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薬局苦情拾遺[4]

木曜日, 9月 27th, 2007

医薬品情報2 1

古泉秀夫

7)処方せん料は要らない

H18.4.14.「日本薬剤師会は医薬分業の説明不足」(患者・電話)

日本薬剤師会のパンフレットには、分業のメリットばかり書いてあって、処方せん発行にはコストがかかることが何も書いていない。医薬分業の仕組みや意義は理解するが、処方せんを発行するのに処方せん料がかかるとは何事か、薬剤師会は医師会に処方せん料をなくすように圧力をかけるべきだ。医師と薬剤師の勝手な都合で患者負担ばかり増やされては困る。

またコストのことをきちんと(パンフレットで)説明しないのは患者をバカにしている。医療にかかる料金や内容が患者に分からなすぎる。

[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2466:331(2007)]。

医薬分業の仕組みや意義を理解するとしながら、処方せん料が気に入らないというのでは、些か論理の展開に矛盾があると言われても仕方がない。

患者を診断した結果、書かれる『処方』は、その医師が永年にわたって研鑽・蓄積してきた知識に基づいて書かれるもので、それが『処方せん』という形式として患者に渡される。つまり『処方』というのは、その医師の知的財産であり、その財産を『処方せん』という形式で手に入れるとすれば、当然の結果として対価(処方せん料)の支払いが求められる。

日本人の悪い癖で、眼に見えない知的財産に対して、それを利用しても金を支払うなどと言う実行行為は思いも及ばないことのようであるが、むしろ無形の知識に対する対価の方が高いことを理解すべきである。

『処方せん料』という言い方は院外処方せんの場合で、68点(680円)、1枚の処方せんに薬が7種類以上書かれている場合には40点に減点される。更に後発医薬品を含んだり、長期処方した場合には、基本点数に点数が加算される。

因みに病院内で調剤される場合、『処方料』に名前が変わり42点(420円)、1枚の処方せんに薬が7種類以上書かれている場合、29点に減点される。

金額的に見た場合、処方せん料は決して高くはない。勿論、病気が治らなければ何の役にも立たない処方せんということになり、その処方せんの対価は無闇に高いものに付くことになるが、病気が治れば、高い安いの話ではなくなる。

ただ、同じ処方せんなのに院外と院内で差があるのはおかしいのではないかという疑念を持たれる方もおられるかもしれないが、これは規制当局が、しゃにむに医薬分業を前進させようという魂胆で、院外処方せん誘導目的で点数の設定をしているということである。また、1枚の処方せんに7種類以上の薬剤が記載されている場合、処方せん料(処方料)が減点されるのも、1枚の処方せん当たりの薬剤数の削減を狙った厚生労働省の誘導的点数設定であるといえる。つまり薬の種類が多ければ、それだけ健保の財政に悪影響を及ぼすということである。

またこの問題は、薬剤師会と医師会が話し合って決めることではなく、厚生労働大臣が診療報酬の点数を決めているので、もし不満があるなら厚生労働省に直接言うことが必要だろう。自由主義経済の中にあって、医療関係だけは統制経済下にあるといわれる所以である。

8)薬の説明書は要らないのに

H18.4.19.「薬の説明は要らないのに」(患者・電話)

薬局で「いつも同じ薬だから説明書は要らない」と言っていたのに、この4月からまた発行された。薬局で説明を求めたところ、「(説明書があろうとなかろうと)値段は変わらない」というだけで、よく分からなかった。さらに詳しく説明を求めたところ、窓口の支払額が100円安くなった。

値段のことだけでなく、1回目は説明が欲しいと思うが、同じ薬であれば説明書や説明は要らないというのが多くの患者の意見ではないだろうか。保険財政が逼迫しているのだから、厚生労働省や業界団体もよく考えてもらいたい。

[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2466:331(2007)]。

情報の提供については、従来は「患者の求めに応じて」行うこととされていたが、平成14年4月1日より、薬剤師による情報提供の義務(薬剤師法第25条2項)が規定されたことから算定用件の見直しが行われた。薬剤情報提供については、患者の求めに応じて行うだけではなく、薬剤師として情報提供の必要性が認められる場合には、提供する責務があるということである。

[1]『薬剤服用歴管理料』は、保険薬剤師が、患者ごとに作成した薬剤服用歴の記録に基づいて処方された薬剤の重複投薬、相互作用、薬物アレルギー等を確認した上で、次に掲げる事項その他の事項を情報提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明及び指導を患者又はその家族等に行った場合に算定する。

ア 当該薬剤の名称(一般名処方による処方せん又は「後発医薬品への変更可」欄に処方医の署名若しくは記名・押印のある処方せんの場合においては、現に調剤した薬剤の名称)、剤型(色、剤型等)

イ 用法、用量、効能、効果

ウ 副作用及び相互作用

エ 服用及び保管取扱い上の注意事項

オ 保険薬局の名称、情報提供を行った保険薬剤師の氏名

カ 保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

[2]『薬剤服用歴管理料』は、同一患者について第1回目の処方せん受付時から算定できる。

[3] 『薬剤服用歴管理料』を算定する場合は、薬剤服用歴の記録に、次の事項等を記載する。

ア 氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・必要に応じて緊急時の連絡先等の患者についての記録

