Archive for 8月 12th, 2007

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バイアスピリン錠の粉末化について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・バイアスピリン錠・アスピリン・aspirin・腸溶錠

Q:バイアスピリン錠の粉末化による調剤は可能か

A:バイアスピリン錠100(バイエル薬品)は、1錠中にアスピリン(aspirin)100mgを含有するフィルムコーティング錠である。本剤は耐酸性のフィルムコーティングを施すことにより有効成分であるアスピリンが胃で溶出せず、小腸で速やかに溶出し、吸収されるように製剤設計を行った腸溶錠である。

剤形 温度安定性 湿度安定性 光安定性 水溶解性 力価 融点 総合判定
× ? ? ? ? ? ? ? ? ×

なお、本剤添付文書中の9.適用上の注意-(1)服用時の1)として『本剤は腸溶錠であるので、 急性心筋梗塞の初期治療に用いる場合以外は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用させること』の記載がされ ている。

なお、aspirinは低薬価の原末も市販されており、経管投与等の投与が必要な場合、aspirin原末を秤量して投与する。なお、その際、 胃腸障害を防止する目的で消化器用薬を併用する等の配慮が必要である。

[014.4.ASP:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. バイアスピリン錠100mg添付文書,2002.3.改訂

バイアグラの処方せんによる調剤

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:法律・規則・バイアグラ・クエン酸シルデナフィル製剤・処方せん・自費診療・要指示医薬品

Q:バイアグラは処方せんによる調剤が義務づけられているがその根拠になる文書はあるか

A:次の指示文書が発出されている。

保険発第20号

平成11年3月9日

都道府県民生主管部(局)

保険主管課(部)長 殿

国民健康保険主管課(部)長

厚生省保険局医療課長

クエン酸シルデナフィル製剤に係る取扱いについて

平成11年1月25日付けで薬事法上承認された標記医薬品(バイアグラ錠25mg及び同50mg)については、薬事法に基づく要指示医薬品に指定され、同日付け医薬発第90号医薬安全局長通知により、外国において市販後に死亡例を含む重篤な心血管系等の有害事象が報告されていること等の理由により、医師の処方せんに基づく投与又は販売を義務付けているところである。

本製剤については、保険給付の対象としないこととし、これに伴い、本製剤に係る処方、本製剤による重篤な副作用等患者の健康被害を防止する観点から行われる検査等の一連の診療行為及び調剤行為についても、保険給付の対象とはならないこととなるので、関係者に対し、周知徹底を図られたい。

また、保険給付の対象とはならない診療行為及び調剤行為については、保険診療に係る診療録又は調剤録とは明確に区別することも併せて周知されたい。

更に関連する通知として、次の文書が発出されている。

平成11年3月3日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省健康政策局指導課長

クエン酸シルデナフィル製剤について(通知)

標記については、平成11年1月25日に薬事法に基づき製造(輸入)の承認がなされた勃起不全治療薬(別添1)であり、また、同法に基づく要指示医薬品として指定されたところである(平成11年1月25日医薬発第87号;別添2)。

本剤は、使用上の注意において、硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)との併用により降圧作用が増強し、過度に血圧を下降させることがあるので、本剤投与の前に、硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されていないことを十分確認し、本剤投与中及び投与後においても硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されないよう十分注意するよう警告がなされ、また、硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤についても使用上の注意において「クエン酸シルデナフィルを投与中の患者」を禁忌とするよう指示がなされた(平成11年1月 25日医薬安第5号;別添3)ところである。

このことから、虚血性心疾患の発作を起こして救急医療機関を受診した救急患者への対応等について、今般、日本救急医学会及び日本循環器学会より提言がまとめられた(「バイアグラに関する日本救急医学会・日本循環器学会の提言」平成11年2月22日;別添4)ので、参考までに送付する。

貴職におかれては、今後、貴管下の各救急医療機関等に対して、上記の点を十分に配慮し、消防機関とも十分連携を取りつつ、救急医療体制の確保を図るよう、お願いする。

医 薬 企 第20号

医薬審第 456号

平成11年3月3日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省医薬安全局企画課長

厚生省医薬安全局審査管理課長

クエン酸シルデナフィル製剤について(通知)

標記については、本日付け指第17号により硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤との併用等に関して通知されたところであるが、その販売及び管理に当たっては、厳重かつ慎重な対応が求められるものである。

このため、本年1月25日付け医薬発第90号により、管下の卸売販売業者、薬局等に対して、その販売及び管理についての周知徹底方依頼したところであるが、薬局における標記医薬品の販売又は授与は、医師の処方せんに基づき個人の患者の状況に応じて調剤されたものに限って認められるものであり、薬局は医師の処方せんの交付を受けた者以外の者に対して販売することはできないことにつき、併せて管下医療機関等に対して周知徹底されるようお願いする。

以上の発出文書の要点は下記の通り。

  • 保険給付の対象とはならない(また、本製剤に係る処方、本製剤による重篤な副作用等患者の健康被害を防止する観点から行われる検査等の一連の診療行為及び調剤行為についても、保険給付の対象とはならない)。
  • 保険給付の対象とはならない診療行為及び調剤行為については、保険診療に係る診療録又は調剤録とは明確に区別すること。
  • 医師の処方箋が必要 [生活改善薬として、同様な取り扱いにある「ニコレット*」については、「指示せん」でも投与が可能であるが、本剤は、指示せんによる投与はできない(要指示医薬品)]
  • 硝酸剤との併用は禁忌(→日本救急医学会及び日本循環器学会より「バイアグラに関する日本救急医学会・日本循環器学会の提言」(平成11年2月22日)が出されている)。

*「ニコレット*」については、2001年6月20日OTCとして承認取得(ただし、指定医薬品)。

*2005年4月1日以降、『要指示医薬品』は『処方せん医薬品』に変更された。

[615.1.SIL: 2004.7.13.古泉秀夫]


  1. https://ksweb.medks.com/lib/tpc/htm/tpc010905.htm,2004.7.13.

