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クレアチンについて

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬効・薬理・クレアチン・メチルグリコシアミン・脂肪肝・筋肉分布・神経分布

Q:運動能力の向上が図れるとされる「クレアチン」とはどの様な物質か

A:クレアチン[creatine:methylglycocyamine(メチルグリコシアミン)]は、肝臓で合成され血中に入り大部分は筋肉に、一部は神経に分布し、遊離又はクレアチンホスホキナーゼの作用によりクレアチンリン酸となり、これらの形で存在する。

グリシンとアルギニンを基質としてグリシンアミジノトランスフェラーゼによりグアニジン酢酸(グリコシアミン)となり、次いでグアジニノ酢酸メチルトランスフェラーゼによりS-アデノシルメチオニンからメチル基の供与を受けてクレアチンとなる。

クレアチンが生体内で過剰に合成されると、脂肪肝を起こすことが知られているが、オルニチンがグリシンの代わりにアミジン基の受容体となりクレアチン合成を調節するとされる。血漿クレアチン濃度は0.2?1.0mg/dLであり、筋疾患・甲状腺機能更新時では増加する。クレアチンは腎糸球体から濾過されるが、尿細管で再吸収され成人では殆ど尿中に排泄されない等の報告がされている。

その他、骨格筋、中枢神経、大食細胞、精子等の組織に存在し、変化に富んだ高エネルギー要求に対応する物質である。クレアチンは細胞内の急激なエネルギー要求に応え、細胞間のエネルギー運搬を促進する役割を持つとされている。

骨格筋での高クレアチン量は重要であり、筋肉疲労の感応時間を延長することが出来る。同様に心筋においては心臓ストレスに対する心筋疲労を防御する働きを示す。低クレアチンは精子の運動能力低下に関連しており、脳細胞におけるATPホメオスターシスによる細胞活性の維持に寄与している。

クレアチン分子はアミノ酸とほぼ等しく、ヒト筋肉における比較的分子量の少ない物質の中では最も豊富に存在している。体内全体のクレアチンの95?98%は筋肉に存在する。

1980年代に行われた幾つかのコントロールされた研究において、クレアチン摂取による運動選手の筋力、運動能力への影響が調査されたが、その全てにおいて明確な運動力への影響を示し、競技大会でメダルを獲得するか否かの違いをもたらした。5日間のクレアチン摂取により中距離選手が1000m走を4回行った場合、2m前後のコントロール群に比較し、平均55mの向上が見られたとする報告も見られる。

本品は現在、運動能力の向上等を目的にドリンク剤として市販されている。

[1999.8.31.古泉秀夫]


  1. 南山堂医学大辞典,1992
  2. イムノ・バイオ・ジャパン有限会社・私信,1996
  3. 江崎グリコ株式会社・私信,1999

サリチル酸フィゾスチグミンについて

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬名検索・サリチル酸フィゾスチグミン・physostigmine salicylate・サリチル酸エゼリン・eserin salicylate・カラバル豆・硫酸フィゾスチグミン・physostigmine sulfate・フィゾスチグミン注射液

Q:サリチル酸フィゾスチグミンについて

A:サリチル酸フィゾスチグミン(physostigmine salicylate)は、(毒)サリチル酸エゼリン(eserin salicylate;局6)の別名である。

  • 性状:サリチル酸エゼリンは無臭の無色-微黄色の光沢ある結晶で、空気中に長く放置すると赤色を帯びる。
    本品1gは水75cc、アルコール16cc、クロロホルム6cc又はエーテル約250ccに溶ける。
    本品の冷飽和水溶液は中性又は微酸性で、これを放置すると暗所においても1-2時間で赤色を帯びる。
    本品はエゼリン塩類中で最も結晶しやすく、殆ど引瀑せず、安定な化合物で、乾燥状態では永く放置して初めて着色する程度であるが、その水溶液あるいはアルコール溶液は、暗所に置いても容易に変化し、ことに加熱するかあるいは容器からアルカリ分が溶出するときは、著しく迅速に赤変する。純粋な遊離塩基は無色であるが、淡赤色を帯びやすい。水に難溶、アルコール、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、CS2に易溶、石油ベンジンに溶けない。
    塩基の水溶液は強アルカリ性で、空気並びに日光によって赤色を 経て、暗褐色を帯びるに至るが、それは赤色結晶性の色素rubreserineを生ずるようになる。
    本色素の生成は空気中のNH3を吸収し、またガラスから溶出されるアルカリでも促進され、酸性でH3PO2、H2SO3、H2S、Na2S2O3あるいは発生期の水素によって脱色される。
  • 貯法:遮光した気密容器に貯えなければならない。
  • 常用量:1回0.3mg、1日1mg;1回0.5mg(皮下注射)。極量:1回1mg、1日3mg。
  • 基原:physostigmineは、1864年Jobst及びHesseがアフリカ産マメ科 Physostigma venenosum Balf.fil.の種子カラバル豆(Semen Physostigmatis)中に発見した。翌年結晶として抽出され、eserineと命名した。カラバル豆の主なalkaloidである eserineの含量は0.08-0.1%で、その他にgeneserine、eseridine、eseramine、 isophsostigmine、physovenine等を含む。
  • 応用:エゼリンは副交感神経末端の興奮性を亢進し、中枢神経系の諸中枢、例えば脳皮質の運動中枢、呼 吸中枢等を興奮の後麻痺し、末梢運動神経の末端を刺激する。
    また瞳孔を縮小させ、調節機の痙攣を起こし、眼内血管を収縮させ、眼圧を沈降させるがある。従って緑内障、ことにその急性のものには眼圧沈降の作用が顕著に現れる。
    その収瞳作用は、虹彩後癒着の場合に、虹彩に多動性運動を与えて剥離させるために、アトロピンと交互に用いる。その他、一般収瞳の目的に使用するが、本品はアトロピンで散瞳させた瞳孔にも作用して収瞳させ得ること(ピロカルピン及びムスカリンはその場合に用いられない)また薬効が久しく持続する特徴がある。
    従って本品は主として眼科で使用し0.2-0.5%溶液を緑内障、調節麻痺、角膜炎、角膜潰瘍等に点眼し、虹彩後癒着にアトロピンと交互に使用する。

その他本品は回復術後に起こる急性腸麻痺(手術後腸閉塞症)に0.25- 0.5mgを皮下注射すれば腸の緊張を増加させ得られ、また予防の意味で手術前1-2日にわたって使用する。
使用に際しての結膜から吸収される量は少ないが、涙管から鼻、咽頭腔に流下 して嚥下し、嘔吐、下痢、発汗、頭痛、流涎、呼吸困難を起こすことがある。
本品の水溶液は赤変し易いので、3%のホウ酸を加えて多少安定にする方法もあるが、使用に際して新製する。微紅色程度のものは使用して差し支えないが、暗赤色の場合は廃棄する。
注射液はチンダル法又は濾過法で殺菌し、容器には溶出のアルカリ分のないガ ラスを使用する。

サリチル酸フィゾスチグミンの他に『硫酸フィゾスチグミン (physostigmine sulfate)』が報告されている。

  • 別名:硫酸エゼリン、サリチル酸フィゾスチグミンより水に溶け易い。
  • 毒薬、極量:1回1mg、1日3mg。

その他、physostigmine salicylate注の製品として、米国では『Antilirium(Forest Pharmaceuticals,Inc.)』が市販されているの報告が見られる。用法・用量等は以下の通りである。

  • [適応]三環系抗うつ薬、アトロピン、スコポラミン過剰投与に対する解毒。 緑内障。
  • [用]成人:1回2mgを20分毎に静注又は筋注。小児:1回0.01- 0.03mg/kgを15-30分毎に静注。総投与量2mgまで。

その他、国内では院内製剤として、次の製剤処方が報告されている。

サリチル酸フィゾスチグミン(6局-試薬)
メタ重亜硫酸ナトリウム(試薬)
クエン酸(試薬)
クロロクレゾール(試薬)
塩化ナトリウム(局方)
注射用水100mL
0.1g
0.1g
0.01g
0.2g
0.9g
全量100mL
  • 調製法:注射用水(局方)にサリチル酸フィゾスチグミン、メタ重亜硫酸ナト リウム、クエン酸、クロロクレゾール、塩化ナトリウムを溶解し、全量100mLとする。次いでメンブランフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、褐色アンプルに分注し、熔封する。100℃-30分間高圧蒸気滅菌を行う。
  • 規格単位:1mg/mL/管
  • 貯法:褐色アンプル(1-2mL)、冷暗所保存。
  • 適応:健忘症候群に対する治療(記憶力増強作用)。術後の麻酔緩和。
  • 用法・用量:皮下注射
  • 使用期限:1年
  • 特記事項:サリチル酸フィゾスチグミン1gは水90mLに溶ける。pHは4 以下に保つ。赤く変色したものは、使用不可。副作用として悪心、嘔吐がある。

