について、認識している医師は甚だしく少数派であり、医長が平の医師を管理監督し、指導的役割を果たさなければならないという立場は失念しているのが普通である。従って、総合病院という器を外部から眺めると、組織だって仕事がされているように見えるが、実態は開業医の集団みたいな状況になっているのである。

第一病院長になった医師自身が、病院長に変身するまでに時間を要する。患者を診察するという、医師本来の業務に固執する余り、病院長業務が片手間仕事になってしまうのである。例えば院長決裁の書類を持参しても院長室におらず、外来で患者の診療をしているなどということになる。外来に行くと現在診療中であり、しばしお待ちを等ということになる。これをやられると院内の各種業務は明らかに遅れ始める。

しかも拙いことに、院長業務に専念していただきたいなどという意見を端でいう雰囲気はなく、当人が気付かなければ、そのままの状態が継続する。結果として、院長の判断なしに日常業務は進行し、事後報告なる独善が蔓延する。つまり医師というのは、自分が患者を診るということには熱心であるが、診療から手を引き、管理職としての立場に専念するというのは苦手なのである。その意味では、埼玉医大総合医療センターの事例も、科長という病院での立場で、管理権限を行使しなければならないということを、当人としてはさほど認識していなかったのではないかと思われる。しかし、最高裁判断が、科長の管理責任を認めたということは、従来の慣行に従い、経験の長短に関係なく、医師免許を持っている医師は、放り出しておけばいいというのではなく、組織として指導し、業務命令を明確に理解させておくことが必要だということなのである。

医師だから何をやっるのも勝手であるということではなく、治療計画を立て、上司の許可を得て、治療を行うという、通常の社会では当たり前のことを、今後は明確にしていくことが必要だということなのだろう。

それにしても世知辛くなったと感じるのか、今までがいい加減だったと感じるのか、そこのところの感覚の問題である。

(2005.11.26.)

悪しきに慣習に習う事なかれ

火曜日, 8月 14th, 2007

医薬品情報21

古泉秀夫

炭酸水素ナトリウム3g 分1の処方に対し、1包1gの包装品をよこす方式について、おかしいのではと申し上げた門前薬局で、「時間がかかりますが、それでもよろしければ一包化しますけれど」と云われた。

「分包するのにそんなに時間はかからんでしょう」

「いちいち服む時に3包ずつ切って服むのでは大変ですものね」

「今日はもう出来ているのでいいですけど、次回からは一包化して下さい」

「時間がかかると云うことを御承知下さい」

「しかし、それが本当の薬剤師のやる調剤じゃないんですか」

対応した薬剤師は、散剤を一包化することによって要する時間のことをしきりに気にしていたが、それで想い出したことがある。

かっての病院薬局は、多くの処方せんを実調剤しなければならず、その処理のためにきりきり舞いをしていた。その結果、患者の待ち時間は長くなり、待ち時間に関する苦情が頻繁に持ち込まれることになる。

更に悪いことに、院内のあちらこちらで待たされる患者は、院内各部署での待ち時間を、全て薬局の待ち時間に上乗せして苦情を云うという行動様式が定着する。その結果、病院長を始めとして、薬局での待ち時間解消をいかにするかの論議が、頻繁に会議の話題になるようになる。院内各部署の責任者は、自らに降りかかる火の粉を避けるためにも、待ち時間は薬局の個別問題ではなく、院内全体の問題であるとする薬剤部科長の声に耳を傾けることはしない。孤立無援の状況におかれた薬剤部科長は、薬局の最大の到達目標を『待ち時間短縮』とせざるを得なくなる。一方、薬剤師の数を増やせという要求には誰も返事をしないということになれば、残された手段は限られてくる。

外来患者が薬局に集中し始める時間帯-午前10時から午後2時あるいは3時までの間、薬局内の他の業務-管理・製剤・試験・情報等の担当者を全員調剤室に引き上げて実調剤に当たらせる。その間、薬局の業務は調剤室以外全て機能停止状態におかれる。他職種から必要があって連絡があっても、誰も対応できないという状況に陥る。これでは院内で薬剤師としての存在感を示せ等といわれても、示しようがない。

更に全てに優先された調剤室業務も、本来薬剤師がしなければならない-患者の安全を確保する実調剤-を放置し、必要最低限の実調剤を行うという方式を導入していくのである。その主たるものが市販の製剤があるものは市販の製剤で間に合わせる。散剤の場合、2種、3種の散剤が同一処方に記載されていれば、秤量し、分割し、分包しなければならないにもかかわらず、市販品を個別にわたし、患者自身が服用する時に個々の薬を選択して服用させるなどという明らかな手抜き工事を導入した。 実調剤の基本は

  1. 処方せんに基づいて正確な実調剤がされていること。
  2. 患者が服用する時に間違いの起こらない実調剤がされていること。
  3. 服用時、患者が調剤類似行為を行わなくても服用できること。

等が求められる。

しかし、病院薬局では本来薬剤師がやるべき調剤を放り出し、速く薬を渡すことに拘ったばかりに、実調剤を荒れたものにし、なお待ち時間の解消が得られないために『院外処方せん』の発行という行政指導の大鉈を振るわれたわけである。

市中薬局・門前薬局等の保険薬局は、実調剤が本務である。彼らが病院薬局の二の舞を演じたとすれば、次に患者は何処に行けばいいのか。保険薬局の生命線は完成度の高い実調剤と医薬品情報の提供である。

待ち時間を気にするあまり、実調剤で手抜きを続ければ、行き着くところは薬剤師不要論しかない。薬剤師教育には6年の歳月が必要であるとして、薬剤師の教育期間が延長された。しかし、実務において表芸をないがしろにすれば、行き着く先は地獄である。

(2004.12.26.)