醗酵アガリクスについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理・化学的性状・醗酵アガリクス・Agaricus blazei Murrill・アガリクスブラゼイムリル・β-(1→3)D-glucan・glucose・cellulose

Q:醗酵アガリクスについて

A:Agaricus blazei Murrill(アガリクス・ブラゼイ・ムリル)は、担子菌類ハラタケ科に属する茸。

和名:ヒメマツタケ。

別名:カワリハラタケ。

アガリクスの抗腫瘍活性の中心は、子実体から生成した多糖、菌糸体の培養ろ液から採取した多糖・蛋白多糖であるとされている。

茸の抗腫瘍活性を示す主要成分は、多糖類のβ-glucanで、中でもβ-(1→3)D-glucanという特別な構造を持ったものが抗腫瘍活性は強いと報告されている。因みにglucanはglucoseのみからなる多糖類のことであり、セルロース、アミロース、デキストランがこの類に含まれるとされている。

◆cellulose(セルロース)

D-glucoseがβ -1,4結合で直鎖状に重合したもので、高等植物の細胞膜の主成分で、植物体の骨格成分となっており、また細菌、海藻、海産動物のホヤ類の外皮にも存在する。

celluloseは恐らく多糖類中で最も分子量の大きい物質で、化学薬品に対する抵抗性が強く、微生物に侵されにくい。

その構造はD-glucoseが β-1,4glucoside結合で、約3000個重合しており、方向性のある微結晶(ミセル)を作り、繊維構造を取ることができる。

ヒトにはβ- 1,4glucoside結合に作用する消化酵素がないのでcelluloseは消化されず、吸収利用されないが、少量の存在は消化管の蠕動運動を促進し、また便通を整えるのに役立つ。

草食動物は消化管内の微生物の働きによりcelluloseを分解し、生じる有機酸その他を吸収、利用してエネルギー源とすることができる。

celluloseは繊維素ともいわれ、殆どは細胞外に存在し、植物の堅固な細胞壁、繊維組織、木組織の主要な細胞外構成成分である。

水に不溶、分子量50,000-250万

glucose残基で300-1,500個。

一般に哺乳動物の消化管はcelluloseの加水分解酵素が分泌されないため食物としては利用できない。

唯一の例外がウシなどの反芻動物で、酵素cellulaseを胃の細菌が産生する。最近、celluloseは大腸癌の予防の関係で注目されている。

その他、celluloseはβ-1,4glucoside結合した多糖類。天然には植物体の細胞膜の主成分として存在し、生物界の有機物質の 50%以上を占め、通常、ヘミセルロースやリグニンなどを狭雑する。

cellulose中のβ-1,4-glucan結合を加水分解する酵素 cellulaseはある種の菌類、細菌、軟体動物、高等植物等にその存在が知られているとする報告も見られる。

◆amylose

D-glucoseがα-1,4-glucoside結合に よって直鎖状に重合した多糖で、澱粉中に20-25%含有される。

熱水に溶解し、amylase(唾液、膵臓に分布)によって加水分解される。

◆dextran

蔗糖を微生物により発酵させ、生産される多糖類。 glucoseのポリマーで、主としてα-1,6結合によって構成されている。

現在、医薬品として使用されているβ-D-glucanの製剤として次の3製品があるが、消化管からの吸収が悪いとして2製品は注射剤である。

物質名(会社名) 適用 抽出法
クレスチン
(呉羽-三共)

原末=1g

経口 担子菌類の一種『さるのこし かけ』の熱水抽出物。蛋白質と結合した多糖類で、カワラタケの菌糸体より得られたもの。

糖質の主要成分はβ-1,4-glucanであり、glucose の基数個に1個の割合で、glucoseの3位及び6位で分枝した構造が推定されている。

平均分子量約10万。

sizofiran

ソニフィラン
(科研)

1管=20mg

注射 本品は、スエヒロタケの菌糸 体培養ろ液から得られる多糖体を、超音波照射と高速噴射処理により低分子化した物質である。重量平均分子量:約450,000。

本品はglucoseのみからなる多糖体で、その基本構造はβ-1,3結合を主鎖とし、主鎖のglucose残基3個に対し1個の割合でβ-1,6結合で分岐したglucose側鎖を有し、その分岐は規則的である。

水溶液中では三重ラセン構造を有する三量体として存在する。

lentinan

レンチナン
(山之内)

注射 本品は、椎茸の子実体の熱水 抽出エキスより得られた抗悪性腫瘍性多糖体を生成して得られたもので、β-(1→3)結合を主鎖とする高分子glucanである。

上記の各報告からAgaricus blazei Murrillについて、吸収能を強化する目的で、『醗酵アガリクス』以外にも微細化した製品等、種々の製品が市販されているが、いずれも健康食品としての扱いであり、製品の吸収について、科学的根拠となる資料(体内動態等)は公表されていない。

[014.4.AGA:2004.3.29.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. 奥田拓道・監修:健康・改訂新版 栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  3. 薬科学大辞典 第3版;廣川書店,2001
  4. 医学大辞典;南山堂,1992
  5. クレスチン添付文書,1999.2.新様式第1版
  6. クレスチンインタビューフォーム,1990.2.改訂
  7. ソニフィランの概要,1996.3.作成
  8. レンチナンインタビューフォーム,2003.4.新様式第3版
  9. 小池五郎・他編:栄養学事典;朝倉書店,1982

肺繊維症の治療薬-パーフェニドンについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・肺繊維症・パーフェニドン・ピルフェニドン・pirfenidone・間質性肺炎・肺繊維症・S-7701・AMR-69・PRFD

Q:肺繊維症の治療薬であるパーフェニドンは国内で入手可能か

A:『パーフェニドン』ではなく『ピルフェニドン』とする標記がされている資料もあるが、英名標記はいずれも『pirfenidone』であり同一のものであると判断する。

  • 別名:S-7701、PRFD、AMR-69、[商]Deskar(米・Marnac社)。
  • 化学名:5-methyl-1-phenyl-2(1H)-pyridinone。
  • 薬理:TNF synthesis inhibitor。
  • 薬効:呼吸器官用薬-間質性肺炎、特発性肺線維症。[米国preclinical(Marnac):強皮症、硬化性腹膜炎、増殖性硝子体網膜症、子宮筋腫]。[米国第II相臨床試験(Marnac):肺繊維症、肝線維症、腎線維症)。
  • 剤形:経口剤。 到達段階:申請済。間質性肺炎:orphan drug指定(1998.9.4.)。
  • 予定商品名:グラスピア(塩野義)。
  • 概要:pirfenidoneは、ヒト線維芽細胞増殖抑制作用を有する経口又は局所投与が可能なpyridinpne誘導体である。抗繊維化剤として、開発されている。線維芽細胞増殖及び繊維芽細胞コラーゲン産生を阻害し、繊維芽細胞によるコラゲナーゼ産生を増強することによって効果を発揮するとされる。また、本剤はTNF-α産生阻害作用も有する。本剤は血液脳関門を通過することができ、消化管から容易に吸収される。主として肝臓で代謝されるが、皮膚の真皮層によっても代謝しうるとされる。亜急性及び慢性臨床試験、急性、亜急性、亜慢性動物試験の結果、本剤が安全であることが示唆されている。

海外では肺繊維症、強皮症、硬化性腹膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、子宮筋腫、良性前立腺肥大症、ケロイドなどに対して効果を示す可能性が検討された。

また多発性硬化症に対しても有効であるとする治験結果が報告されている。

国内では間質性肺炎及び特発性線維症について開発が進められていた。2002年12月申請。既に承認されたの報告が見られる。

[011.1.PIR:2004.2.9.古泉秀夫]


  1. 明日の新薬CD-ROM版,2004.2.3.
  2. (株)クラヤ三星堂:薬報No.109:6-7(2004)

パップ剤の名称の由来について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:語彙解釈・パップ剤・名称・由来・cataplasms・poultice・thick pap・パン粥

Q:パップ剤の名称の由来について

A:パップ剤について、次の報告がされている。

パップ剤(cataplasms)