類似処方

サリチル酸フィゾスチグミン
メタ重亜硫酸ナトリウム
塩化ナトリウム
クエン酸一水和物
注射用水
50mg
50mg
450mg
6mg
50mL
  • 適応:麻酔の覚醒遅延、中枢性副作用の拮抗薬

[2]0.1%-サリチル酸フィゾスチグミン注射剤

サリチル酸フィゾスチグミン
生理食塩水
0.1g
全量–100mL

[011.1.PHY:2004.6.22. 古泉秀夫]


  1. 縮刷第六改正日本薬局方註解;南江堂,1954
  2. 飯野靖彦・監訳:スカット・モンキーハンドブック;MEDSi, 2003
  3. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第5版;薬事日報社,2003
  4. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990

クコの効用について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・枸杞・クコ・薬効・薬理・食効・枸杞葉・地骨皮 ・枸杞子・抗脂肪肝作用・コリン様作用

Q:健康食品として市販されているクコ茶等の原料であるクコの効用について

A:漢方薬として使用される枸杞(クコ)は、ナス科の植物である枸杞(Lycium chinense Mill.)あるいは寧夏枸杞(Lycium bararum L. )の成熟した果実(枸杞子)・柔らかい茎と葉(枸杞葉)・根皮(地骨皮)である。

[成分]

枸杞子:カロチン(3.39mg%)、ビタミンB1(0.23mg%)、ビタミンB2(0.33mg%)、ニコチン酸(1.7mg%)、ビタミンC(3mg%)が含まれ、β-シトステロール、リノール酸も抽出されている。日本産枸杞の果実にはゼアキサンチン、ベタイン、フィリイエン等のアルカロイドが含まれている他、アルギニンやグルタミン酸、アスパラギン酸等の必須アミノ酸5種が含まれている。その他1種のビタミンB1抑制物質が含まれ、果皮はフィザリエンが含まれる。アミノ酸も多く、蛋白質は菠薐草の2倍含有している。

枸杞葉:日本産枸杞葉はベタイン、ルチン、ビタミンC、β-シトステロール-β-Dグルコシド、ビタミンB1抑制物質(この抑制作用はシステイン及びビタミンCにより消去される)を含む。乾燥した葉の熱湯抽出液中にはイノシン、ヒポキサンチン、シチジル酸、ウリジル酸、極めて少量のコハク酸、ピログルタミン酸、蓚酸及び多量のグルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、セリン、チロシン、アルギニンが含まれる。

[薬理]

  1. 抗脂肪肝作用:動物実験の結果として、寧夏枸杞子の水浸液は、軽度に脂肪の肝細胞内沈着を抑制し、かつ肝細胞の肝細胞の新生を促す作用を持つ。
    水抽出物の抗脂肪肝作用は肝機能障害の防止として現れる。
    かなり長期(75日)にわたって枸杞の水抽出物若しくはベタインを経口投与すると、血液及び肝臓の肝臓中のリン脂質水準が増加する。四塩化炭素中毒のラットは、肝臓内のリン脂質、コレステロール総合含有量が低下するが、あらかじめあるいは同時にベタイン若しくは枸杞の水抽出物を与えた場合には増加が見られ、かつBSP、S-GPT、アルカリフォスファターゼ、コリンエステラーゼ等の試験においても好転させる作用がある。
    枸杞の持つ脂質代謝及び抗脂肪肝に対する作用は、主として枸杞に含まれるベタインによるもので、ベタインにはin vivoでメチル基供与体の作用が見られる。
  2. コリン様作用:枸杞の水抽出物をウサギに静脈内注射すると血圧の低下と呼吸の興奮が起きるが、アトロピンの使用若しくは迷走神経の切断によって抑制できる。
    摘出したウサギの心耳を抑制し、摘出した腸管を興奮させ、ウサギの耳の血管を収縮させるなどの作用を持つ。
    ベタインにはそのような作用はなく、ウサギの耳の血管に対しては、逆に拡張作用が見られる。
    メタノール、アセトン、酢酸エチルなどによる抽出物にも軽度の降圧作用が見られる。従って枸杞による上記の作用は、ベタイン以外の成分によると考えられる。
    ベタインは内服の場合、その作用はかなり小さく、皮下注射ではコリン類似作用をもたらす。
    枸杞の抽出物には、乳酸菌の成長と酸の生産を著しく促進する働きがあるので、食品工業における利用価値もある。
    枸杞に含まれるアルカロイドは神経に働き、疲労した神経を興奮させる。その結果、精気がみなぎったような感じになる。枸杞の主たる効用はアルカロイドによる強壮作用である。
    ベタインは消化器系の分泌、運動を促し、神経の伝達が円滑になり、胃腸病に対して間接的な効果を発揮し、便秘の解消にもつながる。
    枸杞葉ではルチン(ビタミンP)の効用が大きい。ルチンは体内の活性酸素消去作用と共に毛細血管強化作用があり、高血圧症や低血圧症に効くといわれる。
    血管が強化されることにより血行が順調になるためで、高血圧の症状として現れる肩こり、頭痛、手足のシビレが無くなり、動脈硬化の予防にも役立つとされている。
    更に葉の葉緑素に肝の解毒作用を助ける働きがあり、肝臓病の予防・治療に効果があるとされる。
    また枸杞タンニンという枸杞の葉にのみ含まれるタンニンは、酸化還元作用を持ち、老化を防ぐと共に、癌の予防効果も期待されている。
    漢方薬としての枸杞の効用は、疲労回復、精力増強、機能低下の回復、急性結膜炎、視力減退・夜盲症の治療等に内服、痔の腫れ・炎症に煎液で熏洗する等の報告がされている。
    植物の成分の場合、その植物に含まれる全ての成分が測定されているとは限らない。また、測定した全ての成分が発表されているとは限らない。
    枸杞葉の場合も葉緑素が存在する以上、光合成に必要とされるビタミンKの含有が見られるはずであるが、その存在は上記文献らも報告されていない。従って、warfarin服用中の患者では、枸杞葉を主体とする健康食品を喫食する場合、十分注意することが必要である。

[015.9LYC:2000.7.5.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001

クエン酸による含嗽について

金曜日, 8月 10th, 2007

?KW:薬物療法・クエン酸・citric acid・含嗽・使用濃度・口内乾燥症

Q:クエン酸による含嗽について-使用濃度等

A:クエン酸(citric acid)について、次の報告がされている。

  • [性状]:本品は定量するときクエン酸99.5%を含む。本品は無色の結晶又は白色の粒若しくは結晶性の粉末で、臭いはなく、強い酸味がある。本品は水に極めて溶け易く、エタノール又はアセトンに溶け易く、エーテルにやや溶け難い。本品は乾燥空気中で風解する。本品は 75℃で軟化し、約100℃で融ける。無水物は約150℃で融ける。
  • [製法]:柑橘類の果実からも製造されているが、大部分は発酵法により製造されている。その他クエン酸カルシウムを輸入し、これからクエン酸を得る方法も取られている。発酵法に用いる発酵菌の主なものは、クロカビAspergillusnigerである。
  • [薬効・薬理]:本薬は局所の収斂、刺激作用を有するほかは、特異な薬理作用を現すことはなく、大量を与えた場合を除き、酸化されて二酸化炭素となり、呼気から排泄される。この結果、本薬の塩類投与により体液や尿はアルカリ性に傾く、クエン酸塩は血液凝固防止作用がある。
  • [適用]:緩衝・矯味・発泡の目的で調剤に用いる。又、リモナーデ剤の調剤に用いる等の報告がされている。クエン酸による含嗽剤については、国立療養所神経筋難病研究グループの提供する神経筋難病情報サービスのHP中に次の記載が見られる。
    0.5%-クエン酸水

*口内が乾燥し易いときには、クエン酸、林檎酢(1.5%)等の酸性の液を用いると、口腔ケア後に唾液分泌を促し、口内がアルカリ性に傾いて、細菌の繁殖を防ぐ。

なお、クエン酸の水溶液(1→20)は青色リトマス紙を赤変するとされている。

[035.4CIT:2000.5.29.古泉秀夫]


  1. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996
  2. www.saigata-nh.go.jp/,2000.5.23.現在

クランベリージュースとワーファリンの相互作用

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:相互作用・クランベリージュース・Cranberry juice・ワーファリン・Cranberry・キナ酸・quinic acid・馬尿酸・尿路感染症・warfarin・quilinggao・Chuanbeimu・Beimu・Chishao・JinYinhua・Jishi

Q:クランベリージュースとワルファリンの相互作用について

A:クランベリー(Cranberry)は、ツツジ科ツルコケモモ属の常緑低木である。
学名:Vaccinium macrocarpon Ait.又はV.oxycoccos L.。

Cranberryは北米原産の代表的な果実で、米国ではジュースやジャムなどに加工され、一般家庭にも浸透した普遍的な食材である。民間伝承的には、尿路感染症への作用が知られているが、最近の研究ではヘリコバクター・ピロリ菌の抑制作用が確認されたとする報告がされている。

