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PYYについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・PYY・ペプチド化合物・peptide・peptide結合・peptide hormone・食欲抑制

Q:PYYの略号で標記される物質について

A:PYYの略号はpeptide YYの略記であるとされる。

◆peptideとは2又はそれ以上のアミノ酸がpeptide結合*でしたもの。アミノ酸数10以下のものをオリゴペプチド(oligopeptide)、10以上100以下のアミノ酸で構成されるものをポリペプチド (polypeptide)と呼ぶ。直鎖状のものと環状ペプチドがある。アミノ酸と同様ニンヒドリンで青紫色を呈するが、アミノ酸とは異なりビウレット反応は陽性である。また蛋白質とは異なり透析性である。

*アミノ酸のカルボキシル基と別なアミノ酸のアミノ基間の共有結合

◆peptideは生物界に広く存在し、生物活性を持ったもの-ホルモン(オキシトシン、バソプレシン、アンギオテンシンなど)、、微生物が産生する抗生物質(ペニシリン、グラミシジン、ポリミキシンなど-環状ペプチドが多い。)、有毒なメリチン(melittin)、解毒などに利用されるグルタチオン(glutathione)等数多く見出されている。

◆polypeptideとして自然界に存在するものとして、peptide hormoneがよく知られており、ソマトスタチン(アミノ酸数14)、色素胞刺激ホルモン(αMSH:アミノ酸数13、βMSH:アミノ酸数18)、インスリン(A鎖:アミノ酸数21、B鎖:アミノ酸数30)、グルカゴン(アミノ酸数29)、副腎皮質刺激ホルモン(アミノ酸数39)等数多い。

◆glutenは穀類に含まれる各種蛋白質の総称で、灰褐色で粘着性のある物質であるとされている。glutenが加水分解されたものがgluten-peptideで、鎮痛作用を持つ十数種のpeptideの複合体である。鎮痛作用のみならず、体温低下、血圧低下、呼吸抑制、胃液分泌抑制、食後の血中インスリン増加等の効果が報告されている。

◆Peptide YY(PYY)は、食欲抑制作用のあるpeptide hormoneで、食後に胃のL-cellという内分泌細胞から分泌されると報告されている。PYYのうち『PYY3-36』について、米国の Nastech Pharmaceutical社が鼻腔投与製剤の開発を行い、Merck社と全世界的な提携をしたと発表した。『PYY3-36』は肥満の治療薬として開発されており、第I相臨床試験段階にあるとされる。

◆その他、本品の注射剤に関する報告として、食事の2時間前に注射すると、被験者の食欲が抑えられ、摂取カロリーが30%減るという物質が見つかった。このほど米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」で報じられた。この物質は、人間の体内に自然に存在する蛋白質で、「PYY」と呼ばれる hormoneの一種。この研究を行ったロンドンのハマースミス病院の研究者によると、「PYY」は人間の消化管の内膜の細胞から分泌され、血流に乗って脳に達し、満腹感を感じさせる働きがあるという。

   [011.1.PYY:2005.8.9.古泉秀夫]


  1. 南山堂医学大辞典 改訂17版;南山堂,1992
  2. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 改訂新版;東洋医学舎,2002-2003
  3. BioToday:http://www.biotoday.com/view.php?n=4790,2005.8.9.
  4. http://medwave.nikkeibp.co.jp/show/nh/news/265628,2005.8.9.