イ 処方した保険医療機関名及び保険医氏名・処方日・処方内容等の処方についての記録

ウ 調剤日・処方内容に関する照会の要点等の調剤についての記録

エ 患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録

オ 患者又はその家族等からの相談事項の要点

カ 服薬状況

キ 患者の服薬中の体調の変化

ク 併用薬(一般用医薬品を含む。)の情報

ケ 合併症の情報

コ 他科受診の有無

サ 副作用が疑われる症状の有無

シ 飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る。)の摂取状況等

ス 指導した薬剤師の氏名

[4]薬剤服用歴の記録は、同一患者についての全ての記録が必要に応じ直ちに参照できるよう保存・管理する。

[5]『情報提供』は、文書又はこれに準ずるものにより行うこととし、当該文書は、調剤を行った全ての薬剤の情報が一覧できるようなものとする。ただし、調剤をした薬剤をやむを得ず複数の薬袋に入れ交付する場合は、薬袋ごとに一覧できる文書とすることが出来る。

[6]『これに準ずるもの』とは、視覚障害者に対する点字、カセットテープ又はボイスレコーダーへの録音その他のものをいう。

[7]効能、効果、副作用及び相互作用に関する記載は、患者等が理解しやすい表現によるものとする。また、提供する情報の内容については正確を期すこととし、文書において薬剤の効能・効果等について誤解を招く表現を用いることや、調剤した薬剤と無関係の事項を記載しないこと。

[8]情報提供に当たっては、抗悪性腫瘍剤や複数の異なる薬効を有する薬剤等であって特に配慮が必要と考えられるものについては、情報提供の前に処方せん発行医に確認する等慎重に対応すること。

[9]薬剤服用歴の記録は、最終の記入の日から起算して3年間保存する。

[10]在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定できない。

『薬剤服用歴管理料』は、上記の[1]-[10]を満たす場合に、処方せん受付時において22点を算定する。ただし、『結核予防法』第34条にかかるものは算定対象にならないので注意を要する。

なお、例示として示されている記録事項は、患者や使用する薬剤などに応じて適宜判断するもので、保険薬剤師には、患者やその家族などに適切な服薬指導を行う上で、必要な情報を得て、それを記録し、次回の調剤時に活用することが求められる。

最後の『保険薬剤師には、患者やその家族などに適切な服薬指導を行う上で、必要な情報を得て、それを記録し、次回の調剤時に活用する』とされている以上、薬が替わらない限り毎回同じ印刷物を提供する等という無精なことは避けるべきである。更に、服薬状況を確認し、その会話の中から副作用の前駆症状等を補足し、更には医師の処方以外の医薬品あるいはOTC薬、いわゆる健康食品等の摂取についても眼を光らせるべきである。

患者に無駄な服薬指導だと思われることは、専門家としては恥ずべきことである。現在治療している病気に対して、風邪の時期になれば風邪を引かないための予防方法、食中りの時期になれば、食べ物の注意等、新たな病気を背負い込むことで本来の病気の治療が困難にならないための注意とう、細かな気配りをすることが必要ではないか。

1)日本薬剤師会・編:保険薬局業務指針2006年版;薬事日報社,2006

(2007.9.9.)

薬局苦情拾遺[3]

木曜日, 9月 27th, 2007

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 医薬品情報21

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 古泉秀夫

5)プライバシーへの配慮

H18.2.27.プライバシーへの配慮を御願いします(電話)

狭い薬局で病名や病状を聞かれるのは苦痛です。私(女性)は泌尿器の病気ですが、出来ればプライバシーが守られるような配慮を薬局に考えてもらいたいと思います。

H18.3.17.薬局窓口で話されたため他人に話を聞かれた(電話)

睡眠障害の薬を調剤され渡される時、薬局の窓口で話を聞かれたため、薬局内にいた他の人に話を聞かれ、被害を受けた。当該薬局の薬剤師に、薬剤師会から注意してもらいたい。

[薬事新報,No.2452:1324,2006]

 薬の説明をする際に、患者のプライバシーに配慮するための設備は、殆どの場合、調剤薬局では見あたらない。

 最も病院薬局でも、患者を対象にした“薬相談室”なる独立した室を用意したのは極く最近のことで、院外処方せんの発行が本格化してからの話である。それまでは毎日700-800枚の処方せんを、入院調剤業務の始まる15時前迄に、完全に終了させるということで、残念ながら薬の説明などしている暇がなかったというのが実情である。従って、特に質問があるという意思表示をした人にだけ対応するということで処理してきたが、これは病院勤務薬剤師が特段不親切だった訳ではなく、処方せん枚数に対して薬剤師の配置人院が極端に少なく、油断していると夕方9時、10時まで仕事に引っ張られるという悲劇的な状況に陥ることになったからである。

 現在ある調剤薬局を、患者のプライバシーに配慮した説明が出来る窓口に改修することは当然のこととして、新しく薬局を作る場合には、患者のプライバシーに十分配慮した窓口を作ると共に、在宅・訪問医療のための注射薬調剤等のできる無菌調製室を設置することも必要である。何しろ今後の薬剤師教育では、調剤薬局も学生自習の受け入れ施設となることが決定している。不十分な設備の場所で教育したとしてもろくな人材は育てられない。教育現場として相応しいものであるためには、設備すべき最低の要件を決定し、教育環境を整えるべきである。その中には当然患者サービスの一環としてのプライバシー確保に重点を置いた設備とすることが求められる。

 現状で、直ちに改善することが困難だというのであれば、接遇の方法を工夫すべきである。調剤薬局の待合室に座っていると、周りに誰がいようとお構いなしに大声で喋っている薬剤師がいるが、知識があることをひけらかして戴く必要はない訳で、周りに人のいないことを確認した上で当人にのみ聞こえる程度の小声で話しかければいい訳である。