米国においてメディカルハーブ(medicalherb)として使用されるCranberryの流通規格では、キナ酸(quinic acid)0.9%以上、クエン酸(citric acid)0.9%以上、リンゴ酸(malic acid)0.7%以上、quinic acid/malic acidが1.0以上(USP-NF)となっている。このほかブドウ糖(glucose)、フラクトース(fructose)などを含有する。

Cranberryの生理活性機能の代表的なものとして、尿路感染症(腎盂炎、膀胱炎など)の改善作用が知られており、現在までに数多くの基礎研究が行われている。メカニズムとしては、Cranberry中のquinic acidが腸管吸収され、肝臓で安息香酸に代謝、これにグリシンが加わり馬尿酸に変換される。酸性物質の馬尿酸が尿中に排泄され、尿のpHを低下させ、尿路感染菌の尿管への付着を抑制すると考えられている。

Cranberry摂取による尿の酸性化について、1923年の報告として尿pHが6.4から5.3に低下、馬尿酸が600%増加したとするものがある。

弱アルカリ又は健常者、尿路ストーマ患者を対象とした実験では、Cranberry juice飲用2時間後にpHの有意な低下が示されている。しかし、これだけでは予防や改善効果の説明が十分ではないため、尿の酸性化だけでなく、他の要因があるのではないかと考えられている。その一つとして含有成分で抗酸化作用のあるプロアントシアニン(ploanthocyanin)が注目されており、大腸菌など尿路感染菌の繊毛が上皮細胞に付着・定着するのを抑制するのではないかと考えられている。

また、尿路感染症に関しては、尿路変更やカテーテル留置に伴う慢性化が問題となるが、慢性尿路感染症に対しても効果があることから、感染菌が産生する多糖により形成されるバイオフィルムを抑制すると考えられており、ploanthocyaninの関与が推定されている。

Cranberryは、また歯周病・歯肉炎予防も期待されている。 Cranberryの菌付着抑制作用により、連鎖球菌等の歯への付着を抑制し、歯垢の形成を妨げる。

米国NIHは1998年、尿路感染症予防効果を評価しており、「入手可能なエビデンスに基づくと、Cranberry juiceは、尿路感染に罹りやすい集団の尿路感染症の予防としては勧められない」としている。NIHではCranberry製品の販売・普及を行う企業から参考文献やデータを取り寄せ、尿路感染に罹りやすい集団でCranberry juice/製品を評価したところ、「信頼に足るエビデンスは得られず、Cranberry juiceは試験中に多数の脱落、中止者があったことから長期の服用は受け入れられないかもしれない。」としている。

現在のところCranberryに関する相互作用の情報はなく、また臨床的に尿を酸性化する薬剤がないため、尿路感染症に対する有用性は高いと考えられる。

その他、Cranberry juiceの相互作用について次の報告が見られる。

70才台の男性は、胸部感染をcefalexinで治療後、 2週間にわたり食欲不振でほとんどなにも食べず、常用薬(digoxin、phenytoin、warfarin)のほか、Cranberry juiceのみを摂取していた。
Cranberry juiceを摂取し始めて6週間後、 INR上昇(>50)により入院した。以前、患者のINRコントロールは安定していた。患者は消化管出血および心膜出血により死亡した。患者は OTC薬やハーブ薬は服用しておらず、常用薬を正しく服用していた。

英国CSMは、yellow card reporting schemeを通じて、warfarinとCranberry juiceの相互作用によりINRの変化又は出血を惹起する可能性についての報告を他に7例受けている。
4例の患者ではCranberry juiceを飲んだ後のINR上昇又は出血は、さほど劇的ではなかった。2例ではINRが全般に不安定であり、残りの1例は INRが低下した。

Cranberry juiceは、フラボノイドを含む抗酸化物質を含有し、それらはチトクロムP450酵素を阻害することが知られており、warfarinは主としてCYP2C9により代謝されるため、Cranberry juiceとwarfarinとの相互作用は、生物学的に妥当である。

Cranberry juiceの成分がCYP2C9を阻害することによりwarfarinの代謝を阻害するのか、又は他の機序により阻害するのか、詳細な研究が必要である。それまではwarfarinを服用中の患者では、Cranberry juiceの摂取を制限することが賢明である [WarfarinとCranberry juiceとの相互作用の可能性;死亡した1症例の報告;Suvarna,R.,et al:Br. Med. J.(7429)1454/(2003.12.20,27)]。

2003 年9 月、英国のCSM(Committee on Safety of Medicines)、MHRA(Medicines and Healthcareproducts Regulatory Agency)が、warfarin とCranberry juiceの相互作用の疑いを明らかにし、Cranberry juiceを制限又は飲用しないようwarfarin 服用患者に勧告した。

INR(国際標準比)の変化や出血に至った相互作用の疑いが、1999 年から8 件報告された。患者の死亡が1 例、INR の増大や出血が4 例、INR の不安定な症例が2 例、INR の減少が1 例あった。死亡例において、それまで安定したINR を示していた患者が、6 週間Cranberry juiceを摂取した後、消化管出血および心嚢内出血で死亡した。別の症例では、warfarin を服用していた人工僧帽弁の患者が、Cranberry juiceを飲み始めた後(約2L/日)、INR が持続的に上昇した。

その後の手術では、術後に出血性の合併症を生じた。warfarin は主にCYP2C9で代謝され、Cranberry juiceはCYP 酵素を阻害するフラボノイドを含む。

米国では、NIH(National Institutes of Health)のNCCAM(National Center for Complementary and Alternative Medicine)が、Cranberryの大規模な研究の一環として、Cranberryと薬物の相互作用を調査する予定である。

抗凝固剤とdevil’s claw(ゴマ科Harpagophytum procumbensの根)、公孫樹、朝鮮人参、緑茶、パパイン(パパイヤ抽出物)、セントジョーンズワート、当帰、丹参、ある種の銘柄の quilinggao[Chuanbeimu*、Beimu、Chishao、JinYinhua、Jishi等を含む)のようなハーブ製品との相互作用の疑いが文書化された。

ビタミン剤(例:A、E、C およびK)、魚油サプリメント及び加工食品(豆乳等)は抗凝固剤と相互作用を生じる可能性がある。warfarinは安全域が狭いため、患者は薬物、自然健康製品や加工食品が相互作用に関連する可能性があることに注意すべきである。

Health Canada はこれらの相互作用のモニターを継続し、さらに詳しい情報が入手できた場合これを公表して、消費者や医療従事者のwarfarinと自然健康製品、薬物、食品間の相互作用の可能性に関する注意を促す。

  • Chuanbeimu:Tendrilled fritillaria bulb又はfritillaria cirrhosa。センバイモ(川貝母)、巻葉貝母。ユリ科に属するアミガサユリ。四川、雲南、西蔵を主産地とするFritillaria cirrhosa D.Donを川貝母と呼称しているようである。
  • Beimu:Fritillariae Bulbus。バイモ、貝母。本品はユリ科に属するアミガサユリ(Fritillariae verticillata Willdenow var.thunbergii Baker)の鱗茎である。fritilline、fritillarine、verticine(=peimine)、verticilline、 apoverticine等のアルカロイド、また配糖体peiminosideを含む。
  • Chishao(芍赤):Paeonia rubra。Paeonia lactiflora Pallas var.trichocarpa Stern(Paeony)。ボタン科。芍薬。薬用部分は根。主成分としてペオニフロリン(paeoniflorin)とその関連化合物、 paeoniflorigenone、paeonilactones等のモノテルペン、テルペン配糖体など。その他安息香酸、ガロタンニンなどを含んでいる。このうちペオニフロリンは鎮静、鎮痛、鎮咳、血圧降下などの薬理作用があることが知られてきた。
  • JinYinhua:Lonicera Japonica Thunb.(Japanese or Chinese Honeysukle)。スイカズラ科スイカズラ属。ニンドウカズラ、生薬名:忍冬(葉茎)・金銀花(花)。別名:酔蔓。タンニンや苦味配糖体のロガニンを含むがその他のものは不明。
  • Jishi:Poncirus trifoliata。Poncirus trifoliata Rufin(Trifoliate-orange)。カラタチ実、枸橘、枳。キジツ、枳実(zhishi):干した果実。精油:d-limonene。フラボノイド配糖体:原植物によりヘスペリジン(hesperidin)、のナリンギン(naringin)又は両成分を含むものがある。その他にシネフェリン(synephrine)、ネオヘスペリジン(neohesperidin)などを含んでいる。

[015.2.CRA:2004.10.19.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品Q&A;じほう,2003
  2. http://www.yobou.com/contents/rensai/report/r06_20.html,2004.10.14.(Medical Nutrition20号)
  3. 健康局食品医薬品安全部安全対策課:東京都医薬品情報No.356,2004.5.31
  4. 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部:医薬品安全性情報,2:14 (2004.7.22);http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly2/14040722.pdf,2004.10.14.
  5. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  6. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  7. 富山県薬剤師会・編:和漢薬ハンドブック,1992

金属アレルギー - 貼付試験

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:物理・化学的性状・過敏症試験・貼付試験・金属アレルギー・patch test・パッチテスト

