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BCAAについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:語彙解釈・略号・BCAA・分枝アミノ酸・分枝鎖アミノ酸・イソロイシン・isoleucine・バリン・valine・ロイシン・ leucine・必須アミノ酸

Q:略号『BCAA』の意味について

A:『BCAA』は『branched chain amino acid』の略号である。分枝アミノ酸又は分枝鎖アミノ酸とも呼ばれる。バリン、ロイシン、イソロイシンなど、側鎖に分子アルキル基をもつアミノ酸で、疎水性アミノ酸である。側鎖は疎水性相互作用に関与し、酵素などの活性中心のポケットにおいて結合部位の形成に寄与している。ロイシンはα-ヘリックス構造の形成を促進し、バリン、ロイシンはβ-構造中に存在していることが多い。これらはヒトにおいて、栄養上の必須アミノ酸である。

蛋白質を構成する20種類のアミノ酸のうち9種類は生体内で全く合成できないか合成量が極めて少ないため、食物として摂取する必要があるもので、これらを必須アミノ酸と呼ぶ。

名称 概要
イソロイシン

(isoleucine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノ-3-メチルn- 吉草酸。Ile又はIと略記される。L型は蛋白質構成アミノ酸の一つ。

C6H13NO2=131.18。

ヒト、ラット、ニワトリなどでは必須アミノ酸。生体内では2-オキソ酪酸から生合成される。

コハク酸経路で分解され、プロピオニル CoAになる。

バリン

(valine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノイソ吉草酸。 Val又はVと略記される。L型は蛋白質を構成する分枝アミノ酸の一つ。C5H11NO2=117.15。

哺乳類、鳥類では必須アミノ酸。ピルビン酸から生成する2-オキソイソ吉草酸でバリンアミノトランスフェラーゼによりアミノ化されて生合成される。

分解も、アミノトランスフェラーゼにより2-オキソイソ吉草酸になり、プロピオニルCoAを経てスクシニルCoAに代謝される。

パントテン酸やペニシリンの前駆体。

ロイシン

(leucine)

脂肪族アミノ酸-中性アミノ酸

2-アミノイソカプロン酸。 Leu又はLと略記される。

L型は蛋白質構成アミノ酸の一つ。

C6H13NO2=131.18。ヒト、ラット、鳥類などで必須アミノ酸。ピルビン酸から2-アセト乳酸、2-オキソイソ吉草酸、2-オキソイソカプロン酸などを経て生合成される。

分解は、2-オキシイソカプロン酸を経てアセチルCoAへ代謝される。

分枝鎖アミノ酸は、特に運動や骨格筋の維持・増量において最も重要な働きをする。分枝鎖アミノ酸は、骨格筋の蛋白質合成を増進し、更に蛋白質分解を抑制する機能を有することが示されており、この作用を生かして術後侵襲期の蛋白栄養状態を改善するため、輸液などに分枝鎖アミノ酸が多用されている。

その他運動選手の骨格筋の維持・増量に使用される例も見られる。また分枝鎖アミノ酸は、血漿の遊離必須アミノ酸の約4割を占め、運動時に必要に応じてエネルギー源として使用されたり、糖新生に重要な役割を果たしている。

分枝鎖アミノ酸はグルコース・アラニンサイクルを構成しており、長時間の持続運動時などの血糖値の維持に重要な役割を果たしている等の報告がされている。

[615.8.BCA:2005.6.17.古泉秀夫]


  1. 今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998
  2. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005
  3. 味の素株式会社・編:アミノ酸ハンドブック;工業調査会,2003