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医薬品情報管理学[9]

水曜日, 8月 15th, 2007

我が国の薬害と行政対応の歴史的経過

[1]はじめに

仕事で『薬』を扱う人間は、『薬害』について学ばなければならない。薬学を学ぶ薬学生は、その教育の一環で、『薬害』につい学ぶべきだとする意見がある。『薬害』の被害者からすれば、至極当然の意見である。

『薬害』について調査してみると、重要な問題として『情報管理』の問題を指摘することができる。そこで『医薬品情報管理学』のための資料として、本稿を纏めることにした。

[2]『薬害』の実際的経験

多くの薬害事件の中で、業務の関係で、実際に遭遇する可能性があったのは『ソリブジン』事件である。国立国際医療センターにおける『薬剤委員会』の事務局は、副薬剤部長が窓口を担当している。

『ソリブジン』が発売されたとき、製薬企業のMRは、御多分に漏れず、購入してくれという窓口攻勢をかけてきた。医薬品としては、確かに重要な役割を担う薬で有り、当然、皮膚科の医師は、絶対に必要であるから購入申請をしたいということになる。

通常であれば、いわゆるゾロ新といわれる薬ではなく、一定評価に堪え得る薬であるため、院内ルールからすれば、申請書類を医師に渡すべきであるが、資料として製薬企業が提出した添付文書を読んでいるとき、使用上の注意の中の1行に、この薬の取扱を困難にする一文があることに気付いたのである。それは相互作用の中の『フルオロウラシル系の薬剤との併用投与を避けること』とする記載である。

一見すると優しげな表記ではあるが、これは明らかに『併用禁忌』であり、この部分の解決策が見つからない限り、簡単に申請書類を渡すわけには行かないと判断した。

フルオロウラシル系に属する薬剤は、抗がん剤であり、100%の癌告知がされていない我が国の現状において、この併用禁忌を完全に遵守することは困難である。そこで「この併用禁忌を完全に実行することが可能な方策を提出しいてただきたい」という依頼を企業側に提案した。また医師との論議の中で、この問題を間違いなく実行するためにはどうすればいいのかの検討をお願いしたい旨申しあげた。

製薬企業側からは、何等回答は得られなかったが、医師からは

  1. 当面、皮膚科の専門医のみが処方する。
  2. 当面、他科・他院受診患者には処方しない。
  3. 他科受診患者で処方の必要がある場合には、主治医に服用薬剤の確認をした上で処方する。

等の考えを提案された。

それでは薬剤委員会での承認事項として、以上の3点を確認するということで、申請書類を医師に手渡したが、医師が書類を記載している間に『ソルブジン』による患者の死亡例が報道され、医師から「残念ながら死亡例がでた以上、最早使用は難しい」ということで書類の提出はされないことになった。

この間、既に発売から数カ月が経過し、幸いにも当院では『薬害』に荷担することなきを得たが、根気のいる医師との調整を嫌がって、無抵抗に書類の作成に取りかかっていれば、あるいは『薬害』の加担者として、寝覚めの悪いことになっていたのかもしれない。

[3]薬害発生の要因

情報を評価する眼があれば、広告からも必要な情報を手に入れることは可能である。しかし、情報は広告にはならない。何故なら情報は薬を売るために役立つものだけではなく、薬の使用量を減少させるあるいは使用が止まるという負の要因に働く場合があり、時には市場価値が0になることも有り得るわけである。

薬害の多くは、既に警告に値する情報がありながら、企業側はその情報の公開を避けていたとしか考えられない対応がされている。

製薬企業は、生命関連物質を取り扱うということから、常に『社会的責任』を認識していなければならないはずであるが、収益性にのみ眼を向け、投下した資本を直ちに回収したいという企業理念を最優先させることが、薬害という社会的現象を生み出したということである。

医薬品は本来単なる化学物質である。疾病に対する治療薬としての効果という人にとっての正の作用と同時に、人の生命に損傷を与えるという負の作用を持っている。この負の作用を制御し、『正の作用』を有利に働かせるために情報が存在する。つまり適正に使用する情報の範囲内で使用している限り、医薬品としての安全性は確保できるということである。

従って、医薬品に関連する情報は、例え『負の作用』に関する情報であれ、公表しなければならないという社会的責任を、製薬企業は持っているということを常に考えておかなければならない。生命関連物質である医薬品の場合、『疑わしきは使用せず』が基本原則である。

[4]Product Liability(製造物責任)法制定以降

1995年7月にPL法が施行され、それ以後、製薬企業は、添付文書の改訂に狂奔している。

PL法施行以前、『光線過敏症』に関する副作用が、添付文書に記載されていなかった事例で、文献による報告例を入手したため、他の文献等を含めて臨床現場からの生情報の収集状況を企業側に確認したところ、『現在までに9例報告されている』とする回答が得られた。

そこで何故添付文書に反映しないのかの確認をしたところ『少数例を公開すると医療現場に混乱を招くため、当社としては10例を超えた段階で添付文書に反映することになっている』の見解を示された。

しかし、この見解はPL法施行後脆くも崩れ去り、とりあえず何でも添付文書に記載しておけば、責任は逃れられるという対応に変わってしまった。些細な情報あるいは因果関係が明確ではない副作用であれ、兎に角、添付文書に収載しておけば責任が逃れられるという考え方は、ある意味で全ての責任は医療機関側にありとする対応であり、真の意味での情報公開にはなり得ていないといわなければならない。

従来、医師は添付文書記載情報を信頼しない傾向が見られるが、これは添付文書情報の曖昧性に起因する不信感によるものである。それにも係わらずPL法施行以降の添付文書改訂が、更に『とりあえず掲載しておけば責任だけは逃れられるという内容の改訂』であれば、添付文書全体の情報としての評価は明らかに低下する。添付文書に記載された内容は、その薬を使用する医師が確実に遵守すべき内容でなければならないはずであり、予備的情報の伝達方法は、他の手段を考えるべきである。