Q:処方せん持参患者が、義歯装着後に皮膚のトラブルが増えたと言っているが、どの様に対処すればよいか

A:患者の質問内容から薬局で対応することは困難であり、受診中の歯科医に申し出るよう助言する。アレルギー性接触皮膚炎の確定診断、原因解明のために行う検査は『貼付試験(patch test)』である。

被検物質を皮膚に接触させ、その部位に炎症等が発現するか否かを調べる方法である。

開放法と閉鎖密封法とがあるが、開放法は被検物を単に塗布あるいは接触させるだけであり、感度が低い。従って症状から極めて強い反応が予想される場合にのみ行われる方法である。

通常は閉鎖密封法で行うが、種々の貼付材料が市販されている。パッチテスト用adhesivplasterの所定の位置に少量の被検物質を塗布して皮膚に貼付する。

貼付部位としては、通常背部傍脊柱領域が用いられ、一時に30-40種の被検物質の試験が可能であるとされている。

多種類の試験用アレルゲンが市販されており、原因のスクリーニングや原因物質の同定に利用されている。

貼付は48時間行い、除去1時間後と翌日に判定する。最もよく用いられる判定基準は国際接触皮膚炎研究グループによるものである。

(?) 反応なし
(+?) 疑わしい反応(弱い紅斑)
(+) 弱い陽性反応(紅斑、浸潤、 時に丘疹)
(++) 強い反応(紅斑、浸潤、丘 疹、小水疱)
(+++) 極めて強い反応(水疱形成)
(IR) 刺激反応

未知の物質を検査する際には、刺激反応を生じさせないため、被検物質の処理や濃度の設定に注意を払う必要がある。

またI型反応の検査では、短時間の貼付・判定が必要である等の報告がされている。歯科医が実施するのかあるいは近医の皮膚科医に依頼をするのかは別にして、受診中の医師と相談することが最も順当な方法である。

[014.4.PAT:2004.3.16.古泉秀夫]


  1. 国立国際医療センター国立病院療養所医薬品情報管理センター・編:医薬品情報Q&A[9];株式会社ミクス,1996
  2. 医学大辞典;南山堂,1992

キチン・キトサンについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・キチンキトサン・甲殻類・昆虫類・外骨格・キトサン・ ?chitosan

Q:キチン・キトサンを常用している患者がいるが、これは何か。主作用あるいは副作用等について知りたい。

A:キチン(chitin)は、甲殻類、昆虫類や菌類の外骨格を形成する多糖体である。

キトサン(chitosan)は、キチンをアルカリ加水分解して部分的に脱アセチル化したものであり、天然物であるため、安全性と生体内分解性を持つことから医療分野での応用が検討されてきた。

なお、キチンを脱アセチル化した場合、100%のキトサンが得られるわけではなく、キトサン 85?90%、キチン 10?15%の混合物として得られる。この混合物をキチン・キトサンの純品としている。

現在、キチンシートが熱傷用被覆剤として発売されている。その他、高分子凝集剤としても使用されてきた。

しかしキチン・キトサン(chitin and chitosan)の持つ生体内消化性や抗腫瘍活性、金属イオンとの錯体形成、蛋白質吸着性、抗菌性といった様々な性質が報告されるようになり、その応用範囲が広がり始めた。

医療分野においても、天然由来の特性を生かした創傷被覆剤や徐放性製剤、免疫吸着樹脂など、数多くの提案がされるようになっている。

キチンは生体内消化性を示すことが知られているが、その作用は生体内グリコシダーゼの一種であるリゾチームによって発現する。

リゾチームは本来N-アセチルムラミン酸とN- アセチルグルコサミンのβ-1,4結合を分解する酵素であるが、基質特異性が低いため、キチンにも作用する。リゾチームによる分解性は、キチンのアセチル基を70%脱アセチル化したキトサンやC-6位にカルボキシメチル基を導入したCMキチンで高くなり、C-3位にカルボキシメチル基を導入したCMキチンは逆に低下する。

硫酸化キチン、リン酸化キチンのリゾチーム受容性も非常に低い。また、天然のキチンは分解性が非常に緩やかであるが、一度溶解して再生したキチンは、強固な結晶構造が緩和されるため、分解性が高くなる。

このようにキチン・キトサンは化学修飾をうまく利用することにより、分解性をコントロールできるため、医薬品の徐放性製剤として期待できる。

  • ヘパリン類似構造:キチン・キトサンはヘパリンに類似した構造を持つことが知られている。比較的簡単な化学的修飾を加えることで抗血栓性を付与することができる。生体内消化性やこれに関連して発現すると思われる低免疫原性と併せて、創傷被覆剤や人工皮膚、人工血管などへの利用にも有利な素材といえる。
  • 免疫応答性:キトサンはマクロファージとコロニー形成刺激因子(CSF)産生細胞を活性化し、各々の細胞がCSFとインターロイキン(IL-1)を産生する。CSFは、骨髄細胞に働きかけてマクロファージへの刺激を促す。一方、IL-1はヘルパーT細胞に働きかけて、インターロイキン2(IL-2)を産生させ、細胞障害T細胞を誘導する。更にヘルパー T 細胞はB細胞にも作用して、抗体産生細胞を刺激し、抗体産生を促す。この仕組みは完全に解明されたわけではないが、キチン・キトサンが複数の経路に働いて、免疫応答性を導くことはほぼ間違いない。
  • 抗コレステロール作用:キトサンを経口投与するとコレステロールが減少する。キトサンに4級アミンを導入したものの抗コレステロール作用が報告されている。 *抗腫瘍活性作用:癌移転抑制剤。キチン・キトサンオリゴ糖(2?7糖)、特に6糖を有効成分とする。中枢神経抑制剤としても効果を有する。これにブレオマイシンを加えると、各々単独では発現しないMM-46腫瘍に対しても効果がある。
  • 抗菌作用:虫歯の原因となるStreptococcus mutansを主とした各種口腔内連鎖球菌に対し、抗菌作用を有することが確認されている。脱アセチル化度が40?60%の水溶性キトサン、キトサン酸塩、親水基を導入したキチン・キトサン、オリゴ糖でStreptococcus muta nsの感染防御。その他、キチンを分解して得られる5又は6糖のキチンオリゴ糖を注射剤として検討。
  • 抗ウイルス作用:後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原ウイルス(HIV)に対して効果を有するものとして、10?70%カルボキシメチル化し、1?20%硫酸化されたキチンが抗HIV活性を持つ。 *肝疾患治療効果:キトサンを主成分とし、CM-セルロースナトリウムやラクトースを加えて製剤化。 *高尿酸血症改善効果:キトサンを経口投与。キチンを経口投与すると、尿中に尿酸量と血漿中の尿酸量を低下させる。尿中アラントイン量も低下する。

なお、キチン・キトサンの服用により「好転反応」による発汗、便秘、痺れ等が報告されている。

その他、キチン・キトサン関連情報として、新聞等に報道された内容を以下に紹介する。

*パルプから取った繊維、ポリノジックに、カニやエビの殻から取ったキトサンの粉末を練り込んだ下着、寝具類(富士紡績)が開発された。キトサンはじくじくした症状を悪化させる黄色ブドウ球菌の繁殖を抑える効果があり、軟らかい繊維で分子の小さいポリノジックは保湿性が高く、肌への刺激が少ないという。

* がんの転移を防ぐものとしては、動物の肝臓などに多く含まれ、血液の凝固を抑制している生理活性物質(ヘパリン)があるが、出血の際血が固まりにくくなるなど副作用があり、がん転移防止薬としてはあまり使われない。

北海道大学免疫科学研究所の東市郎教授らはカニやエビの殻の成分である「キチン」がヘパリンに類似していることに着目、キチンを化学処理して転移防止薬を開発することを考えた。

開発されたのはキチンヘパリノイドと呼ばれる物質で、足に皮膚がんを移植したマウスを使って肺への転移防止効果を調べた。この物質を皮膚がん除去手術前と後に投与し、手術後2週間後に肺に発生したガン細胞のかたまりの個数を数えた。この結果、キチンヘパリノイドを投与しないマウスには転移がんが平均62個発生したのに対し、手術前投与群でわずか平均4個、手術後投与のケースでも平均9個と強い転移抑制効果があることがわかった。

ヘパリンを投与したマウスでは手術前投与群で平均19個、手術後でも24個と、キチンヘパリノイドの方が効き目が強かった。更にキチンヘパリノイドにはヘパリンのような出血傾向を増大させる副作用がないことも確認された。

* 日本水産系の共和テクノスが、イカの「骨」やカニ殻に含まれる「キチン」という物質に動物のけがを治療し、植物の細菌に対する抗菌力を強化する性質があることに注目、商品化を進めている。

キチンはカニの殻(外骨格)に含まれ、1970年代に米国研究者が傷口を治す効果を指摘。日本ではユニチカが88年にカニから抽出したキチンを使った人工皮膚を発売した。共和テクノスが注目しているのが、スルメイカなどの骨にあたる「軟甲」に含まれているキチン。カニのキチンとは結晶の構造が異なり、スポンジ状やシート状に加工しやすいのが特徴という。