パップ剤は、通例、医薬品の粉末と精油成分を含むもので、泥状に製するか、又は布状に展延形成して製した湿布に用いる外用剤である。従前広く使用されていたカオリンパップを主体とした定義となっており、用時リント布等に展延後患部に貼付し、湿布又は冷湿布に用いる泥状の剤形(泥状パップ剤)とされていたが、11局から現在主流となっている形成パップ剤を定義に加えた。なお、USP・BPには定義がない。

本剤は古くから用いられている剤形で、記録に残る最も古い製剤の一つといわれている。パップ剤は本来、用時加温して熱いうちに布上に厚く展延し、皮膚に適用して水分と熱の存在下に薬物を作用させ、炎症又は誘導刺激作用による疼痛寛解を目的とした製剤である。

その他、『パップ剤(cataplasma《poultice》):医薬品の粉末と精油成分を混和し泥状に製した湿布用外用剤。』とする報告も見られる。

  • cataplasm:パップ[剤]、湿布[剤]。軟らかい薬物を外用する投薬法。cataplasma=cata+plasma。poultice。cata=下方を意味する連結語。反を意味する接頭語。plasma=リンパ液の液体部分等。
  • poultice:L.puls(pult-)、a thick pap、湿布、パップ[剤]。種々の粉末やその他の吸湿性物質を油性又は水性の液体で湿したマグマ、あるいは粥状物質。通常、皮膚表面に直接貼付して使用する。軟化剤、緩和剤、又は刺激薬を用い、皮膚や皮下組織に対し、逆刺激効果を有する。
  • thick:層。厚み。
  • pap:パン粥(ミルクか水に浸したパンくずのように軟らかい食物)。

以上の各報告から判断して、最も古いパップ剤である『カオリンパップ』の外観が、パン粥を一定の層に展延して貼付するように見えたことからパップ剤の呼称が用いられたものと考えられる。あるいは当初『パン粥』そのものを布に展延して、湿布剤として使用していた可能性も考えられる。

[615.8.PAP:2003.9.11.古泉秀夫]


  1. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  2. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  3. 和田攻・総監修:医学生物学大辞典;朝倉書店,2001
  4. ステッドマン医学大辞典 改訂第4版;メジカルビュー社,1997

パンセダンの毒性と処置

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:漢方薬・毒性・中毒・誤飲時処置・パンセダン錠・パッシフローラエキス・セイヨウヤドリギエキス・カギカズラエキス・ホップ乾燥エキス

Q:パンセダン10錠を1回に服用したとする患者が急患室に来ているが、本剤の毒性と処置は

A:パンセダン(佐藤製薬)は、1錠中に次の成分・含有量を有する植物性の静穏剤で、一般用薬としてして市販されている製剤である。

  • パッシフローラエキス…………40mg
  • セイヨウヤドリギエキス………10mg
  • カギカズラエキス………………22.5mg
  • ホップ乾燥エキス………………9mg

本剤の適応症は、神経衰弱症候の次の諸症として「不眠、いらいら、不安、興奮、眩暈、耳鳴、動悸、頭痛」であり、用法・用量として成人1回1?2錠、1日2回服用とされている。

本剤の動物による50%致死量は、マウス・ラットで92錠/kgとされており、ヒトにおける過量服用例が報告されていないため、確定した判断とはならないが、1回10錠程度の服用範囲であれば、致死的な作用は発現しなと考えられる。

服用後既に一定時間が経過した事例で、考えられる影響としては「眠気」等が挙げられるので、医師の監視下で安静状態を確保する必要があるかもしれない。

服用直後であれば、胃洗浄等適当な方法による薬物の除去も考慮する必要があるが、胃洗浄による患者負担を考えた場合、本剤の服用量によっては、そこまでの処置を要しないのではないかと考えられる。。

尚、参考までに、各配合剤の作用等について以下に紹介する。

パッシフローラエキス[学名:Passifloraincarnata]

トケイソウ科。南米原産のつる性の植物。その開花期における茎、葉は鎮静などに用いる。成分としてバルマン系アルカロイド等。

セイヨウヤドリギ[学名:Viscumalbum]

ヤドリギ科。ブナ、カシの樹上に吸根で固着寄生する。雌雄異株の常緑低木。鎮静剤として用いる。成分としてコリン、アセチルコリン、アルカロイド(ビスコトキシン)等。

Viscotoxinは、心収縮停止作用を持つ毒素である。viscotoxinはアミノ酸残基88個からなり、分子量9,600のポリペプチドである。毒性は腹腔内注射で概ね1.14mg/kg(マウス)程度である。

カギカズラ(釣藤)[学名:Uncariarhynchophylla]

アカネ科。日本、中国に自生するつる性の植物。その木化したカギ状の側枝を薬用に用いる。成分としてRhinchophyllin及びIso-rhinchophyllinの2種のアルカロイドを含有する。

リンコフィリンは少量で呼吸中枢を興奮し、青蛙の心臓に対してジギタリス様作用を呈する。血圧はリンコフィリンにより著しく下降し、末梢血管は拡大する。家兎の静脈内注射による一般症状は、著明なる呼吸促迫と運動麻痺で、致死量に達すれば呼吸麻痺により死亡する。最小致死量は、家兎静脈内注射で30?40mg/kg、0.3g皮下注射では呼吸頻数を示した。

ホップ[学名:Humuluslupulus]

クワ科。長野、北海道で栽培されている。雌雄異株のつる性の植物で、その成熟花序包葉に点在する腺毛を薬用に用いる。成分として精油、苦味質等である。苦味成分はhumulone、lupuloneといったクロログルシン誘導体である。また、純粋なイソプレノイドであるセスキテルペン、humuleneを精油中に含有する。

ホップ腺は、健胃、鎮静及び利尿薬として不眠症、膀胱カタル等に用いる。

[510.FD5.63.099PA][1991.4.15.・1999.3.29.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本医薬情報センター・編:一般日本医薬品集第5版;薬業時報社,1985
  2. パンセダン添付文書,512G
  3. 刈米達夫・他:和漢薬用植物;広川書店,1954,p.48,p.352
  4. 柴田承二・編:薬用天然物質;南山堂,1982
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.61,1991.4.15.より転載

排便消臭剤について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW :薬名検索・人工肛門・ストーマ・排便消臭剤・消臭剤・健康食品・OS 液・スメルナーク・シャンピニオンエキス・人参葉乾燥粉末・緑茶エキス・竹エキス・フラボノイド

Q:人工肛門(ストーマ)を行っている患 者の便の消臭目的に使用する薬剤について

A:排便消臭目的で市販されている製品として、次の製品が紹介されている。

商品名(会社名) 含有成分 特徴
エチケット・ビュー
(ダイリン)

[東京都港区新橋5-14-6第2秋山ビル TEL:03-3578-0401]

OS液

(緑茶を主体とした天然食用植物エキス-タンニン、 フラボノール等にビタミンを配合)