 何れにしろ薬局中に響き渡る様な声でお話しいただく必要はないわけである。

 2007年4月に改正された医療法で、保険薬局が『医療提供施設』として指定され、医療提供体制に組み入れられることになった。何時までも従来型の薬局でいる訳にはいかないはずである。

6)調剤薬への異物混入

H18.3.30.薬剤に虫が混入していたが(電話)

 処方せんを薬局に預けておいて、後日薬剤を取りに行ったところ、一包化された薬剤に虫が混入していた。指摘したところ、薬局の対応がよくなかった。謝らないうえに、作り直すからもう一度薬局に来てくれとのこと。何とか指導できないか[薬事新報,No.2452:1324(2006)]。

H.16.6.30.「○○薬局について」(患者の家族:メール)

 ××市の○○薬局で薬をもらい、子供が飲もうとしてら、赤い粒々が入っていると気付きました。すぐに薬局に持って行くと、前の人の抗生物質が混ざったということです。

こんなことはよくあることなのですか?。もうこの薬局は信用できません[薬事新報,No.2376:709(2005)。

 素人である患者が気付く程の物を見逃すということは、専門家としては恥ずべきことである。調剤の完了形は、最終的な鑑査を経て終了する訳で、処方せんと調剤薬を突合するという作業と同時に、出来上がった薬の中に異物が混入していないかどうか、薬袋の用法・用量は医師の処方通り転記されているか、患者の氏名は間違っていないか等について点検する。更に一包化した場合には、その一つ一つに異物の混入がされていないことを視認しなければならない。

 少なくとも分包した医薬品の中に昆虫が入っていたのに気付かず、そのまま渡してしまったなどというのは、素人同然といわなければならない。更に謝りもしなければ、作り直すから取りに来いというなどは、仕事で犯した失敗がその後にどう影響していくかを全く考えていないということである。少なくとも病院薬局での経験からいえば、先ず最初に誠に申し訳ないというお詫びがあり、作り直した薬はお届けするというのが通常の対応の仕方である。自分の失敗を棚に上げ、取りに来てくれ等という言い種は相手に対して失礼であり、調剤薬への異物混入も調剤過誤であるということの理解が足りていないのではないかと思われる。

 散剤分包器を用いる場合、最も注意しなければならないのは、分包器の機種によっては、直前に分封した散剤が器壁に付着した状態になっており、新しく分包した薬剤に異物として入り込むことがある点である。特に着色された細粒剤は、その後に行われる白色の散剤の中に入り込むことがあり、甚だ目立つ状況が到来する。

 このcontaminationを回避するための方法は、一つは強力な電気掃除機で、機械の操作が終わる度に吸引清掃することである。この工程を実施することで、相当の効果が得られるが、微粉末を吸引するために、工業用の相当高度な吸引力を持つ機種でなければ、直ぐに壊れてしまう。更にこの掃除機は、散剤調剤専用として使用し、他の清掃などに使用するのはもってのほかである。

 この機械的な操作でcontaminationが回避できないことが予測される場合、乳糖を器械上に撒いて一度分包器を稼働させ、乳糖で分包器を清拭する。勿論この乳糖は廃棄する。

 散剤調剤をするうえで怖いのは、このcontaminationは、薬物アレルギーの既往者に、過敏症を発現させる危険性を内在させているということである。もし、調剤した薬剤師が専門職として自負しているのであれば、このような危険があることを熟知していなければならないはずである。

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? (2007.8.11.)

「Torcetrapibについて」

水曜日, 9月 12th, 2007

KW:薬名検索・CP-529,414・Torcetrapib・トルセトラピブ・CETP阻害剤・コレステリルエステル転送蛋白阻害剤・JTT-705・JTT-302

Q:最近、善玉コレステロールを上昇させる新薬(torcetrapib)が、国外で開発されているというが、このような特性を持った既存のコレステロール薬はあるか。この新薬が注目される理由は何か。また、配合剤として開発されている意味

A:トルセトラピブ(torcetrapib)は、血液中のCETP(cholesteryl ester transfer protein:コレステリルエステル転送蛋白)阻害剤として開発された薬物である。

CETPは末梢のHDL-コレステロールを肝に逆転送して代謝させる蛋白で、高HDL血症を呈している場合、CETP欠損が疑われるとされている。

CETPは血管壁などの末梢組織から肝臓へコレステロールを逆転送して、処理・排泄に働く蛋白である。

HDL(高比重リポ蛋白)内の余剰コレステリルエステルは、CETPを介してapoB含有リポ蛋白(LDL、 VLDL)に転送され、LDL(低比重リポ蛋白)レセプターを介して肝細胞に取り込まれる。家族性CETP欠損症患者では、この転送系が欠損しているためほぼ例外なく高 HDL血症となることが知られている。

torcetrapibは、CETP欠損症を発見した金沢大の馬渕宏教授(脂質研究講座)らの研究成果を元に、米国・ファイザー製薬が開発したCETP抑制作用を有する薬物である。従来のLDL-コレステロールを低下させる薬剤との比較でいえば、torcetrapibはHDL-Cを増やす、画期的な効果があるという。

CEPT阻害剤として開発段階にあるものとして、次の薬剤が報告されている。

薬品名

会社名

概要

torcetrapib/atorvastatin配合剤

(米・ファイザー)

新配合医薬品。コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害剤のtorcetrapibとスタチン系高脂血症剤atorvastatinの配合剤。適応は高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症の治療に用いる。HDL-C値が低い患者に対しtorcetrapibを用いてCETPを阻害するとHDL-Cが著しく増加し、LDL-C値が低下した。この効果はatorvastatinと併用した場合にも認められた。高コレステロール血症患者19例に120mgを4週間投与した結果、血漿中HDL-Cが46%増加した。また本剤とatorvastatin併用投与では、HDL-Cが61%増加LDL-Cが17%減少した。米では2008年に発売を予定していた。国内では2008年に申請、2010年発売を予定している