同社が調査を依頼した鳥取大学によると「動物について150の症例を集め、イカのキチンがけがの治療に効くことがほぼ実証された」という。

* 愛媛大学医学部の奥田拓道教授と広島女子大学の加藤秀夫教授は、食塩(塩化ナトリウム)による血圧上昇は食塩中のナトリウムが原因ではなく塩素であるという新しい証拠をつきとめた。食塩と同時に食物繊維のキトサンを摂取すると、塩素だけがキトサンに吸着され、排せつされ、その結果ヒトの血圧上昇を抑えることができた。

食塩と血圧上昇の因果関係は現在、食塩中のナトリウムが原因とする学説が主流となっており、ナトリウム摂取を削減したり、カリウムで置き換える食生活指導や医薬品成分の調整などが行われているが、塩素が原因だとすると、現在の対処法を全面的に見直す必要が出てきそうだ。

食塩が血圧上昇を引き起こすのは一般にナトリウムのためとされているが、確実なことは分かっていない。例えば食塩によって血圧は上がるが、塩化アンモニウムでは上がらないことからナトリウム原因説がいわれているが、実はこの説に対してはアンモニウムの毒性で体重が減少した結果血圧が下がったという見方がある。

また、食塩を多量にとっても血中のナトリウム量は変動しないという研究結果もあり、ナトリウム原因説否定の根拠となっている。

これに対し両教授は、食塩を摂取しながら塩素を排せつする作用がのある食物繊維のキトサンも同時に摂取し、血圧がどのように変化するかを調べた。

キトサンはナトリウムの7 倍の塩素を排せっする作用があり、塩素を排せつした後の血圧の状態を見ればナトリウムの影響を把握できるからだ。

健康人を対象にした実験で、約13グラムの食塩を含む辛い朝食を取ると、1時間後に血圧は上がり、3時間後には元に戻る変化が見られたが、食塩と同時に5gのキトサンを取ると血圧は変わらなかった。

血圧の変化は血液中の塩素量の変動と一致しており、ナトリウム量は一定だった。更にキトサンの摂取で、血圧上昇ペプチドを作る酵素のACEの活性上昇を抑えることも確かめた。

* 調味料メーカーの焼津水産化学工業と静岡県立大学の鈴木康夫教授らは、硫酸化したキチンオリゴ糖に炎症を抑える働きがあることを発見した。キチンオリゴ糖は食品に使われている物質で、安全で副作用の心配が少ない。ステロイド系に代わる次世代の抗炎症剤として医薬品分野に応用できると同社では見ている。

ラットにコブラ毒を注入すると肺に炎症を起こすが、このラットに硫酸化キチンオリゴ糖を投与したところ、投与しないラットに比べて「炎症の程度を30-40%に抑えることができた」という。

以上「キチン・キトサン」について各種報告が見られるが、現在、医薬品としては創傷被覆剤が上市されているのみである。

上市されている本品の多くは「健康食品」であり、その意味では医薬品の適応症に相当する効能・効果を標榜することは薬事法違反を問われるため、販売各社とも具体的な効果を標榜していない。また、副作用についても、健康食品であり、報告義務のないものであるため、詳細については不明である。

なお、健康食品として上市されている「キチン・キトサン」には、「キチン・キトサン」以外の物質を配合している製品もあり、詳細な調査が必要であるとすれば、摂取中の患者自身が購入している商品名・会社名を確認することが必要である。

[1996.6.24.古泉 秀夫] [1998.10.19. 一部修正]


  1. 四方田 千佳子:キチン・キトサンの製剤素材としての特性;Pharm Tech Japan,10(5):557-564(1994)
  2. 松永 亮:カニ殻パワー健康法;廣済堂出版,1996
  3. 伊藤 由雄・他:キチン・キトサン-その医療分野における研究動向-;Bio Industry,11(5):263-274(1994)
  4. キチン・キトサン-健康読本1;季刊 健康の科学 No.2,1995
  5. ヒノキやヨモギの抽出成分で-かゆみなどの症状軽減で 補助療法にも利用;毎日新聞,1994.8.16.
  6. 「カニ」の殻からがん転移予防薬-北大研究グループが開発-副作用少なく有望;東京新聞,1990.10.18.
  7. イカとカニ動植物救う-殻に含まれる「キチン」-共和テクノス商品化へ;読売新聞,1991.11.22.
  8. 食塩による血圧上昇の原因?ナトリウム説を否定-;日刊工業新聞,1994.10.25.
  9. 硫酸化キチンオリゴ糖-炎症を抑える働き-;日経産業新聞,1995.3.15.
  10. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1539,1997.5.19.収載

ギムネマ摂取により眼圧亢進は起こるか

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:副作用・健康食品・ギムネマ・ブカトウ・武靴藤・眼圧亢進・抗コリン作用

Q:ギムネマ摂取中の患者で眼圧亢進が見られるが、本品の摂取により眼圧亢進は起こるか

A:ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvesta)は、インド・アフリカに自生するガガイモ科の低木で、インド伝承医学アユルベーダの古典「スシュルータ本集」に肥満と大食を伴う病気の治療薬として記載されているの報告がされている。葉にギムネマ酸(gymnemic acid)というトリテルペン配糖体を含み、この成分は味覚のうち甘味だけを抑制するので、これを口に含んだ後は砂糖を舐めても砂のようにしか感じられないとされている。

また、ギムネマ酸には、腸管での糖吸収抑制作用や抗う蝕作用があるといわれ、糖尿病によいとされているが臨床的に有効かどうかの証明はされていない。

*Gymnema sylvesta(Retz.)Schult.、ブカトウ;武靴藤。ガガイモ科の植物。

  • 薬理]ラットに葉のアルコール抽出液を経口投与するか又は筋肉内注射すると、垂体前葉エキス、垂体成長ホルモンを抑制するか又は腎上腺皮質ホルモンの引き起こす高血糖を促す。

大阪府立大学農学部の中野 長久教授は、インドに自生するガガイモ科属の蔓性植物ギムネマシルベスタから抽出した糖アルコールの一種「コンズリトールA」が糖尿病予防などに有効であることをラットを使った実験で確認した。

ギムネマシルベスタは野生植物で、抽出されるギムネマ酸は甘味抑制作用、グルコース吸収抑制作用があることが知られている。同教授はギムネマシルベスタの葉を熱水中に入れて有効成分を抽出した後、その中に含まれるギムネマ酸を沈殿させ、残った水を活性炭、合成樹脂、クロマトグラフィーを使って分離・精製してコンズリトールAを得た。健康ラット12匹に同物質を混ぜたえさを与え、8週間後に比較した結果、体重は平均約320gと実験開始から140g程度増え、その期間の腸内グルコースの量が約100mg/dLと低い数値で、殆ど変わらないことが分かった。

また、糖尿病モデルラット12匹で同様の実験を行ったところ、混合えさを摂取させたラットの体重増加は約210gで、正常ラットに比べて生育スピードは落ちるものの、グルコース量が平均約300mg/dLとなり病状好転が見られた。一方、通常のえさを摂取したラットは体重が約145gから160gと生育が遅く、グルコース量も平均約500mg/dL程度と症状が顕著になった。

ギムネマシルベスタの葉は、肥満予防、糖尿病薬として用いられているが、ギムネマ酸を除いた抽出液については確認されていない。ペルー産の植物コンズランゴからコンズリトールA?Fまで6種類の物質が確認されているが、有効性など化学的な証明はされていなかった等の報告がされている。

現在、ギムネマシルベスタ中に含まれる成分の詳細については、情報の入手が困難である。

一方、薬剤性の眼圧亢進については、「抗コリン作用を有する薬剤では、散瞳とともに房水通路が狭くなり、眼圧が上昇し、症状を悪化させる」等の報告が見られる。本品の含有成分の詳細は不明であるため、副交感神経遮断作用を有する物質が存在するか否かは不明であるが、多様な成分の存在が想定されることからあるいは抗コリン作用を有する薬剤同様の機序により眼圧亢進が見られる可能性は否定できない。

従って、他に原因が求められない場合、本品の摂取を一時中断し、眼圧変化について、経過の観察をすることが必要である。

[065.GYM:2000.5.24.古泉秀夫]


  1. 社団法人山口県薬剤師会薬品情報センター:Drug View No.40,1990.8.25
  2. 上海科学技術出版社:中薬大辞典;小学館,1985
  3. 糖尿病に効く物質抽出-大阪府立大インド原産植物から-;日刊工業新聞,1991.9.26.
  4. 糖尿病に「ギムネマ・シルベスタ」;読売新聞,1987.5.21.[医薬品情報,17(7):613(1990)]
  5. パック入り細咲茶;読売新聞,1995.9
  6. 健康産業新聞;第851号,1996.11.7.
  7. 薬局新聞;No.2255,1996.5.22. 8)第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996

杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:相互作用・ 漢方薬・キョウニン水・杏仁水・アミグダリン・マンデルニトリル