健康食品。

1回1錠毎食後服用。(90粒)。

グリーンエンゼル(サラダメロン和光農場普及会)(和光研究農場)

[〒096 北海道名寄市日進105番地TEL.01655-4-3224]

人参葉乾燥粉末。

野菜だけで出来た天然活性緑素、ビタミン・ミネラル・粗繊維を豊富に含む。

健康食品。アルカリ性食品。

1日3g-2週間の服用で、著 効19.78%、有効(気にならなくなった)62.64%。

また、1日1g・2回食後服用で同様の効果。(25g)。

スメルメイトTAB
(日本ケミファ)

消臭TAB
(フォーエバー(株))

[東京都千代田区鍛冶町1-7-2 TEL.03-3256-5607]

スメルナーク

(杉、ヨモギ、白樺、紫蘇等の35種類の植物 から約180種の有機化合物を抽出、ブレンドしたもの)

健康食品。食後1粒服用。

噛んで食べると口中が爽やかになる。(90粒)。

チャットタイム(有限会社ユニプレス)

[〒169 東京都新宿区北新宿1-29-3 秀健ビル TEL.03-3360-1161]

シャンピニオンエキス

食物繊維(セルロース、ポリデキス トロース)

有胞子性乳酸菌

オリゴ糖

健康食品。

腸内の有害物質をクリーンにするシャンピニオン エキスを主体に植物繊維、

有胞子性乳酸菌・オリゴ糖の配合により排便時の臭いを抑制する。

シャンピニオンエキス[マッシュルームからの抽出エキス] (240粒)。

NIOONE[におわん]
(カンロ株式会社)
シャンピニオンエキス

緑茶エキス

竹エキス

フラボノイド

ビタミンC

オリゴ糖

健康食品。1日8?9粒。
マシュロム(ユウキシステム(株))

[東京都江東区北砂3-12-7TEL.03-5683-5371]

シャンピニオンエキス[Bio-M](マッシュルームからの抽出エキス) 健康食品。(90粒)。

シャンピニオンエキス:マッシュルーム抽出の天然成分で、無味無臭のエキス

[生理活性効果] 
シャンピニオンエキスに含まれるミネラル・アミノ酸・マンニトール・ヘミセル ロース等キノコ特有の成分により、コレステロール溶解性・血圧降下作用・ウイルスに対する免疫作用があるとする報告がされている。
[悪臭除去効果]
メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)・トリメチルアミン(魚の腐 敗臭・アンモニア臭に類似)に対する消臭効果がある。
[食後口臭除去効果] 
食後に腸内で発生する悪臭物質を抑制し、肺から出てくる臭気に効果がある。
[腸内清浄効果] 
加齢とともに多くなる大腸内の有害物質(腐敗性分)を抑制する。

緑茶エキス:緑茶から抽出した天然エキス。

[悪臭除去効果] 
緑茶に含まれるポリフェノールが化学反応を起こし、メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)等の臭いを消す作用がある。

竹エキス:竹から抽出した天然エキス。

[制癌作用] 
エキスに含まれる多糖類に制癌作用があるとされている。
[抗菌作用] 
エキスに含まれる有機酸・フェノール化合物が効果を示す。
[口臭除去効果] 
口内の消臭作用がある。

フラボノイド:天然成分

[悪臭除去効果]
メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)・トリメチルアミン(魚の腐敗臭・アンモニア臭に類似)に対する消臭効果がある。
[虫歯防止効果]
虫歯菌に対する増殖を阻止する
[抗酸化効果]
生体内の脂肪が酸化するのを防ぐ。

スメルナーク

松・檜・白樺・蓬・熊笹・紫蘇・アロエ・お茶など35種類の植物から真空乾留装置により抽出し た植物抽出エキス(主にテルペン類)。森林浴(フィトンチッド)の作用で悪臭が相殺され、臭いが消える。

以上、検索できた「排便消臭剤」は、健康食品に類するものであり、医薬品として市販されているものはなかった。しかし、報告されている各種資料から、一応の有効性が推定されるため、これらの健康食品中から適当な製品を選択し、使用することは可能である。但し、健康食品であるため、処方箋での交付は出来ない。

[011.1OST:1996.8.29.古 泉 秀夫・1999.3.19.・2004.3.4.一部改訂]


  1. 人工肛門の臭気防止にはニンジンの葉の粉末が効果;朝日新聞, 1995.2.27.
  2. 人工肛門の消臭効果-ニンジンの葉の乾燥粉末;朝日新聞, 1994.6.19.
  3. 排便後の臭い改善「消臭植物シリーズ<粒>」;薬局新聞, 1995.20.
  4. 週刊読売・広告,1996.3.31.
  5. 食後に服用便利な1錠-においないし「お年寄り介護用品」;毎日新聞, 1994.7.7.
  6. ひらめきを育てる「清潔症時代にピタリ-排便消臭剤;読売新聞, 1995.11.29.
  7. SDIC DIワンポイント実例 No.27「排便消臭剤の入手」; SDIC Contents Pharmacy,No.108(1985.6)
  8. 国立札幌病院薬剤科・私信,1996.8.29.
  9. カンロ株式会社・私信,1996.8.29.
  10. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI- News,No.1576,1997.7.8.  転載

ハイポアルコールの安定性

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・使用期限・安定性・ハイポアルコール・Hypo-alcohl・ヨウ素系消毒薬・着色除去・清拭剤

Q:包交回診車上に、開封日不明のハイポアルコール500mL入瓶が置かれているが、使用残液の取扱いについて

A:ハイポアルコール(Hypo-alcohl)の処方として、次の処方例が紹介されている。

Rx.8%- Hypo-alcohl

  • チオ硫酸ナトリウム(Na2S4O6)——40g
  • エタノール———- 250mL
  • 蒸留水——-適量
  • 全量——-500mL
  • 貯法:遮光・室温保存
  • 有効期限:なるべく速やかに使用する。
  • 適応:ヨウ素系消毒薬使用時の着色除去

Hypo-alcohlは、ヨウ素系消毒薬使用時の着色除去目的で使用する清拭剤である。着色除去の機序は、一般に次の化学変化によると考えられている。

 I2+2NaS2O3=2NaI+Na2S4O6

チオ硫酸ナトリウムとヨウ素は定量的に反応するとされている。

ヨウ素は水に極めて溶け難い(1g/100mL以上-1,000mL未満:溶解度は水で0.018g/100mLの溶媒量)性質を持っており、ヨウ素系消毒薬の消毒後のヨウ素による着色除去に蒸留水が使用されない理由とされている。

チオ硫酸ナトリウムによって変化した生成物であるNaI(ヨウ化ナトリウム)は、水に溶け易い性質を持っており、水に対する溶解度は179g/100mLと報告されているので、ヨウ素による着色の除去は容易になる。

以上報告されているHypo-alcohlの性状を考えると、例えばpovidone iodineによる消毒後、直ちにHypo-alcohlを使用することには消毒効果上問題があるといえる。