アルコール・アルコール

火曜日, 8月 14th, 2007

拝復

突然、アルコールの50%濃度のものは、殺菌効果があるのかの御質問を受け、一瞬絶句いたしましたが、誠に痛み入る次第です。

貴方も御記憶のことと存じますが、私共が勤務いたしておりました病院では、消毒用に使用していましたアルコールは、日本薬局方の“消毒用エタノール”のみであり、アルコール=消毒用エタノールということからいけば、50%が有効かという御質問は、言わずもがなのことと受け止めたためでした。

しかし、その後、消毒剤として日本薬局方に収載されているイソプロパノール(isopropanol)が、イソプロパノールアルコール(isopropyl alcohol)と呼ばれることもあり、使用濃度として50%があることを思い出し、多分50%-アルコールといっているのは、isopropanolのことだろうとお答えした次第です。

それでは何故、私共が勤務いたしておりました病院で、isopropanolを採用していなかったのかということです。実は文献的な考察の結果、消毒用エタノールとの比較で、若干速効性・速乾性に劣るという報告があったこと、更に消毒用エタノールとの比較で、低濃度でも有効であるとして、かって30%濃度の製品も市販されていましたが、以外と低濃度では効果がなく、文献的には50%-isopropanolでは、短時間の接触では死滅しない細菌もあるということも報告されておりました。更には嫌な臭いがするということ、どうせ70%-isopropanolを使用するのであれば、消毒用エタノールを使用することの方が、殺菌・消毒の面ではより効果的であるという判断をしたということによるものです。

ただ、当院でも購入金額の点で、例えば消毒用エタノール10mL= 14.70円に対してisopropanol-50%10mL=5.40円・70%-10mL=6.20円(但し2000年9月段階)という、明らかな価格差から、会計は何度か切換えの意向打診をしてきましたが、薬剤部としては効果に確信を持てない限り切換えは認められない。更には院内感染が発生し、患者の命に関わることの損益勘定と消毒用エタノールをisopropanolに切り換えることの損益勘定との比較で、どちらが施設に利をもたらすのかということで断ってきました。

会計の立場からすれば、安いものに切り替えたいと思うのは当然のことであり、薬剤としては有効性を優先し防衛戦を張るのは当然のこと、どちらも職務に忠実であればあるほど、職種間の緊張は高まるというのが我が国の病院の現状ではないでしょうか。

ところで在職期間中にはお気付ではなかったかもしれませんが、我々の勤務していた施設では、消毒用エタノールに青色の着色をしていました。これは薬剤部の製剤室において0.2%-メチレンブルー液を500mL瓶に対し1滴ずつ加えていた結果です。これは無色澄明な液であれば、何か他の薬と間違えて誤用することもあるという、その危険性を回避する目的で続けてきましたが、これは製剤室に薬剤助手が配置されていたからこそできる作業です。現在、国立医療機関では、行政職(二)といわれる職群-つまり薬剤助手等は、退職後の後補充をしないということで定数削減がされていますが、医療事故を回避するための目に見えない細かな配慮をしようとすると、どうしても人手は必要だということです。

一見すると何の稼ぎもないような職種でも、その人がいることによって、病院の安全性確保に貢献しているということを、我々も明確に認識することが必要ですし、広く知らせていくことが必要だと思います。

2000年9月22日

医薬品情報21

代表 古泉秀夫

L-チロキシンナトリウム注射薬について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:院内特殊製剤・L-チロキシンナトリウム・L-thyroxine sodium・levothyroxine sodium・チラーヂンS・甲状腺機能低下症・クレチン症・レボチロキシン注射液・レボチロキシン坐薬・チラーヂンS注射液・チラーヂンS坐薬

Q:甲状腺機能低下症-特に粘液水腫に使用されるL-チロキシンナトリウム注射液について

A:国内で市販されているlevothyroxine sodiumの製剤は経口剤のみである。

商品名 会社名 含有量 添加物
チラーヂンS錠 あすか 25・50・100μg/錠(乾燥物) 部分アルファ化澱粉、トウモロコシ澱粉、D-マンニトール、三二酸化鉄、その他3成分
チラーヂンS散0.01% 0.1mg/g(無水物) トウモロコシ澱粉

levothyroxine sodiumの性状について、次の報告がされている。

微黄白色-淡黄褐色の粉末で、臭いはない。エタノール(95)に溶け難く、水又はジエチルエーテルに殆ど溶けない。水酸化ナトリウム試液に溶ける。光によって徐々に着色する。本品は定量するとき、換算した乾燥物に対し、levothyroxine sodium(C15H10I4NNaO4:798.85)97.0%以上を含む。

本品1gは水酸化ナトリウム試液400mLに澄明に溶ける。屋外光下48時間で微赤褐色になる。本品の保存は遮光して気密容器に保存とされている。

ヨウ素の理論量は63.55%。

levothyroxine sodiumの注射剤については、国内で市販されておらず、市販されていない製剤については、院内特殊製剤として調製することになるが、PL法施行後の院内特殊製剤調製については

  1. 院内倫理委員会の承認
  2. 特殊製剤使用に対する文書による同意取得

等の手続きが必要である。

L-thyroxine sodium注射剤

  • L-チロキシンナトリウム・5水和物–11.4mg
  • 0.1mol/L-水酸化ナトリウム–1mL
  • 注射用水–全量–100mL
  • 処方薬剤規格:L-チロキシンナトリウム・5水和物(試薬)、注射用水(局方品)、水酸化ナトリウム(試薬特級)。
  • 調製法:予め煮沸滅菌したシリンダーを注射用水で共洗いし、L-チロキシンナトリウム・5水和物を秤取し、0.1mol/L-水酸化ナトリウムで溶解後、注射用水で全量とし、メンブランフィルター(0.22μm,GV)で濾過し、褐色アンプルに充填・密閉して製する。
  • 容器及び貯法:1mL褐色アンプル、冷暗所保存。
  • 適応:甲状腺機能低下症(術後の経口摂取不能時)、脳下垂体機能低下症(術後の経口摂取不能時)。
  • 用法・用量:1日1アンプルを輸液に混合し、点滴静注する。
  • 使用期限:約3ヵ月
  • 特記事項:予めアンプルを窒素ガス置換しておく。酸性注射薬との配合でL-チロキシンナトリウムが析出する可能性があるので注意する。

