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BHAについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・食品添加物・BHA・butyl hydroxyanisol・ブチルヒドロキシアニソール・食品添加物

Q:食品添加物でBHAの略号で標記される物質について

A:BHAの略号で標記される物質は、butyl hydroxyanisol(ブチルヒドロキシアニソール)で、食品添加物公定書に収載されている。C11H16O2=180.25。化学名:mixture of 2-(2-methylpropyl)-4-methoxyphenol and 3-(2-methylpropyl)-4-methoxyphenol[25013-16-5]。

本品は無色若しくは僅かに黄褐色を帯びた結晶若しくは塊、又は白色の結晶性の粉末で、僅かに特異な臭いがある[長期保存すると黄褐色を帯びることがあるラード、コーン油などの油脂、パラフィンなどによく溶ける(30-50%)、プロピレングリコール、アセトン、エタノール等にも極めてよく溶けるが、水には殆ど溶けない]。

本品は異性体[1]及び[2]の混合物であるが、最近では[1]の含量が高くなっているので、[1]の純品のmp 64℃に近いものが多い。[1]の含量95%のものがmp 62℃、90%のものがmp 57℃。

  • 来歴:初期にはo-アルキル-p-アルコキシフェノールがガソリンに対し酸化防止効果を有することが見出された。1949年p-メトキシフェノールとイソブテンを縮合させ、本品を製造した。同時に本品は油脂類に対しても酸化防止効果があることが報告され、食用油脂への使用が始まった。我が国では昭和29年食品添加物として指定された。初期には[1]、[2]の混合物が使用されていたが、[1]の効力が[2]に比して、1.5-2倍優れているので、最近では[2]の含量は極めて少ない。
    本品はラットにおける慢性毒性実験で扁平上皮癌が報告され、昭和57年8月2日にパーム原料油への使用に限定する旨の規格基準が公布された。その後F/W(国際規格)食品添加物専門家委員会(1988年)で、ラットの慢性毒性試験で無影響量が求められることからADI(acceptable daily intake(1日許容摂取量):0.5mg/kg)が設定された。このような状況から昭和58年2月1日告示第54号で使用禁止の施行は現在猶予されているが、代替品があり、本品は使用しないよう行政指導が行われている。
  • 用途:油脂の製造に用いられるパーム原料油及び原料油の酸化防止剤として用いられる。パーム油は大豆油に次いで生産量(輸入量)の多い油脂で、大部分がマーガリンなどの食用油脂として利用される。パーム油は常温で個体の油脂であるが、原油を海上輸送する期間中溶かした状態におく必要がある。我が国ではパーム原油に限り本品の添加が認められている。酸化防止剤。
  • 毒性:BHAの発癌は、キノン代謝物(BHQ)の直接の結合により臓器及び組織のチオールの欠乏を起こし、BHAのキノンとヒドロキノンの代謝物の酸化還元の繰返し反応により生じた酸素ラジカルによる可能性が推測されている。
マウス(雄)経口 1.10g/kg
マウス(雌)経口 1.32g/kg
ラット(雄)経口 2.00g/kg
ラット(雌)経口 2.00g/kg
ラット 経口 2.2->5g/kg
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マウス、ラットとも経口投与10分後当たりで歩行失調状態となり、呼吸促迫し、運動量が減少して死亡するが、死亡時に消化管の出血、肝の鬱血が認められている。

  • 特殊毒性:離乳後のラットをラードとともにBHA 0.003、0.03及び0.06%を含有する食餌で22ヵ月飼育し、その間雌雄を交配させ、新生仔にも出生前と同じBHAを含む食餌を与えて観察したが、妊娠の成立と維持、分娩、新生仔数、死亡率並びにその後の発育状態にBHA投与群と対照群との間に差は認められず、組織検査でも異常は認められなかった。この実験では開始1年目に肺炎が多発し、多くの死亡例が認められたので、更に0.12%BHA群を加えて同様の実験を21ヵ月行ったが、各種検査で対照群との間で差が認められず、BHAによる障害は観察されなかった。
  • 発癌性:BHAを0.5及び2%の濃度に混じた飼料を雌雄の6週齢F344ラットに104週間投与したところ、前胃の乳頭腫が雄の高用量群で 52/52(100%)、雌の高用量群で49/51(96%)に見られ、また前胃の扁平上皮癌が雄の高用量群で18/52(34.6%)、雌の高用量群で 15/51(29.4%)に見られた。一方、対照群にはこれらの変化は認められなかった。

なお、以下に参考として厚生省環境衛生局長の発出文書を収載する。

『食品添加物としてのブチルヒドロキシアニソール及び臭素酸カリウムの取扱いについて』

昭和57年5月10日

環食化第19号

各都道府県知事

各政令市市長 殿

各特別区区長

厚生省環境衛生局長

標記については、昭和57年5月6日に開催された食品衛生調査会毒性部会、同7日に開催された同添加物部会及び同常任委員会において審議された結果、別紙のとおり食品衛生調査会から厚生大臣に意見具申された。

この意見具申に基づき、近く、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)中食品添加物であるブチルヒドロキシアニソール(以下「BHA」という。)及び臭素酸カリウムに係る使用基準を改正することとしている。