手術用Isodineによる一般的な手術野消毒法

  1. 手術野、手術部位を除毛し、水で湿す。
  2. 手術用Isodine液を取り(約10×15cm当たり本剤1mL)、泡立たせ、5分間十分に塗擦する。
  3. 滅菌ガーゼで拭き取る。
  4. 更にIsodine液の塗布を行う。
  5. 乾燥後あるいは5分経過後、Hypo-alcohlで着色を除去する。

以上の手技に従えば、特にHypo-alcohlによる消毒効果の減弱はないものと思われる。

その他、チオ硫酸ナトリウムはヨード還元剤であり、ヨウ化カリ水銀(HgI2・2KI)の作用を不活性化する。ヨウ化カリ水銀の500倍液で手洗いした後、5%-チオ硫酸ナトリウム溶液に手を浸すと、増菌が見られたとする報告がされている。

Hypo-alcohl中のalcohl濃度について、局方無水エタノール(99.5v/v%)を使用したとしても製剤化されたHypo-alcohl中のalcohl濃度は約50%である。

その他報告されている製剤処方例を見ると70v/v%-alcohlの使用例も見られるが、この濃度のalcohl濃度では完成品のalcohl濃度は35v/v%であり、いずれも消毒効果を期待できる濃度とはいえない。

従って、使用頻度にもよるが、病棟におけるHypo-alcohlの請求量として、500mL瓶入りの製剤は多すぎるといえる。

開封後のHypo-alcohlを室温中に長期保存すれば、当然アルコール成分は蒸発し、製剤中のalcohl濃度は限りなく低下する。

保存製剤が、万一細菌に汚染されていた場合、ヨウ素剤で消毒した部位を再度汚染することになると考えられるため好ましくない。

[615.28.HYP:2003.6.26.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・代表編著:医薬品情報Q&A[1];株式会社,1990
  2. 日本病院薬剤師会・編:院内における消毒剤の使用指針;薬事日報社,1987
  3. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤-特殊処方とその調製法;薬事日報社,1982
  4. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993

バイアル瓶ゴム栓のコアリングについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・バイアル瓶・ゴム栓・コアリング・注射針・穿刺回数・細菌汚染・保存剤

Q:バイアル瓶のゴム栓に対する注射針の穿刺回数の目処について

A:バイアル瓶ゴム栓の穿刺によるコアリング(ゴム片が穿刺により削り取られること)の発生、あるいは空気、溶液の漏出等に関する試験結果の報告として、次の報告が見られる。

  1. 10回までの穿刺では、コアリングの発生は見られなかった。
  2. 10回までの穿刺では、ゴムと思われるフラグメントは、対照及び試料のいずれにおいても検出されなかったが、20回以上の穿刺では、試料にフラグメントの発生が見られる傾向があった。
  3. 10回の穿刺後においても、ゴム穿孔部分からの内容液の漏出は認められなかった。10回穿刺後に加圧しても空気や内容液の漏出は認められなかった。
  4. 5回程度の穿刺の後では、内容液がやや漏れてくる。しかし、通常使用では3回程度の穿刺と考えられるため、問題にはならない。

コアリングの発生は、穿刺回数のみが影響するわけではなく、穿刺する際の針の角度等、穿刺する者の技術的な問題も含まれる。従って、上記穿刺回数に関する実験結果から、臨床現場での“何回まで穿刺が可能か”とする質問に対する回答を得ることは困難である。

穿刺によるコアリングの発生要件として、次の報告がされている。

  1. 針刺しの方法:角度、カット面、速度、穿刺部位等
  2. ゴム栓:材質(ブチルゴムが主流。プロモブチルゴムから塩素化ブチルゴム等へ変更している企業もある)、構造(ゴム栓は密封性を高めるために容器口部周縁から圧縮される力を受けるように設計されている。)、針刺し部の形状及び厚み。
  3. 注射針:針の経、形状、肉厚、ヒール部の処理

穿刺時、針が回転したり、ゴム栓面に対して斜めに針刺しするとコアリングが発生し易いといわれる。

コアリングの発生を少なくするためには、

  1. 注射針はゴム栓の指定位置(IN、◎印など)に垂直にゆっくりと刺す。
  2. 注射針を途中で回転させない。
  3. 針刺しを数回行う場合は、同一カ所を避けて穿刺する。

なお、バイアル瓶の使用に際し、注意しなければならないのは、穿刺による細菌汚染である。

分割使用を目的とする注射剤は、使用から次の使用の間、密封することができる容器-バイアル瓶が用いられる。しかし使用毎に外部から栓を通して注射針を突き刺すので、注射針を通しての細菌汚染が起こりえる。この汚染による細菌の増殖を防止するため、製剤総則では『注射剤で分割使用を目的とするものは、別に規定するもののほか、微生物の発育を阻止するに足りる量の保存剤を加える』としている。

汚染は多種の混合汚染が考えられるので、保存剤は多種の微生物に有効なものでなければならない。一般に分割使用を目的とした注射剤以外はこのような想定をしていない。

従って一度密封容器中に注射針を接触した注射液には、全く保存性がないと考えるべきであるとする報告も見られる。

*保存剤:benzethonium chloride、benzalkonium chloride、phenol、cresol、chlorobutanol、methylparaben、ethylparaben、propylparaben、benzyl alcohol等。

以上の各報告からバイアル瓶ゴム栓への穿刺回数については、穿刺技術及び保存剤の添加等を考慮の上、個々に判断すべき問題であると考える。なお、保存剤の添加されていない製剤では、『密封容器中に注射針を接触した注射液には、全く保存性がない』との判断も必要である。

[014.4.INJ:2003.7.22.古泉秀夫]


  1. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(3):247-248(1999)
  2. 戸倉康之・編:改訂版注射薬マニュアル;照林社,1997
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

濃縮サルビアについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・シソ科・濃縮サルビア・サルビア・salvia・セイジ・ sage・ヤクヨウサルビア・サルビノリンA・salvinorin A

Q:テレビニュースで放映していた濃縮サ ルビアとはどのような物なのか

A:通常、薬用に使用されるサルビアは、シソ科のSalvia officinalis L.(サルビア)である。原産は、地中海地域、特にアドリア海地域で、部分的にはヨーロッパ諸国で栽培される。輸入生薬は、アルバニアと旧ユーゴスラビアから来る。

多年生で茎の基底部が木質化した高さ70cmまでの植物(半灌木)である。

  • 同意語:Salbeibl

ノコギリヤシについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・生薬・ノコギリヤシ・鋸椰子・Serenoa repens・Serenoa serrulata・セレノアレペンス・Sabal serrulata・Saw Palmetto・ソーパルメット

Q:前立腺肥大症に効果があるとされるノコギリヤシについて

A:ノコギリヤシ(鋸椰子)は、北米原産のヤシ科シュロ属の低木で、学名:Serenoa repens(セレノア・レペンス)・S.serrulata又はSabal serrulataと呼ばれる植物である。