なお、注射薬の院内調製が困難な場合、経口投与困難な患者を対象としてlevothyroxine sodium坐薬の調製法が紹介されているため、坐薬による投与を検討する。

  • levothyroxine sodium–0.5mg
  • ホスコE-75–8 g
  • ホスコH-15– 8 g
  • 以上—-坐薬 10個分
  • 処方薬剤規格:チラーヂンS錠(あすか)、ホスコE-75・ホスコH-15(丸石)
  • 調製法:チラーヂンS(50μg)10錠を粉砕、微粉末化後100メッシュ篩を用いて篩過し、融解したホスコE-75・ホスコH-15と混合撹拌後、坐薬コンテナ10個に分注する。
  • 規格・単位:50μg/個
  • 容器・貯法:1.9mL乳白無地坐薬コンテナ。冷所保存。
  • 適応:経口投与困難な患者への甲状腺ホルモン薬の投与。
  • 用法・用量:1日1回50μg

  [014.16.THY:2006.5.30.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  2. チラーヂンS錠添付文書,2005.10.
  3. チラーヂンS散添付文書,2005.10.
  4. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第5版;株式会社薬事日報社,2003.4.10.
  5. 和田京子・他:新生児マススクリーニング対象疾患の見直された治療法(6)-クレチン症;小児科,42(12):1897-1903(2001)
  6. 第14改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

BHAについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・食品添加物・BHA・butyl hydroxyanisol・ブチルヒドロキシアニソール・食品添加物

Q:食品添加物でBHAの略号で標記される物質について

A:BHAの略号で標記される物質は、butyl hydroxyanisol(ブチルヒドロキシアニソール)で、食品添加物公定書に収載されている。C11H16O2=180.25。化学名:mixture of 2-(2-methylpropyl)-4-methoxyphenol and 3-(2-methylpropyl)-4-methoxyphenol[25013-16-5]。

本品は無色若しくは僅かに黄褐色を帯びた結晶若しくは塊、又は白色の結晶性の粉末で、僅かに特異な臭いがある[長期保存すると黄褐色を帯びることがあるラード、コーン油などの油脂、パラフィンなどによく溶ける(30-50%)、プロピレングリコール、アセトン、エタノール等にも極めてよく溶けるが、水には殆ど溶けない]。

本品は異性体[1]及び[2]の混合物であるが、最近では[1]の含量が高くなっているので、[1]の純品のmp 64℃に近いものが多い。[1]の含量95%のものがmp 62℃、90%のものがmp 57℃。

  • 来歴:初期にはo-アルキル-p-アルコキシフェノールがガソリンに対し酸化防止効果を有することが見出された。1949年p-メトキシフェノールとイソブテンを縮合させ、本品を製造した。同時に本品は油脂類に対しても酸化防止効果があることが報告され、食用油脂への使用が始まった。我が国では昭和29年食品添加物として指定された。初期には[1]、[2]の混合物が使用されていたが、[1]の効力が[2]に比して、1.5-2倍優れているので、最近では[2]の含量は極めて少ない。
    本品はラットにおける慢性毒性実験で扁平上皮癌が報告され、昭和57年8月2日にパーム原料油への使用に限定する旨の規格基準が公布された。その後F/W(国際規格)食品添加物専門家委員会(1988年)で、ラットの慢性毒性試験で無影響量が求められることからADI(acceptable daily intake(1日許容摂取量):0.5mg/kg)が設定された。このような状況から昭和58年2月1日告示第54号で使用禁止の施行は現在猶予されているが、代替品があり、本品は使用しないよう行政指導が行われている。
  • 用途:油脂の製造に用いられるパーム原料油及び原料油の酸化防止剤として用いられる。パーム油は大豆油に次いで生産量(輸入量)の多い油脂で、大部分がマーガリンなどの食用油脂として利用される。パーム油は常温で個体の油脂であるが、原油を海上輸送する期間中溶かした状態におく必要がある。我が国ではパーム原油に限り本品の添加が認められている。酸化防止剤。
  • 毒性:BHAの発癌は、キノン代謝物(BHQ)の直接の結合により臓器及び組織のチオールの欠乏を起こし、BHAのキノンとヒドロキノンの代謝物の酸化還元の繰返し反応により生じた酸素ラジカルによる可能性が推測されている。
マウス(雄)経口 1.10g/kg
マウス(雌)経口 1.32g/kg
ラット(雄)経口 2.00g/kg
ラット(雌)経口 2.00g/kg
ラット 経口 2.2->5g/kg
?

マウス、ラットとも経口投与10分後当たりで歩行失調状態となり、呼吸促迫し、運動量が減少して死亡するが、死亡時に消化管の出血、肝の鬱血が認められている。

  • 特殊毒性:離乳後のラットをラードとともにBHA 0.003、0.03及び0.06%を含有する食餌で22ヵ月飼育し、その間雌雄を交配させ、新生仔にも出生前と同じBHAを含む食餌を与えて観察したが、妊娠の成立と維持、分娩、新生仔数、死亡率並びにその後の発育状態にBHA投与群と対照群との間に差は認められず、組織検査でも異常は認められなかった。この実験では開始1年目に肺炎が多発し、多くの死亡例が認められたので、更に0.12%BHA群を加えて同様の実験を21ヵ月行ったが、各種検査で対照群との間で差が認められず、BHAによる障害は観察されなかった。
  • 発癌性:BHAを0.5及び2%の濃度に混じた飼料を雌雄の6週齢F344ラットに104週間投与したところ、前胃の乳頭腫が雄の高用量群で 52/52(100%)、雌の高用量群で49/51(96%)に見られ、また前胃の扁平上皮癌が雄の高用量群で18/52(34.6%)、雌の高用量群で 15/51(29.4%)に見られた。一方、対照群にはこれらの変化は認められなかった。