Q:杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

A:杏仁水(Apricot Kernel Water)を定量するときシアン化水素(HCN:27.03)0.09?0.11w/v を含む。本品は無色?微黄色澄明の液で、ベンズアルデヒド様の臭い及び特異な味がある。pH:3.5?5.0。

本品の主成分であるマンデルニトリルmandelnitrile(ベンズアルデヒドシアンヒドリン benz-aldehydecyanhydrin)は、元来杏仁中に含まれているものではなく、杏仁中に2.5?3.5%含む青酸配糖体アミグダリン amygdalinが、杏仁蛋白中の酵素エムルシンemulsinの作用によって、水の存在下に分解して生ずるものである。

amygdalinが殆ど完全に分解されるには、細胞質中に均等に水が行き渡るように杏仁の脂肪油をよく除き、同時に細かく砕くことが必要である。amygdalinの分解は速いので、実際に行う場合、水とかき混ぜ、常温又は多少加温して少時放置するのがよい。少量の酸添加は分解を促進する。また杏仁は蛋白質の量が多いため、泡立ちを生じやすいから大きい蒸留器を用いて加熱を調節する。なお、製造に際しては、シアン化水素による中毒を十分注意しなければならない。水蒸気蒸留直後の留液中ではbenzaldehyde及びシアン化水素は各々遊離して存在するが、次第に両者は結合してmandelnitrileの形となり、製品では殆どこの状態で含有される。

杏仁は、ホンアンズ(Prunus armeniaca L.)、アンズ(P.armeniaca L.var.anzu Max.)の種子であり、青酸配糖体amygdalin約3%、脂肪油30?50%を含み、前者の含量は桃仁より高い。oleic acid、linoleic acid、palmitic acidをはじめtriglyceride、glycolipide、phospholipidを含むとされている。

以上の報告から杏仁中のamygdalinは、杏仁水製造中にmandelnitrileに変換するため、杏仁水中にamygdalin は存在しないか存在したとしても痕跡程度であることが推定されるため、amygdalinによる相互作用を考える必要はないものと判断する。

[015.2AMY:2000.6.19.古泉秀夫]


  1. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996

キャッツクロウについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・キャッツクロー・猫の爪・Cat’s-claw・ウンカリアトメントサ ・抗酸化作用

Q:最近、健康食品としてキャッツクロウという言葉を耳にするが、これはどの様なものか

A:キャッツクロウ(猫の爪・Cat’s-claw)は、南米ペルーのジャングルで樹木に絡みながら伸びるアカネ科の蔓性の1年草で、学名:Uncaria Tomentosa(Willd.)DC.(ウンカリア・トメントサ)の樹皮を薬用として用いる。

名称の由来は小枝から出る葉柄の基部に、猫の爪のような形の鈎が突出していることによる。別名:Una de gate、Garbato amarillo。使用部位は樹皮、葉。

ペルーの先住民であるインディオは、蔓を切ったときに溢れ出てくる樹液を服むことで消化器系や免疫系の疾患に用いたとされるの報告が見られる。

1974年に抗腫瘍性物質の存在を発見、同年代に抗炎症作用があることも確認された。1990年キャッツクロウの根から6種類のoxyindolalkaloidを抽出、mitraphyllia、rhyncophylline及び次の4種類(キャッツクロウに特有で活性の高いisoputeropodine(イソプテロポジン)、pteropodine(プテロポジン)、isomitraphydine(イソミトラフィジン)、isorhyncophylline(イソリンコフィリン)が、白血球の貪食作用を著しく活性化することを明らかにした。

その他、抗酸化性、抗微生物性、抗炎症性、抗腫瘍性等を持つ成分の存在が明らかにされている。

その他、トリテルペノイドのguinovic acid glycoside(消炎活性・抗ウイルス作用)、ステロールのβ-sitosterol、stigmasterol、campesterol等が含まれている。

現在、ペルーの農業省が公表しているキャッツクロウに関する資料(1996年3月)によれば、キャッツクロウの樹皮の熱水煎出・アルコール抽出成分は、気管支喘息、気管支炎、関節炎、リウマチ、肺・頸部癌、ヘルペス(疱疹)、胃腸障害(潰瘍性胃炎・腸炎)、膵臓炎、肝炎、痔疾等に対する効能があるとしている。

『樹皮に含まれるアルカロイドは、免疫組織を刺激して抵抗力を増進させ、自然治癒力を活性化させる。また、 polyphenol類のcatechinやanthocyanidinは潰瘍抑制効果を発揮する。その他、アレルギー抑制効果、胃・肝臓の保護作用、膵臓・子宮の調整効果も種々の実験で証明されている』とする報告が見られる。

1994年WHOで、副作用のない抗炎症薬として承認されたの報告も見られる。

同じくUna de gateと呼ばれている同属のUncaria guianensisがあるが、これもキャッツクロウと同様の効果を示すことが報告されている。

具体的作用としては、リウマチ改善、抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫力改善・増強が報告されている。

いずれにしろ上記報告を見る限り、キャッツクロウは、単なる健康食品とするよりは、生薬の範疇に含めるべきものではないかと考える。従って、薬物療法中の患者では、その喫食について、主治医の判断を求めることが無難であるといえる。

[015.9CAT:2000.8.1.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  3. キャッツクロウ資料,有限会社ワーカービーWK [東京都江戸川区松島1-41-22]
  4. 薬用ハーブの機能研究;健康産業新聞社,1999

ギムネマと糖尿病治療薬の併用

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:相互作用・糖尿病薬・経口糖尿病薬・ギムネマ・ブカトウ・薬効・薬理

Q:インドの秘茶「ギムネマ100」という製品を糖尿病患者が服用している。糖尿病薬との間に何等かの影響はあるか。

A:ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvesta)は、インド・アフリカに自生するガガイモ科の低木で、インド伝承医学アユルベーダの古典「スシュルータ本集」に肥満と大食を伴う病気の治療薬として記載されている。

葉にギムネマ酸(gymnemic acid)というトリテルペン配糖体を含み、この成分は味覚のうち甘味だけを抑制するので、これを口に含んだ後は砂糖を舐めても砂のようにしか感じられないとされている。

その他、ギムネマ酸には、腸管での糖吸収抑制作用や抗う蝕作用があるといわれ、糖尿病によいとされているが臨床的に有効かどうかの証明はされていない。

*Gymnema sylvesta(Retz.)Schult.、ブカトウ;武靴藤。ガガイモ科の植物。

[薬理]ラットに葉のアルコール抽出液を経口投与するか又は筋肉内注射すると、垂体前葉エキス、垂体成長ホルモンを抑制するか又は腎上腺皮質ホルモンの引き起こす高血糖を促す。

その他、ギムネマについて、次の報告がされている。

大阪府立大学農学部の中野 長久教授は、インドに自生するガガイモ科属の蔓性植物ギムネマシルベスタから抽出した糖アルコールの一種「コンズリトールA」が糖尿病予防などに有効であることをラットを使った実験で確認した。

ギムネマシルベスタは野生植物で、抽出されるギムネマ酸は甘味抑制作用、グルコース吸収抑制作用があることが知られている。

同教授はギムネマシルベスタの葉を熱水中に入れて有効成分を抽出した後、その中に含まれるギムネマ酸を沈殿させ、残った水を活性炭、合成樹脂、クロマトグラフィーを使って分離・精製してコンズリトールAを得た。

健康ラット12匹に同物質を混ぜたえさを与え、8週間後に比較した結果、体重は平均約 320gと実験開始から140g程度増え、その期間の腸内グルコースの量が約100mg/dLと低い数値で、殆ど変わらないことが分かった。

また、糖尿病モデルラット12匹で同様の実験を行ったところ、混合えさを摂取させたラットの体重増加は約210g で、正常ラットに比べて生育スピードは落ちるものの、グルコース量が平均約300mg/dLとなり病状好転が見られた。

一方、通常のえさを摂取したラットは体重が約145gから160gと生育が遅く、グルコース量も平均約500mg/dL程度と症状が顕著になった。

ギムネマシルベスタの葉は、肥満予防、糖尿病薬として用いられているが、ギムネマ酸を除いた抽出液については確認されていない。ペルー産の植物コンズランゴからコンズリトールA?Fまで6種類の物質が確認されているが、有効性など化学的な証明はされていなかった。

同教授は、ギムネマ酸以上に活性がある上、無毒で生育にも影響が無く、血糖値を抑えるグルコース吸収抑制作用があるため、医薬の他食品などへの利用も可能としている。

以上の報告から、伝承療法として、糖尿病治療に使用されていること及びグルコース吸収抑制作用のある物質が成分として含まれていること等から、糖尿病治療薬との間に全く影響が無いとは考えられないが、通常、お茶として飲用される程度の量で糖尿病治療薬の作用を増強するとは考えられない。