年次推移      薬        害 行政対応・関連対応等
昭和26年
(1951年)
グアノフラシン(消毒剤)点眼薬による睫毛・眼瞼皮膚の軽微な白変報告。第二次世界大戦後本邦初の薬害。 製品の製造中止・回収指示*7月:抗生物質使用基準設定
昭和30年
(1955年)
SMON:日本各地で多発、特定地域に集中する新たな症状報告-ウイルス感染の疑いと報道。
*1955年(レゾヒン;吉富製薬-武田薬品)クロロキンの発売開始。適応症として『マラリア、慢性関節リウマチ様関節炎、亜急性・慢性エリテマトーデス、腎炎』。大量販売の道筋。
*3月:第2改正国民医薬品集公布
昭和31年
(1956年)
1956年5月15日東大法学部教授が、歯科治療における抜歯後の化膿止の目的でペニシリンを注射。その直後に胸苦しさを訴え、そのまま意識不明。救急手当を受けたが、死亡する事故が発生した。ペニシリンショック死事件。被害者の社会的地位によるマスコミの大々的報道。薬害の社会的認知。1953年?1957年に1,276名がショック発現、124名が死亡。 医務・薬務局長通知『皮内反応の実施』通達。
(1)過去の副作用・アレルギー疾患の既往歴の有無の問診。
(2)当該薬剤の使用回避・他の治療法の選択。
昭和32年
(1957年)
クロロキンによる眼障害は1948年から報告されはじめ、1957年に角膜症の報告。  
昭和33年(1958年)   *12月:国民健康保険法公布
昭和34年
(1959年)
1959年Hobbsらクロロキンによる網膜症の発現例報告。 5月:抗生物質などの予防内服禁止を指示。
昭和36年
(1961年)
サリドマイド剤は1957年10月1日ヨーロッパ諸国で『Contergan8』として発売。1961年11月27日発売停止。日本では1958年1月『イソミン8』として発売。
更に最初睡眠薬として市販。後に神経性胃炎の薬『プロバンM8』として発売。特に『妊婦にも安全』との宣伝がされたため妊娠悪阻(つわり)に使われ胎児障害が増加。西独・幼児用睡眠薬『シネマ・ジュース』として発売、妊婦の服用が増え、被害の増大が見られた。
サリドマイド剤による奇形児発現の事実を最初に公表・警告(1961年11月8日)したのは西独・小児科医のレンツ博士で、その警告後世界の大部分の国では販売が中止された。但し、日本では警告発表後9カ月間販売継続。
米国では未発売(臨床治験段階で10人発生の報告)。
*クロロキン製剤であるキドラ(小野薬品)が『腎炎』を有効として販売開始。
*米国FDAはキノホルムの適応症の範囲について大幅に規制
*4月:国民皆保険制度発足
*医薬品適正広告基準制定*睡眠薬販売規制措置通達
*4月:医薬品適正広告基準制定
昭和37年
(1962年)
日本ではサリドマイドにハンセン病患者の『神経癩』に鎮痛効果があるため、販売禁止措置がとられなかったとされる。
サリドマイドの服用による直接作用として『多発性神経炎、中枢神経刺激症状等神経系障害及び重症の四肢欠損症(無肢症、海豹肢症、奇肢症、母指三指節症)や耳障害(難聴、無耳症、小耳症)等を生じ『サリドマイド胎芽病』と呼ばれた。患者数は西独3049名・日本309名・英国201名・カナダ115名・スウェーデン107名・ブラジル99名・伊太利亜86名。全世界で3,900例と報告。30%の死産があったとされるため総数5,800名と推定されている。サリドマイドは新生の毛細血管の形成を抑制するので、発育中の胎児の四肢の血管造成を抑制、手足が形成されない。
*中野彊らクロロキンによる網膜症発現報告。視力障害に関する外国論文の数27編。
*2月:制限診療の撤廃。
*5月:サリドマイド剤製造・販売中止の勧告
9月18日:『イソミン8』販売停止(全面回収)。
*12月:アンプルかぜ薬乱売規制。「WHO総会で国際モニター制度設置の決議」
昭和38年
(1963年)
*3月:鳥居薬品によりコラルジルの製
造・販売開始。
*1963年4月に『腎炎治療目的で市内の病院に入院。クロロキン製剤キドラ(小野薬品)1日3錠・分3を5年間にわたって服用』(K氏の実例)
*3月:中央薬事審議会下部機構として『医薬品安全特別対策部会』設置
*4月:「医薬品の胎児に及ぼす影響に関する動物試験法」制定→1975年改定。
*5月:サリドマイド研究班発足。
*国際モニター制度実施。
昭和39年
(1964年)
新潟大学教授・椿忠雄氏が病名を「スモン」と命名[subacute myelo-optico-neuropathy;SMON;亜急性脊髄・視神経障害]。
米国の売血等で集められた血液を原料とする血液製剤『フィブリノゲン(ミドリ十字)』を製造承認取得(出産時の異常出血-止血剤)
*4月:WHOより医薬品副作用報告について通知。
*6月:催眠剤劇薬指定
*6月ヘルシンキにおける第18回世界医師会総会で『ヘルシンキ宣言』採択。
*8月:医薬品等の適正広告基準全面改正。
昭和40年
(1965年)
1959年以降1965年までの間に合計38人が死亡。[アンプル入りかぜ薬によるショック死事件(大衆薬)]。
*2月16日千葉県下でアンプル入り風邪薬服用の老人と15歳の少女が死亡報道(朝日新聞)。
2月17日静岡県の伊東で39歳の女性死亡。*2月18日静岡県の伊東で28歳の女性死亡。
*2月20日千葉県八千代市で22歳の女性死亡。新聞報道されただけでも、3月4日迄に11名の死亡報道。
*3月1日杏林製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月2日田辺製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月4日大正製薬の製品服用者が死亡。製品回収の不備による死亡事故。
*アンプル剤という剤形の問題?他の剤形に比較して吸収が速く、毒性の発現が著しく強いことが国立衛生試験所での動物試験の結果から判明したとする事故原因を中央薬事審議会答申に記載。主成分であるアミノピリン・スルピリンの含有量が、1回の常用量を超える製品が市販されていた。
1965年3月興和株式会社の社員が同社で実施した抗ウイルス剤キセナラミンの臨床試験は人権侵害であるとして東京法務局人権擁護部に申し立て。1963年10月社員を対象に104名に実薬、103名にプラセボを服用させた。その結果2週間の服用期間の前半から頭重感・頭痛・食欲不振・全身倦怠感・肩こり等を訴え、後半には3名が発熱のため欠勤、2名が胃痛等のため入院。キセナラミン服用患者のうち76名(73%)が服用終了直後までに、前記の他便秘・腹痛・下痢・嘔気・眩暈・発疹・黄疸・咽頭痛・生理異常の症状を訴え、服用終了後の約2週間後までに17名が入院、うち1名が死亡。本薬は既に先行開発会社で「毒性が強い」等の理由で開発断念した薬。
1965年3月リウマチ治療のためクロロキンを服用していた厚生省薬務局製薬課長は「重篤な眼障害の副作用がある」ことを伝えられ、個人的に服用中止。*血液学者の間で「泡沫細胞症候群」とする珍しい病気が話題→コラルジル。
*『新医薬品についての催奇形性試験実施』
*2月19日厚生省はアンプル風邪薬製造元の大正製薬に「広告の自粛、製品の再試験指示」
*2月20日:厚生省は大正・エスエス製薬に自主的措置要請。両社販売停止を決定
*3月1日:厚生省は製品回収等について業界に要請。
*3月9日:日本製薬団体連合会「回収等に伴う経済的損失の救済や税制上の配慮等を求める要望書提出」。
*4月20日:中央薬事審議会医薬品安全対策特別部会アンプル入りかぜ薬調査会『アンプル入りかぜ薬の製造使用については否定的結論に達している』旨の予告。*5月11日:中央薬事審議会の答申に基づき、アンプルかぜ薬については廃止届(6月末まで)若しくは製造取り消しの告示。
*5月:かぜ薬の製造承認等について通知。
*アンプル剤以外のかぜ薬に対する『新配伍基準』の提示。
*11月8日:『アンプル入り解熱鎮痛剤』について廃止通知(1966年3月末まで注意書きを附して販売継続)。
*11月:医薬品の使用上の注意記載要領具体化
*[配合薬調査会設立]
昭和41年
(1966年)
甲状腺ホルモン剤含有やせ薬で精神異常(OTC薬)
→*クロロキン服用患者K氏『夜盲症・視野狭窄・暗点(視野が暗くなって見えなくなる)』発現
*甲状腺ホルモン剤以後配合禁止。
*8月:国民生活審議会答申に基づき医薬品の毒性・副作用に対する行政措置。*『安全対策特別部会』下部機構として『副作用調査会発足』
昭和42年
(1967年)
*クロロキンによる視力障害。 *クロロキン劇薬・要指示薬指定*3月:『副作用モニター制度発足』
*10月『医薬品の製造承認等に関する基本指針について』通知(医療用医薬品・一般用医薬品に区分して規制する方針)
昭和43年
(1968年)
→*1968年1月九州大学眼科入院-K氏クロロキン網膜症の診断。*クロロキン網膜症は、メラニン色素に高い親和性を持つクロロキンが、メラニン色素を持つ網膜上皮細胞に蓄積した結果発現。視力低下、視野狭窄、暗点等。*ビー・ブラウン社がヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」の販売開始。 *各薬効群毎に使用上の注意事項の整備
昭和44年
(1969年)
*キノホルム(適応:アメーバ赤痢)によるスモン(SMON)報告。昭和38年頃(1963年)から昭和45年頃までの間に多発。下痢、腹痛等の不定の腹部症状に対しキノホルムを大量長期使用により亜急性脊髄視神経障害が発現。疑いも含め11,127名の報告。
*経口投与されたキノホルムはかなりの量が腸管から吸収(動物実験:20-30%)され、末梢神経・中枢神経系に取り込まれる。界面活性剤CMCの配合で吸収は促進される。*1900年瑞西・バーゼル社により『創傷防腐剤』として発売。1935年アルゼンチンの医師バロスはキノホルムの投与後『重篤な神経障害』が生じたことを報告。1907年以降スイスで劇薬指定。我が国でも1936年(昭和11年)劇薬指定、1939年普通薬に指定変更。1939年チバ社が国内で実施した”ヴィオフォルム”の臨床治験で『知覚・運動障害等の神経障害』の発現例が服用患者のカルテに記載。
*肝臓病の分野で「リン脂質脂肪肝」とする新たな病名が報告→コラルジル。
*3月:中央薬事審議会-医薬品製造承認審査事務の改善についての諸処置実施。
9月スモン調査研究協議会(会長・甲野禮作国立予防衛生研究所ウイルス検査部長)発足。
*9月:中央薬事審議会-医薬特別部会設置-かぜ薬の承認基準を審議。
*12月:厚生省は『本剤の連用により角膜障害、網膜障害等の眼障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常があらわれた場合には投与を中止すること』とするクロロキン添付文書の使用上の注意改
訂指示
昭和45年
(1970年)
3月:スモンの神経症状が再現又は再燃する際、しばしば見られる緑色毛状の舌苔、緑色便の原因物質の検討開始。
*6月30日:看護婦が患者尿として提出した緑色尿から整腸剤キノホルムの鉄キレートを証明、緑色の発色実験結果とともにスモン調査研究協議会に報告。
*8月6日:新潟大学椿忠雄教授が『キノホルムはスモンの発症あるいは病状の悪化に関係』の警告。*キノホルムの血中濃度は投与量の相違に係わらず同一レベルを示し、中毒発現には投与量より血中濃度レベルが重要であることを証明。1971年『販売停止』以降殆ど発生せず。
*11月:『リン脂質細胞肝』の原因はコラルジル中毒に疑いが強いという事実を日本消化器学会関東甲信越地方会に報告。動物実験の結果、コラルジルによる副作用に起因する同一疾患であると確認。導入時安全性試験未実施。臨床医肝障害の指摘→1965年動物実験を実施。副作用を確認。隠蔽しその後5年間販売継続。
*コラルジル(4,4′-diethylamino-ethoxyhexesterol)。合成女性ホルモンの一種スチルベステロールの誘導体。
*2月:厚生省医療用医薬品等適正化推進本部設置。
*4月:『薬効問題懇談会再評価特別部会発足』。
*4月:医療用医薬品の添付文書記載要領行政指導?記載上の留意事項[薬務局監視指導課長通知]
*6月医薬品広告の自粛要請。*7月30日:厚生省予防接種による副作用に対する臨時救済措置の大綱提出。予防接種により18年間に201名の死亡事故があったことを公表。
*8月:かぜ薬承認基準制定。
*9月7日中央薬事審議会(会長・石館守三)はキノホルム及び類似薬(186種類)の販売中止と使用中止を答申。9月8日厚生省による行政措置
*11月:コラルジル販売中止
*11月:予防接種事故審査委員会発足。
昭和46年(1971年) 冠拡張剤『コラルジル』による肝障害→長期にわたり服用することにより肝臓・血液等の全身細胞に異常なリン脂質やコラルジルそのものが蓄積し細胞を破壊する。本薬の場合、動物実験の結果とヒトでの結果が異なることが証明された。
→*1971年10月14日「腎炎等の特効薬クロロキン剤で中毒-救済を訴える直訴状を厚生大臣」にの新聞報道(朝日新聞)。
*6月:新医薬品の副作用報告義務期間を2年から3年間に延長。
『副作用情報配布』
*10月:中央薬事審議会下部機構として『医薬品再評価特別部会』発足。*12月:『医薬品再評価』実施につき通知。1967年9月以前承認薬剤の全て?第1次再評価。
昭和47年
(1972年)
1972年3月『スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を惹起したもの』とするスモン調査研究協議会結論。 *1月:医薬品の使用上の注意を厳重実施方注意。
*4月:WHO国際副作用モニター制に加盟。*4月:副作用モニター制強化(243施設)
*10月:GMP設定のための研究班編成。
*10月:日本学術会議-医薬品の臨床試験評価システムの充実を勧告。
昭和48年3月
(1973年)
*幼児集団奇病・山梨で23人が歩行困難-原因-カゼの注射?(1973年10月5日・朝日新聞夕刊)。*7月:厚生省「ライオデュラ」の輸入承認 *6月:厚生省-医薬品副作用の被害者救済制度研究会発足。
昭和49年
(1974年)
大腿四頭筋短縮症が社会問題化。
*経口血糖降下剤スルファニルウレア剤で低血糖になり約350名が死亡、100名が人格喪失。*米・UGDP心臓血管死多発(プラセボの2.6倍)を確認。FDA限定使用を勧告。UGDP(University Group Diabetes Program)
*1974年クロロキン製剤製造中止
*7月:医療情報システム開発センター設置。
*7月:大腿四頭筋拘縮症に関する研究班発足。
*7月:日薬連注射剤のpH、浸透圧を添付文書に自主的記載決定。
*9月:GMP(医薬品の製造及び品質に関する基準)を通達。
昭和50年
(1975年)
*クロラムフェニコールによる再生不良貧血訴訟 *1月:三種混合ワクチン一時接種中止。
*4月:『厚生省医薬品情報』伝達。
*8月:日本糖尿病学会員191名の連署による要望書や中国糖尿病談話会の提起等により厚生省は血糖降下剤を劇薬指定、使用上の注意を大幅に改訂。*10月第29回世界医師会東京大会においてヘルシンキ宣言修正。
*1975年日本小児科学会に筋拘縮症委員会(巷野悟郎委員長)設置。
*注射薬再検討
*『医薬品の生殖に及ぼす影響に関する動物実験法』改定。
昭和51年
(1976年)
*小児科学会で、鰍沢・増穂等富士川流域の大腿四頭筋短縮症児の検診の結果、患者総数は290人(うち大腿四頭筋短縮症は238人)
(1)少なくとも270人はA病院で筋肉注射を受けたため発症したと考えられる。
(2) 筋注時の診断のの半数以上が『かぜ症候群』であり、殆どが筋注を必要としない疾病であった。
(3)注射液の大部分は解熱剤のメチロンと抗生物質のクロマイゾルで、注射液の使用は本症が社会問題化した1974年から激減している。
*大腿四頭筋に限らず、肩三角筋、澱筋等にも障害の及んでいる症例があり、更に単に筋肉が伸縮性を失い短くなった状態を示す『筋短縮症』より、筋が短くなった結果、関節が稼働性を失い機能障害を生じた状態を示す『筋拘縮症』の病名が用いられるようになった。
*2月19日:日本小児科学会筋拘縮症委員会注射に関する提言発表。(1)注射は親の要求で行うものではないこと(注射は医師の医学的判断により実施)。
(2)経口投与で十分ならば注射すべきでないこと(注射が優れているという誤謬)
(3)いわゆる”かぜ症候群”に対して注射は極力避ける(かぜ症候群の多くはウイルス感染症であり本質的治療法はない)。
(4)抗生剤と他剤の混注は行わないこと(抗生剤の筋注、殊に他剤との混注は筋拘縮症発生の危険大)。
(5)大量皮下注は避けること(大量の皮下注射が輸液療法として安易に行われる)。
*4月:厚生省ヤコブ病を含む遅発性ウイルス感染の難病研究班設置。
*4月:GMP実施
*6月:医薬品の副作用による被害者の救済制度による研究会報告。*6月:予防接種法改正-種痘の強制接種廃止。
*7月1日:日本小児科学会筋拘縮症委員会『注射薬に関する提言II』発表。
*10月:新医薬品の製造(輸入)承認申請に際し動物試験に関する取扱について通知(海外資料の利用)。
*『医療用医薬品の使用上の注意記載要領について』[薬務局長通知]
*上記を受け『医療用医薬品添付文書の記載方式(自主設定)』[日本製薬団体連合会]
*クロロキンの日本薬局方収載削除
昭和52年9月(1977年) 非加熱血液製剤の販売開始(ミドリ十字)
*12月米国のガイジュセク博士が「ヤコブ病患者の組織などを移植してはならない」と発表。
米・FDAは12月に『フィブリノゲンの投与によって肝炎に感染する危険性がある』として製造承認取り消し。
*かぜ薬配伍基準改訂。
*2月:予防接種事故救済制度。*5月:ピリン系薬剤をかぜ薬・解熱鎮痛剤から「副作用の点から一般用(大衆薬)として好ましくない」として1年の経過措置の上、非ピリン系に変更するよう指導。
*10月:「発ガン性がある」として全ての内服薬からピリン系薬剤を除くことを決定。
昭和53年
(1978年)
*ヤコブ病の病原体が輸入承認条件のガンマ線照射で滅菌されないことが判明。 *5月:WHO必須医薬品選定。
昭和54年(1979年) 9月国立予防衛生研究所血液製剤部長はその著書で「FDAによる製造承認取り消しの事実を報告、フィブリノゲンの危険性指摘」 *薬事法改正:『再審査制度』導入。
*医薬関係者に対して医薬品の有効性・安全性等に関する情報提供に努めるべきことが企業に義務付けられた。
*9月:薬事法一部改正-医薬品副作用被害救済基金法成立。
*10月:WHO「天然痘根絶宣言」。
昭和55年
(1980年)
  *3月:抗生物質認可基準全面改訂。
*医薬品副作用被害救済基金法(1987年改正現在は『医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法』)制定・発足。
昭和56年(1981年)   *1981年6月米国立防疫センターが初のAIDS症例報告
昭和57年
(1982年)
*1982年7月米国で非加熱製剤による血友病患者へのAIDS(acguired immune deficiency syndrome)感染の可能性報告*1982年12月ミドリ十字米国子会社の元役員が米国のAIDS情報を報告 *1982年12月2日日本小児科学会筋拘縮症委員会
『筋拘縮症に関する報告書』提出。
昭和58年
(1983年)
*5月須山忠和被告(ミドリ十字副社長)が感染経路に血液製剤の可能性を示唆する報告書を作成。
*6月2日:トラベノール社は厚生省に対し「供血者の一人がエイズの兆候を示したので、製剤の回収をしたい」旨の報告。厚生省は何等対応せず。*7月日本の血友病患者ではじめてエイズによる死亡(認定は1985年5月)。
*7月ミドリ十字が業務連絡文書で、非加熱製剤による感染の可能性示唆
*7月5日安部英・前副学長が主治医を努めた帝京大の男性患者が死亡(帝京大症例)
*8月:カッター社は社内に「エイズシナリオ」のプロジェクトを作り、エイズの将来の発生予測。最悪の場合1988年までにエイズ患者が8万人発生、内約2,000人が血友病患者。
*8月:カッター社は広報誌エコー日本語版で「エイズが非加熱製剤によって感染されるということを示す証拠はどこにもない。出血者に対しては従来通り血液製剤を輸注」の記載
*5月:『医療用医薬品添付文書の記載要領の改訂について』[薬務局長通知]→昭和61年4月迄に改定:薬効薬理・体内動態・臨床適用・非臨床試験
*薬事法の一部改正-第54条(記載禁止事項)の改正
*厚生省『新薬の臨床試験の実施に関する専門家会議(熊谷洋座長)』設置。臨床試験の公的規制の検討開始。*1983年6月13日厚生省『エイズ研究班』発足(班長:安部英被告・帝京大学教授・副学長)初会合開催。
*7月18日第2回エイズ研究班会合。帝京大症例のエイズ認定見送り。血液製剤についても『格別の措置(輸入禁止等)を取る必要なし』の結論。
*7月21日厚生省生物製剤課が日本赤十字社との打合せで『血液製剤の原料として新鮮凍結血漿(FFP)を提供して欲しい』と提案。
*1983年10月ベニスにおける第35回世界医師会においてヘルシンキ宣言修正。
昭和59年
(1984年)
*9月国内の血友病患者の血液48検体中23体のエイズ感染感染が判明。 *3月エイズ研究班が『非加熱製剤の輸入継続』を決定。
*「長期投与医薬品に関する情報」追加。 添付文書の記載項目21項目となる(業界申し合わせ事項)
昭和60年
(1985年)
*3月ミドリ十字が『エイズ検討会』開催。*6月ミドリ十字が非加熱製剤は安全な国内原料のみとPRするよう、社員に虚偽宣伝を指示。
*ヒト由来の成長ホルモン剤でのヤコブ病感染が報告。
*『新薬の臨床試験の実施に関する専門家会議(熊谷洋座長)』報告提出。
*5月厚生省3人の血友病患者をエイズ認定。
*12月厚生省が加熱製剤(第IX因子)を承認
昭和61年
(1986年)
*1月ミドリ十字が加熱製剤の販売開始。非加熱製剤を継続出荷。
*4月関西の総合病院で、肝臓病の男性患者が非加熱製剤3本を投与される。
 