なお、以下に参考として厚生省環境衛生局長の発出文書を収載する。

『食品添加物としてのブチルヒドロキシアニソール及び臭素酸カリウムの取扱いについて』

昭和57年5月10日

環食化第19号

各都道府県知事

各政令市市長 殿

各特別区区長

厚生省環境衛生局長

標記については、昭和57年5月6日に開催された食品衛生調査会毒性部会、同7日に開催された同添加物部会及び同常任委員会において審議された結果、別紙のとおり食品衛生調査会から厚生大臣に意見具申された。

この意見具申に基づき、近く、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)中食品添加物であるブチルヒドロキシアニソール(以下「BHA」という。)及び臭素酸カリウムに係る使用基準を改正することとしている。

なお、改正に際してはGATTの「貿易の技術的障害に関する協定」により国際的に所定の手続きが必要とされており、この手続きを了した上で、改正することとなるので、改正告示の施行までの間、前記の添加物の使用等について、下記の点につき関係者への周知徹底及び指導方よろしくお願いする。

1.BHAの取扱いについて

BHA及びこれを含む製剤は、パーム油及びパーム核油の製造に用いるパーム原油及びパーム核原油以外の食品には使用しないこと。

2.臭素酸カリウムの取扱いについて

臭素酸カリウム及びこれを含む製剤は、パン以外の食品に使用しないこと。

なお、臭素酸カリウム及びこれを含む製剤の使用量は、臭素酸として小麦粉1kgにつき0.03g以下でなければならない。

[011.1.BHA:2006.4.10.古泉秀夫]


  1. 薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
  2. 谷村顕雄・他:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  3. 財団法人日本食品化学研究振興財団:http://www.ffcr.or.jp/,2006.4.10.

『食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について』

昭和57年8月2日

環食化第27号

各都道府県知事

各政令市市長 殿

各特別区区長

厚生省環境衛生局長

食品衛生法施行規則(昭和23年7月厚生省令第23号、以下「省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第三 370号、以下「告示」という。)の一部が、それぞれ昭和57年8月2日厚生省令第33号及び厚生省告示第136号をもって改正されたので、下記の事項に留意の上その運用に遺憾のないようにされたい。

第一 改正の要旨

1. 省令関係

輸出国政府機関の発行する証明書の添付を要する獣畜の肉及び臓器の製品に係る規定が改正されるとともに、表示を必要とする食品等のうち、ハム、ソーセージ及びベーコンの類に係る規定について表現が改められたこと。

2.告示関係

  1. 食肉製品及び鯨肉製品の成分規格について、添加物の使用基準改正に伴う所要の改正が行われたこと。
  2. ブチルヒドロキシアニソールの使用基準の改正に伴い、油脂の成分規格が新たに設定されたこと。
  3. 臭素酸カリウム及びブチルヒドロキシアニソールの使用基準が全面改正されたこと。
  4. ブチルヒドロキシアニソールの使用基準改正に伴い、酢酸エチル及びジブチルヒドロキシトルエンの使用基準が一部改正されたこと。
  5. 亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム(結晶)、亜硫酸ナトリウム(無水)、次亜硫酸ナトリウム、無水亜硫酸及びメタ重亜硫酸カリウム(以下「亜硫酸類」という。)、亜硝酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、バラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルの使用基準の一部が改正されたこと。

第二 改正の要点

1. 省令関係

  1. 外国から食肉等を輸入する際、食品衛生法第五条第二項に基づき、輸出国政府機関の発行する衛生証明書又はその写しを添付しなければならない獣畜(牛、馬、豚、めん羊、山羊及び水牛に限る。)の肉及び臓器の製品として「ハム、ソーセージ及びベーコン」が、「食肉製品」と改められたこと。
  2. 表示を必要とする食品等の範囲を定めた別表第三中第四号の「ハム、ソーセージ及びベーコンの類」が「食肉製品」と改められたこと。

2. 告示関係

  1. 食肉製品及び鯨肉製品の成分規格について
    亜硝酸類に係る規定中「食肉ハム、食肉ソーセージ、食肉ベーコン、食肉コンビーフ」が「食肉製品」に改められたこと。
  2. 油脂の成分規格について
    油脂(油脂の製造に用いるパーム原料油及びパーム核原料油を除く。)はブチルヒドロキソアニソールを含有するものであってはならないとされたこと。
  3. 臭素酸カリウムの使用基準についてア.パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品に使用してはならないとされ、さらに使用量は臭素酸として小麦粉1kgにつき0.03g以下とされたこと。

    イ.最終食品の完成前に分解又は除去しなければならないとされたこと。

  4. ブチルヒドロキソアニソールの使用基準について
    油脂の製造に用いるパーム原料油及びパーム核原料油以外の食品に使用してはならないとされたこと。
  5. 酢酸エチル及びジブチルヒドロキシトルェソの使用基準について
    ブチルヒドロキシアニソールの使用基準改正に伴い、ブチルヒドロキシアニソールとの併用に係る部分が削除されたこと。
  6. 亜硫酸類、ソルビン酸及びソルビン酸カリウムの使用基準について
    雑酒について、果実酒と同様の使用基準が適用されたこと。
  7. 亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムの使用基準について
    「食肉ハム、食肉ソーセージ、食肉ベーコン及び食肉コンビーフ」が「食肉製品」と改められたこと。
  8. 安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキジ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルの使用基準についてア.炭酸を含有する清涼飲料水について、炭酸を含有しない清涼飲料水と同様の使用基準が適用されたこと。

