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いわれたくない話

火曜日, 8月 14th, 2007

魍魎亭主人

いささか古い話になるが、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」という旧厚生省が作った育児キャンペーンの惹句ある。モデルになったのが安室奈美恵の亭主SAMとその息子ということで、マスコミにも取り上げられたが、正直に申しあげれば、この台詞、厚生省にだけは言われたくない台詞である。

少子化社会を迎え、女性も貴重な労働力。更に最近の餓鬼共は少し可笑しくはないかということで、父親も家庭生活に係わり、子供の躾に口を出せ。

父親が家庭に居る時間が少ないのは怪しからんということのようである。この意見、厚生省の省内事情を知らなければ、国を憂えて、知恵を絞ったポスターであると評価することが出来るが、省内事情を知っている立場としては、何のこっちゃとということになる。

国立病院に勤務する職員、特に医師以外の職員は、否応なしの転勤が宿命付けられている。しかもその転勤たるや個人の生活は全く無視、ただただ機械的に動かすというもので、例えば同一施設に5年以上勤務する職員は、転勤させる等という甚だ乱暴なものである。それでも昔はとりあえず意向打診があり、子供が小さいの、女房の勤務の関係で単身赴任になるの、年老いた親の面倒を見ているのと、何等かの理由があれば、転勤が除外されたが、最近の話を聞いていると、転勤出来ないなら退職していただく等という恫喝的な話がされているようである。

事務部門の長である事務部長などは、2年毎に施設を転々とし、本来その施設の医療に対する地域住民の要望や地域医療の中で何を期待されているかの意向を探る等という、地域密着型の医療機関としてのモニターの役割を果たすことができないのが実状である。

薬剤師も同じことで、薬剤部科長は2?3年で異動するため、地域の病院薬剤師会ひいては薬剤師活動に何ら貢献することもなく、薬剤師会の方も何か仕事を依頼しても継続性がないからということで、依頼のしようがないというのが実体であり、全く社会性のない生活を送るということになる。

しかも彼らの殆どは単身赴任であり、そのことが理由で体をこわす人間も出てくるということで、家庭における親の存在を示すなどということが出来ない仕組みになっている。

本来、技術職の転勤などというものは、新しい施設に新しい技術を移入する、そのために最新の技術を持つ人間を派遣する。あるいは最先端の技術を持つ施設に転勤させ、技術を取得した段階で元の施設に戻すというのがあるべき姿ではないか。

また、国の病院に勤務する技術屋には、常に最先端の技術の取得を義務づけ、それを広く地域に広げていく等の仕組みを作り、地域全体の技術の向上を図ることが、国民の奉仕者としての公務員の果たすべき役割ではないかと思うが、現状では、国民の税金で、単なるサラリーマンを養成しているといわれても仕方がないというのが実体である。

[2000.7.8.]