昭和62年
(1987年)
*2月:米国疾病対策予防センター(CDC)が硬膜移植後にヤコブ病発症の世界初の症例発表。*5月:カナダ政府は国内医療機関に対し特定ロット番号の硬膜製品の使用回避を警告。独逸ビー・ブラウン社に硬膜の危険性を調べるため資料提出要請。
青森県の産科医院でフィブリノゲンを投与された8人の患者の肝炎感染が発覚し、厚生省から実態調査の指示を受けたミドリ十字は自主回収に乗り出すまで製品の販売を継続。
*医薬品副作用被害者救済基金法→『医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法』に改正。
*4月:米国食品医薬品局(FDA)が同年製造された硬膜の廃棄を医療機関に勧告。
*6月:ライオデュラの輸入警告
昭和63年(1988年) *2月:厚生省研究班「ヤコブ病の感染ルートとしてヒト成長ホルモンや角膜移植と共に、脳保存硬膜の使用」を新たに付け加えて報告。 *1979年5月:薬事法一部改正に伴う再審査制度と連動。定期的(5年毎)審査委評価を実施+随時再評価(臨時再評価)。
*「医療用医薬品添付文書の記載要領」改正→医療用医薬品添加物の記載
平成元年
(1989年)
*5月大阪HIV(エイズウイルス)訴訟
第一次提訴。
*「医療用医薬品の承認番号等の記載」(薬務局長通知)→添付文書の記載項目22項目となる。
*1989年『医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice;GCP)』制定
*1989年9月香港・九龍の第41回世界医師会においてヘルシンキ宣言修正。
平成 2年
(1990年)
*3月発行の『臨床医薬』で臨床治験段階でソリブジン服用中患者の死亡1例報告。
*「医療用医薬品添付文書の記載要領」改正→「向精神薬」の追加。
*『医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice;GCP)』実施。
平成3年
(1991年)
*英国・ノルウェーでライオデュラの認可取り消し。  
平成4年
(1992年)
  *血友病に用いる製剤については、原則国内献血血液を原料として製剤することが決定。*『高齢者への投与に関する医療用医薬品の使用上の注意について』*[厚生省薬務局審査課長・新医薬品課長・安全課長]( 平成4年4月1日)
平成5年
(1993年)
*9月28日:ソリブジンによる死亡1例、厚生省から「使用上の注意」の改訂指示。しかし、日本商事が実際に文書を配布したのは10月12日から。当初添付文書の相互作用の記載は「併用投与を避けること」の記載。
*10月12日:日本商事「抗ウイルス剤ユースビル(ソリブジン)とフルオロウラシル系薬剤との併用による重篤な血液障害について」と題する『緊急安全性情報』配布。併用により『白血球減少、血小板減少等の重篤な血液障害等を発現した症例が7例報告されており、うち3例は死亡に至っている』。
(1)併用は絶対にしないこと。(2)患者への問診を厳重に行うこと。(4)併用薬の確認のできない患者には投与をしないこと。添付文書の使用上の注意に『警告』追記。*11月24日:厚生省中央薬事審議会副作用調査会「21人が副作用被害を受け、うち14人が死亡」を報告。
*12月4日:因果関係不明の死亡例がソリブジンによる死亡と確認、計16名の死亡。
*ユースビルの出荷停止と回収。
*動物実験で抗がん剤との相互作用確認、治験担当医に連絡せず。治験段階で3名死亡。
薬害エイズ訴訟原告弁護団が、東京地裁に提出した準備書面で、1977年にFDAは『C型肝炎ウイルスに感染した薬害肝炎問題で、血液製剤「フィブリノゲン」の製造承認を取り消していたことを国側に伝達』
*4月:新医薬品等の再審査の申請のための市販後調査の実施に関する基準(GPMSP)の実施。
*11月24日:『医療用医薬品の使用上の注意記載要領の改正等について』[薬務局長通知]*『相互作用』→『副作用』の項の直前に記載。
*相互作用→致死的・極めて重篤な非可逆的副作用が発現→『相互作用』に記載すると同時に『警告』・『一般的注意』・『禁忌』の項に記載。
*医療用医薬品パンフレットの表紙に明記 。*薬事法の一部改正→第54条(記載禁止事項)の改正
平成6年
(1994年)
*9月1日:厚生省は薬事法違反で日本商事を105日の製造業務停止処分。共同開発・販売したエーザイ・ヤマサ醤油に「厳重注意」処分。 *『医薬品の副作用症例報告期限の改正について』
[薬務局安全課長](平成6年1月12日発出-平成6年4月1日実施)。
*15日以内に厚生大臣に報告[副作用であると疑われる死亡例-既存の情報から予測できない場合]*30日以内に厚生大臣に報告[副作用であると疑われる死亡以外-担当医師が重篤と認めたものの場合]
*11月『医療用医薬品の使用上の注意記載要領の運用自主基準』( 業界申し合わせ事項)[日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会](平成6年11月21日)→
より見やすく、分かりやすく、且つ、より具体的に記載。使用上の注意の一斉改訂
*PL(Product Liability;製造物責任)法成立。
平成7年
(1995年)
*12月:男性患者がエイズで死亡。
*5月:厚生省エイズ研究班の班会議においてC型肝炎ウイルスの感染の危険性指摘。非加熱血液製剤は血友病以外の新生児出血症や重症肝障害で使用されており、エイズのみならず血液由来のB型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染は当然予測される。[読売新聞,第44742号,2000.10.31.]
*7月:PL(Product Liability;製造物責任)法施行(客観的な事実である「欠陥」を責任要件としており、従来の価値的な「過失」の有無を問わない]
平成8年
(1996年)
*3月男性患者の遺族が松下廉蔵被告(ミドリ十字社長)を殺人容疑で告訴。大阪、東京HIV訴訟がそれぞれ和解。
*8月大阪地検がミドリ十字を業務上過失致死容疑で強制捜査。東京地検が安部被告を業務上過失致死容疑で逮捕。
*9月大阪地検が松下被告ら歴代3社長を業務上過失容疑で逮捕。*10月東京地検が松村明仁被告(厚生省生物製剤課長)を業務上過失容疑で逮捕。
5月:ライオデュラのドナー特定困難を理由としてビー・ブラウン社自主回収開始。
6月:ビー・ブラウン社ライオデュラの製造中止。
*11月硬膜移植によるヤコブ病発症を理由として谷夫妻が大津地裁に全国初の提訴。
*1月厚生省『薬害エイズ調査班』設置。
*4月:調剤報酬点数改正-薬剤情報提供加算点数化[患者に対し医薬品名・薬効・用法・用量・等]
*5月:厚生省ヤコブ病の緊急全国調査研究班設置。
*6月:ヤコブ病緊急全国調査研究班が硬膜移植後にヤコブ病が多発していると中間報告。
*6月18日:薬事法改正案の提出・成立。新薬審査に医薬品機構の活用。*1996年10月南アフリカ共和国・サマーセツトウエストの第48回世界医師会総会でヘルシンキ宣言修正。
平成9年
(1997年)
*3月:大阪地裁で、松下被告らの初公判。起訴事実を認める。
*3月:WHOがヒト乾燥硬膜の使用禁止を勧告。
*3月27日:厚生省令第28号『医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令』制定。『医薬品の市販後調査の基準に関する省令』改正。
*3月:厚生省がライオデュラ回収の緊急命令。ヤコブ病緊急全国調査研究班が硬膜移植後の発症43例確認の最終報告。*4月:薬局開設者等が医薬品購入者等に医薬品情報(主に大衆薬)を提供するよう努めること[薬事法第77条3]。
*4月『医療用医薬品添付文書の記載要領について』[薬務局長通知](平成9年4月25日)→『医療用医薬品の使用上の注意記載要領について』[薬務局長通知]。『医療用医薬品添付文書の記載要領について』[薬務局安全課長通知]
*関係者が理解し易く・使い易いように・医師が処方する際の思考順序に基づき配列。
*ソリブジン事件・エイズ事件等の薬害及び21世紀の医療問題懇談会答申。
*全面改定。医師の処方計画の流れに沿った、見落としてはならない臨床上の重要事項から順に配列。
*5月:医薬品モニター制度の拡大について→『医薬品等安全性情報報告制度』に改編(平成9年5月15日)。
* 医薬品(大衆薬含む)・医療用具→副作用・感染症・不具合情報[化粧品・医薬部外品追加](1)医薬品副作用モニター制度

(2)医療用具副作用モニター制度
(3)薬局モニター制度
3制度統一化

グレード1(副作用の重篤度分類基準):に該当すると考えられる副作用症例であって使用上の注意として記載のない副作用であると疑われるものは報告

平成10年
(1998年)
*4月ミドリ十字が吉富製薬と合併。
*血友病や肝機能障害の止血治療に使われる非加熱製剤がHIVに汚染され、投与された患者が感染。厚生省の報告によると1998年5月末時点で、投与を受けた1432人が感染し、うち642人が発症、502人が死亡した[読売新聞,第44800号,2000.12.28.]
 
平成12年
(2000年)
*2月24日ミドリ十字歴代三社長大阪地裁実刑判決が出された(禁固2年-1年4カ月)。薬害エイズは『産・官・医』の過失が複合した結果、多数の被害者を生んだ。
今回の判決は、非加熱製剤がエイズウイルスに汚染されているとの危険を認識することは、加熱製剤が販売された1986年1月時点で可能だったとしている。歴代三社長は「厚生省はエイズについて先行して知見を入手し評価し得た。厚生省の指示なく製剤の回収や販売中止は困難」と主張した。これに対し判決は「厚生省の情報を待つまでもなく、ミドリ十字側が危険性を認識できた。安全性確保の最終的責任は製薬会社にある」と厳しく指摘、実刑を選択した。更に厚生省の係官に過失があったとすれば、それはミドリ十字の過失と『競合する』と判決の中で説明している。一方の責任が重いからといって、もう一方の責任が軽減されるわけではない。過失を犯したそれぞれが責任を負うべきだ[読売新聞,第44492号,2000.2.24.]
*8月脳外科手術などの際「ヒト乾燥硬膜」の移植を受けた患者に難病のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の発症が多発した問題で、厚生省は2000年8月11日、同省の対応に問題がなかったかどうかを調べる「予備的調査」に応える報告書を衆院に提出した。報告書では同省研究班が1988年2月の段階で、硬膜からの感染の可能性を指摘した資料が省内から発見されたとして、その内容等を公表した。しかし、同省は「当時は、硬膜の使用禁止措置などを行う状況になかった。」とする見解も表明。硬膜移植後のCJD発症患者は72人が確認されている。日本では患者の多さが目立つため同省の対応を検証する予備的調査を野党議員が要請。同省が2000年4月から内部調査を進めていた。1988年2月の報告書にはCJDの感染経路の一つとして「保存脳硬膜の使用、脳外科手術後などに発病した症例が報告されている」との記述があった。ヒト乾燥硬膜を移植された患者がCJDに感染したケースは米国で1987年2月に報告されており、翌年に日本でも硬膜の危険性が指摘されていたことになる。しかし、厚生省は「当時の情報収集体制は十分でなかった。当時は硬膜が大量に使用されているのを知らなかった」等と対応のまずさを認めたものの「感染メカニズムが不明で、1例だけの症例報告では使用禁止等の措置を講ずる状況ではなかった。各国もそう言う対応はとらなかった」と当時の対応を弁護した。しかし、米国ではCJDの1例目が解った段階
で廃棄勧告。[読売新聞,2000.8.12.]
*1980年代前半に新生児治療で投与された輸入非加熱製剤により、静岡県内の総合病院で8人がC型肝炎ウイルスに感染していたことが2000年10月29日明らかになった。当時の輸入非加熱製剤の殆どに肝炎ウイルスが混入していたと見られ、病院側は同時期に製剤を投与した患者約40人に肝炎検査を呼びかける文書を送付した。本来、血友病の治療薬である血液製剤は、新生児治療や交通事故の治療などで止血剤としても幅広く使われ、厚生省の調べでは少なくとも2,600人余りの血友病以外の患者に投与されたことが判明。専門医は「早急に全国調査を実施すべき」と国の対応を強く求めている。8人の感染が確認されたのは、この病院で新生児の時に腹部手術を受け、非加熱製剤を投与された男子大学生(20)が今春、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明したことがきっかけだった。非加熱製剤が原因と判断した同病院は、80年代前半に血友病以外の治療で非加熱製剤を投与した患者のカルテなどを調べ、約50人をリストアップ。このうち7人が既に肝炎の治療を受けていることが分かった。いずれも新生児の時に同じ製剤が使われていた。
当時の輸入非加熱製剤は、1000人以上の血液をプールして作っていたため、ウイルス混入の危険が高く、血友病患者の4割がエイズウイルスに、9割がC型肝炎ウイルスに感染した。
非加熱製剤が血友病以外の治療に使われ、エイズウイルスに感染したケースは「第4ルート」問題として注目され、96年に厚生省が全国の病院を通じて投与患者約2,600人を割り出し、連絡の取れた約400人にエイズ検査を実施した。しかし、より感染の危険性の高かった肝炎については、厚生省は追跡調査をしていない[読売新聞,第44741号,2000.10.30.]
*4月:衆院調査局がヒト乾燥硬膜移植後のヤコブ病発症に関連して厚生省の予備的調査決定。
*8月:予備的調査を受け、厚生省報告書を提出。
*2000年12月27日厚生省令第151号『医薬品の市販後調査の基準に関する省令の一部を改正する省令』を公布。新医薬品の特性に応じ、注意深い使用を促し、重篤な副作用、感染症が発生した場合の情報収集体制を強化するために医薬品のGPMSPを改正し『市販直後調査』を新設した。2001年10月1日施行。
(1)新医薬品を対象とし
(2)販売開始直後の6カ月間において
(3)製造業者等のMRが医師等を定期的に訪問するなどにより、注意深い使用を促すと共に、新薬に関する重篤な副作用、感染症情報を迅速かつ可能な限り網羅的に把握、必要な安全対策を講じる。
今回の改正に伴い再審査も見直す。治験等では十分な情報を収集することが困難な患者群(小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害者又は肝機能障害を有する患者等)に関する適正使用情報の充実を図るため、特別調査及び市販後臨床試験に重点をおいた仕組みへと変更し、これまで3,000例について調査することを原則として運用してきた使用成績調査にについては、一律に症例数を限定せず、医薬品の特性に応じて実施。また、特に情報収集の困難な小児集団について使用成績の情報の集積を図るため、承認申請中又は承認後引き続き、小児の用量設定等のための臨床試験(治験又は市販後臨床試験)を計画する場合にあっては、再審査期間中に行う調査等を勘案し、再審査期間を10年を超えない範囲で一定期間延長されることになった。
併せて『医療用医薬品の市販直後調査等の実施方法に関するガイドラインについて』(医薬安第166号・医薬審査1810号)を通知。ガイドラインは現段階での市販直後調査、使用成績調査、特別調査及び市販後臨床試験の標準的な方法を定めている。平成9年3月27日薬安第34号厚生省薬務局安全課長通知の別添『医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドライン』は廃止される[薬事新報,No.2146:23(2001)]。
*11月30日:非加熱血液製剤によるC型肝炎問題を受けて設置された厚生省の有識者会議(座長・杉村隆国立がんセンター名誉総長)の初会合[読売新聞,第44773号,2000.12.1.]
平成13年
(2001)
*厚生労働省は2001年2月8日、血友病以外の治療でC型肝炎ウイルスに感染するおそれがある非加熱血液製剤を投与したことのある病院名を3月までに公表し、投与の可能性のある人へ検査を促すことを決めた。対象は1980年代前半に輸入非加熱血液製剤と国内非加熱血液製剤を使った約700病院になる見込み。病院から製剤を使った可能性のある人に肝炎検査を呼びかけてもらう方針で、検査料は同省が研究費として負担し、無料にする予定。
本来、血友病患者の治療用だった血液製剤は、止血効果が高いことから、新生児の出血症では普通に使われたほか、婦人科、交通事故、胃癌の手術などに幅広く使われ、同省の調査によると、輸入血液製剤だけでも、少なくとも約3000人に投与されたことが分かっている。2100人余りが既に死亡しており、調査対象者は国内血液製剤を含めて約1000人になると見られている。しかし、製薬会社などから入手した病院リストは不完全で、同省は調査とは別に、血液製剤を使われた可能性のある人達への自主的な肝炎検査を勧める[読売新聞,第44839号,2001.2.6.]
*血友病以外の治療で使われた非加熱血液製剤でC型肝炎ウイルス感染者が相次いで確認されている問題で厚生労働省は2001年2月8日、専門医をメンバーとした研究班を発足させることを決めた。非加熱血液製剤は輸入が圧倒的に多く、輸入の場合、1000人以上の血液を集めて作ることから、高率で肝炎ウイルスが混入。この血液製剤を使った血友病患者は9割以上がC型肝炎ウイルスに感染しているという[読売新聞,第44842号,2001.2.9.]
*2001年2月6日:肝炎対策有識者会議(座長・杉村隆国立がんセンター名誉総長)の提言を受け厚生労働省「非加熱血液製剤に関する病院名公表」を決定。
*2001年2月8日:「非加熱製剤による感染実態調査のための研究班(仮称)」を緊急に発足させることを厚生労働省が決定。検査対象はC型肝炎・B型肝炎とし費用は国が負担[読売新聞,第44842号,2001.2.9.]
平成14年(2002年) *ヤコブ病訴訟和解確認書要旨
[誓約]1.厚生労働大臣及び被告企業らは、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によるヤコブ病感染という悲惨な被害が発生したことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省し、被害者が物心両面にわたり甚大な被害を被り、極めて深刻な状況に至ったことにつき、深く衷心よりおわびする。
2.厚生労働大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害の訴訟の和解で、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、医薬品等の副作用から国民の生命を守るべき重大な責務があることを改めて自覚し、情報公開の推進と収集した情報の積極的な活用に努める。悲惨な被害を再び繰り返すことがないよう最善の努力を重ねることを固く確約する
3.厚生労働大臣は、生物由来の医薬品等によるHIVやヤコブ病の感染被害が多発したことにかんがみ、安全性を確保するため必要な規制を強化し、被害の救済制度を早期に創設できるよう努める。
[その他の対策](1)厚生労働大臣は患者家族に対する精神的ケアを含む相談活動などの援助を行う支援機構が設立された場合は、その活動への支援を検討する。
(2)脳外科手術を受けた者について、当事者の求めに応じ、ヒト乾燥硬膜の移植を受けたか否かの確認が可能となる措置を検討する。
*2002年3月25日薬害ヤコブ病訴訟で、原告の患者・遺族らと被告の国、企業は25日正午過ぎ、東京・霞ヶ関の厚生労働省で、国と企業の「おわび」を盛り込んだ和解確認書に調印した[読売新聞,第45
250号,2002.3.25.]。

[1998.4.14.作成・2000.8.16.改訂・2000.10.15.改訂・2001.2.11.改訂・2002.3.21.改訂・2003.10.11.日改訂]


  1. 古泉秀夫:医薬品情報管理学[3];東京都病院薬剤師会会誌,45(1):15-23(1996)
  2. 曽田長宗・編:薬害;講談社サイエンティフィク,1981.p.467
  3. 木田盈四朗:サリドマイド投薬と被害の現状;日本医事新報,No.3789,1997.12.7.
  4. 田村善蔵:スモン研究備忘録;薬事新報、No.2141:1377(2000)
  5. 田村善蔵:スモン研究余話;薬事新報、No.2142:77(2001)
  6. 読売新聞,第44798号,2000.12.26.]
  7. 高野哲夫:戦後薬害問題の研究;文理閣,1984
  8. 片平洌彦:ノーモア薬害;桐書房,1997
  9. 米で禁止後も10年販売-旧ミドリ十字の血液製剤;読売新聞,第45246号,2002.3.21.
  10. 旧ミドリ十字の血液製剤-薬害エイズ原告団93年に国側へ指摘;読売新聞,第45247号,2002.3.22