    イ.シロップについては、その一部のものが清涼飲料水として取り扱われてきたが、今回これを明確に区別し、シロップとして使用基準が適用されたこと。

  9. サッカリンナトリウムの使用基準について前記(8)イ.と同様の改正が行われたこと。

    第三 施行期日

    (省略)

BTC(Behind The Counter)について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:語彙解釈・OTC薬・Over -the -Counter Drugs・BTC・Behind The Counter・HMG-CoA還元酵素阻害剤

Q:業界紙にFDA関連記事として「民主党には緊急避妊薬のOTC薬化(あるいはBTC=ビハインド・ザ・カウンター)への対応で反発が残り」とする記載が見られるが、BTCとは何か

A:OTC薬とは“Over -the -Counter Drugs”の略号であり、処方箋無しで購入可能で、一般市民が簡単な説明により使用法を理解でき、自己診断で薬を使用することが安全であると見なされている一般用医薬品のことである。つまり医師の処方箋無しにカウンター越しに自分で購入できる大衆薬のことであるとされている。

その他Rx-to-OTC Switching(処方薬から一般薬への変更)とする用語も見られるが、これは処方薬として何年も使用され、薬の安全性と有効性が証明されたものについて、処方箋医薬品から一般用医薬品に切り換えられる医薬品を示している。

BTCについては、“Behind the Counter”の略号とされており、“Behind the Counter Switching”(ビハインド・ザ・カウンター・スイッチ)とする標記も見られる。

BTCについては米国FDA諮問委員会において、メルクのHMG-CoA還元酵素阻害剤のrosuvastatin calcium(メバコール)を処方薬からOTC薬とする2回目の試みを、20対3の票決で否決した。

2000年に諮問委員会は、肝と筋肉への有害作用のリスクを下げるための10mg OTC版を、有効性の十分なエビデンスがないと却下。今回1月13-14日に開催された諮問委員会では、20mg固定量のrosuvastatin calciumが、ターゲット母集団、すなわちLDLコレステロール値が130mg/dLから170mg/dLで、少なくとも1つの冠動脈性心疾患 (CHD)に対するリスク因子 (喫煙、HDLコレステロールが40mg/dL以下、CHDの家族歴あり、高血圧のような)をもつ、45歳およびそれ以上の男性、55歳以上の女性において、コレステロールを効果的に減じることを認めた。

しかしながら、諮問委員会は、メルクとその販売活動のパートナーであるジョンソン&ジョンソンが、rosuvastatin calcium OTC薬の購入者がターゲット母集団に限られることや、購入者がスタチンの有害副作用を避けるために製品ラベリングに従うことを、証明し得たとはみなさなかった。

また諮問委員会の委員たちは、rosuvastatin calciumがその母集団で禁忌である妊娠カテゴリーXの製品であり、ラベルや教育材料で服用しないよう警告されているのにかかわらず、 rosuvastatin calcium OTC薬を服用してしまう妊婦がいるのでないかということに関心を示した。

公聴会では、動物試験データに基づくものではあるが、妊娠した女性が妊娠の最初の3半期に服用した場合に致死的な異常を引き起こす可能性に関心が集まった。この時期には女性は自分が妊娠していることを知らない可能性があると、FDAのOTC製品部門のダイバ・シェティー医師は語った。

英国の安全性委員会(CSM)が昨年sinvastatinを、処方せん専用薬から薬局専用薬にswitchした決定について、注目に値する論議が行われた。英国では同じ「OTC-Switch」という言葉を通常使っていても、実際は「Behind the Counter Switching(BTC)」で、患者は製品を買うためには、薬剤師に頼まなければならず、質問票に答えなければならないと、FDAのOTC製品部門のミハエル・ケーニッグ医師が説明した。米国におけるOTC薬は、英国における自由販売薬(GSL薬)に近いものであるとケーニッグ医師は語った。

rosuvastatin calcium OTC薬に反対票を投じた20人の諮問委員会委員のほとんど全員が、FDAは「Behind the Counter (BTC)」を承認をするのが好ましいと語った。

[615.8. BTC:2006.3.27.古泉秀夫]


  1. アメリカの日用品シリーズ1-アメリカの薬:株式会社ワールドフォトプレス,1999
  2. アメリカの薬なんかこわくない;ファミリーブックス,1996
  3. 米ブッシュ大統領 FDA長官、エッシェンバッハNCI所長を指名;RISfax,第4580号,2006.3.17.
  4. http://www.d9.dion.ne.jp/~sigma72/Kusuri-Yakugaku3.htm,2006.3.18.
  5. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006

RUSHについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・RUSH・ラッシュ・脱法ドラッグ・ニトライト・nitrite・亜硝酸エステル・亜硝酸アミル・amyl nitrite・亜硝酸イソブチル・isobutyl nitrite・亜硝酸ブチル・n-butyl nitrite

Q:脱法ドラッグRUSHの販売会社が厚生労働省に刑事告発処分されたと聞くがRushとは何か

A:『Rush』の訳語として「殺到、急激な増加、急増、感情が沸き上がること、麻薬の効果がドッと出ていい気分になること、多忙」等が見られる。その他アメリカ合衆国PWD社製造のRUSHとする記載もされており、成分として亜硝酸エステルがいわれている。

新聞報道では、

「若者の間で乱用が問題となっている脱法ドラッグ「RUSH(ラッシュ)」を大量に輸入していたとして、厚生労働省は30日、化粧品輸入販売会社「リッツ」(東京都新宿区)を薬事法違反(無承認無許可医薬品の販売など)の疑いで警視庁に刑事告発した。これを受けて、同庁生活環境課は30日朝から、同社の関係先の捜索に乗り出した。同省が脱法ドラッグで刑事告発したのは初めて。