1892年米国において、ノコギリヤシの果実エキスが膀胱や尿道など泌尿器の疾患に効くとする研究結果が発表され、以後ヨーロッパを中心に高齢男性を悩ませる前立腺肥大への特異的な効用が検討されてきた。

  • 標榜効能:前立腺肥大、膀胱炎、男性機能改善。

Saw Palmetto(ソーパルメット-Serenoa repens;Sabal serrulata)の使用は、18世紀初頭に本品の実に頼る生活をしていたフロリダ半島の原住民にまで遡り、その実は睾丸萎縮、陰萎(インポテンス)、前立腺炎、男性の性欲低下、また肉体滋養の強壮剤として米国indian達に使用されていた。他の歴史的使用法として、女性の不妊治療、豊胸、授乳強化、生理痛、性欲促進、更には気管支粘膜の強化及び去痰等があげられる。

Saw Palmettoは、米国南東部に生息する低木の椰子の木である。

乾燥成熟果実の抽出物には脂肪酸、ステロール(β-シトステロール、カンペステロール及びスチグマステロールを含む)、フラボノイド及びその他の成分が含まれる。

種々のシトステロールが活性成分であると考えられている。

Saw Palmetto製品の成分は標準化されていないが、大部分のSaw Palmettoは、脂肪酸及びステロールを85-95%含有している。

Saw Palmettoの果実抽出物は、in vitroで男性ホルモン作用、抗エストロゲン作用及びおそらく抗炎症作用を有することが報告されている。

高用量ではテストステロン-5-α還元酵素を阻害し、テストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を減少させる。またアンドロゲン受容体への結合を阻害する。しかし、ある研究ではラットにおける高用量群でも抗男性ホルモン作用及び5-α還元酵素阻害作用は証明されず、また健康男子で7日間摂取後に、血清ジヒドロテストステロン濃度は減少しなかった。

  • 副作用:Saw Palmetto抽出物を摂取した者で、頭痛、胃腸障害、高血圧、インポテンス及び性欲減少が報告されている。

以上の各報告からSaw Palmetto果実抽出物は、前立腺肥大症の症状を軽減すると思われるが、発表された資料は限られており、抽出物の成分も標準化されていないとする報告が見られる

[015.9.SAW:2004.2.10.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健食品-;東洋医学舎,2000-2001
  2. 前立腺肥大症に対するソーパルメット;The Medical Letter<日本語版>,15(4):18(1999.2.12.)

ネオドパゾールとハルナールの同時服用

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:臨床薬理・パーキンソン病・ネオドパゾール錠・ハルナールカプセル・levodopa・benserazide hydrochloride・tamsulosin hydrochloride

Q:パーキンソン病でネオドパゾールを服用中の患者が、他院でハルナールの処方を出された。パーキンソン病治療目的で通院中の病院の薬剤師が、ハルナールはいらないといったため患者はハルナールの服用を中止している。相互作用とは違う理由によると思われるが、考えられる理由は

A:服用中の薬について考える前に、次の点を整理しなければならない。

  1. 患者が他院を受診した理由及びパーキンソン病治療中の医師は、そのことを承知しているのか?。
  2. 他院受診時、患者は現在治療中の病気及び服用中の薬剤について、ハルナールを処方した医師に伝達してあるのか?。
  3. 患者の病状が不明な段階で、医師の処方した薬剤について、薬剤師が要・不要の判断を下すことは避けなければならない。また患者に直接いうということは問題である。もし処方上何等かの疑義があると判断したとすれば、それぞれの処方医に疑義照会すべきであり、結果的に診療の妨害をしたことになれば問題としなければならない。

次に服用中の薬剤について検討した結果を紹介する。

項目 levodopa・ benserazide hydrochloride

ネオドパゾール錠(第一)

tamsulosin hydrochloride

ハルナールカプセル(山之内)

作用機序 本剤はlevodopaと芳 香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬benserazideを4:1の比率で配合したパーキンソニスム治療剤である。パーキンソン病・パーキンソン症候群患者において、脳内線条体で不足しているドパミンを補う効果があり、ラットにおける実験により次の作用が認められている。

levodopaはドパミンの前駆物質であり、血液-脳関門を通過し、脳内で脱炭酸酵素の働きによりドパミンに転換され、パーキンソン病・パーキンソン症候群の症状を改善する。

しかし、単独投与の場合、levodopaは末梢組織において脱炭酸酵素により急速にドパミンに転換される。

そのため体内に吸収されたlevodopa量に比べ、血液-脳関門を通過して脳内に取り込まれるlevodopaは少ない。一方、benserazide hydrochlorideはlevodopa脱炭酸酵素阻害薬であり、脳以外の末梢組織でlevodopaの脱炭酸反応を防ぐ。このため配合剤では末梢での血中levodopa濃度が高まり、脳内へのlevodopa移行量が増加する。levodopa単独投与に比し、levodopaの1日量を約 1/5に減量でき、同等又はそれ以上の効果を発揮する。

また食欲不振、悪心、嘔吐等の消化器障害を軽減する。また、塩酸ピリドキシン(Vitamin B6)併用時でも作用は減弱されない[添付文書,2003.3]。

尿道及び前立腺部のα1受容体を遮断することにより、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下 させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。

ヒト前立腺標本での受容体結合実験において、塩酸プラゾシンより2.2倍、メシル酸フェントラミンより40倍強いα1受容体遮断作用を示した[添付文書,2004.7]。

副作用 泌尿器[排尿障害0.1%未 満] ?

パーキンソン病治療目的で、現在、患者が服用中のネオドパゾール錠の副作用として排尿障害が報告されており、薬剤の副作用により尿の排出が困難であるとすれば、本剤処方医と相談の上対処すべき問題である。

また、患者に前立腺肥大による排尿困難が見られるとすれば、患者の判断で他院を受診するのではなく、主治医に相談の上、他医への検診依頼を受けるべきであり、主治医と意見調整のできる範囲内の医師の治療を受けることが基本原則である。

医師間で意見の調整が可能な状況があれば、薬物相互作用等の薬物療法に係る調整が可能となるため、患者の安全性確保の上からも、主治医に相談なしに診療先を増やすべきではない。

なお、tamsulosin hydrochlorideは不要だとした薬剤師の判断の根拠については、検討材料が不足しているため、質問内容から類推することはできない。

[015.4.LEV:2004.12.14.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

ネブライザー適用製剤-アレルギー性鼻炎

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬物療法・アレルギー性鼻炎・ネブライザー・抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・副腎皮質ホルモン剤

Q:アレルギー性鼻炎の適応があり、ネブライザーによる適用が認められている製剤としてどの様な製剤があるか

A:現段階で、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬に分類される製剤中に『ネブライザー』の適用が承認されている薬物は存在しない。

『アレルギー性鼻炎』に適応があり『ネブライザー』の適用が承認されている薬物は、副腎皮質ホルモン剤及びその配合剤である。なお、使用の詳細については、添付文書を参照すること。

一般名・商品名(会社名) ネブライザーによる 用法・用量
betamethasone sodium phosphate

リンデロン注(塩野義)