JTT-302

(日本たばこ)

日本たばこ産業で創薬されたHDL中のコレステロールをLDLに転送するCETPを阻害することにより、血中HDLを増加させる高脂血症治療剤。経口剤。2005年海外で臨床治験開始

JTT-705

(日本たばこ)

日本ではphese I、海外ではphese IIまで治験が進行(2005年)軽症な高脂血症患者に1日量300mg、600mg、900mgを経口投与すると4週後にHDL-Cが用量依存性に最大33.9%迄増加した。日本たばこ産業で創薬されたHDL(高密度リポ蛋白)中のコレステロールをLDL(低密度リポ蛋白)に転送する蛋白質(コレステリルエステル転送蛋白)の活性を阻害する高脂血症治療剤。経口剤。CETPの活性を阻害することで、VLDL、HDL-C値を上昇させる一方、LDL値を低下させて、血管内の脂質低下を防ぐこと、抗動脈硬化作用のかなりの部分をHDL-L増加作用が担っていることを動物実験で確認した

CP-529,414

(torcetrapib)

(米・ファイザー)

本剤を10-120mg投与するとHDL-Cが16-91%上昇。また高用量投与ではLDL-Cも低下(42%)した。

CETP阻害剤は、確実にHDL-Cを増加させる。しかし、CETP欠損症で動脈硬化が多いという報告と、少ないという報告があり、CETP阻害剤の使用について慎重な意見もある。従って、我が国でCETP阻害剤が臨床応用されるまでに、まだかなり時間がかかると考えられている。

torcetrapib/atorvastatin配合剤の開発について、『新薬が販売承認される時、承認される対象疾患、用法用量などは、基本的に第III相比較臨床試験で用いられた対象疾患、用法用量などに従って決められる。新薬の第III相比較臨床試験デザインは、そういう意味で非常に重要な位置を占めている。そのことを悪用して特許切れが近い自社の主力製品を、注目されている自社新薬に併用させて特許切れ後も強引に用いさせようとする露骨な営業戦略が、世界最大の製薬企業ファイザーによってとられ、これを批判する論説が米国のNEJM誌に掲載された(NEJM352,2573- 76,2005.6.23)。』とする報告が見られる。

FDA(米国食品医薬品局)には、ファイザーからtorcetrapibの単独データや他の後発品スタチンとの併用データでなく、torcetrapib/atorvastatin配合錠のデータのみが提出されるので、FDA(米国食品医薬品局)はこの上乗せ効果が実証されれば、本剤をatorvastatin(リピトール)に上乗せして用いる用法・用量のみで承認すると見られている。

atorvastatinは、現在世界で最も売上高の大きい医薬品として知られる、コレステロール低下剤[LDL-C低下剤]で、ファイザーの年間全利益の半分は、本品で得られている。本品は2010年に特許が切れる。今回のtorcetrapibの比較臨床試験のデザインは、それを見越してのファイザーの営業戦略と見られている。

一方、ファイザー社は、同社の科学者が長年かけてCETPの働きを阻害する化合物を見出す努力を続けてきた。その初期段階で発見された最も有望な化合物が、今ではtorcetrapibとして知られているCP-529,414である。ファイザー社は更に数年を費やし、その化合物の物理的特性の改善およびtorcetrapibの作用機序の解明にあたり、その結果、1999年にはヒトに投与することが可能になった。しかし、torcetrapib単独ではLDL-C値を十分に下げることはできなかったため広範囲に研究されLDL-C値の低下に非常に効果的であることが実証されているatorvastatinとの併用が決定されたとしている。

現在、第III相臨床試験段階ある薬剤であり、今後どのような結果が得られるか不明であるため、単独あるいは配合剤の優位性を判断することは困難であるが、少なくともatorvastatinの副作用を抑制し効果を増大できるのであれば、配合剤として開発する価値はあるといえる。

追記:治験薬使用患者群の死亡と心臓血管イベント(収縮期血圧上昇)が対照のプラセボー群との比較で、不均衡が見られるとして、全開発プログラム打ち切りを速断したの報道がされた。

1)三井田孝・他:新薬展望2005第III部治療における最新の新薬の位置付け-新薬の広場-高脂血症治療薬;医薬ジャーナル,41(S-1):483-491(2005)

2)治験薬一覧表;New Current,17(14):64(2006.20.)

3)http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=100,2006.11.9.

4)http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2005/2005_06_29.html,2006.11.9.

5)米ファイザー「トルセトラピブ」を開発中止 リピトール配合用の期待の新薬 収縮期血圧予想以上の上昇で;RIS-FAX,?第4755号,2006.12.4.