厚労省や米国消費者製品安全委員会(CPSC)によると、同社は、RUSHを米インディアナ州の製造元から横浜港経由で輸入し、脱法ドラッグとして使用されることを知りながら、別の業者に転売していた疑いが持たれている。厚労省は昨年6月、CPSCから寄せられた情報を基に調査を開始。同社が販売中止に応じないため、刑事告発した。同社は、RUSHの国内流通分の大半を輸入していたとみられ、警視庁は国内販売網などの全容解明を目指す[読売新聞,2006.1.30.]。」

とするものである。

亜硝酸エステル(ester of nitrous acid、nitrous ester)として、亜硝酸アミル(amyl nitrite)が存在するが、本品は医療用医薬品であり、無許可販売は薬事法違反である。亜硝酸アミルの適用は吸入で、平滑筋弛緩、血管拡張作用が報告されている。

その他、ニトライト(nitrite)とする瓶ラベルの貼付されたものも見られる。これらの原料は亜硝酸ブチル(n-butyl nitrite)と亜硝酸イソブチル(isobutyl nitrite)とされている。

亜硝酸ブチル(n-butyl nitrite)

別名として亜硝酸n-ブチル、ブチルナイトライト等が報告されており、稀土類アジ化合物の製造に使用するとされている。

  • 性状:油状液体、特異な臭い。放置すると分解する。火災危険:中等度。溶解性:水に難溶、アルコール、エーテルと混和。
  • 致死量:不明。
  • 代謝:肺から速やかに体内に入り、NO2-とあるコールに加水分解する。
  • 症状:吸入により平滑筋弛緩、血管拡張、血圧低下、脈拍数増大、頭痛などの症状を示す。血圧降下作用はイソブチル、2級・3級ブチル化合物はいずれもn-亜硝酸ブチルに比べて強い。上記症状は連続曝露により耐性を獲得して軽減するが、この耐性は1週間曝露から外れれば消失する。

亜硝酸イソブチル(isobutyl nitrite)

亜硝酸アミルと同様肺から吸収された後、加水分解を受け、NO2になると考えられている。ただし、芳香剤として使用されるが、医薬品としては用いられない。血管平滑筋弛緩作用、酸化作用によりメトヘモグロビン血症を生じる等の報告がみられる。

その他、亜硝酸ブチルは、亜硝酸アミルに類似しているが、医療用としては使用されない。亜硝酸ブチルと亜硝酸イソブチルは芳香剤用に商業目的で販売することは認められているが、それ以外の用途での販売は禁止されている。これら3種類の亜硝酸剤は、いずれも吸入すると一時的に血圧が下がり、めまいや紅潮が生じ、その後に心拍が速くなる。

これらの作用が組み合わさることで、興奮や幸福感が得られ、性的快感が高まると考えて乱用する者もいる。

  [011.1.RUS:2006.2.3.古泉秀夫・2006.10.6.改訂]


  1. 薬科学大辞典 第3版;広川書店,2001
  2. http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/print/sec07/ch108/ch108m.html,2006.1.31.
  3. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992
  4. http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060130i104.htm,2006.2.3.
  5. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル,2005

5-S-CDの略号について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:語彙解釈・略号・5-S-CD・5-S-cysteinyldopa・5-S-システイニルドーパ・メラニン・ユウメラニン・フェオメラニン・悪性黒色腫・腫瘍マーカー・検査値影響・アガリクス

Q:5-S-CDの略号は何を示すのか

A: 5-S-CDの略号は、「5-S-cysteinyldopa(5-S-システイニルドーパ)」の略号である。

5-S-CDはメラニン関連代謝物で、黒色腫の臨床的病態を最も鋭敏に反映するため、悪性黒色腫の早期発見や再発・転移を推定する指標として治療効果の判定に有用であるとされている。

悪性黒色腫の腫瘍マーカーとして、血清5-S-cysteinyldopaが測定される。基準値:1.5-8.0(n mol/L)。

悪性黒色腫は、メラニン形成という分化形質を有しており、これを利用してその病態を把握しようとする試みがなされている。

メラニンは黒色のユウメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、黒色主細胞において、チロシンがチロシナーゼ酸化により、ドーパを経てドーパキノンに酸化され、ユウメラニンはジヒドロキシインドール、フェオメラニンはシステイニルドーパを中間体として生合成される。

細胞内にシステインなどSH基化合物が存在する場合は、優先的に5-S-CDが生成される。これらの一部は血中へと漏出し、黒色細胞腫や肝でO-メチル化などの代謝を受けた後、尿中へ排泄される。

従ってこれらのメラニン関連代謝物の血中ないし尿中濃度を測定することにより悪性黒色腫の病態を把握できると考えられる。当初、尿中5-S-CDの測定がされてきたが、血中測定法の改良がされたこと、血中5-S-CDの方が、尿中5-S-CDに比較して検体の採取が容易である、年齢差が少ない、遠隔転移の場合、より早期に上昇する傾向がある等の利点により、最近では血中5-S-CDが用いられることが多い等の報告が見られる。

血中5-S-CDの正常値は4.3 ±1.8n mol/Lであり、初夏に高値を示すという季節変動を考慮して、正常値の上限が10n mol/Lに設定されている。悪性黒色腫における血中5-S-CD値の変動は速やかで、外科的切除の翌日には明らかな低下が認められる。腫瘍の総量に比例して増減するため、病勢の変化や再発・転移のスクリーニングなどに有用である。ただし、無色性黒色腫の場合、腫瘍増殖にかかわらず血中5-S-CD値が上昇しない傾向にあり、判断に注意が必要である。なお、血中5-S-CD値の測定は現段階で、保険適応外である。