なお、改正に際してはGATTの「貿易の技術的障害に関する協定」により国際的に所定の手続きが必要とされており、この手続きを了した上で、改正することとなるので、改正告示の施行までの間、前記の添加物の使用等について、下記の点につき関係者への周知徹底及び指導方よろしくお願いする。

1.BHAの取扱いについて

BHA及びこれを含む製剤は、パーム油及びパーム核油の製造に用いるパーム原油及びパーム核原油以外の食品には使用しないこと。

2.臭素酸カリウムの取扱いについて

臭素酸カリウム及びこれを含む製剤は、パン以外の食品に使用しないこと。

なお、臭素酸カリウム及びこれを含む製剤の使用量は、臭素酸として小麦粉1kgにつき0.03g以下でなければならない。

[011.1.BHA:2006.4.10.古泉秀夫]


  1. 薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
  2. 谷村顕雄・他:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  3. 財団法人日本食品化学研究振興財団:http://www.ffcr.or.jp/,2006.4.10.

『食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について』

昭和57年8月2日

環食化第27号

各都道府県知事

各政令市市長 殿

各特別区区長

厚生省環境衛生局長

食品衛生法施行規則(昭和23年7月厚生省令第23号、以下「省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第三 370号、以下「告示」という。)の一部が、それぞれ昭和57年8月2日厚生省令第33号及び厚生省告示第136号をもって改正されたので、下記の事項に留意の上その運用に遺憾のないようにされたい。

第一 改正の要旨

1. 省令関係

輸出国政府機関の発行する証明書の添付を要する獣畜の肉及び臓器の製品に係る規定が改正されるとともに、表示を必要とする食品等のうち、ハム、ソーセージ及びベーコンの類に係る規定について表現が改められたこと。

2.告示関係

  1. 食肉製品及び鯨肉製品の成分規格について、添加物の使用基準改正に伴う所要の改正が行われたこと。
  2. ブチルヒドロキシアニソールの使用基準の改正に伴い、油脂の成分規格が新たに設定されたこと。
  3. 臭素酸カリウム及びブチルヒドロキシアニソールの使用基準が全面改正されたこと。
  4. ブチルヒドロキシアニソールの使用基準改正に伴い、酢酸エチル及びジブチルヒドロキシトルエンの使用基準が一部改正されたこと。
  5. 亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム(結晶)、亜硫酸ナトリウム(無水)、次亜硫酸ナトリウム、無水亜硫酸及びメタ重亜硫酸カリウム(以下「亜硫酸類」という。)、亜硝酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、バラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルの使用基準の一部が改正されたこと。

第二 改正の要点

1. 省令関係

  1. 外国から食肉等を輸入する際、食品衛生法第五条第二項に基づき、輸出国政府機関の発行する衛生証明書又はその写しを添付しなければならない獣畜(牛、馬、豚、めん羊、山羊及び水牛に限る。)の肉及び臓器の製品として「ハム、ソーセージ及びベーコン」が、「食肉製品」と改められたこと。
  2. 表示を必要とする食品等の範囲を定めた別表第三中第四号の「ハム、ソーセージ及びベーコンの類」が「食肉製品」と改められたこと。

2. 告示関係

  1. 食肉製品及び鯨肉製品の成分規格について
    亜硝酸類に係る規定中「食肉ハム、食肉ソーセージ、食肉ベーコン、食肉コンビーフ」が「食肉製品」に改められたこと。
  2. 油脂の成分規格について
    油脂(油脂の製造に用いるパーム原料油及びパーム核原料油を除く。)はブチルヒドロキソアニソールを含有するものであってはならないとされたこと。
  3. 臭素酸カリウムの使用基準についてア.パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品に使用してはならないとされ、さらに使用量は臭素酸として小麦粉1kgにつき0.03g以下とされたこと。

    イ.最終食品の完成前に分解又は除去しなければならないとされたこと。

  4. ブチルヒドロキソアニソールの使用基準について
    油脂の製造に用いるパーム原料油及びパーム核原料油以外の食品に使用してはならないとされたこと。
  5. 酢酸エチル及びジブチルヒドロキシトルェソの使用基準について
    ブチルヒドロキシアニソールの使用基準改正に伴い、ブチルヒドロキシアニソールとの併用に係る部分が削除されたこと。
  6. 亜硫酸類、ソルビン酸及びソルビン酸カリウムの使用基準について
    雑酒について、果実酒と同様の使用基準が適用されたこと。
  7. 亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムの使用基準について
    「食肉ハム、食肉ソーセージ、食肉ベーコン及び食肉コンビーフ」が「食肉製品」と改められたこと。
  8. 安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキジ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルの使用基準についてア.炭酸を含有する清涼飲料水について、炭酸を含有しない清涼飲料水と同様の使用基準が適用されたこと。

    イ.シロップについては、その一部のものが清涼飲料水として取り扱われてきたが、今回これを明確に区別し、シロップとして使用基準が適用されたこと。

  9. サッカリンナトリウムの使用基準について前記(8)イ.と同様の改正が行われたこと。

    第三 施行期日

    (省略)