[011.1.TOR:2006.11.9.古泉秀夫]

「ラウレス硫酸ナトリウムについて」

水曜日, 9月 12th, 2007

KW:薬名検索・ラウレス硫酸ナトリウム・sodium laureth sulfate・SLES・ラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium laurylether sulfate・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium polyxyethylene laurylether sulfate

Q:ラウレス硫酸ナトリウムについて

A:ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate:SLES)は、別名としてラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium laurylether sulfate)。化学名としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium polyxyethylene laurylether sulfate:SPLES)等が報告されているが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのINCI名が『sodium laureth sulfate(ラウレス硫酸ナトリウム)』である。

本品は定量するとき、表示量の90-110%に対応するポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム[C12H25NaO4・(C2H4O)n]を含む。本品は無色-淡黄色の液又はワセリン様の物質で、僅かに特異な臭いがある。

1933年にUlrich、Saurweinによる報告が最初である。ポリオキシエチレン基を持つ非イオン界面活性剤の末端水酸基を硫酸化して得られ、疎水基の種類、オキシエチレン鎖長、対イオンの種類により数多くの化学構造が考えられるが、この型のものが液体シャンプー用原料を中心に洗浄剤、起泡剤として1950年代中頃から市販品が登場し広く普及するに至っている。

ラウリルアルコールに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンラウリルエーテルをクロルスルホン酸、又は無水硫酸で硫酸化し、水酸化ナトリウム液で中和して製造する。硫酸化はラウリル硫酸ナトリウムの製法に準じる。

性状:市販品は主として23-30%水溶液、若しくは60-70%ワセリン様で無色-淡黄色である。pH:7.5(1%水溶液)。水に溶解する。エタノールに溶ける。キシレンには不溶。一般性状は酸化エチレンの付加モル数により異なり、モル数が増大すれば水溶性が上昇し、溶液粘度は減少する。未反応のラウリルエーテルや無機塩の存在は粘度を上昇させる。酸化エチレンの付加モル数が2-4の硫酸塩が刺激性、溶解性、粘度、泡立ちの点から適当とされ、広く用いられている。本品は硫酸エステル塩であるため、酸性では分解する。

付加モル数 SPLES分子量
1 332.44
2 376.49
3 420.54

作用:本品はラウリル硫酸Naよりも皮膚に対する作用が温和で刺激が少なく、シャンプーとして使用した場合、比較的しなやかな感触を髪に残す。

応用:本品の高濃度水溶液は、粘稠なゲルとなり、また曇り点が低いために透明な高粘度のシャンプーの配合に適している。

有害性:皮膚を刺激する。眼に重大な障害を及ぼす危険性がある。

環境影響:調査した範囲では、環境への悪影響を示す情報はない。

廃棄:産業廃棄物取扱業者に委託する。

物理的・化学的危険性:通常の取扱いでは危険性は低い。

応急措置

1]吸入した場合:被災者を新鮮な空気の場所に移動させ、必要に応じて医師の受診を受ける。

2]皮膚に付着した場合:多量の水及び石鹸を用いて洗い流し、症状が出た場合等、必要に応じて医師の診断を受ける。

眼に入った場合:即座に目蓋を開いて流水で15分間以上洗浄し、直ちに医師の処置を受ける。

3]飲み込んだ場合:水で口の中を洗浄し、コップ1-2杯の水又は牛乳又は生卵を飲ませ、医師の処置受ける。被災者の意識がない場合は、上記の経口摂取は禁忌である。

ラウレス硫酸Naの毒性

急性毒性:ラット経口(LD50):>2000mg/kg

眼刺激性:強い刺激性が認められた(ウサギ,OECD405法)

皮膚腐蝕性:non data

皮膚刺激性:non data

変異原性:陰性(Ames試験(サルモネラ菌 TA98、TA100)

癌原性:non data

水棲生物毒性:コイ稚魚LC50範囲:107-143mg/L(48時間)

1)湯浅正治・他編著:化粧品成分ガイド第3版;フレグランスジャーナル社,2005

2)日本化粧品工業連合会・編:日本汎用化粧品原料集夢第4版;株式会社薬事日報社,1997

3)化粧品原料基準 新訂版;株式会社薬事日報社,1999

4)日本公定書協会・編:化粧品原料基準 第二版註解[I];株式会社薬事日報社,1984

5)花王株式会社-製品安全データシート;http://chemical.kao.co.jp,2007.1.29.

[011.1.SLE:2007.1.29.古泉秀夫]

「アルツハイマー病治療薬tacrineについて」

木曜日, 9月 6th, 2007

KW:薬名検索・tacrine・タクリン・コリンエステラーゼ阻害薬・AChE阻害薬・Cognex・コグネックス・ブチルコリンエステラーゼ・BuChE・アルツハイマー病・アルツハイマー病治療薬・Alzheimer’s disease(AD)・記憶障害・認知症

Q:アルツハイマー病治療薬tacrineについて

A:tacrineはコリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリンエステラーゼとブチルコリンエステラーゼの両方を阻害)で、認知促進薬に分類される。

商品名:Cognex(瑞西・Warner-Lambert)

*本品は可逆的に中枢作用性のacetylcholine esterase:AChEを阻害し、acetylcholineの利用度を上げる。増加したacetylcholineの利用度は、記憶を調節する新皮質のコリン作動性神経の変性を一部補う。その他、butylcholine esterase(BuChE)を阻害する。

*本品は成長因子を遊離するか、あるいはアミロイド沈着を阻害するかもしれない。

*AChE阻害薬はシナプス間隙のacetylcholineの分解を遅らせ、acetylcholineの機能を延長させる働きがある。アルツハイマー病に対し、唯一その効果が認められた治療法である。

*AChE阻害薬のフィゾスチグミンは、効果発現が遅く、蓄積による副作用の頻度が高いことから開発された中枢性・可逆性の非特異的cholinesterase(ChE)阻害剤がtacrineである。1993年に世界初のAlzheimer’s disease(AD)の治療薬として発売された。AD治療薬の道を開いた化合物である。しかし、消化器症状などのコリン性副作用や、肝酵素の上昇などの頻度が低くないことから、日本での開発予定はないと報告されている。また、国外においても肝機能障害発現のため、使用されなくなっているとする報告が見られる。