医薬品情報管理学[8]

水曜日, 8月 15th, 2007

電網情報の信頼性の担保

[1]電網情報と特許法改正

特許法第29条第1項が改正された。

その内容は、「3.特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」は特許を受けることができないとするものである。

また、インターネット等で開示されている技術情報は、「雑誌や図書等の形で刊行された技術情報と同等の情報を有し、その伝達の迅速性などの利便性を備えており、研究者が自己の研究成果を早期に公表することを目的としてインターネット等を論文発表の場として利用する事例も増えてきていることから、刊行物と同様、技術の進歩、発展に寄与するものであり、既に産業界の技術水準を構成している。従って、例え刊行物に記載されていなくてもインターネット等で開示されてる発明に対しては特許権が付与されるべきものではない」としている。

つまりインターネット等で開示された情報は、頒布された刊行物の記載と同様、『新規性喪失事由』となることを明示したわけであるが、逆にいえば、電網情報を公式に認めたということであろう。

[2]用語の統一性

法律規則を定める場合、そこで使用される用語の解釈について、統一的な対応が必要である。特許法の改正に伴って発出された、『インターネット等の情報の先行技術としての取扱運用指針』において、次の用語の定義付けが示されている。

  1. 回線:一般に往復の通信路で構成された、双方向に通信可能な伝送路を意味する。一方向にしか情報を送信できない放送(双方向からの通信を電送するケーブルテレビは除く)は、回線に含まれない。
  2. 公衆:社会一般の不特定者を示す。
  3. 公衆に利用可能:不特定の者が見得るような状態におかれることを指し、現実に誰かがアクセスしたという事実は必要としない。具体的には、インターネットにおいて、リンクが張られ、検索サーチエンジンに登録され、又はアドレス(URL)が公衆への情報伝達手段(例えば一般に広く知られている新聞、雑誌等)にのっており、かつ公衆からのアクセス制限がなされていない場合には、公衆に利用可能である。

*ホームページ等へのアクセスにパスワードが必要であったり、アクセスが有料である場合でも、その情報がインターネット等にのせられており、その情報の存在及び存在場所を公衆が知ることができ、かつ、不特定の者がアクセス可能であれば、公衆に利用可能な情報であるといえる。

また、この運用指針の中ではと限定しているが

  1. インターネット等:電気通信回線を通じて技術情報を提供するインターネット、商用データベース、メーリングリスト等全てを示す。
  2. ホームページ等:インターネット等において情報をのせるものを示す。
  3. 電子的技術情報:電気通信回線を通じて得られる技術情報。

[3]電網情報を引用する際の条件

  1. 電子的技術情報に掲載日時の表示がない場合、原則的に引用しない。掲載日時については、インターネット等の情報がそのホームページ等にのせられた国又は地域の時間を、日本時間に換算して判断する。
  2. 次のようなホームページに掲載されている情報は、通常、問い合わせ先が明らかであり、当該疑義もきわめて低いと考えられる。

*刊行物等を長年出版している出版社等のホームページ(新聞、雑誌等の電子情報を載せているホームページ:学術雑誌の電子出版物をのせている)。

*学術機関のホームページ(学会、大学等のホームページ:学会、大学等の電子情報(研究論文等をのせている。)

*国際機関のホームページ(標準化機関等の団体のホームページ:標準規格等の情報をのせている。)

*公的機関のホームページ(省庁のホームページ:特に研究所のホームページにおいて、研究活動の内容や研究成果の概要等をのせている)

このようなホームページ等であっても掲載日時の表示がない場合は原則的に引用しないが、掲載された情報に関してその掲載、保全等に権限及び責任を有する者によって、ホームページ等への掲載日時及び内容についての証明が得られれば引用することができる。

[4]電子的技術情報が公衆に利用可能なものの事例

  1. 検索サーチエンジンに登録され検索可能であるもの。情報の存在、存在場所を公衆が知ることが出来る状態のもの。
  2. パスワードを入手することのみで不特定者がアクセス可能なもの。
  3. 有料ホームページ等においては、料金を支払うことのみで不特定者のアクセス可能であるもの。

電子的技術情報が公衆に利用可能とはいえない情報として、アドレスが公開されていないため偶然を除いてはアクセスできないもの、アクセス可能者が特定の団体・企業の構成員等に制限されており、部外秘の扱いとなっているもの。情報の内容が通常解読できない暗号化されているもの及び公衆が情報を見るのに十分なだけの間、公開されていないもの等が上げられている。

[5]引用の手引き

  1. 電子的技術情報と同一内容の刊行物が存在し、該電子的技術情報と該刊行物がどちらも引用可能な場合、刊行物を優先して引用する。
  2. 引用したホームページ等の情報をプリントアウトする。
  3. プリントアウトに、アクセスした日時、アクセスした審査官名、その情報を引用した出願の出願番号及びその情報を取得したアドレス等を記入する。
  4. 電子的技術情報を引用する際の引用文献等として記載要領

1)著者の氏名

2)表題

3)関連個所

4)媒体のタイプ(on-line)

5)掲載年月日(発行年月日)、掲載者(発行者)、掲載場所(発行場所)及び関連する個所が開示されている頁

6)検索日:電子的技術情報が電子媒体から検索された日を括弧内に記載する。

日本語での記載例

○○○○、外3名、新技術の動向[online]、平成10年4月1日、特許学会、[平成11年7月30日検索]、インターネット<URL:http://iij.sinsakijun.com/information/newtech.html>

[6]医薬品情報業務における電脳情報

医薬品情報業務における電脳情報の利用は、特許情報とは異なり、厳密な再現性が必要というわけではない。また、健康食品等の情報を検索した際、再現性を期待したとしても、再検索した場合、検索不能という事例が頻繁に起こり得る。

更に医薬品情報業務における電脳での検索は、初期情報を得る目的での検索が多く、検索結果がそのまま回答として使用できるとは限らない。

[7]情報は自己責任において使用すべきもの

『?情報とは自己の行動決定の規範となるものである?』

情報とは、自己の行動決定のための判断基準となるものであり、本来他人任せにするものではなく、自己責任において評価し、その採否を決定すべきものでる。その意味からすれば電網上で手に入れた情報を信頼するかしないかは、それこそ『貴方の勝手でしょう』ということであり、『信頼する』と判断して、最終的にその判断に裏切られたとしても、それはそれで当人の責任ということである。

[8]情報提供単位の選択基準

世界的規模で見た場合、どの位の情報提供単位(ホームページ)があるのか知りようもないが、ホームページ上に見られる情報は、玉石混淆であり、引用文献としてURLを記載したとしても、参照のため再アクセスしようとした時点で、既に機能を停止しているということも起こり得る。

健康食品等の販売を主体としているサイトの場合であれば、商品が売れなければホームページを運営する意味がないということであり、簡単に『サイト』を閉鎖するということは起こり得る。このような事態を考えると『商品販売のみの目的で開設されているサイト』の情報は、信頼性に欠けるということである。

一方、『個人名とメールアドレスが明記』されており、不足情報や不明な点を質問すると直ちに回答が戻ってくるサイトもある。このようなサイトでは、十分な情報の入手が可能であり、信頼性の高い情報の入手が可能である。しかも、このようなサイトの中には、必要資料を郵送してくれるという徹底したサービスを実施しているサイトもある。

更に専門的な情報を公開しているサイトもあるが、『著者名が記載されており、引用文献が明記』されているサイトに収載された情報は、信頼性が高いといえる。電網の世界だからということで、ホームページを主催する側が、情報を粗雑に扱うということは問題である。インターネットジャーナルとして、信頼される情報提供媒体にするためには、文書媒体と同様に一定のルールに基づいて情報を公開すべきである。

その意味では、学術雑誌等に収載されている原著論文同様、引用文献の明記はサイト管理者の責任であるといえる。

電網上に『有料で情報公開しているサイト』もある。有料である以上、会員登録し、使用料を支払うことが必要であるが、有料であるということは、提供する情報に責任を持つということも、その契約の中に含まれていると考えるのが当然である。つまり情報の正確性を保証するための対価も含まれていると考えていいはずである。一方、有料ではないが『会員制のサイト』もある。会員としての登録を求める以上、登録会員に責任ある情報を提供するのは当然であり、無料だから適当な情報というのでは、わざわざ閉鎖的な会員制を取り入れてまで電網上にサイトを運営する意味はない。

更に現在、多くの『官』が電網上で情報の公開を行っている。もし、『官』の提供する情報が信用できないとすれば、それはある意味で、国民が不幸だということにも繋がることになるので、『官』における都合の悪さがない限り提供される情報は、信頼のおける情報であると考えていいはずである。

従って電網上の情報の信頼性は

  1. 官庁等の公的機関が運営するサイトに公開されている情報
  2. 有料で運営されているサイトに公開されている情報
  3. 無料であるが登録会員制を導入しているサイトに公開されている情報
  4. 一般に公開されているサイトであるが、発表されている情報に、文書情報同様、著者、引用文献等が明記されている情報
  5. 情報提供者のメールアドレス、連絡方法が明記されているサイトに発表されている情報
  6. サイトの管理が徹底していて、収載されている情報のメンテナンスが確実に行われていること

等を総合して判断することが必要である。

[9]個人と専門家の信頼性の相違

文書情報であれ電網情報であれ、入手した情報を評価し、利用するか否かの判断を下すのは、あくまでも最終的には情報使用者である。

しかし、これは個人が個人のための情報を入手し、その情報を参照するか否かを決める場合であって、専門家である薬剤師が、患者に情報を提供する際に、『情報を参照するか否かは患者の判断』等ということはあり得ない。

専門家が特定の個人に提供する情報は、専門家がその患者にとって最も必要にして適切であると判断した情報であり、また十分に信頼性のある情報でなければならない。

その為には常に最新の情報を入手する努力と共に、信頼性の高い情報を手に入れる努力を忘れてはならない。入手した情報の正当性を評価する物差しは、あくまで個人の努力によってしか手に入れることはできない。

努力をし、技術を研くからこそ専門家なのであり、その努力の結果が他人に見えるから評価されるのである。同じ服薬指導をするのでも、懐の深い薬剤師と浅い薬剤師とでは、受け手の側の信頼感は異なってくる。同じ白衣を着ていても、話をしているうちに明らかに差が付くことを忘れてはならない。

提供した情報に基づいて、医師が患者に処置を行った場合、その結果が患者にどう反映したのか。もし誤った情報を提供し、患者に悪い結果を招いた場合、どの様な責任の取り方があるのか等の緊張感のなかで、情報を取り扱う経験を積み重ねることが、情報評価の眼を養うための最大の早道である。臨床現場での切った張ったの経験なしに、情報をどう取り扱ったところで、机上の空論でしかない。

薬剤師が白衣を着るのは患者の前である。病院であれ調剤薬局であれ、患者と向き合うことによって教育され鍛えられていく。医薬品情報は、そのような薬剤師が作り上げ確立すべきものである。専門職能として育てられていく過程で、何度も恥をかく場面に遭遇する。その環境の中から臨床現場で役に立つ薬剤師が育ち、患者が薬剤師の提供する医薬品情報等のサービスに評価を与えるのである。

[2000.10.22.]


  1. インターネット等の情報の先行技術としての取扱運用指針、[online]、2000.12.10、特許庁、[2000.9.25.検索]、インターネット<URL:htpp://www.jpo-miti.go.jp/info/unnyousisinhtm.htm>
  2. 古泉 秀夫:論壇-電網情報の信頼性;薬事新報,No.2131:1117-1118(2000)

医薬品情報管理学[1]

水曜日, 8月 15th, 2007

情報とは何か

情報とは断片的な事柄を蒐集し、評価し、再構築することによって、一つあるいは複数の思考を発展させるための道具である。

又は個々の断片の意味を解析し、集積することによって、自らの意志決定を、あるいは行動の決定をするための判断の材料であるとすることが出来る。

山に降る雨の一粒一粒が、散り積もった腐葉土に染み込み、一定の年限を経て、小さなしたたりとなる。滴りはやがて細流となり、大河へと変貌する。情報とは、その水の流れと同様に、個々に発信された断片が、集積することによって、大河へと変貌する。情報を利用する側は、その膨大な情報の流れの中から情報蒐集のための規則を確立し、自らに役立つ情報を選別し、利用する。しかし、自然の大河が放置すれば、暴走するのと同様に、情報の大河も暴走する。

従って護岸工事をし、ダムを造って流出する水流を調節する。更に、その水を発電に利用する、農業用水に利用する、飲料用水に使用する等、利用目的別に細流化し、奔流を管理しようとする。つまり情報の管理とは、水の管理と同様に、情報の洪水に溺れることを避けるために、如何に歯止めを掛けるかの技術であるとすることが出来る。

従って、医薬品情報の管理を考える場合、その基本となるのはあくまで総合的な情報管理の技術であって、医薬品の情報に限定した固有の管理技術があるわけではない。いってみれば、総合的な情報の集合体であるダムからの放流水の一部を、医薬品に特化して、管理しているに過ぎない。

その意味では、医薬品情報管理学に限定した入門書として特別のものを考えるのではなく、一般的な情報管理学の入門書を読むことを推奨する。

参考までに、情報管理業務を行う際、最初に手にした本は、『梅棹忠夫:知的生産の技術;岩波書店,1969』である。

医薬品とは何か

薬事法第2条に医薬品の定義が記載されている。

(2003年7月30日現在)

  1. 日本薬局方に収められている物
  2. 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされる物であって、器具器械(歯科材料、医療用及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。)
  3. 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、器具器械でないもの(医薬部外品及び化粧品は除く。)

(2005年施行)

  1. 日本薬局方に収められている物
  2. 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
  3. 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品は除く。)

上記は、法律としての医薬品の定義であるが、医薬品情報管理学の立場から見た医薬品は、若干この定義とは異なった視点で見ることが必要である。

医薬品原料として使用されるものとして、鉱物・生物成分・植物成分・魚類を含む海産物成分等の多くの物質と共に、人本来が持っている生物学的機能を利用する方法等も検討されている。

これらの成分を医薬品とすべく、最初に実施されるのが『基礎的研究』である。

従来、我が国で行われてきた漢方治療では、原体そのままを粉末化あるいは浸煎剤等とすることにより医薬品としての利用がされてきたが、現在ではそれらの原体に含まれる成分を単離することによって、より有効な薬物の創製が追求されている。また、構造化学的な分析から新たな化合物が合成され、医薬品としての創製も検討される。

動物実験等を含めた『基礎的研究』の結果を受け、健康人を対象とした『第I相臨床試験』が開始され、人における安全性等の検討が実施される。更にその結果を受けて『第II相前期臨床試験』・『第II相後期臨床試験』が少数の患者群によって実施される。『第II?相臨床試験』では主として安全性・有効性・至適投与量等の確認が行われる。

図2.医薬品情報管理学から見た医薬品

以上の各試験の結果、安全性・有効性の確認がされた段階で本格的に治療薬としての検討をするために『第III相臨床試験」が実施される。

患者を対象として実施される各種の臨床試験は、現在ではGCP(Good Clinical Practice)により規制がされている。これは平成9年3月27日(厚生省令 第28号)『医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令』として法制化された。

臨床試験は『臨床試験成績の信頼性確保』のために『科学的に』、『適正に実施』することが求められており、更に臨床試験結果の信頼性・患者の人権擁護の立場から『Informed consent』(十分に説明された上での患者の自由な意思に基づく同意)を求めるべく、実施する医療機関が遵守すべき事項が厳しく定められている。

医薬品にとって、この各段階は『物』に対する『医薬品』としての情報集積期間であり、各種試験結果の総合的な判定を受けて医薬品としての製造承認がされることになる。

つまり『医薬品』とは、『物』に『付加価値としての情報』が加えられることによって初めて『医薬品』として承認・使用されるもので、薬剤師が医薬品の管理を行うということは、これらの情報を含めて管理するということである。