リンデロン液0.1%(塩野義)

1回0.1-2mg—-1日1-3回

1日1-数回

betamethasone sodium phosphate・fradiomycin sulfate

耳科用リンデロンA液(塩野義)

1日1-数回
dexamethasone sodium phosphate

デカドロン注射液(万有)

オルガドロン点耳溶液0.1%(三共)

1回0.1-2mg——–1日1-3回

——1日1-数回

hydrocortisone sodium succinate

ソル・コーテフ注(住友-ファイザー)

1回10-15mg—-1日 1-3回
methylprednisolone acetate

デポ・メドロール注(ファイザー)

1回 2-10mg—–1日1-3回
prednisolone sodium succinate

水溶性プレドニン注(塩野義)

1回 2-10mg——1日1-3回
triamcinolone acetonide

ケナコルト-A(ブリストル)

1回 2-10mg—–1日1-3回

[035.1. NEB:2004.1.20.古泉秀夫]


  1. 日本医薬品集CD-ROM 1版,2002
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003

ニンニクと薬剤の相互作用について

日曜日, 8月 12th, 2007

Q:「ニンニクの生の食用は薬の効果に影響するか」の質問が外来窓口でされたが、何か資料はあるか

A:ニンニクはユリ科に属するオオニンニク(AlliumsativumL, vor.pekinenseF.Maekawa)を主とする多年草の鱗茎で、通例食用として栽培される。通常、健胃、発汗、利尿、去痰、整腸、殺菌、駆虫等の効果があり広く食用又は薬用として用いられる。

本来無臭のアリインといわれる成分を含むが、共存する酵素アリナーゼによって分解し、刺激性の強い悪臭あるアリチンを生成する。

この成分はビタミンB1と結合(アリサイアミン生成)することにより、ビタミンB1を一層強化する作用が認められている。

ビタミンB1を吸収しやすく、更に比較的貯留しやすくするほか、各種の薬効が期待される。尚、ニンニクの薬効はその悪臭ある成分によるから無臭としては意味がなくなる。

仮に凍結乾燥して粉末化したものが無臭であるとしても、酵素が死滅しない限り、その作用により経口投与後容易に分解してアクチンを生成し、呼気・汗及び排尿等により悪臭を発散するから、生理作用があることが確認できる。

反対に経口投与後も無臭で、呼気、排尿に異臭を発散しないとすれば、薬効は期待し得ない。

ニンニクの含硫黄有機化合物(研究者による)は類脂質溶解性の溶血毒とされ、家兎には少量で赤血球の増加をまねき、大量では著しい貧血を起こすという。

血色素量は、赤血球の増減にやや遅れて増減し、少量の皮下投与では白血球の増加を来たし、適量は幼若家兎の体色増加に好影響を与えるという報告がある[白沢玄章:日本消化器病学会雑誌,38:490(1939)]ので、貧血性患者にはニンニク末は投与しない方が安全であろう。

東邦大学医学部第一内科の山口了三助手は、野菜類の抗血栓作用について検討した結果、ニンニク、シシトウ、ホウレンソウ、カブ、アスパラガス、セロリ、トマト、ネギ等に、果物ではメロン類、イチゴ、八朔、西瓜、パパイア、マンゴー、甘夏等に強い抗血栓作用があることを確認した[東京新聞,1990.7.25]。

私立協立病院皮膚科(徳島)の菊池誠らの研究グループは、ニンニク成分とビタミンB1を含んだ入浴剤が、アトピー性皮膚炎を緩和させることを第1回四国ぜんそくアレルギー研究会で発表した。現在ニンニク成分中の何が有効なのか不明とされているが、ニンニク成分とビタミンB1が皮膚から吸収されていることは実証されており、ニンニク中の何かの有効成分が皮膚下の血管から吸収され、血行をよくし、効果を上げているのではないかと推定されている。尚、使用した入浴剤は富士産業(香川県丸亀市飼料添加物製造会社)が魚の餌に混ぜて使う栄養剤として開発のもの[朝日新聞, 1989.9.27(夕刊)]。

活性強
(50%以上)
やや活性強い
(50-30%)
僅かに活性
(30-10%)
活性無
(10%以下)
ニンニク

シシトウ

サヤインゲン

ホウレンソウ

玉葱

アスパラガス

セロリ

アシタバ

パセリ

トマト

ネギ

シソ

メロン

パッションフルーツ

春菊

大根菜

カイワレダイコン

ワケギ

アサツキ

二十日大根

人参

チンゲンサイ

ピーマン

イチゴ

アボガド

グレープフルーツ

フェイジョア

甘夏

モヤシ

大根

三つ葉

南瓜

サラダ菜

ブロッコリー

サヤ豌豆

グリンピース

レモン

パパイア

西瓜

りんご(ふじ)

オレンジ

レタス

胡瓜

カリフラワー

小松菜

牛蒡

生姜

茄子

白菜

蓮根

キャベツ

チェリー

蜜柑

枇杷

梨(幸水)

[読売新聞,1990.9.19]

大蒜(ニンニク)

新鮮な鱗茎100gに、水分70g、蛋白質4.4g、脂肪0.2g、炭水化物23g、粗繊維 0.7g、灰分1.3g、カルシウム5mg、リン44mg、鉄0.4mg、ビタミンB10.24mg、ビタミンB20.03mg、ニコチン酸0.9mg、ビタミンC3mgが含まれている。大蒜は精油約0.2%を含み、辛辣の味と特異な臭いがあり、アリシン及び他種のアリル基“プロピル基”メチル基を持った硫黄化合物を含んでいる。この他精油にはシトラール、ゲラニオール、リナロール、α-フェランドレン、β-フランドレン、プロピオンアルデヒド、パレルアルデヒド等も含まれる。

アリシンには殺菌作用があるが、新鮮な大蒜の中には存在しない。スリシンは大蒜に含まれているアリイン(S-アリル -L-システイン-スルフォキシド)がアリイナーゼの作用で加水分解されて生ずる。アリシンの溶液に熱を加えると殺菌等の作用はすぐに消える。アルカリを加えても効果を失うが稀酸では影響を受けない。このアリインの他に大蒜の中にもう一種類のアリインであるS-メチル-L-システイン-スルフオキシド、アリシンとビタミンB1が反応し生ずるアリチアミン、多種のγ-グルタミン酸のペプチド等が含まれている。

  • 抗菌作用:抗菌性の物質を含む高等植物のうち最も効力の大きいのが大蒜と洋葱である。大蒜中の植物殺菌素はアリシンである。大蒜の粗製剤又は大蒜そのものは早くから臨床に応用されており、数種の細菌や真菌及び原虫の感染に対して十分な治療と予防の価値が証明されている。
    大蒜油から分離された大蒜素(既に人工的に合成)は熱に対して安定性がある。
    invitroでCandidaalbicns等の真菌、緑膿菌、黄色葡萄球菌等のいずれに対してもかなり良好な抑制作用があり(有効濃度5μg/ml)、非溶血性で全体の毒性が低いので、点滴静注により比較的優れ多臨床効果がある。
    その他乳腺腫瘍の発生抑制、心拍を遅くさせ、心臓の収縮力を増加して末梢血管を拡張し、利尿を増加する等の作用が報告されている。