また、血中5-S-CD値の測定にアガリクスの摂取が影響したとする次の報告があり、測定時に注意が必要である。

■43歳・女性、悪性黒色腫を左背部に生じ、突然、血清5-S- cysteinyldopa(5-S-CD)値が異常高値を示した。その原因として内服していたアガリクスが考えられた。内服中止とともに5-S-CD値は低下し、全身検索でも転移・再発を認めなかった。

アガリクスの成分には、5-S-CDの前駆体(チロシン、チロシナーゼ)が含まれており、5-S-CD の代謝経路とアガリクスの成分との間に関連があるのではないかと考えた。臨床現場で突然5-S-CD値の上昇を認めた場合には、季節(夏期)、腎機能障害、化学療法後、L-dopa内服のみならず、アガリクス摂取の有無を確認することが必要であると考えた。

[615.8.SCD:2005.12.26.古泉秀夫]


  1. 山本明史:皮膚疾患治療指針-皮膚科の主な検査法-腫瘍マーカー;今日の診療プレミアム,15<DVD-ROM版>,IGAKU-SHOIN
  2. 松村正史:医薬の窓(294)-近着誌から-;薬事新報,No.2401:1359(2005)[吉野公二・他:血中5-S-CD値の上昇がアガリクス摂取によると考えられた悪性黒色腫の1例;臨皮,59(10):1013-1015(2005)]
  3. http://www.srl.info/srlinfo/kensa_ref_CD/KENSA/SRL2124.htm,2005.12.26.

PYYについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・PYY・ペプチド化合物・peptide・peptide結合・peptide hormone・食欲抑制

Q:PYYの略号で標記される物質について

A:PYYの略号はpeptide YYの略記であるとされる。

◆peptideとは2又はそれ以上のアミノ酸がpeptide結合*でしたもの。アミノ酸数10以下のものをオリゴペプチド(oligopeptide)、10以上100以下のアミノ酸で構成されるものをポリペプチド (polypeptide)と呼ぶ。直鎖状のものと環状ペプチドがある。アミノ酸と同様ニンヒドリンで青紫色を呈するが、アミノ酸とは異なりビウレット反応は陽性である。また蛋白質とは異なり透析性である。

*アミノ酸のカルボキシル基と別なアミノ酸のアミノ基間の共有結合

◆peptideは生物界に広く存在し、生物活性を持ったもの-ホルモン(オキシトシン、バソプレシン、アンギオテンシンなど)、、微生物が産生する抗生物質(ペニシリン、グラミシジン、ポリミキシンなど-環状ペプチドが多い。)、有毒なメリチン(melittin)、解毒などに利用されるグルタチオン(glutathione)等数多く見出されている。

◆polypeptideとして自然界に存在するものとして、peptide hormoneがよく知られており、ソマトスタチン(アミノ酸数14)、色素胞刺激ホルモン(αMSH:アミノ酸数13、βMSH:アミノ酸数18)、インスリン(A鎖:アミノ酸数21、B鎖:アミノ酸数30)、グルカゴン(アミノ酸数29)、副腎皮質刺激ホルモン(アミノ酸数39)等数多い。

◆glutenは穀類に含まれる各種蛋白質の総称で、灰褐色で粘着性のある物質であるとされている。glutenが加水分解されたものがgluten-peptideで、鎮痛作用を持つ十数種のpeptideの複合体である。鎮痛作用のみならず、体温低下、血圧低下、呼吸抑制、胃液分泌抑制、食後の血中インスリン増加等の効果が報告されている。

◆Peptide YY(PYY)は、食欲抑制作用のあるpeptide hormoneで、食後に胃のL-cellという内分泌細胞から分泌されると報告されている。PYYのうち『PYY3-36』について、米国の Nastech Pharmaceutical社が鼻腔投与製剤の開発を行い、Merck社と全世界的な提携をしたと発表した。『PYY3-36』は肥満の治療薬として開発されており、第I相臨床試験段階にあるとされる。

◆その他、本品の注射剤に関する報告として、食事の2時間前に注射すると、被験者の食欲が抑えられ、摂取カロリーが30%減るという物質が見つかった。このほど米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」で報じられた。この物質は、人間の体内に自然に存在する蛋白質で、「PYY」と呼ばれる hormoneの一種。この研究を行ったロンドンのハマースミス病院の研究者によると、「PYY」は人間の消化管の内膜の細胞から分泌され、血流に乗って脳に達し、満腹感を感じさせる働きがあるという。

   [011.1.PYY:2005.8.9.古泉秀夫]


  1. 南山堂医学大辞典 改訂17版;南山堂,1992
  2. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 改訂新版;東洋医学舎,2002-2003
  3. BioToday:http://www.biotoday.com/view.php?n=4790,2005.8.9.
  4. http://medwave.nikkeibp.co.jp/show/nh/news/265628,2005.8.9.

BCAAについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:語彙解釈・略号・BCAA・分枝アミノ酸・分枝鎖アミノ酸・イソロイシン・isoleucine・バリン・valine・ロイシン・ leucine・必須アミノ酸

Q:略号『BCAA』の意味について

A:『BCAA』は『branched chain amino acid』の略号である。分枝アミノ酸又は分枝鎖アミノ酸とも呼ばれる。バリン、ロイシン、イソロイシンなど、側鎖に分子アルキル基をもつアミノ酸で、疎水性アミノ酸である。側鎖は疎水性相互作用に関与し、酵素などの活性中心のポケットにおいて結合部位の形成に寄与している。ロイシンはα-ヘリックス構造の形成を促進し、バリン、ロイシンはβ-構造中に存在していることが多い。これらはヒトにおいて、栄養上の必須アミノ酸である。

蛋白質を構成する20種類のアミノ酸のうち9種類は生体内で全く合成できないか合成量が極めて少ないため、食物として摂取する必要があるもので、これらを必須アミノ酸と呼ぶ。

名称 概要
イソロイシン

(isoleucine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノ-3-メチルn- 吉草酸。Ile又はIと略記される。L型は蛋白質構成アミノ酸の一つ。