また、発売された医薬品のうち通常の医薬品については、GPMS(Good Post-Marketing Surveillans)により承認のあった日後原則6年(医療用具は4年)に満たない範囲内において厚生大臣の指定する期間に、市販後調査を実施するよう義務付けられている。また、PMSは『医薬品の市販後調査の基準に関する省令』(平成9年3月10日)として法制化されたが、これらは患者の安全性を確保するための努力義務であり、本質的には医薬品に関する情報の蒐集業務であるということが出来る。

更に平成13年10月1日からは『医療機関において使用される医療用の新薬』について、『市販直後6カ月』の市販後調査が実施されることになっている。

*希少疾病用医薬品及び厚生省令で定める医薬品等では、『その製造の承認のあった日後6年を超え10年を超えない範囲内(医療用具では4年を超え、7年を超えない範囲)』とされている。

以上に述べた観点からしても、薬剤師の業務として『医薬品情報管理業務』があるのは当然であり、従来片手間に行われていた業務が、情報量の増加に伴って、独立・専門化せざるを得なくなったということである。

その意味では全ての医療機関に、『医薬品情報管理室』が設置されるのは当然のことであり、情報管理のために選任の薬剤師が配置されるのは極く当然のことでなのである。

[2001.9.23.作成・2003.5.28.一部改訂]


  1. 古泉秀夫:医薬品情報管理学[1];THPA,44(3):161-163(1995)
  2. 財団法人日本公定書協会・編:薬事衛生六法;薬事薬事日報社,1998
  3. 財団法人日本公定書協会・編:薬事衛生六法;薬事薬事日報社,2003

E型肝炎ウイルス(hepatitis E virus)の不思議

水曜日, 8月 15th, 2007

1955年以来、インド国内数カ所で雨期あるいは洪水後に肝炎の爆発的な流行が繰り返されてきた。この肝炎の疫学的、臨床的特徴は、

  1. 糞便に汚染された飲料水を介する経口感染である。
  2. 既に幼児期にHAV(hepatitis A virus)に感染して抗体陽性の若年成人(15-40歳)に好発する。
  3. 潜伏期が約40日でA型肝炎より長い。
  4. 死亡率が1-2%でA型肝炎の約10倍であり、特に妊婦の死亡率は高く、10-20%に達する。
  5. ペア血清がHAVとHBVのいずれとも反応しない。

等である。

従って、この肝炎は流行性肝炎(epidemic)あるいは便口伝播型(enterically transmitted) 非A非B型肝炎と呼ばれてきた。最近、その伝播様式に因んでeをとり、E型肝炎と呼ばれるようになった。E型肝炎は、A型肝炎と同様に一過性の黄疸を伴う急性肝炎を発症したのち速やかに回復し、慢性化することはない。小児は通常不顕性感染で発症しない。感染後はほぼ終生続く免疫が成立する。

E型肝炎ウイルスhepatitis E virus(HEV)は、肝細胞で増殖して胆汁中に分泌され、糞便とともに排泄される。HEVのvirionは、直径32-34nmの球形であり、 envelopeを持たない。viral genomes(ウイルスゲノム)は7.5kbの一本鎖、プラス鎖のRNAであり、poly Aをもっている。HEVは分類上はカリシウイルス(科)とされている。

HEVは、インドの他、パキスタン、ネパール、ミャンマー、旧ソ連、中国、アフリカ、メキシコなどに広範に常在しており、これらのHEV浸淫地への旅行者の増加と、それらの地域からの労働者の急増により、輸入肝炎として日本へも持ち込まれる危険性が高い

[天児和暢・他編:戸田新細菌学;南山堂,1997]。

■インド、パキスタン、バングラディシュ、ネパール、ミャンマー等の東南アジア諸国をはじめ、アフリカ、中南米等の熱帯・亜熱帯地域の発展途上国に広く分布し、流行を繰り返している。好発年齢は15-40歳の壮年期で、小児や老人には少ない。  我が国にはE型肝炎ウイルスは常在していないが、発展途上国との交流の拡大とともに、輸入感染症として患者が発生することが予測される

[山西弘一・他編:標準微生物学 第8版;医学書院,2002]。

ほぼ我が国の細菌学の教科書では、E型肝炎ウイルスは輸入感染症とされていた。つまりE型肝炎ウイルスは国内には存在せず、専ら生存地は衛生状態の悪い後進国ということになっていた。しかし、北海道でエゾシカの肝臓の刺身を食した人がE型肝炎を発症し、神戸では猪に肝臓の刺身を食した人が発症した。更に北海道では、焼き肉屋で豚の肝臓の生焼けを摂食してE型肝炎を発症した。

北海道の事例については、旧ソ連から輸入されて定着したのではないかとする意見もあったようだが、それでは神戸のウイルスの説明がつかない。更に猪は雑食性であり、人と同じような食性を示すと考えられるため、糞口感染の機会があったことは予測できるが、エゾシカの食性は雑食性ではないはずで、草や木の葉を食していながらどういう経路で感染が起こったのか、若干分かり難いところがある。

しかし今回、従来の教科書を全面的に書き直すことが必要となる事実が新聞報道された。

最近になって存在が確認され、ときおり集団感染を引き起こすE 型肝炎ウイルスは、既に約100年前には国内に侵入し、”土着化”していたことが厚生労働省研究班(主任研究者・三代俊治東芝病院研究部長)の調査研究で解った。富国強兵政策の一環で、軍人の体力をつけるため英国から輸入したブタによって持ち込まれ、肉食文化の普及で全国に拡大したらしい。

E型肝炎ウイルスは遺伝子の特徴から1-4型があることが知られ、時間の経過とともに変化していく。遺伝子の変化を調べることで、ウイルスの歴史、移動、系統関係が解る。同班の溝上雅史・名古屋市大教授らは、国内と世界各地で見つかったE型肝炎ウイルスの遺伝子を比較した。国内のウイルスは大きく分けて3型と4型の二つのグループが混在し、いずれも約100年前に、起源となるウイルスが国内に侵入したことが解った。

国内で主流の3型は、ヨーロッパや米国など、19世紀に英国と交流が盛んだった国々に多い。日本も1900年頃に、軍人の体力強化のために英国からブタを大量に輸入した。ブタのE型肝炎ウイルス保有率は非常に高いことから、研究班はブタがウイルスを持ち込んだ可能性が高いと断定。肉食文化の普及で、ウイルスが土着したと見ている。 E型肝炎ウイルスの感染経路は、ブタやシカ、イノシシなどの肉の生食によるものと解ってきた。

しかし数年前まで日本のE型肝炎の殆どは、インドなど海外で感染したものと考えられていた

[読売新聞,第46722号,2006.4.9.]。

E型肝炎ウイルスが我が国に上陸して100年。既に本邦に土着化していたというが、それなら現在までに報告されたE型肝炎ウイルスの感染者が、何故、輸入感染症の患者であるとされてきたのか。感染者の全てが、海外旅行経験者だったとでもいうのであろうか。いずれにしろ国内に存在しないとされてきた理由がよく解らない。

E型肝炎ウイルスの存在そのものが未確認という時代が続いたということもあるのかもしれないが、長いこと非A非B型肝炎として扱われて来た症例の中に、本来はE型肝炎ウイルス感染者とされなければならない患者がどの程度いたのか。

相手が眼に見えないということ以外に、重症化する患者が少ないということが、E型肝炎ウイルスを深く静かに潜行させた原因なのかも知れない。

しかし昔から「豚肉の生は喰うな」といわれ続けてきたが、最初の感染源は豚だということからすれば、その口伝は正しかったということである。

(2006.4.16.)

Compliance-薬剤師の責任

水曜日, 8月 15th, 2007

大衆薬(市販薬:OTC薬)について、厚生労働省は薬のリスクを3ランクに分けて、店側がきちんと消費者に説明し、買う側にも薬の副作用の度合いなどが分かるように販売ルールを改めるため、2006年1月20日からの通常国会に薬事法の改正案を提出する。1960年以来となる大改革は2008年から実施される予定。

現在の薬事法は、医師の処方せんを基に調剤ができる薬局と、薬店の中でも薬理作用が強い大衆薬(指定医薬品)を扱える薬店(一般販売業)に薬剤師の常駐を義務付けている。国内の薬剤師は24万人。薬剤師が常駐しなければならない薬局・薬店(一般販売業)は6万店余で、数字上は全店に常駐させることができる数ではあるが、実際は、就職先として病院や製薬会社の方が圧倒的に多く、薬局・薬店(一般販売業)は薬剤師の確保が困難な現状があるとされている。

2002年の厚労省の全国調査では、指定医薬品を売る薬店の16%、薬局の2%弱で薬剤師が不在だったとする報告がされている。

新制度が導入されると、大衆薬はリスクに応じてA-Cに3分類される。医療用医薬品から大衆薬に転用された胃腸薬「H2ブロッカー」など、高リスク薬はランクA。販売できるのは薬局のみで、薬剤師による対面販売が義務化される。解熱鎮痛薬の「アスピリン」など中程度のリスクの薬はランクB、ビタミン剤など低リスクの薬はランクCに分類。これらは全ての薬局、薬店で扱われるが、販売従事者としての資質確認のため、薬事法や副作用に関する知識を問う試験を新設し、合格者でなければ販売できなくなる。

B・Cランクの薬だけを扱う店では薬剤師の常駐は必要なくなる。A-Cのランクは全ての大衆薬の外箱、容器に表示されるようになる。

全身がケロイド状態になる「スティーブンス・ジョンソン症候群」をはじめ、大衆薬が原因と見られる副作用報告は、2004年だけで約300件に上る。サリドマイド薬害の被害者らで作る財団法人「いしずえ」の間宮清事務局長は「薬の販売を職業ベースで考えず、『かかりつけ医』のような存在に変わることが薬局・薬店には求められている」と話している。

  成分 主な製品名
A シメチジンなどH2ブロッカー(胃腸薬) ガスター10(ゼファーマ)
パンシロンH2ベスト(ロート製薬)
三共Z胃腸薬(三共)
ミノキシジル(発毛薬) リアップ(大正製薬)
塩酸ブテナフィン(水虫・たむし用薬) ブテナロック液(久光製薬)スコルバダッシュ(武田薬品工業)
B アスピリン
イブプロフェン(解熱鎮痛薬)
バファリンA(ライオン)
イブ(エスエス製薬)
ナロンA(大正製薬)
スクラルファート(胃腸薬) イノセアプラス錠(佐藤製薬)
インドメタシン(鎮痛消炎剤) バンテリンコーワ(興和)
パデックスID(第一製薬)
ビタミンA・D キューピーコーワゴールドA(興和)
チョコラA、D(エーザイ)
漢方処方製剤 葛根湯
C ビタミンB・C アリナミンA(武田薬品工業)
ハイシー1000(同)
尿素(外用薬) ワムナールプラスローション(ゼリア新薬工業)オイラックス潤乳液(ゼファーマ)

大衆薬はOTC薬と略称されることがある。これはOver the Counter Drugの略称であり、客と接するカウンター内の薬剤師が、その背にする棚に薬を置き、患者の容態を聞きながら、薬剤師が薬を選択し、患者に用法等の説明をしながら販売する薬ということの意味である。

いつの間にか、薬局も薬店も客が勝手に掴み出せるところに薬を陳列し、客が自ら選択する薬をただ売るだけという商売に成り下がってしまった。更に悪いことに、薬剤師は『セルフメディケーション』なる思想を我田引水的に解釈し、薬は客が客の責任で選択するものだということで、薬の説明をしなくなってしまった。

客は客で、薬局での説明に抵抗を示す傾向が見られていた。しかし、その原因を作ったのも多くは薬剤師なのである。薬局協励会の研修会等では、来客の客単価を上げるための研修会などが大流行で、如何に併売するかの接客術が伝達講習され、風邪薬を買いに来た客に、ビタミンCや総合ビタミン剤、時にはドリンク剤の抱き合わせ販売をするようにという話を微に入り細を穿ち講義されていた。つまり薬局に行って黙って付き合っていると、1回に数千円の薬を買わされるということで、薬局での説明に耳を貸さなくなったということである。

薬局で薬剤師が実施すべきことは、過去の服薬歴と副作用発現状況の把握、薬の相互作用を避けるための他の薬の服薬状況の把握、いわゆる健康食品の摂取状況、女性であれば妊婦・授乳婦への注意等である。

最も当人が高熱で、体調不良が極まれりという状況の中では、何よりも素早く的確な薬を渡すということが最優先される事項であり、このような場合の長広舌は、最も避けなければならないことである。将に余計なお世話になりかねない。更に客の体調によっては、医師への受診をすすめるべきであり、可能であれば、優秀な医師を紹介するところまで行くのが理想である。

これをするためには普段から近隣の医療関係者と付き合いがなければ不可能であり、人間関係の構築に努力することが求められる。地域の薬剤師会が支援すべきは、医師会等との連携構築ということである。

いずれにしろ今回の薬事法改正により、OTC薬の取扱がより明確にされる。更に新しい資格制度も導入される。それぞれの立場に立つ諸氏が、薬事法の法令遵守をすることが最重要課題であり、法律の主旨を曖昧にすることがあってはならない。

(2006.2.12.)

SPD外部委託の矛盾点

水曜日, 8月 15th, 2007

日本病院薬剤師会は2001年2月10日の理事会で、『院内の医薬品の搬送、補充、在庫管理などを一元管理する「SPD(Supply Processing & Distribution)」の外部委託が広がっていることについて協議、薬剤師の業務が侵されかねない重要な問題ととらえ、会員への周知が急務だとした』とする報道がされていた。

『SPD請負い業者の仕事は、調剤室への出庫、病棟での定数配置薬品の数量チェックや補充、個人注射薬と輸液の取り揃えの準備など多岐にわたり、その範囲や方法は病院によって異なる。その中で薬剤師とSPD請負業者との業務分担が不明確になっている。要所要所で薬剤師が点検するが、薬剤師の点検という形式の下で薬剤師の手間を省くことが第一となり、職能の縮少になるとしている。病院にとっては経営や物流の効率化を図ることができ、卸の参入も相まって急速に広がる可能性があり、SPDの導入時には適正使用の点から薬剤師が主導権を握ることが重要とだ』とする意見が出されたという。

しかし、皮肉な見方をすると、現在、日本病院薬剤師会が推奨している病棟での『服薬指導業務』の実践が、薬剤業務にSPDの導入を促進しているという見方も可能である。『服薬指導業務』を導入する際、一定数以上の入院患者を要する医療機関において、最も体力を要する部分が『注射薬についても原則として処方せんに基づく個人渡し』という部分で、この部分を実行しなければ、『服薬指導業務』に突入できないという自家撞着に陥るのである。もし、薬剤師の増員が可能であれば、何等問題なく片付く話であるが、薬剤師の定員削減に抵抗するための『服薬指導業務』の導入であれば、新たな仕事が増えるからということで増員がされる訳ではない。そこで人員増なしに『注射薬の個人渡し』をしようとすれば、手近なところで業者の手を使うということである。

ただし、問題なのは、『注射薬を原則として処方せん』ということであれば、その行為はあくまで調剤行為であり、薬剤師でもない業者に任せることの是非を問う前に、既に違法行為である。例えば最終的に、施設の薬剤師が鑑査を実施したとしても、薬剤助手制度の確立していない我が国において素人に調剤を委託するのは問題だといえる。更に問題なのは処方鑑査をし、注射薬を調剤し、鑑査するという一連の流れは、薬剤師による二重・三重の鑑査がされていることを意味する。それにも係わらず各部門での鑑査を排除して、如何に最終鑑査に力を入れたにしても、見逃しは必ず起こるというのが、長年の経験からいえることである。通常行われる調剤薬の鑑査もそれぞれ分担調剤を行う薬剤師が完璧を期して仕事を行い、その完成品を鑑査するからこそ薬局の窓口から外に出る誤薬がなかったということが出来る。注射薬調剤についても同様であり、最終1回の鑑査では、完璧は期しがたいということである。

また、注射薬は、急性期の入院患者に使用されるということで、頻繁に変更が行われる。特に土・日曜日あるいは連休中の払出し分は、休日明けに大量に返戻されるという宿命を担っている。これを避けるためには、薬剤師が土・日に出勤しあるいは連休に出勤し、通常業務を実施する以外にないが、これでは薬剤師の労働条件が守られない。

薬剤師の配置人員を決定する論議の中で、薬剤師の収益性が論議になり、病院薬剤師が期待する定員配置がされなかったことから、現状で最も収入に繋がる早道として『服薬指導業務』が喧伝される結果になったが、ある意味で、あまりにも短絡的な発想ではなかったのかという疑念を持たざるを得ない。

日本病院薬剤師会が大号令を掛けるまで、『服薬指導業務』が思ったほどの前進を見せなかったのは、それなりの理由があったからで、その原因の解明なしに促進のかけ声を掛けられれば、流行に乗り遅れるなとばかりに、あらゆるものを捨てて電車に乗ろうとするのが日本人の悪い癖である。

電車の先頭車両に乗るのか、最終車両に乗るのか、到着する駅が同じであれば急ぐことはないと考えるが、先頭車両に乗りたがるのが国民性ということであろう。しかし、SPD請負業者による注射薬調剤の代行は、ますます薬剤師の存在感を失わせるものであり、人件費に見合うことのない『服薬指導業務』の実践が、薬剤師の定数増に貢献しないばかりか、更に配置人員の削減の口実に利用されはしないかと危惧する次第である。

薬剤師の配置人員を考える場合、単に金銭的な利益の追求ではなく、院内薬品管理の全般に対する貢献度を再度検討することが必要ではないか。

嘗て“竹槍で戦争を仕掛けるタイプ”だといわれたことがあるが、『人が先か仕事が先か』といわれれば、やはり仕事をした上で増員を要求するといわざるを得ない。

[2003.7.29.]