*本品の適応症として『アルツハイマー病、他の疾患による記憶障害、認知症』

*本品の副作用として、AChEの末梢での阻害による消化器系の副作用・BuChEの末梢での阻害による消化器系の副作用・AChEの中枢での阻害は悪心、嘔吐、体重減少、睡眠障害。注意すべき副作用として悪心、下痢、嘔吐、食欲不振、胃酸分泌亢進、消化不良、体重減少。筋肉痛、鼻炎、発疹。重篤な副作用として肝トランスアミナーゼの上昇、肝毒性。肝と関連する臨床検査値異常の発現頻度が他のAChE阻害薬に比べて高いため、その使用に際しては定期的な臨床検査を施行する必要がある。

*その他、発症の初期段階にあるAD患者に対して、tacrineを処方したところ劇的に改善効果が碓認された。その他、多施設試験でも全般的臨床スコアと認知機能、日常機能においてtacrineの効果が証明されたとする報告がされている。tacrine投与群の3分のlは、プラセボ投与群よりも有意に効果が認められた。但し、本品は症状を改善し、疾患の進行を遅らせることがあるが、変性過程を元に戻すことはない。その一方、コリン性副作用-消化器症状が出現して、使い続けることができなかった患者は全体の20%に達した。50%の患者には無症候性のトランスアミナーゼ(肝機能障害)の上昇が見られた。

1)仙波純一・訳:精神科治療薬処方ガイド;メディカル・サイエンス・インターナショナル,2006

2)http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/ALZkusuriNIKKEInew.html,2007.2.3.

3)山口 登・他:薬物療法概論-Alzheimer病治療薬を中心に-;日本臨床,61(増刊号9):566-569(2003)

[011.1.TAC:2007.2.5.古泉秀夫]


「フッ化炭素について」

木曜日, 9月 6th, 2007

KW:薬名検索・フッ化炭素・carbon fluoride・四弗化炭素・carbon tetrafluoride・四フッ化炭素・フルオロカーボン・fluorocarbon・パーフルオロカーボン・perfluoro carbon・フロン14・R-14

Q:フッ化炭素について

A:フッ化炭素(carbon fluoride)とは、四フッ化炭素(carbon tetrafluoride)の別名である。その他、テトラフルオロメタン(tetrafluoromethane)、パーフルオロメタン(perfluoromethane)、パーフルオロカーボン(perfluorocarbon)、R-14、フロン14とも呼ばれる。CAS登録番号:75-73-0。分子式:CF4=88.01。比重:1.89(?183℃、液体)。融点:?183.6℃。沸点:?127.8℃。相対蒸気密度(空気=1):3.04。水に不溶。発火温度:>1100℃。

従来、フロン(flon gas)と総称されていたフルオロカーボン(fluorocarbon)のうち、成層圏オゾン層への影響が大きいと見られる臭素系のハロン(halon)の生産は1993年末に、またCFC(chlorofluorocarbon)の生産は1995年末にそれぞれオゾン層保護法によって禁止された。現在では成層圏オゾンへの影響が少ないHCFC(hydrochlorofluorocarbon)、オゾン層への影響のないHFC(hydrofluorocarbon)を総称してフルオロカーボンと呼び既に高圧ガス保安法でもこの総称を使用している。また品名(記号)で使用しているR-表示は米国ASHRAE(American Society of Heating,Refrigerating and Air-Conditioning Engineers,Inc)に寄るもので、我が国の高圧ガス保安法でも採用しているほか、ISOでも使用が決まっている。

*物理的性状:無色無臭の圧縮ガス。

*物理的危険性:フッ化炭素の気体は空気より重く、天井が低い場所では滞留して酸欠状態を惹起することがある。

*化学的危険性:高温面や炎に触れると、分解してフッ化水素酸を生じる。火や高温面の近くで、又は溶接作業中に使用してはならない。

*許容濃度:TLVは設定されていない。

*曝露の経路:吸入。閉ざされた場所では、容器を開放すると空気中の酸素濃度が低下し、窒息を起こすことがある。

*短期曝露の影響:フッ化炭素の液体が急速に気化すると、凍傷を起こすことがある。心血管系に影響を与え、心疾患を生じることがある。高濃度に曝露すると、意識を消失することがある。空気中の濃度が高いと酸欠状態が起こり、意識喪失又は死亡の危険を伴う。区域内に入る前に、酸素濃度を測定する。

致死量:non data

代 謝:未詳

毒 性:四塩化炭素に比較して毒性は低いと思われる。吸入による急性局所作用及び全身作用は中等度。慢性曝露による障害は不明。

[用途]冷媒、ガス絶縁体として用いられる。

*災害発生時(火災):火災時に刺激性若しくは有毒なヒュームやガスを放出する。火災発生時、圧力容器に水を噴霧して冷却する。安全な場所から消火作業を行う。液体に向けて水を噴射してはならない。

*身体への曝露

吸入:錯乱、眩暈、頭痛。[新鮮な空気、安静。必要な場合には人工呼吸。医療機関に連絡する]。

皮膚:液体に接触した場合:凍傷[凍傷の場合、大量の水で洗い流し、衣服は脱がせない。医療機関に連絡する]。

眼汚染:流水で15分間洗浄(出来ればコンタクトレンズは外して)し、専門医を受診する。

1)後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992

2)国際化学物質安全性カード(ICSC):テトラフルオロメタン;http://www.nihs.go.jp/ICSC/,2007.1.31.

3)四フッ化炭素:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』;http://ja.wikipedia.org/wiki/,2007.1.31.