従って、大量に飲用しないよう患者注意し、飲用について主治医に連絡するよう指導されたい。

*ギムネマ100(三上商店;東京都世田谷区奥沢1-6-6

インドでダルマール=シュガーデストロイヤー(糖を壊すもの)とも呼ばれ、糖分の吸収を抑えるようで、飲んだ後は、甘味を感じなくなる不思議な健康飲料1Lの水に1?2袋(2.5?5g)入れ、5分程度煮出してください。また、急須に熱湯を注ぎ、1?2分して飲んで下さい

*ぐるまーる(ナチュラルプロダクツ;TEL.03-0320-9989)

ギムネマ・シルベスタを錠剤化したもの。

*細咲茶[さいさいちゃ](サントリー株式会社;TEL.03-3470-1132]

紙パック入り無糖茶飲料、ギムネマ葉エキス+ほうじ茶ブレンド。200mL入り。

*ギムネマシルベスタ・スリム(AFCファミリークラブ;TEL.0120-464981)

ギムネマ酸(サポニン)、ビフィズス菌、柑橘系ダイエタリーファイバー等をブレンド。粒剤。

*ギムネマシルベスタ・スリム(AFCファミリークラブ;TEL.0120-464981)

ギムネマ酸(サポニン)、ビフィズス菌、柑橘系ダイエタリーファイバー等をブレンド。粒剤。

*マカイバリダイアティー(サーカーズオフィスインク;TEL.03-5371-4644)

ギムネマシルベスタ、ターミナリア、トゥゴネラの3種のハーブをブレンド。ギムネマシルベスタは糖尿病に、ターミナリアは強心や解毒。トゥゴネラは慢性胃炎、利尿及び泌尿器系への作用で知られている。

*コラーゲンスリム茶(山本漢方製薬(株);TEL.0568-77-2211)

水溶性コラーゲン(水溶性粉末)にギムネマ・シルベスタ、オオバコ種皮、キダチアロエ等12種類のダイエット素材配合。

*スーパーダイエットV(株式会社マーキュリー;TEL.0425-61-6511)

1粒中にコミフォラムクル(グッグルエキス)35mg・ギムネマシルベスタエキ ス90mg・グルコマンナン30mg・大豆抽出物(α-アミラーゼインヒビター)6mg 配合。

*天然健草茶(株式会社サイノス;TEL.0120-24-3726)

ギムネマ、キダチアロエ、カキ葉の他ビタミン、ミネラル9種類入りの天然健康茶

[1996.6.11.古泉秀夫]


  1. 社団法人山口県薬剤師会薬品情報センター:DrugView No.40,1990.8.25
  2. 上海科学技術出版社:中薬大辞典;小学館,1985
  3. 糖尿病に効く物質抽出-大阪府立大インド原産植物から-;日刊工業新聞,1991.9.26.
  4. 糖尿病に「ギムネマ・シルベスタ」;読売新聞,1987.5.21.[医薬品情報,17(7):613(1990)]
  5. パック入り細咲茶;読売新聞,1995.9
  6. 健康産業新聞;第851号,1996.11.7. 7)薬局新聞;No.2255,1996.5.22.

強化グロスミンについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:薬名検索・強化グロスミン顆粒・健康食品・クロレラエキス

Q:強化グロスミン顆粒の効能及び副作用について

A:強化グロスミン顆粒(Grosmin)[〒105クロレラ工業株式会社;東京都港区芝大門2丁目4番6号豊国ビルTEL.03-3437-0901]は、クロレラ工業株式会社が独特の種株を用いて生産する筑後産クロレラ中の最高品質グロスミンに、独自の方法で<筑後産クロレラ>から抽出した保健効果上有効な<クロレラエキス(CVE)>を更に強化した顆粒状の健康食品である。

強化グロスミン顆粒は、グロスミンに更にクロレラエキスを3:1の割合で強化したもので、保健効果と栄養補給効果との両面から強力に健康を維持するとされている。

<筑後産クロレラ>から抽出したクロレラエキスは、糖蛋白、多糖体、核酸関連物質などが含まれており、これらは健康を維持していく上で、非常に大切な成分であることが解っていると報告されている。

<強化グロスミン顆粒>には、ビタミン、ミネラルが天然のままに、しかもバランスよく含まれており、ビタミンは17種類、ミネラルは14種類、植物線維4種類、葉緑素2種類が含まれている。

含有成分の量は、同社発売のグロスミンの3/4程度とされている。

カロチン エルゴステロール ビオチン
ビタミンB1 ビタミンE コリン
ビタミンB2 ビタミンK1 イノシトール
ビタミンB6 ナイアシン コエンザイムQ9
ビタミンB12 パントテン酸  
ビタミンC 葉酸  

その他、必須脂肪酸としてリノール酸・リノレン酸の存在が報告されている。

カルシウム モリブデン
ナトリウム セレン
マグネシウム 亜鉛
カリウム クロム 硫黄
マンガン コバルト  
含有植物線維 含有葉緑素
水溶性難消化性多糖類 クロロフィルa
ヘミセルロース クロロフィルb
セルロース  
リグニン  

本品の原材料としてクロレラ、クロレラエキス、植物性クリーミングパウダー、還元麦芽糖、ビタミンC、骨カルシウム、レモン香料、糊料(プルラン)、甘味料(ステビア)が報告されている。

本品はJHFA(日本健康食品協会)認定商品である。

本品は医薬品ではないため、副作用の記載はされていないが、クロレラについては、発疹等の含有成分に起因する副作用が報告されており、注意が必要である。

[1994.1.11.・1999.3.19.一部改訂古泉秀夫]


  1. クロレラ工業株式会社・私信,1994
  2. 強化グロスミン顆粒パンフレット
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.832,1994.6.23

眼科用キシロカイン液の使用期限

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:物理・化学的性状・安定性・眼科用キシロカイン液・使用期限・lidocaine hydrochloride・細菌汚染

Q:眼科処置室における4%-キシロカイン眼科用の使用期限をどの様に考えるか。保存条件は下記の通りである。

保存条件:診療時間中は点眼液セット(フタ付プラスチック性気密容器)中に入り、他の点眼液等と一緒に常温で点眼液セット内に保存。診療終了後は、保冷庫に保存。

A:眼科用キシロカイン液(アストラゼネカ-ニプロファーマ)の組成・性状は下記の通りである。

販売名 眼科用キシロカイン液
成分・含量(1mL中) lidocaine hydrochloride 40mg
添加物 クロロブタノール、pH調整剤
剤型 点眼剤
色調・形状 無色澄明な無菌の液
pH 5.0-7.0
使用期限 製造後3年
貯法 遮光し、凍結を避けて15℃以下に保存。
性状 リドカインは白色-微黄色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノール又はエタノール(95)に極めて溶け易く、酢酸(100)又はジエチルエーテルに溶け易く、水に殆ど溶けない。希塩酸に溶ける。
取扱い上の注意
  1. 1.クロロブタノール(保存剤)は冷時安定であるが、加熱滅菌により分解して塩酸を放出し、液に刺激性を与える懸念があるので、本剤は無菌操作法により調製されている。したがって、本剤を加熱再滅菌して使用したり、また、稀釈して加熱滅菌の上用いることは絶対にしないこと。
  2. 塩酸リドカインは金属を侵す性質があるので、長時間金属器具(カニューレ、注射針等)に接触させないことが望ましい。なお、金属器具を使用した場合は、使用後十分に水洗すること。
20mL,100mL。

点眼液は本来無菌的に調製された製剤であり、製剤の使用期限を検討する場合、『製剤的安定性』、『使用環境』、『保管環境』の他、『微生物汚染』に関する注意が必要である。特に“フタ付プラスチック性気密容器”に充填し、スポイトを利用した点眼方法を行っている場合、患者の眼瞼に接触したスポイトが点眼容器内に戻されることにより、点眼液が細菌に汚染され、他の患者に感染が蔓延するという事例が見られた。

眼科用キシロカイン液の製剤の安定性については

  1. 室内散光下:無色透明、ガラス瓶、密栓3ヵ月保存→pHやや低下、他の項目に殆ど変化を認めない。
  2. 室温:無色透明、ガラス瓶、密栓24ヵ月保存→pH規格以下(規格pH:5.0-7.0)となる。他の項目は殆ど変化を認めない。
  3. 15℃ 保存:無色透明、ガラス瓶、密栓48ヵ月保存→各項目殆ど変化を認めない。

通常、処置室で使用される製剤は、1)あるいは2)の条件で使用されると考えられるが、製剤上の安定性については特に問題になるとはいえない。従って細菌汚染の問題を検討課題として判断することが必要ではないかと考えられる。

以前、眼科外来の看護師から処置瓶に白色の架絮物が浮遊しているという申し出があり、処置室における取扱いについて検討した結果、本剤は処置用薬であることから保存期間は1ヵ月以内とし、交換は毎月第1月曜日とする。

なお、払い出しの規格については、市販品をそのまま払い出すのではなく、無菌調製法により1本5mLの点眼容器に分割して交付することとした事例がある。

[014.4.LID:2005.3.22.古泉秀夫]


  1. 眼科用キシロカイン液添付文書,2003.11.
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(7):698-699(1999)

カイロイノシトールについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・機能性成分・カイロイノシトール・chiro-inositol・イノシトール・inositol・イノシット・inosit・血糖降下作用