労働条件の悪化を容認するのか?

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

2005年3月24日、厚生労働省で開催された第7回社会保障審議会医療部会において、日本病院薬剤師会会長が「医薬品安全対策の総合的推進について」の中で、参考人として発言の機会を得て、「医薬品の安全使用体制の確立に向けて」と題して病院薬剤師が取り組む課題を説明したという [薬事新報,第2363号:22-23(2005)]。

その中で

「薬剤管理指導業務の完全実施」、

「夜間・休日における薬剤業務体制の充実」

について触れたというが、いずれも基本的には薬剤師の員数の問題と関わってくる。特に「夜間・休日における薬剤業務体制の充実」に関しては、別の会議の場でも『病院薬局で宿日直業務の実施率が低いのは、薬剤師の増員を求める際に悪影響を及ぼす』とする会長発言をしているが、薬剤師の労働条件の悪化を前提とした業務の改善は、真の改善とはならない。

第一、宿日直の導入は、病院薬剤師の決意だけで、解決できる話ではない。

宿日直手当の問題、宿直室の整備の問題、特に女性を含めて宿直業務を行うとすれば、宿直室の防犯対策、宿直室と調剤室の防犯対策、更に日直・宿直業務の交代要員の確保等、一定の財源確保が求められる。

宿日直業務を含めた勤務時間については、労働基準法の遵守は最低の範囲であって、それ以下にすることは間違いなく経営者の責任問題とされる。例えば土・日に日直で出勤した場合、振り替え休日で処理するのか、休日出勤手当で対応するのか。土曜日の夜間、日曜日の夜間は、同一薬剤師による連続勤務にするのか、他の薬剤師との交代勤務とするのか。対応の仕方によっては薬剤師に長時間勤務を強いることになる。

年休の保証、病休の保証、学会出張、研修会の参加等を保証するとすれば、元々3人や 4人の薬剤師の配置で、宿日直業務をやれという方に無理がある。実施可能な薬剤師が配置されていながら、実施していない施設が無闇にあるというのであれば問題であるが、そうでなければ、発想の転換が必要である。

日直を実施するとすれば、1施設当たり何人の薬剤師が必要なのか。当直をするとすれば、1施設当たり何人の薬剤師が必要なのか。各施設毎の必要数を具体的に、例えばベッド数別に算出し、提案することも必要ではないか。

もし、薬剤師がいうように、薬剤に関連する医療事故をなくすために、365日24時間体制で薬剤師の配置が必要である。薬剤師を配置することで眼に見えて医療事故の大部分は減少させることが出来、医療事故発生に伴う、人的時間の浪費、財政的負担の軽減が可能だと経営者が認識すれば、薬剤師の一定数を直ちに採用するという決断を得られるかも知れない。

いずれにしろ病院薬剤師の世界に過酷な労働条件が導入されれば、病院薬剤師自身が実調剤、薬品管理で過誤を起こす可能性が増大し、過酷な労働条件が更に継続すれば、病院薬剤師の退職、就職拒否という事態を招きかねない。改善を急ぐあまり、足元の見えない感情論を持ち出すのは避けなければならない。

(2005.4.15.)

倫理的な判断はできるか?

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

「人間の心を学び、倫理的に間違っていると思った時は、『NO』と言える判断力、決断力を磨いてほしい。よく観て、よく聴き、信念を持って発言してもらいたい』  この言葉は、東京都立広尾病院の点滴ミス・隠蔽事件の被害者の夫である永井裕之氏の講演中の言葉であるとされている。

都立広尾病院の医療事故は、1999年2月、左手の指関節の軟骨をとる手術を受けた永井氏の妻が、その後、看護師に誤って消毒薬を点滴注射され、死亡したというものである。死亡の原因は、注射筒を用いて消毒薬を秤取するという、病棟の悪しき習慣によるもので、その後、多くの病院で、消毒薬の秤取に注射筒を用いないという至極当たり前のことを禁止する茶番劇が演じられたが、正確に必要な薬液を秤取するという目的のために、多くの病院で行われていたということである。

更に都立広尾病院の事例は、その失敗を組織ぐるみで隠蔽しようとした病院側の対応のまずさから、社会の医療不信を拡大する一因となったと批判されている。点滴を実施した看護師は、当初からその可能性を報告していたが、主治医は「心筋梗塞や心疾患の可能性が強い」と説明。当時の病院長も医師法に基づく警察への届け出を渋り、死因の説明も不十分だった。

当時、都が作成していた『医療事故・医事紛争予防マニュアル』では、患者が死亡した時、過失が極めて明確な場合を除いて警察には届けず、病理解剖を勧めると記載されていたという。当時の都立広尾病院の院長は、マニュアルの作成責任者で、都衛生局も隠蔽に加担していたとされている [読売新聞,第46215号,2004.11.16.]。

医師法に基づく警察への届け出については、次の通り定められている。

第19条:診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2.診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

第21条:医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

第23条 医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。

第24条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

上記の新聞報道でも触れられているが、「遺体に異常を認めながら警察への届け出で義務を怠ったのは医師法に違反しているとして、訴えられていた当時の院長に対する上告審判決が、 2004年4月14日、最高裁第三小法廷で出され、同被告の上告は棄却されたという。

被告側は「検案とは死体検案書を作成する場合に限られ、診療中の患者の場合は検案書を作成しないので届け出義務はないと」主張。「業務上過失致死などの刑事責任を問われる恐れがあるときに、届け出義務を負わせるのは憲法違反」と主張していた。

これに対し第三小法廷は、「検案とは死因を判定するために死体を検査することで、診療中の患者か否かを問わない」とし、「届け出義務は犯罪を構成する事項の供述まで強制するものではない」と違憲の主張も退けた。被告は1999年2月、入院中の主婦が消毒薬を点滴されて死亡するという事故の後、遺体を検案した医師らと共謀し、異常を警察に届け出ず、後日、病死とする虚偽の死亡診断書などを作成したとされている。

医療事故の裁判を争ったことのある弁護士と同席した時、病院の職員が真実を述べないとする苦言を呈していたが、その意図するところは、永井氏の冒頭の発言と同様の趣旨であると思われる。

ところで我が身を顧みて、果たして倫理的に間違っていると思った時『NO』と言えるのかを自らに問えば、直ちに『応』とする結論を出すことは難しい。院内における事故調査委員会で、正論を述べることは可能だとしても、組織として結果が出された場合、果たしてその決定を無視して、外部に公表することができるのか。ことの善悪は別にして、自ら参加した会議の結論である。会議で常識的な結論を得ることができないからといって、会議の内容を他所で覆すというのでは、会議における決定の意味をなさなくなる。

内部委員会で、事故を事故として認識し、その原因を含めて外部に公表すべきであるという主張を行うことは可能である。更に強力に主張し、委員会の結論を意図するところに誘導する努力も厭う気はない。しかし、委員会で結論が出され、方針が決定された場合、個人の社会正義を貫くために、それを乗り越えて内部告発に走れるのかということになると、逡巡せざるを得ない。

ことの善悪は別にして、結論が出てしまえば、その結果に従うというのが組織人としてのありようではないのか。従って、組織として医療事故は隠蔽しないという、基本的な姿勢を明確にしていない組織に属したことの不幸を嘆くとしても、個人としての正義には限界があるということではないのか。

しかし、この問題は常に考え続けていなければならない命題であり、咄嗟に結論を出せといわれても、普段から考えていなければ、簡単に結果の出せる問題ではないようである。ただし、今回の判決で、医師の警察への届け出義務は明確にされた。その意味では判断に混乱を起こす問題の一つは、分かり易くなったということのようである。

(2004.11.20.)


  1. 薬事衛生六法;薬事日報社,2004

横浜事件

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

神奈川県の特高警察が1942年7月、太平洋戦争に批判的な編集者ら約60人を治安維持法違反で逮捕し、拷問で4人を獄死させた事件。政治学者細川嘉六氏が富山県で開いた宴会を「共産党の再建準備」とでっち上げたものとされている。

約30人が終戦直後の1945年8月-9月、拷問による自白を唯一の証拠として懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を横浜地裁で受けた。関係者は自白は特高警察の拷問によるもので、事実ではないと主張したが、即決裁判で審理を終結、治安維持法違反で有罪とされていた。

元被告らは1986年から三次にわたって再審を請求。2003年4月横浜地裁は再審開始を決定し、東京高裁の抗告審で再審開始が確定した。

第二次大戦中に雑誌編集者ら約60人が治安維持法違反で逮捕された言論弾圧事件、「横浜事件」で有罪判決を受けた元被告5人(全員死亡)の再審判決が、2006年2月9日横浜地裁であった。

松尾昭一裁判長は「治安維持法は廃止され、被告人も大赦を受けている』として、検察側の主張通り、実態審理を行わず訴訟を打ち切る「免訴」を言い渡した。

無罪判決求めていた元被告側は「不当な判決でとうてい承服できない」として、来週にも控訴する。

耳慣れない言葉である『免訴』について、次の説明がされている。

刑事訴訟法337条は、犯罪後に刑が廃止されたり、大赦とされたりした場合には、『免訴』の言い渡しをしなければならないと定めている。訴訟を打ち切る意味を持つ。天皇への名誉毀損罪で有罪判決を受けた被告が、大赦の後に無罪判決を求めた「プラカード事件」では、最高裁大法廷が1948年「大赦で公訴権が消滅したため審理ができず、免訴の判決をしなければならない」との判断を示した。

しかし、『大赦』は恩赦の一つ。政令によって罪の種類を定め、その刑罰の赦免を行うこと。有罪の言い渡しを受けた者は、刑の執行が赦免されて前科とならない。言い渡しを受けない者は免訴になったり不起訴になったりするの説明がされており、『赦免』は罪を許すこととされている。

法律の専門家には『無罪』も『免訴』も同じように見えているのかもしれないが、罪はあるけれども許すというのと犯罪は行われなかったという無罪とは大きな違いがある。

治安維持法は、戦後直ちに廃止された法律で、無辜の民を国家の都合により犯罪人にするための法律であったはずである。“悪法もまた法なり”という言葉がある。しかし、治安維持法は国家が国民に対して行った犯罪であり、国民のためには何の役にも立たない法律であったはずである。その意味では“悪法もまた法なり”は該当しない。

その当時、検事も裁判官も、報道機関でさえ、特高が拷問によって、自白を強制していたのは知っていたはずである。その意味では、裁判官も眼を瞑り、耳を塞ぎ、悪法を使って犯罪人をでっち上げることに加担してきたといわれても仕方がない。現在在籍している裁判官は、この先輩の過ちを、今までどの様に検証し反省してきたのか。

今回『横浜事件』で、再審請求した方々は、明らかに誤った法律に基づき、拷問という非日常的な手段により自白を強要されたものである。少なくとも国家に許しを請う立場ではなく、明確に無罪という判断を下すべき方々であり、許しを請わなければならないのは、誤った法律に基づき、死人が出るほどの拷問を行わせた国家である。

(2006.2.11)

有効と無効の間

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

薬の効果の判定は難しい。プラセボであっても服用する患者が、処方する医師を信頼していれば、十分な睡眠効果が得られ、鎮痛効果が得られるのみならず、副作用も発現する。

しかし、原則論をいえば、100%の有効率を保証する薬は存在せず、副作用の発現率0等という薬は存在しない。その意味からすると、一体薬の有効率とは、どの程度の率を確保すれば、薬として一人前であると評価されるのか。ここに脳循環代謝剤の『再評価の臨床試験における試験薬及びプラセボの改善度比較』なる資料がある。

成分名 評価項目 有意差 改善率
試験薬投与群 プラセボ投与群
イデベノン 精神症状全般改善度改善以上 なし 32.4% 32.8%
塩酸インデロキサジン 自発性全般改善以上 なし 14.9% 20.9%
塩酸インデロキサジン 情緒改善度改善以上 なし 21.6% 24.9%
塩酸ビフェメラン 意欲・情緒全般改善度改善以上 なし 37.5% 30.8%
プロペントフィリン 精神症状全般改善度改善以上 なし 25.6% 30.0%

プラセボとの比較からいえば、有用性のある薬とはいえず、製造中止もやむを得ないが、むしろ問題なのは、これらの薬が、臨床治験によって得られたデータに基づいて、薬としての承認を得た上で、薬価基準に収載されたということである。

臨床治験段階で有効の評価を得た薬が、後から行われた二重盲検試験で、評価を逆転されたとすれば、それは明らかに臨床治験段階での試験デザインの失敗だということであり、如何に評価が困難であれ、40%を超えない程度の有効率の薬を、有効と評価することに無理があるのではないか。いずれにしろ治験段階のデータが、後から否定されるということでは、我国における治験の正当性が疑われる。

[2000.7.8.]