4)1430の化学商品;化学工業日報社,2003

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「後発医薬品選択に係る薬剤師の責任」

水曜日, 9月 5th, 2007

KW:法律・規則・後発医薬品・ジェネリック医薬品・先発医薬品・副作用・患者説明・インフォームドコンセント・informed consent

Q:後発医薬品への変更可とされる処方せんを受領し、後発医薬品を薬剤師が指定した際、その薬により副作用が発現した場合、薬剤師の責任は

A:厚生労働省が『後発医薬品』の使用促進のための環境整備を図る一環として、先発医薬品の銘柄を記載した処方せんを交付した医師が、『後発医薬品』に変更して差し支えない旨の意思表示を行い易くするため、2006年4月1日の診療報酬改定において、処方せん様式の変更を行った。

変更内容は、「備考」蘭中に新に『後発医薬品への変更可』のチェック欄を設ける。

*『処方』蘭に先発医薬品の銘柄名を記載した処方せんを交付した医師が、当該先発医薬品を後発医薬品に変更しても差し支えないと判断した場合は、その意思表示として『後発医薬品への変更可』のチェック欄に署名するか、又は姓名を記載し、押印することとする。

*ただし、処方医が、当該処方せんに係る先発医薬品の一部については後発医薬品に変更することに差し支えがあると判断した場合は、その意思表示として、『処方』蘭の当該先発医薬品の銘柄名の後に「(後発医薬品への変更不可)」と記載することとする。

『後発医薬品への変更可』のチェック欄に処方医の署名又は記名・押印のある処方せんを受け付けた保険薬局は、患者の選択に資するため、後発医薬品に関する情報等を提供し、患者が選択した後発医薬品又は先発医薬品を調剤する。

『後発医薬品への変更可』のチェック欄に処方医の署名又は記名・押印のある処方せんについては、診療報酬上、後発医薬品を含む処方を行った場合に該当するものとして取り扱うこととする。

次に『区分14.後発医薬品情報提供料』について、次の規定がされている。

(1)一般名処方による処方せん又は「後発医薬品への変更可」蘭に処方医の署名若しくは記名・押印のある処方せんを受け付けた場合において、次に掲げる事項その他の事項を、保険薬剤師が作成した文書(保険薬剤師が記載した手帳でも可とする。)又はこれに準ずるものにより交付し、患者の同意を得て、後発医薬品を調剤した場合にその種類にかかわらず10点を算定する。

ア.一般名

イ.剤形

ウ.規格

エ.内服薬にあっては、製剤の特性(普通製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤等)

オ.備蓄医薬品の一覧とその品質(溶出性等)に関する情報

カ.先発医薬品との薬剤料の差に係る情報

キ.保険薬局の名称並びに保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

(2)後発医薬品を調剤した場合には、調剤した薬剤の銘柄等について、当該処方せんを発行した保険医療機関に情報提供することとする。

(3)後発医薬品情報提供料は、『区分15』の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。

先発医薬品と後発医薬品の相違点は、原則的には成分以外の製剤技術の問題と添加物の問題に集約されると考えられる。

また中医協資料等から『医師が、当該先発医薬品を後発医薬品に変更しても差し支えないと判断』した場合に、『後発医薬品への変更可』のチェック欄に署名、又は記名・押印するとされており、後発医薬品への変更選択の判断は、あくまでも医師の判断が出発点であり、その医師の判断に対して薬剤師は何等関与していない。

更に保険薬局は、患者の選択に資するため、後発医薬品に関する情報等を提供し、患者が選択した後発医薬品又は先発医薬品を調剤するとされており、薬剤師が情報の提供はするが、最終選択は患者の判断によるということである。

ただし、患者に説明する内容として『備蓄医薬品の一覧とその品質(溶出性等)に関する情報』とされており、薬剤師が一種類の特定の後発医薬品を選定し、その後発医薬品を患者が選択するという方式は期待されていないと考えられる。また、実際に調剤した後発医薬品の銘柄等について処方せん発行医療機関に情報提供することとされているが、これは処方医の責任を明確にするための現認であると考えられる。

勿論、備蓄医薬品の一覧に収載するに際しては、先発医薬品・後発医薬品の各種情報を比較検討する責任は薬剤師も負っており、薬の副作用等についての説明を十分に行っておかなかった場合、薬剤師としての責任を追及されることは考えられる

1)後発医薬品の使用促進のための環境整備;中医協資料,2006.2.15.

2)診療報酬点数表-改正点の解説-平成18年4月版 医科・調剤,2006.4.

[615.1.GEN:2006.7.4.古泉秀夫]


『リバビリンの催奇形性について』

水曜日, 9月 5th, 2007

KW:催奇形性・リバビリン・ribavirin・精巣形態変化・精子形態変化・避妊・避妊期間・精液中移行

Q:リバビリンの催奇形性について。なお、服用後の避妊期間の6カ月は安全を保証する適正な期間といえるのか

A:リバビリンの催奇形性について、添付文書等に次の通り報告されている。

[商]レベトールカプセル200mg(シェリング・プラウ株式会社)・一般名英名:ribavirin(JAN)。

*添付文書の『警告』欄に次の記載がされている。

1.本剤では催奇形性が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

2.本剤では催奇形性及び精巣・精子の形態変化等が報告されているので、妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合には、避妊をさせること。

3.本剤では精液中への移行が否定できないことから、パートナーが妊婦の男性患者に投与する場合には、【使用上の注意】を厳守すること。

*また、禁忌として、

1.妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳中の婦人[動物実験で催奇形性作用及び胚・胎児致死作用が報告されている。]の記載が見られる。