以上の報告からビタミンB1剤との服用中に大蒜を摂取すれば、ビタミンB1の有効利用が考えられるが、ワーファリン服用患者では大量の摂取は要注意、エイコサペンタエン酸製剤であるイコサペント酸エチル(エパデールカプセル)服用患者では作用増強の可能性があり大量の摂取は要注意ということがいえる。

[510.FD14.015.21ALL][1991.2.23.・1999.3.25.一部修正.古泉秀夫]


  1. 木村雄四郎:朝鮮人参及びにんにくの薬効;質疑応答第2集;日本医事新報社,1978,p.271
  2. 木村雄四郎:乾燥ニンニク末の薬効;質疑応答第2集;日本医事新報社,1978,p.366
  3. 木村雄四郎:貧血性患者に対するニンニク末投与の是非;質疑応答第2集;日本医事新報社,1978,p.492
  4. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典第三巻;小学館,1985
  5. 古泉秀夫:魚類と薬剤;臨床と薬物治療,10(1):23-26(1991)
  6. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.29,1991.2.27.より転載

乳幼児の蜂蜜摂食の是非について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:中毒・毒性・蜂蜜・ハチミツ・ボツリヌス菌・乳幼児・厚生省通知・厚生労働省通知

Q:ボツリヌス菌に汚染された蜂蜜により中毒症状が発現したとの報告を以前見たが、乳幼児に蜂蜜を投与することの是非について

A:ボツリヌス症(botulism)は、ラテン語のソーセージ(botulus )に由来する名称で、ヨーロッパでは食中毒の一つとして、既に18世紀には知られていた。

本邦では1951年の最初の報告以来、1983年までに91事例-438症例が報告されている。1984年の熊本県産のカラシ蓮根によるボツリヌス症は、各県に散在する死者を出し、ボツリヌス中毒の名称を広く知らせることとなった。

食品中に含まれるボツリヌス菌芽胞(Clostridium botulinum;嫌気性グラム陽性桿菌)そのものを摂取しても、腸管内での増殖、毒素産生はないものとされていたが、1976年米国において乳児ボツリヌス症が発生し、詳細な検討の結果、ボツリヌス毒素の摂取は否定され、ボツリヌス菌の芽胞が、経口的に摂取され、腸管内において発芽、増殖、毒素を産生し、吸収された結果、発症したことが明らかにされた。

本邦では1986年6 月に始めて報告- 蜂蜜に含まれたボツリヌス菌芽胞が感染源と考えられる症例- 厚生省食品衛生局が直ちに調査研究班を組織。1987年7 月、京都市で同様に蜂蜜を飲用していた生後40日の幼児が発病し、回復するまでに約3 カ月の呼吸管理を要した例が報告された。

1987年10月20日、厚生省は乳児ボツリヌス症の発病には、市販の蜂蜜が原因である可能性が強いとして、各都道府県に対し1 歳未満の乳児に対する蜂蜜の摂取を避けさせるよう指導することなどを通知した。

蜂蜜は今迄、食品の中で唯一の感染源とされている。1979年カルフォルニア州において調査した結果では、75症例中28例(34.7% )は蜂蜜を摂取していたことが明らかである。本邦の3 症例も全例が発症する前に蜂蜜を与えられていた。米国の調査では発病患児に与えられた蜂蜜の約30% からボツリヌス菌が検出された。また、発病患児とは無関係な市販蜂蜜241 検体のうち18検体にボツリヌス菌を検出したとする報告もされている。

厚生省の昭和61年(1986年)度における検討結果では、巣箱から直接採集した蜂蜜、市販(国産、輸入)・原材料(国産、輸入)蜂蜜512 検体のうち27検体(5.3%)からボツリヌス菌が検出されている。発病患児が摂取していた蜂蜜からの分離菌毒素型は、患児の糞便中の毒素型と常に一致する。蜂蜜がボツリヌス菌芽胞の媒介物である事に異論はないものと思われる。

米国では1978年から公的機関(Centers forDiseaseControl、FDA、カリフォルニア州)、小児科学会及び蜂蜜製造業者は「1 歳以下の乳児には蜂蜜を与えないよう勧告」している。

本邦でも厚生省食品衛生局が乳児ボツリヌス症対策委員会を作り、中間報告として1987年10月に同様の勧告をしている。

約94% の症例は生後2 週間から6 カ月の乳児で、平均は12.7週(89日)。報告された症例の中で最高年齢は11カ月、最低年例は11日である。症例の大部分は母乳栄養(混合栄養を含めて)であるが、ボツリヌス菌感染によるSIDSの全症例は、人工栄養である。

母乳中の免疫機構が腸内ボツリヌス菌の増殖を抑制し、劇症型の発症を防止するのではないかと推測されている。性別の発生頻度に特に差異はなく、人種的には圧倒的に白人が多いが、その理由は現在迄、明確にされていない。

ヒトは常にボツリヌス菌の芽胞を食事(特に野菜、果物)経由で摂食しているが、限られた年齢層の生後数週から数ヵ月の乳児にしか発症しない。その原因はまたはっきりしないが、腸内常在菌叢を含め、胃酸、胆汁酸、脂肪酸等の腸内環境がボツリヌス菌芽胞の増殖を抑制しているのではないかと推測されている。

 

厚生省通知(1987.10.20. )

乳児ボツリヌス症の予防対策について

1.保健関係者及び医療関係者に対し、本症に関する知識の普及に努めること。

2.乳児の保育に当たる保護者、乳児を対象とする児童福祉施設等に対し、1 歳未満の乳児に蜂蜜を与えないよう指導すること。

この場合、本症が乳児特有の疾病であり、1 歳以上の者に蜂蜜を与えても本症の発生はないことを十分認識させることとし、いたずらに混乱を招くことのないよう保健関係者及び医療関係者を通じ、適切な指導を行うこと。

3.医療機関から乳児ボツリヌス症が疑われる患者の血清、便等のボツリヌス菌及び毒素の検査依頼あった場合は、出来る限り協力を行うこと。

以上の報告及び通達等から見て、

「1 歳未満の乳児に対しては、蜂蜜の摂食は回避すべき」

であるといえる。

[FD19.615.1HNY][1991.12.4. ・一部修正.古泉秀夫]


  1. 野田弘昌:乳児ボツリヌス症について;メディヤサークル,33(4):125-132(1988)
  2. 国立病院・療養所四国DIセンター・編:ボツリヌストキソイドの入手法;四国DIセンター実例集,1991
  3. 鍋屋孝司・他:愛媛県で確認された乳児ボツリヌス症;感染症,19(1):296-292(1989)
  4. 静岡県薬剤師会・編:蜂蜜と乳児ボツリヌス症が関係あるということだが?;DI実例集,1989,p.62-63
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.229,1991.12.26.より転載