薬学教育の規範となることを期待する

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

2006年4月の入学生から薬科大学の6年制が始まり、いよいよ臨床に軸足を移した薬剤師教育が実施されることになった。しかし、臨床とは何かを考えた場合、患者の存在しない臨床がないとすれば、単科の薬科大学では臨床現場での教育は不可能である。

その意味では、単科の薬科大学が、今後の薬学教育にどう対応するのかを考えていたところ、一つの答えとして、今回の合併話が報道された。何と早ければ2008年4月にも、慶應義塾と共立薬科大が合併するための合併協議に入るという。

薬科大学が6年制になり、臨床教育に軸足を移すことになった時点での思い切った判断だということができる。共立薬科大学の理事長は「実務実習の際、病院や医学部があると、(薬剤師育成などに)絶大な力を発揮する」と説明したというが、将にその通りである。

共立薬科大の名称を残すかどうかは今後協議するとされているが、名称問題に拘泥するのは後向きの発想である。名称問題について、何れにするのかの論議に労力を費やすよりは、教育の質、教育するための仕組みの完成度を高めることに精力を費やすべきである。今後の薬学教育の模範となるものが創設されることを期待したい。

ところで多くの単科大学あるいは薬学部は、人を対象とした販売や調剤のできる薬局を持っているところさえ数える程である。つまり臨床薬学教育とはいうものの、全てが既設の病院・薬局をあてにして、他人の褌で相撲を取る話なのである。

あまつさえ何を思ったのか分からないが、薬科大学、薬学部の新設、増設が続き、他人の褌も、場合によっては使えない事態を招きかねない現状になりつつある。一体何を考えて、薬剤師教育などに乗り出してきたのか。現在、薬剤師が不足気味で、調剤薬局等の賃金はよいと聞くが、それも売り手市場であるから起こっている現象で、薬剤師の数が増加して買い手市場になれば、現在の条件は吹き飛んでしまう。

更に6年制になれば、薬剤師の労働条件がよくなり、待遇も改善されると期待している向きもあるようであるが、商品価値がなければ、単に6年掛けて卒業してきた程度では、処遇改善が図られるわけではない。

病院・薬局を教育機関として考えた場合、病院・薬局の設置目的は本来教育を前提としたものではない。教育機関として学生の教育に携わる以上、同一水準の知識を与えることができることが前提条件で、病院・薬局であれば、何処でもいいというわけにはいかない。教育するための計画を明確に示すことができ、更には教育するための人材が揃っていなければならない。更に教育する側は、医療人としての自覚を持った薬剤師でなければならないはずである。

今後、薬剤師教育の水準を確保するためには、病院を自前で持つ薬科大学の数が増えることを期待したい。ただし、薬剤師教育だけで病院を経営するのは難しい。看護学科、臨床検査学科・放射線技師学科、理学療法学科等を含めた医療関連職種を糾合した医療総合大学を目指すか、さもなければ既設の医科大学との合併あるいは提携等を模索すべきである。更に既存の病院・薬局を考えるのであれば、教育現場としての水準の維持と、現場で教育する人材の待遇等の整備に努めなければ話にならない。

臨床現場(患者)を身近に持たない学校での臨床薬剤師教育という、無謀にも近い試みを実践しなければならない日は直ぐそこに近づいている。あらゆる知恵を絞って対応しなければ、薬剤師教育は大きな失敗をしかねない。

慶應・共立薬科大学と合併へ  2008年目指し協議

慶応義塾(東京・港区)と共立薬科大(同)は2006年11月20日、合併を前提に協議を行うことで合意したと発表した。慶応は2008年4月に大学に薬学部、大学院に薬学研究科を新設する方針。予定通りに合併が行われれば、4年制私大の学校法人では1951年日本大、東京獣医畜産大、1952年の日本医大、日本獣医畜産大の合併以来、3例目となる。大学の志願者数と入学者数が一致する「大学全入時代」が来年度に迫り、大学の生き残り競争が激しくなる中で、今回の合併は注目を集めそうだ。

合併は共立薬科大側が持ちかけ、昨年10月、慶応大に非公式に打診した。水面下で協議を進めた後、今月6日に正式に合併を申し入れ、慶応大が20日の評議員会で受け入れを決定した。2007年3月、両大が合併協定書を締結する予定。

共立薬科大では、今年度から薬学部薬学科が4年制から6年制に変わったことで、学生離れが進み、今年度入試の志願者数が前年度比で14%も減少していた。また、6年制の変更に伴い、病院実習の期間が大幅に増えたため、「病院を持たない薬科大学としては限界がある。」と判断、医学部、病院、研究施設を備える慶応大との合併を希望した。

一方、慶応大には、医学部や理工学部、看護医療学部などがあるものの、薬学部はなかった。このため合併による新学部設立を新たな目玉とすることで、質の高い学生確保できると判断したと見られる。

私大の合併ではこの他に、関西学院大(兵庫県西宮市)と聖和大(同)が2009年4月の合併を予定している[読売新聞,第46948号,2006.11.21.]。

共立薬科大の橋本理事長は「実務実習の際、病院や医学部があると、(薬剤師育成などに)絶大な力を発揮する」と説明した。共立薬科大の名称を残すかは今後協議する。

理事長によると、具体的な他大学との合併の検討は約2年前から学内で行い、薬剤師がより高度な知識が求められるようになった最近の社会的背景などを踏まえて決断したという。「落ち着いた環境で、質の高い薬剤師を育てたい」と教育効果を強調した。一方、薬学部の受験者減などを背景にした経営不安については「収支も黒字で、学生の応募も高い率を維持している。経営は何ら不足はない」と否定した。

薬学部は2006年度から薬剤師の国家試験受験資格の在学年数が4年制から6年制に延長された。この影響で、大手予備校・河合塾の調べでは、薬学部全体の志願者は2005年度の121,534人から、2006年度は前年比65.4%の79,427人と大幅に減った。その半面、来年度には五つの大学が薬学部新設を申請している「供給過多」の状況にあり、「共立薬科大の経営者には危機感があったのだろう」とみる。私立大を持つ学校法人の合併は、関西学院大と聖和大が2009年4月に予定している。

過去には、1995年に南山大を持つ南山学園と名古屋聖霊学園が合併した例がある。また、東京水産大と東京商船大が東京海洋大となるなど国立大学でも統合の動きが進んでいる。


  1. 毎日新聞:http://www.excite.co.jp/News/society/20061120203600/20061121M40.086.html, 2006.11.21.

薬害

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

薬害に関する訴訟が起こる度に、二度とこのようなことが起こらないように厳正に対応するというのが厚生労働省の言いぐさではなかったのか。現在、血液製剤を経由したC型肝炎ウイルス感染症の患者が国と製造会社を訴えている。大阪地裁判決、福岡地裁判決では、血液製剤のうち「フィブリノゲン製剤(非加熱)」については、国の責任を認め患者側が勝訴した。しかし、同じ感染原因となった血液製剤「クリスマシン」については、国、製造会社に責任はないとする判断が示された。

ところで薬害に関する司法判断の基準は、1995年に出されたクロロキン訴訟の最高裁判決に置かれているという。

『医薬品は本来人体にとって異物であり、副作用は避け難く、医学、薬学分野は知見の変化が著しい。このため効果が副作用(危険性)を上回るかどうか(有用性)は、その時々の医学水準で比較考量して判断すべきである』。つまり国の責任について

  • その時点の医学的知見の下で副作用を上回る有用性がある場合は製造承認は適法。
  • 副作用防止のため権限を行使しなかったことが著しく合理性を欠く場合は違法。

ということだとされる。

薬害肝炎における九州訴訟では、血液製剤「フィブリノゲン製剤(非加熱)」等について、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の危険性が高まって、有用性が否定されたのは何時の段階なのかが問題にされた。福岡地裁は、1978年には、米国・食品医薬品局(FDA)によるフィブリノゲン製剤(非加熱)の承認取り消しが公示され、また、当時の知見としてもフィブリノゲン製剤(非加熱)の有効性に疑問が生じていたのであるから、医薬品の安全性の確保等について、第一次的な義務を有するミドリ十字だけでなく、厚生大臣としても、その詳細を含めた情報を得た上で、フィブリノゲン製剤(非加熱)について調査し、検討を行うべきであった。

この時点において調査、検討を行えば、遅くとも1980年11月までには、有効性及び有用性についての判断を行うことが出来たし、厚生大臣については、仮にそうでないとしても、ミドリ十字に対して緊急安全性情報を配布するよう行政指導すべきであった。

一方、2006年6月21日に行われた大阪地裁判決では、薬害判断の基準を薬事行政の経過に適用した場合、フィブリノゲン製剤(非加熱)の使用による薬害発生の責任は、青森県で集団感染の発生が報告された1987年4月以降に生じると認定した。また、製薬会社に責任が生じるのは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染力をなくすために施した処理法を変更した結果、逆に危険性を高めた1985年8月以降とした。クリスマシンについては、有用性は否定できないとして、賠償責任はどの時点においても認定しなかった。

原告側は、血液製剤の製造が承認された1964年、1976年の時点で、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染する危険性やC型肝炎が重い症状になることが知られており、ずさんな方法で承認された製剤に、有用性は確認できないと主張。被告の国側は当時から有用性はあり、違法性や過失はないと反論。

更に肝炎感染の原因となったフィブリノゲン製剤(非加熱)の危険性が明らかになり、製造を承認した国の責任が認定された時期について、大阪地裁判決は「1987年以降」、福岡地裁判決は「1980年以降」と判断が分かれた点について「医薬品行政の根幹に触れる問題だ」と述べたとされている。

何れにしろ医薬品の原料がvirusに汚染されていたことによって、医薬品を使用した結果、思いもしない感染という被害を被ったのである。医薬品原料の微生物汚染を検査することが行われていれば、感染は起こらなかったわけで、国は製薬会社に検査を義務付け、製薬会社が実施するという体制を作っておけば、このようなことは起こりえなかったのではないか。

更に出産時の止血目的で使用した結果感染したなどというのは、当人に何等責任のないことであり、例えそれが医師の適応外使用から始まったとしても、厚生労働省が適応外使用を見過ごしていたのは事実ではないのか。裁判は裁判として、継続するとしても、医療行政としての失敗は失敗なのである。厚生労働省は速やかに救済処置を講じることが求められる。訴訟は訴訟として、治療費の援助をするぐらいのことは、あってもいいのではないかと思うのである。

  (2006.9.6.)


  1. 読売新聞,第46867号,2006.9.1

薬剤師は無能な専門職能なのか?

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

静岡県伊豆の国市の県立高校1年生の女子生徒(16)が母親(47)に劇物のタリウムを摂取させて殺害しようとしたとされる事件で、三島署などは女子生徒にタリウムを販売した同市、薬局経営の男性薬剤師(65)と法人としての薬局を毒劇物取締法違反の疑いで静岡地検沼津支部に書類送検していたことが15日分かった。 調べによると男性は8月と9月の2回、女子生徒が注文書類に16歳と書いたのに見過ごしタリウムを各25g販売した疑い。4月にも劇物のアンチモン化合物500gを販売した疑い。 女子生徒は「化学部の実験に使う」などと説明していたという。同法は18歳未満への毒劇物販売を禁じている

[読売新聞,第2005.12.15.]

本件に関しては、4日付の報道ではこう書かれている。

女子生徒が薬局で購入したタリウムは、毒劇物取締法で18歳未満に販売が禁じられており、同県健康福祉部は県薬剤師会など関係団体に毒劇物を適正に販売するよう通知を出した。身分証明書で身元確認を徹底することや、使用目的・量が適切か確認するよう求めている。販売した薬剤師は女子生徒が化学部に属し、薬物の知識が豊富だったことから信用していた。

女子生徒は8月9日に同市の薬局で、「化学部の実験で使う」と使途を説明し、名前と住所を書面に記入して注文、2度に分けて50g(致死量 1g)を入手したことが分かっている。応対した薬剤師は、女子生徒が化学部に所属していて薬物の知識も豊富だったことや、「前にも(劇物を)買いに来た者です」と落ち着いて話したことなどから、信用してしまったという。女子生徒は高校に入学したばかりの4月にも、劇物「ビス」を同じ薬局で大量購入している。取り寄せたタリウムを渡す際も、薬剤師は「気をつけて使ってください」と注意を促しただけだった。

タリウムなど劇物を購入するには、「毒物及び劇物譲受書」に購入する者の名前、職業、住所の記入が求められている。同法は爆発性や引火性が強い劇物を除くと身分証明書の提示は義務づけていない。 タリウムや猛毒のシアン、トルエンなどについては、受け渡し時に必ず身元を確認するよう行政側は指導している。

女子生徒はブログの中で、「眩しいほどに晴れ、酢酸タリウムが届きました。薬局のおじさんは、医薬用外劇物の表示に気付かず」と記し、販売した薬局の対応についても記載している [読売新聞,第46567号,2005.11.14.]。

また、何故に法規制の枠の中からすり抜けたのかという検証をした記事では、

だが、毒物及び劇物取締法は、18歳未満への販売を禁止し、購入時には氏名、住所、職業や購入数量などを記入した書類の提出を求めている。厚生労働省は身分や使用目的を確認するよう指導しているが、女子生徒にタリウムなどを販売した薬局は「化学部の実験に使うという話を信用してしまった」と話しており、県警は、18歳未満と気づきながら売ったと見ている。

毒劇物の販売には毒物劇物取扱責任者の資格が必要。ただし、薬剤師は、試験を受けなくても、都道府県知事へ登録すれば資格が得られる。静岡県薬剤師会は「殆どの薬局が登録しているはずだ」と話しており、同県内の毒劇物販売業者は約2,700に上る。 日本中毒情報センター前理事長の杉本侃・大阪大名誉教授は「そもそも、街の薬局でタリウムなどの劇物を売る必要があるのか」と首をかしげる。同県薬剤師会も「農薬の需要も減り、毒劇物販売のメリットはない」と話す。

過去に事件が起きる度に、法改正により規制が強化されたり、販売時の手続き厳守を促す局長通知が出されたりした。だが、時間が経つと、それを無視した販売や、新たな毒劇物を使った事件が起こる。厚生労働省は「高1に簡単に毒劇物が売られるとは想定外だ」と困惑している。

厚生労働省や都道府県は、定期的な立入検査の他、講習会などを行うが、「参加者は1割あるかないか」(伊豆の国市を管轄する東部保健所)。現場からは「客を疑うことを前提に出来ず、売れる体制にある以上は求められれば………」(静岡県内の薬局)との声も上がる。杉本名誉教授は「タリウムを始め必要性の少ない大多数の毒劇物の一般への販売を禁止するなど、規制の枠組みを抜本的に見直すべきだ」と問題提起する

[読売新聞,第46576号,2005.11.13.]。

今回の事例、稼げれば何でもいいということで、タリウムを売ったとは考えたくない。第一タリウムを売ってなんぼの稼ぎになるか知らないが、高校一年生に買える金額である。大した金額になるわけがない。薬剤師は薬物を取り扱う専門職能であり、薬物に関連する法令については精通していなければならない。更には専門職能として、法令を順守するのは当然の義務だといえる。

更に『毒物及び劇物取締法』は、薬剤師のために制定されているわけではなく、国民の安全を守るために順守すべき事項として、制定されているものであり、薬剤師がその規定を知らないなどということがあってはならない。

知らないというのであれば、公に行われる研修会に参加するのが義務であり、参加しない薬剤師がいるとすれば、最低限県薬会誌等に不参加者名と店名を公表する等の罰則を科すべきであり、場合によっては新聞等に公開するという枠の拡大を図るべきである。 更に今回の事例で不思議なのは、酢酸タリウムを使用して行う高校生の実験として、薬剤師は何を想定したのかということである。実験内容について詳細に質問をしていれば、多分高校生には人を納得させるだけの説明は出来なかったのではないかと思われる。

簡単に人が殺される世の中である。販売した劇物があるいは殺人者の手に渡らないという保証はない。あらゆる状況を想定し、国民の安全を確保するために努力することが、専門職能としての役割のはずである。それぞれの専門職能が、専門職能としての力量を発揮できないとすれば、国民の安全は甚だしく脆弱な基盤の上に乗っているといわなければならない。

<毒物又は劇物の交付の制限等>

第15条 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を次に掲げる者に交付してはならない。

一 18歳未満の者

二 心身の障害により毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止の措置を適正に行うことが出来ない者として厚生労働省令で定めるもの

三 麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者

2 毒物劇物営業者は、厚生労働省令の定めるところにより、その交付を受ける者の氏名及び住所を確認した後でなければ、第三条の四に規定する政令で定める物を交付してはならない。

3 毒物劇物営業者は、帳簿を備え、前項の確認したときは、厚生労働省令の定めるところにより、その確認に関する事項を記載しなければならない。

4 毒物劇物営業者は、前項の帳簿を、最終の記載をした日から5年間、保存しなければならない。

今回の新聞報道に見られる表面的な違反は、明らかに毒物及び劇物取締法第15条1項に対する違反であり、甚だ分かり易い条項の違反である。従って今回書類送検したということは、第15条1項という単純な違反ではなく、複合的な違反なのかもしれないが、少なくともこの時点で薬剤氏名・店名の公開を行うべきでなかったのか。専門職能である薬剤師として、ある意味でいえば地域住民を危険に巻き込む可能性があったということであり、社会的責任を取らなければならない。