*更に重要な基本的注意として、

3.妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者は投与中及び投与終了後6ヵ月間は信頼できる避妊法を用いるなどして妊娠を避けること。また、投与直前の妊娠検査結果が陰性であることを確認後に投与を開始すること。なお、妊娠していないことを確認するために、妊娠検査を毎月1回実施すること。

4.精液中への本剤の移行が否定できないことから、パートナーが妊娠している男性患者には、その危険性を患者に十分理解させ、投与中及び投与終了後6ヵ月間は本剤が子宮内へ移行しないようにコンドームを使用するよう指導すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験で催奇形性作用(ラット及びウサギ:1mg/kg/日)及び胚・胎児致死作用(ラット:10mg/kg/日)が認められている。]

2.授乳中の婦人には、投与を避けることが望ましい。やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。]

*その他の注意

1.マウス3及び6ヵ月間投与試験(1-150mg/kg/日)で精子異常(15mg/kg/日以上)がみられたとの報告がある(休薬により回復)。

?(4) 胎盤・胎児移行:(参考)妊娠ラットに14C-標識リバビリン溶液20mg/kgを単回経口投与したとき、胎児組織中への放射能の移行が認められた。

3) 乳汁中への移行:(参考)授乳中のラットに14C-標識リバビリン溶液20mg/kgを単回経口投与したとき,放射能濃度の母乳/血漿比は0.6-1.3であり,本薬又は代謝物の乳汁中への移行性が認められた。

尚、警告の解説として、次の報告が見られる。

本剤は、動物での生殖発生毒性試験において、ラット、ウサギで催奇形性作用、ラットで胚・胎仔致死作用及びマウスで精子数の減少、精巣・精子の形態異常が認められている。本剤の投与に際して、安全性を確保する上で遵守すべき注意事項を[警告]の項に記載した。

・動物での生殖発生毒性試験において、次のような影響が認められている。

・1.0mg/kg/日以上の投与で、ラット、ウサギに催奇形作用。

・10mg/kg/日の投与で、ラットに胚・胎仔致死作用。

・15mg/kg/日以上の投与で、マウスに精子数の減少及び形態の異常。

本剤のヒト胎児への影響に関する報告はないが、動物実験での胎仔毒性は、臨床投与量より低い用量で認められているため、妊婦には本剤を投与しないこととした。また、妊娠している可能性のある女性患者には、治療開始直前の妊娠結果が陰性であることを確認してから投与を開始する。

・本剤は前述のように生殖発生毒性を有すること、また精液中への移行が否定できないことから、精液が子宮内に到達した場合には、胚・胎仔が曝露される可能性がある。妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合は、本剤投与中及び投与完了後6カ月間は信頼できる避妊法を用いて妊娠を避けるよう十分指導する。また、パートナーが妊娠している男性患者に投与する場合は、子宮内に精液が移行しないようコンドームを使用するよう指導する。

・妊娠していないことを確認するため、妊娠検査を毎月1回実施する。

尚、投与中止後『6カ月間』の期間設定について『本剤とインターフェロンアルファー2b(遺伝子組換え)24週間併用投与後の血中薬物濃度推移をもとにしたシミュレーションで、6カ月後には本剤がほぼ体内から消失していることが推測されています。従って、投与終了後少なくとも6カ月間は避妊する要注意喚起しています。』の報告がされている。

また、他の文献で本剤の催奇形性について、Category[X]とする評価も見られる。

*Category[X]:胎児に永久的な障害を引き起こすリスクの高い薬であり、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある場合は使用すべきではない。ヒトでの適切なデータはないが、これまでにテストしたほとんどすべての動物で、ribavirinには催奇形性や胎児致死性の作用があることが分かっている。動物実験で、頭蓋骨、口蓋、眼、顎、骨格、消化管の奇形が生じることが知られている。胎児や仔の生存率が減少する。

その他、2001年10月3日に実施された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会の議事録によれば、

『毒性に関しましては、リバビリンのラット、ウサギを用いた生殖発生毒性試験において、器官形成期投与で臨床用量を下回る投与量で胎児発育抑制、着床後死亡率の増加又は催奇形性が見られました。このような結果を受けて、リバビリンの添付文書では警告欄等で催奇形性に関する注意事項を記載することといたしました。

臨床に関しましては、国内でのリバビリンの投与量設定に関して用量設定試験は実施されておりません。申請者は海外のリバビリンの投与量を基に、既存の国内外インターフェロンの臨床試験で組み込まれた患者の平均体重等を考慮いたしまして、国内臨床用量はリバビリン1日800mg、ただし60kg以下の患者においては1日600mgと設定して国内臨床試験を実施しています。一方、インターフェロンアルファ-2bについては、既存の単独療法での用法・用量と同一としています。』の記載が見られる。

何れにしろ上記報告はヒトによるデータによるものではなく、動物実験のデータによるものである。また、6カ月間の安全期間の設定も血中薬物濃度推移からの推測であり、一定期間、実績を積み上げない限り100%の安全性の保証は第三者には困難である。

1)レベトールカプセル200mg:添付文書,2005年12月改訂(第6版)

2)雨森良彦・監修:オーストラリア医薬品評価委員会先天異常部会による評価基準「妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改定版);医薬品・治療研究会,2001

3)レベトールカプセル200mg:新医薬品の「使用上の注意」の解説;市販後調査(平成13年12月-平成14年6月);シエリング・プラウ社,2001.11.

4)山口 徹・他監修:今日の治療指針;医学書院,2007

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