Q:カイロイノシトールについて

A:イノシトール(inositol)について、次の報告がされている。

別名:イノシット(inosit)

概要:inositolは分子式C6H12O6 =180.16。Hexahydroxy cyclohexaneあるいはcyclohexitolで、9種類の立体異性体が存在し、そのうち8種が見出されている。

本品はその中のmeso- inositol又はmyo-inositolと呼ばれるもので、この二つのみが生物活性を持っていると報告されている。

その生合成は酵母の場合、グルコース6-リン酸が酵素シラーゼによってイノシトール1-リン酸になり、更に特異的なphosphatase作用でinositolになる。

動物体内での inositolはmeso-inositoloxycgenaseによってC-1とC-6の間が酸化的に開裂しグルクロン酸となる。この酵素は高等動物では腎臓に局在する。

inositolはビタミンB群の一種として脂肪肝・動脈硬化予防、カルシウム吸収促進、コレステロール血症改善等の作用がある。また乳児の必須ビタミンとして粉ミルクにも使用されている。

  • [薬効]inositol欠乏によりマウス、ラットは成長遅延、脱毛などの欠損症状を示すが、原因としてinositol摂取の不足と inositolの体内合成抑制の二つがあげられている。
    ヒトにおけるinositol欠乏症は未確認である。従ってinositolが必須栄養素であるか否かはにわかに断定できないとされている。
    inositolは脂肪、コレステロールの代謝に重要な役割を努め、抗脂肝作用を現し、脂肪肝、肝硬変、過コレステロール血症などに有効とされ、またコレステロールとリン脂質の比を調節して、動脈硬化症に奏効するとする報告が見られる。しかし、inositol の生理作用、作用機序、代謝などについては未詳の部分も多い。
  • [適用]脂肪肝、肝硬変、過コレステロール血症、動脈硬化症等

1日0.5-2g、時に1日3g以上内服。

なお、inositolの異性体の慣用名について、次の報告がされている。

cis-イノシトール cis-Inositol epi-イノシトール epi-Inositol
allo-イノシトール allo-Inositol myo-イノシトール myo-Inositol
muco-イノシトール muco-Inositol neo-イノシトール neo-Inositol
chiro-イノシトール chiro-Inositol scyllo-イノシトール scyllo-Inositol

chiro-inositolについては、蕎麦中の含有量が高いとする報告及び血糖値を低下させるとする報告がされている。

蕎麦(Fagopyrum esculentum Moench(Buckwheat)。浄腸草(ジョウチョウソウ)、鹿蹄草(ロクテイソウ)、流注草(ルチュウソウ)。

  • 基原]:蕎麦はタデ科の1年生本草である。蕎麦(和名:ソバ)、中国雲南省が原産地とするのが定説である。
  • 漢名:キョウバク(蕎麦)。
  • 異名]:曽波(ソバ)、烏麦(ウバク)、?麦(キョウバク)、花蕎(カキョウ)、甜蕎(テンキョウ)、蕎子(キョウシ)。
  • 薬用部分]:種子・茎葉。
  • 成分]:痩果にサリチルアミン、4-ヒドロキシベンジルアミン、N-サリチリデン-サリチルアミン含有。蕎麦?(キョウバッカク):蕎麦の茎と葉。
  • 成分]全草にはルチン、クエルセチン、カフェー酸を含む。また光に敏感な物質も含む。種子と苗はオリエンチン、ホモオリエンチン、ビテキシン、サポナレチン、ルチン、クエルセチン、シアニジン、ロイコアントシアニンなどのフラボノイドを含む。
  • [薬効]:はれもの、洗濯・洗髪(茎葉を焼き、灰を水につけて灰汁を作って使用)

蕎麦中に含まれるchiro-inositolの機能について、動物実験の結果として血糖降下作用が報告されているが、動物実験の結果を直ちにヒトに外挿することはできない。また、漢方薬としての使用では、蕎麦の血糖降下作用を期待するものは見られていない。

[015.9.CHI:2005.9.6.古泉秀夫]


  1. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003
  2. 第8改正日本薬局方解説書;廣川書店,1971
  3. http://homepage1.nifty.com/nomenclator/text/cyclitol.htm,2005.8.22.
  4. http://www.supplenews.com/MT/,2005.8.22.
  5. http://www.supplenews.com/MT/archives/2005/04/post_301.html,2005.8.22.
  6. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  7. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典 第1巻;小学館,1998

カシスについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・カシス・Cassis・クロフサスグリ・黒房スグリ・blaack currant・ブラックカーラント・黒スグリ・黒カリン

Q:健康食品として紹介されているカシスとはどの様なものか

A:カシスは、ユキノシタ科スグリ属フサスグリ亜種に属する耐寒性落葉小低木である。原産地はヨーロッパ-アジア。

学名:Ribes nigrum cv.

英名:blaack currant(ブラックカーラント)

和名:クロフサスグリ、黒房スグリ、黒カリン。

属名のRibes(リビス)はアラビア語あるいはペルシャ語の「酸味のある」に因むとされる。和名のスグリについても「酸塊」に由来するとされる。

なお、一般にいわれているカシス(Cassis)はフランス語の呼称であるとされる。その他和名別名として「黒スグリ」とする報告も見られる。英名別名:クインシーベリー。また、本品はRibes nigrumを基に改良された品種群であるとされる。

Cassisは高さ2m程度の落葉の低木で、寒冷地に生育し6-8月に黒熟した果実を付ける。果実は房毎摘み取り食用に利用する。果実は直径は 1cm弱の球形の液果で、果肉は紫紺色で、酸味が強く、芳香がある。葉は飲用する。

果実は生食には不適であるが、カリウム、vitamin Cが豊富で、ジュース、ジャム、果実酒として利用され、タンニンを含有する葉は収斂消炎作用がいわれており、下痢、風邪などの時に茶剤として飲用するの報告が見られる。

日本では、カシスは青森県青森市の特産品になっているの報告も見られる。

  • 成分:葉は揮発油、タンニンとvitamin Cを含有。漿果はアントシアニン配糖体(約 0.3%)、フラボノイド、ペクチン、タンニン、vitamin C、カリウムを含んでいる。
  • 効力:ヨーロッパでは利尿効果が利用される。体液の排出によって血液の体積を減少させ、血圧の降下を図る。喉頭炎と口腔潰瘍の含嗽剤としても使用される。
  • 葉:止瀉作用、抗炎症作用。
  • 果実:眼精疲労改善作用、視覚機能改善作用、血流改善作用、抗ウイルス作用。

Cassispolyphenol(カシスポリフェノール)として4種類のanthocyanin(アントシアニン)の存在がいわれている。

Delphinidin-3-rutinoside(デルフィニジン-3-ルチノシド)、Delphinidin-3-glucoside(デルフィニジン-3-グルコシド)、Cyanidin-3-rutinoside(シアニジン-3-ルチノシド)、Cyanidin-3- glucoside(シアニジン-3-グルコシド)の4種類である。

anthocyaninは水溶性の色素であり、アルコールとの組み合わせで吸収率が上昇する。anthocyaninの生体内での作用として

  • 眼の機能向上:cyanidin rutinosideは他の植物に含まれることの少ないblaack currant特有のanthocyaninである。in vitroの試験においてcyanidin rutinosideには眼球内網膜に存在する視覚物質の一つロドプシンの再合成を促進させる機能があることが認められており、暗順応の改善、夜間視力の改善等の効果が期待できるとされている。その他、眼の網膜にある色素ロドプシンが分解と再合成を繰り返して光の刺激を脳に伝達することによりものが見えるが、anthocyaninはロドプシンの再合成を活性化する働きを示す。これにより暗順応など、anthocyaninは眼の機能向上に効果があるといわれている。また糖尿病性の眼底網膜病変の改善、眼精疲労の回復にも、臨床試験で効果が認められているとする報告も見られる。
  • 肝臓の機能向上:anthocyaninは肝臓の機能の回復、機能の向上に働くと考えられている。
  • 血圧降下作用:anthocyaninは血圧を上昇させる酵素の働きを阻害することが、最近の研究で明らかになってきている。その他、血中の血小板の凝固抑制作用、靱帯の腱の強化作用が確認されている。
  • その他、anthocyaninには抗酸化作用もあることから生活習慣病への効果も期待されている。

[015.9.CAS:2005.6.17.古泉秀夫]


  1. 阿部 誠・他監修:ハーブスパイス館;小学館,2000
  2. http: //www.meiji.co.jp/etc/dictionary/sp/cassis/about_cassis/guidance1_1.html,2005.6.17.
  3. 難波恒雄・監訳:世界薬用植物百科事典;誠文堂新光社,2000
  4. 大庭理一郎・他編著:アントシアニン-食品の色と健康-;建帛社,2000
  5. http://www.meijifm.co.jp/foodmat/c_cassis_use.html,2005.6.17.
  6. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
  7. 薬用ハーブの機能研究 増補改訂版;CMPジャパン株式会社,2004