参照資料として、以下に厚労書の通知文書等を添付する。

薬食化発第1114001号

平成17年11月14日

社団法人日本薬剤師会会長 殿

厚生労働省医薬食品局審査管理課

化学物質安全対策室長

毒物及び劇物の適正な販売等の徹底について

 今般、静岡県において、劇物である酢酸タリウムを用いた傷害事件が発生し、これまでの静岡県東部保健所の調査等から、同県内の薬局が当該劇物を 18歳未満の学生に販売したこと(毒物及び劇物取締法(法律第303号、以下「毒劇法」という。)第15条違反)が明らかになったことから、平成17年 11月14日付け薬食審査発第1114001号医薬食品局審査管理課長・薬食監麻発第1114001号監視指導・麻薬対策課長通知により、各都道府県等に対し毒物及び劇物の適正な販売等の再徹底について通知されたところです(別添参照)。 つきましては、貴会会員に対し、毒物及び劇物の適正な販売の徹底について、特段の御配慮をお願いいたします。

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薬食審査発第1114001号

薬食監麻発第1114001号

平成17年11月14日

都道府県

各 保健所設置市 衛生主管部(局)長殿

特別区

厚生労働省医薬食品局審査管理課長

厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長

毒物及び劇物の適正な販売等の徹底について

毒物及び劇物(以下「毒劇物」という。)の適正な販売等の徹底については、平成11年1月13日付け医薬発第34号厚生省医薬安全局長通知(別添)によりお願いしているところです。 今般、静岡県において、劇物である酢酸タリウムを用いた傷害事件が発生し、これまでの静岡県東部保健所の調査等から、同県内の薬局が当該劇物を18歳未満の学生に販売したこと(毒物及び劇物取締法(法律第303号、以下「毒劇法」という。)第15条違反)が明らかになりました。 貴職におかれましては、特に下記の内容について再度の指導徹底を図っていただきますようお願いいたします。 なお、今後当該事件に係る新たな事実が判明した場合、更に通知を発出する等必要な対応を採ることがありますので、御承知おきください。

1.毒物劇物営業者に対して、毒劇物の譲渡に当たっては、毒劇法第14条及び第15条の規定を遵守するとともに、身分証明等により譲受人の身元(法人にあっては当該法人の事業)並びに毒劇物の使用目的及び使用量が適切なものであるかについて、十分確認を行うよう指導すること。

2.家庭用劇物以外の毒劇物の一般消費者への販売等を自粛するよう引き続き指導すること。

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(別添)

医薬発第34号

平成11年1月13日

   都道府県知事

各 政令市市長   殿

特別区区長

厚生省医薬安全局長

毒劇物及び向精神薬等の医薬品の適正な保管管理及び販売等の徹底について
(通知)

毒物及び劇物(以下「毒劇物」という。)並びに向精神薬等の医薬品の監視取締りについては、かねてより種々ご配慮を煩わせているところである。 毒劇物の適正な保管管理及び販売については、平成10年7月28日付けの当職通知によりその徹底を図っていただいているところであるが、今般、シアン化合物を北海道下からの配送により無許可で譲渡したと見られる事件や、東京都下においてクロロホルムを使用したと見られる事件が相次いで発生するなど、毒劇物の適正な保管管理及び販売の徹底には一層の万全を期すことが求められている。

また、神奈川県下においては向精神薬及び劇薬を使用したと見られる事件が発生したところであり、これら保健衛生上特段の注意を要する向精神薬、毒薬及び劇薬(以下「毒劇薬」という。)及び要指示医薬品についても、その適正な保管管理及び販売の徹底に万全を期すことが求められている。 こうした点にかんがみ、貴職におかれては、下記のとおり、貴管下業者等に対する指導等をよろしくお願いいたしたい。

1.毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び業務上取扱者に対して、毒物及び劇物取締法(以下「毒劇法」という。)第11条に基づき、毒劇物が適正に保管管理されているか早急に点検するよう改めて指導すること。

2.毒物劇物営業者に対して、毒劇物の譲渡に当たっては、毒劇法第 14条に定められた手続を遵守するとともに、身分証明書等により譲受人の身元(法人にあっては当該法人の事業)について十分確認を行った上で、さらに、毒劇物の使用目的及び使用量が適切なものであるかについて十分確認を行うよう指導すること。その上で、譲受人等の言動その他から使用目的に不審がある者、使用目的があいまいな者等安全な取扱いに不安があると認められる者には交付しないようにするとともに、この種の譲受人等に係る不審な動向については速やかに警察に通報するよう指導すること。また、毒劇物販売業者に対して、家庭用劇物以外の 毒劇物の一般消費者への販売を自粛するよう引き続き 指導すること。

3.向精神薬取扱者に対して、麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻向法」という。)第50条の21に基づき、向精神薬が適正に保管管理されているか早急に点検するよう指導すること。

4.向精神薬小売業者に対して、向精神薬の譲渡に当たっては、麻向法第50条の17の規定を遵守するよう指導するとともに、薬剤師法第24条に基づき、処方せん中に疑義があるときには、当該処方せんを交付した医師等に問い合わせて疑義を確認した後に調剤を行うよう指導すること。

5.薬局及び医薬品販売業者に対して、薬事法第48条に基づき、毒劇薬が適正に保管管理されているか早急に点検するよう指導すること。

6.薬局及び医薬品販売業者に対して、毒劇薬の販売等に当たっては、薬事法第46条に定められた手続を遵守するとともに、身分証明書等により譲受人の身元(法人にあっては当該法人の事業)について十分確認を行 うこと。その上で、譲受人等の言動その他から使用目的に不審がある者、使用目的があいまいな者等安全な取扱いに不安があると認められる者には交付しないようにするとともに、この種の譲受人等に係る不審な動向については連やかに警察に通報するよう指導すること。

7.薬局及び医薬品販売業者に対して、要指示医薬品が盗難にあい、又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じるよう指導すること。

8.薬局及び医薬品販売業者に対して、要指示医薬品の販売等に当たっては、薬事法第49条第1項の規定を遵守するよう指導するとともに、薬剤師法第24条に基づき、処方せん中に疑義があるときには、当該処方せんを交付した医師等に問い合わせて疑義を確認した後に調剤を行うよう指導すること。また、指示による要指示医薬品の販売等に当たっては、同条第2項及び第3項に定められた手続を遵守するとともに、身分証明書等により譲受人の身元(法人にあっては当該法人の事業)について十分確認を行い、その上で、譲受人等の言動その他から使用目的に不審がある者、使用目的があいまいな者等安全な取扱いに不安があると認められる者には交付しないようにするとともに、この種の譲受人等に係る不審な動向については速やかに警察に通報するよう指導すること。

9.近時、インターネット等を活用して医薬品や毒劇物の広告を行っている事例が見受けられるが、虚偽・誇大な医薬品の広告や承認前医薬品の広告に該当するか否かという観点に加え、無許可・無登録販売を前提とした広告ではないかという観点からも、こうした広告に対する十分な監視を行い、薬事法又は毒劇法に違反する事実が確認された場合には、販売の中止を指導するとともに、必要に応じて厳正な対応を行うこと。

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日薬業発第147号

平成17年11月9日

都道府県薬剤師会会長 殿

日本薬剤師会

会長 中西 敏夫

毒物及び劇物の適正な販売の徹底について

標記については、平成15年2月19日付、目薬業発第376号「テロの防止に向けた警察諸対策に対する協力要請について」において、国際テロ事件に関連した劇物等の盗難防止並びに毒物劇物譲渡の際の毒物及び劇物取締法(以下、法)に定められた手続きの遵守を平成16年6月11日付、日薬業発第 40号「毒物及び劇物の適正な販売等の徹底について」において、不正軽油製造のおそれのある硫酸並びに手製爆弾製造のおそれのある過酸化水素に係る適正な販売の徹底について会員へのご指導方をお願いしたところです。

ところで今般、静岡県内において、酢酸タリウム等の劇物による傷害事件が発生し、当該劇物を18歳未満の者が薬局から入手したとの報道がなされています。 本事件につきましては、現在警察において捜査継続中で、事実関係の詳細がはっきり致しておりませんが、毒物及び劇物の適正な販売の更なる徹底のため、法の規定を再確認するよう改めて貴会会員へ周知いただきたくお願い中し上げます。

特に販売に当たっては、身分証明書等により譲受人又は交付を受ける者の身元について十分確認を行うと共に、合わせて毒物及び劇物の使用目的及び使用量が適切であるかについても十分確認を行うことが重要でありますので、この点も含めてご指導方お願い申し上げます。

(2005.12.18.)

やっぱり情報はタダじゃない

水曜日, 8月 15th, 2007

薬と情報は切っても切れない関係にある。

物+情報=医薬品

の定式が成立するほど、医薬品にとって情報は重要で、情報がなければ、単なる危険物に過ぎない可能性も出てくる。

中でも薬事法第52条に規定される添付文書は、医薬品の情報源として唯一法的に定められたものであり、最も重要な情報源である。つまり医薬品の世界では、最も重要な情報源が製品に添付されており、医薬品の価格は、この情報も含められた価格であるといえる。

しかし、添付文書は、その判型と頁数が制限されており、多くの情報を集約したとしても収載しきれない。そこで製薬企業は、添付文書以外に種々の情報源を医薬品販売を目的として無料で配布している。つまり薬の情報については、法律で添付が義務づけられた情報以外に、添付文書を補填する情報の無料提供がされており、その習慣に慣れ親しんだ医師、薬剤師は、文献複写等も含めて、製品に関連する資料は、製品を販売している企業のMRに依頼すれば、全て無料で手に入ると考えられている。つまり情報はただだという世界に住んでいたということである。

その意味ではInternetの世界も似たようなもので、情報は無料だという感覚があるようである。なるほどサイト(site)を覘いてみると、誰に頼まれたのでもないのに、あらゆるsiteが公開されており、玉石混淆、時には反社会的とも思われるsiteも見られる。その多くは無料であるが、中には有料のsiteで各新聞社のニュースの表題を羅列し、そこから記事本体に飛ぶようなsiteが提供されていた。

当然元ネタを配信している新聞社は、情報のただ乗りは違法だという訴訟を起こすことになるわけだが、今回、『ネット記事 見出し無断配信違法』『知財高裁判決 本社逆転勝訴』『初の司法判断』と8段抜きの記事が発表された [読売新聞,第46539号,2005.10.7.]。 記事の解説によると『ネット上に公開された情報は誰もが自由に利用できるという、ネット世界の “常識”に対し、知財高裁は、例えネット上でも、情報の商業利用には一定のルールがあることを示した。

ネットでは情報は全てタダという意識が一部のネット関連会社などにある。一審判決も、ネット上に公開した記事見出しは、第三者が無断で使っても問題ないと判断した。しかし、新聞・通信社の記事の有料配信が国際的に受け入れられてきたのは、その正確性と迅速性に経済的価値が認められてきたためだ。

ネットというだけで、配信直後の鮮度の高い見出しを丸写しし、営利目的に使ってもかまわないということになれば、報道機関は成り立たなくなり、国民の知る権利も損ないかねない。

知財高裁は、記事見出しには経済的価値、即ち財産権があり、それは法的保護に値すると認め、「ただ乗りビジネス」に歯止めをかけた。まだルールの定まっていないネットの世界について、司法が規範創造の役割を果たした判決といえそうだ。

ところで配信直後の鮮度の高い見出しの丸写は問題だとして、古くなれば使用は自由なのか。更に営利目的で使用することは問題があるということであるが、営利の範囲は何処まで含まれるのか。あるいは全く無料で公開している趣味のsiteであれば、利用することは自由ということなのか。更に種々検討されるべき課題が含まれているのではないか。

また、著作権侵害について「一般的にニュース報道における記事見出しは、報道対象となる出来事などの内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか、使用できる字数にもおのずと限界があり、表現の選択の幅は広いとは言い難い。創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難く、著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないと考えられる。

しかし、 ニュース報道における記事見出しが、直ちに著作物性が否定されるものと即断すべきものではない。表現いかんでは、創作性を肯定しうる余地もないわけではないのであって、結局は各記事用見出しの表現を個別具体的に検討し、創作的表現であるといえるかを判断すべきである。

白鳥の写真 本件で主張された読売新聞のウエッブサイト「ヨミウリ・オンライン(YOL)」の365個の見出しは、いずれも事件、事故など社会的出来事、あるいは政治的・経済的出来事などを報道するニュース記事に付された記事見出しだが、個々に検討しても、いずれも各見出しの表現が著作物として保護されるための創作性を有するとはいえない。」とする判断が示されている。

果たして、新聞等の記事の見出しに創作性のある見出しというのはあるのだろうか。あるというのであれば具体的な実例を示して貰わなければ、甚だしく理解し難いというのが本当のところである。

新聞の記事は事実を事実として報道する。そこに創作性など入り込む余地はないのではないか。創作性が入るということは、そこに作為が入るわけで、正確な報道とは相反することのように思われる。本体の記事に創作性がない以上、見出しに創造性を持たせるのは無理なのではないか。

新聞等の記事について、著作権をいうよりは、その記事を作るために掛けた経費の対価を払えという今回の決定は、それなりに説得力があるような気がするのである。

(2005.11.5.)

薬害根絶の日

水曜日, 8月 15th, 2007

『8月24日』が何の日なのか、知っている医療関係者はどの程度いるのか。中でも薬剤師、医師はどの程度承知しているのであろうか。

1999年8月24日、サリドマイド・スモン・薬害エイズなどの悲惨な薬害を引き起こした反省と謝罪の意味を込めて、旧厚生省が省内の前庭に「薬害根絶誓いの碑」を建立した。

これを契機として、被害者団体等が例年『8月24日』に「薬害根絶デー」として国への要望活動などを行っているが、その中で今年は、サリドマイド・スモン・薬害エイズ・ヤコブ病等の薬害訴訟に係わってきた弁護士が、組織的に薬害問題に取り組むための『薬害対策弁護士連絡会(薬害弁連)』を発足させるとともに総会を実施した。

日常的に処方せんを書く医師、その処方せんに基づいて調剤する薬剤師は、当人の意識は別にして、常に何等かの形で薬害に関与してきたことは間違いない。ただ薬剤師の場合、処方せんという物理的な物体による間接的な患者との接触であり、自分の患者という認識は持ちきれない。それだけに自分が勤務する病院の患者が薬害の被害者であったとしても、直接的な罪悪感は持ち得ない。

つまり薬剤師は、自分が薬を直接投与したわけではないという意識が潜在的に存在するため、自らを塀の外において、被害者の痛みを痛みとして受け入れず、係わりのない世界の出来事として見てしまうのである。それはある意味で、薬剤師に社会性がないということであり、薬剤師教育の中で、薬害につて、その発生の背景や原因についての詳細な分析がされておらず、伝達もされていないということに原因があるのかもしれない。

更に薬害に対して薬剤師の係わり、対応の仕方を教育していないということも、薬剤師が薬害を他人事としてみる原因になっているのかもしれない。更にいずれの薬害の場合も、それぞれの関係者の対応のまずさが原因の大きな部分を占め、薬害の発生が人害として取り沙汰されるため、自分とは関係のないこととして、観客席から出ようとしないのかも知れない。

しかし、薬害というほどには集団的な事例ではないとしても、医療現場で働く限り、薬による副作用の発現は避けられず、薬剤師も加害者になり得るということを常に認識しておかなければならない。

現在、薬剤師は、調剤した薬について、発現が予測される重篤な副作用の前駆症状を、印刷した用紙を患者に配布している。しかし、記載されている内容は、業者が電子媒体化した添付文書の内容そのままなのである。その意味では、患者にとっては単なる記号の羅列であり、具体性のない情報の提供を受けているということである。ただし、これは薬剤師も同じであり、前駆症状として紹介されている個別症状について具体的な説明を求めると沈黙してしまう。

薬剤師は、添付文書に記載されている副作用の前駆症状について、より具体的な症状を把握し、その内容の詳細を伝達する責任があるといえる。そのためには重篤な副作用を経験した患者の症状の詳細を、生の声として集める努力しなければならない。残念ながら発現した症状がどの様なものであったのかは、経験者以外は分からないというのが実情なのである。

(2005.9.9.)


  1. 全国薬害被害者団体連絡協議会;http://homepage1.nifty.com/hkr/yakugai/,2005.8.25.
  2. 読売新聞,第46496号,2005.8.25.