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RUSHについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・RUSH・ラッシュ・脱法ドラッグ・ニトライト・nitrite・亜硝酸エステル・亜硝酸アミル・amyl nitrite・亜硝酸イソブチル・isobutyl nitrite・亜硝酸ブチル・n-butyl nitrite

Q:脱法ドラッグRUSHの販売会社が厚生労働省に刑事告発処分されたと聞くがRushとは何か

A:『Rush』の訳語として「殺到、急激な増加、急増、感情が沸き上がること、麻薬の効果がドッと出ていい気分になること、多忙」等が見られる。その他アメリカ合衆国PWD社製造のRUSHとする記載もされており、成分として亜硝酸エステルがいわれている。

新聞報道では、

「若者の間で乱用が問題となっている脱法ドラッグ「RUSH(ラッシュ)」を大量に輸入していたとして、厚生労働省は30日、化粧品輸入販売会社「リッツ」(東京都新宿区)を薬事法違反(無承認無許可医薬品の販売など)の疑いで警視庁に刑事告発した。これを受けて、同庁生活環境課は30日朝から、同社の関係先の捜索に乗り出した。同省が脱法ドラッグで刑事告発したのは初めて。

厚労省や米国消費者製品安全委員会(CPSC)によると、同社は、RUSHを米インディアナ州の製造元から横浜港経由で輸入し、脱法ドラッグとして使用されることを知りながら、別の業者に転売していた疑いが持たれている。厚労省は昨年6月、CPSCから寄せられた情報を基に調査を開始。同社が販売中止に応じないため、刑事告発した。同社は、RUSHの国内流通分の大半を輸入していたとみられ、警視庁は国内販売網などの全容解明を目指す[読売新聞,2006.1.30.]。」

とするものである。

亜硝酸エステル(ester of nitrous acid、nitrous ester)として、亜硝酸アミル(amyl nitrite)が存在するが、本品は医療用医薬品であり、無許可販売は薬事法違反である。亜硝酸アミルの適用は吸入で、平滑筋弛緩、血管拡張作用が報告されている。

その他、ニトライト(nitrite)とする瓶ラベルの貼付されたものも見られる。これらの原料は亜硝酸ブチル(n-butyl nitrite)と亜硝酸イソブチル(isobutyl nitrite)とされている。

亜硝酸ブチル(n-butyl nitrite)

別名として亜硝酸n-ブチル、ブチルナイトライト等が報告されており、稀土類アジ化合物の製造に使用するとされている。

  • 性状:油状液体、特異な臭い。放置すると分解する。火災危険:中等度。溶解性:水に難溶、アルコール、エーテルと混和。
  • 致死量:不明。
  • 代謝:肺から速やかに体内に入り、NO2-とあるコールに加水分解する。
  • 症状:吸入により平滑筋弛緩、血管拡張、血圧低下、脈拍数増大、頭痛などの症状を示す。血圧降下作用はイソブチル、2級・3級ブチル化合物はいずれもn-亜硝酸ブチルに比べて強い。上記症状は連続曝露により耐性を獲得して軽減するが、この耐性は1週間曝露から外れれば消失する。

亜硝酸イソブチル(isobutyl nitrite)

亜硝酸アミルと同様肺から吸収された後、加水分解を受け、NO2になると考えられている。ただし、芳香剤として使用されるが、医薬品としては用いられない。血管平滑筋弛緩作用、酸化作用によりメトヘモグロビン血症を生じる等の報告がみられる。

その他、亜硝酸ブチルは、亜硝酸アミルに類似しているが、医療用としては使用されない。亜硝酸ブチルと亜硝酸イソブチルは芳香剤用に商業目的で販売することは認められているが、それ以外の用途での販売は禁止されている。これら3種類の亜硝酸剤は、いずれも吸入すると一時的に血圧が下がり、めまいや紅潮が生じ、その後に心拍が速くなる。

これらの作用が組み合わさることで、興奮や幸福感が得られ、性的快感が高まると考えて乱用する者もいる。

  [011.1.RUS:2006.2.3.古泉秀夫・2006.10.6.改訂]


  1. 薬科学大辞典 第3版;広川書店,2001
  2. http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/print/sec07/ch108/ch108m.html,2006.1.31.
  3. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992
  4. http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060130i104.htm,2006.2.3.
  5. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル,2005