C6H13NO2=131.18。

ヒト、ラット、ニワトリなどでは必須アミノ酸。生体内では2-オキソ酪酸から生合成される。

コハク酸経路で分解され、プロピオニル CoAになる。

バリン

(valine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノイソ吉草酸。 Val又はVと略記される。L型は蛋白質を構成する分枝アミノ酸の一つ。C5H11NO2=117.15。

哺乳類、鳥類では必須アミノ酸。ピルビン酸から生成する2-オキソイソ吉草酸でバリンアミノトランスフェラーゼによりアミノ化されて生合成される。

分解も、アミノトランスフェラーゼにより2-オキソイソ吉草酸になり、プロピオニルCoAを経てスクシニルCoAに代謝される。

パントテン酸やペニシリンの前駆体。

ロイシン

(leucine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノイソカプロン酸。 Leu又はLと略記される。

L型は蛋白質構成アミノ酸の一つ。

C6H13NO2=131.18。ヒト、ラット、鳥類などで必須アミノ酸。ピルビン酸から2-アセト乳酸、2-オキソイソ吉草酸、2-オキソイソカプロン酸などを経て生合成される。

分解は、2-オキシイソカプロン酸を経てアセチルCoAへ代謝される。

分枝鎖アミノ酸は、特に運動や骨格筋の維持・増量において最も重要な働きをする。分枝鎖アミノ酸は、骨格筋の蛋白質合成を増進し、更に蛋白質分解を抑制する機能を有することが示されており、この作用を生かして術後侵襲期の蛋白栄養状態を改善するため、輸液などに分枝鎖アミノ酸が多用されている。

その他運動選手の骨格筋の維持・増量に使用される例も見られる。また分枝鎖アミノ酸は、血漿の遊離必須アミノ酸の約4割を占め、運動時に必要に応じてエネルギー源として使用されたり、糖新生に重要な役割を果たしている。

分枝鎖アミノ酸はグルコース・アラニンサイクルを構成しており、長時間の持続運動時などの血糖値の維持に重要な役割を果たしている等の報告がされている。

[615.8.BCA:2005.6.17.古泉秀夫]


  1. 今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998
  2. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005
  3. 味の素株式会社・編:アミノ酸ハンドブック;工業調査会,2003

MRAについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:治験薬・治験記号・MRA・トシリズマブ・tocilizumab・アトリズマブ・atlizumab・アクテムラ

 Q:治験記号MRAで表記される薬物について

A:治験記号MRAで表記される薬物の成分は、トシリズマブ(遺伝子組換え):tocilizumab(recombinant)である。同意語:hPM-1、anti-IL-6 receptor monoclonal、antibody(recombinant)、rhPM-1、anti-interleukin-6 receptor monoclonal antibody(recombinant)、R-1569、アトリズマブ、atlizumab、[商]アクテムラ(中外製薬-Roche)。

剤型:点滴静注。

本剤はチャイニーズ・ハムスター卵巣由来細胞を宿主とし、マウスモノクロナール抗体の抗原結合部位だけを遺伝子操作でヒト抗体に埋め込んだ抗ヒトIL-6受容体抗体である。

慢性関節リウマチ(若年性関節リウマチ)、キャッスルマン病、多発性骨髄腫、全身性エリトマトーデス、クローン病等のIL- 6関連疾患を対象として開発が進められている。

国内においては『組換えDNA技術応用医薬品などのための指針』に適合しているとして、中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会で確認されている。なお、本剤はキャッスルマン病について2000年12月20日オーファンドラッグに指定された。同適応で2003年4月に申請され、2005年3月17日の分科会で製造承認がされた。

国内では現在第III相臨床試験:慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ。第II相臨床試験:クローン病が実施中と報告されている。

■キャッスルマン病(Castleman disease)

縦隔巨大リンパ節過形成(mediastinalgiant lymph node hyperplasia):中縦隔に発生する充実性腫瘍で、組織学的にはリンパ濾胞、小血管増殖、リンパ球や形質細胞の増殖を見る。臨床的には非腫瘍性、良性疾患と認識されていた。リンパ節病変は基本病変ではあるが、病変局在が胸腔や肺間質にまで及ぶことが明らかにされ、しばしば免疫グロブリンの増加や減少を伴うことから血管免疫芽球性リンパ節症と呼ばれている。リンパ腫への移行や感染症の併発により死亡することがあるが、約1/3は良性の経過を取る。

治療としては、副腎皮質ホルモンを基本に免疫抑制薬の併用療法が試みられる。

  • 製品名:アクテムラ点滴静注用200(中外製薬)[2005年4月11日薬価収載承認]
  • 一般名:tocilizumab(recombinant)。当初一般名としてatlizumabが使用されていた。
  • 特 徴:本剤は、ヒト化抗ヒトインターロイキン6(IL-6)レセプターモノクロナール抗体であり、IL-6の生物学的作用を阻害することによりその薬効を示す。
成分・含有量 有効成分 トシリズマブ(遺伝子組換え) 200mg
添加物 精製白糖

ポリソルベート80

pH調整剤

500mg

5mg

性状 無色-微黄色液  
pH 6.0-7.0  
浸透圧 0.5-1.0(生理食塩水に対する比)
  • 効能・効果:キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性蛋白高値、フィブリノーゲン高値、赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身倦怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。
  • 用法・用量:通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを2週間隔で点滴静注する。なお、症状により1週間まで投与間隔を短縮できる。

なお、本剤使用時の詳細については、添付文書参照のこと。

[011.1.MRA:2005.5.13.古泉秀夫]


  1. 明日の新薬;Technomics,2005.5.9.
  2. 薬事・食品衛生審議会薬事分科会・新聞発表用資料,2005.3.17.
  3. 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典,2003