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杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:相互作用・ 漢方薬・キョウニン水・杏仁水・アミグダリン・マンデルニトリル

Q:杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

A:杏仁水(Apricot Kernel Water)を定量するときシアン化水素(HCN:27.03)0.09?0.11w/v を含む。本品は無色?微黄色澄明の液で、ベンズアルデヒド様の臭い及び特異な味がある。pH:3.5?5.0。

本品の主成分であるマンデルニトリルmandelnitrile(ベンズアルデヒドシアンヒドリン benz-aldehydecyanhydrin)は、元来杏仁中に含まれているものではなく、杏仁中に2.5?3.5%含む青酸配糖体アミグダリン amygdalinが、杏仁蛋白中の酵素エムルシンemulsinの作用によって、水の存在下に分解して生ずるものである。

amygdalinが殆ど完全に分解されるには、細胞質中に均等に水が行き渡るように杏仁の脂肪油をよく除き、同時に細かく砕くことが必要である。amygdalinの分解は速いので、実際に行う場合、水とかき混ぜ、常温又は多少加温して少時放置するのがよい。少量の酸添加は分解を促進する。また杏仁は蛋白質の量が多いため、泡立ちを生じやすいから大きい蒸留器を用いて加熱を調節する。なお、製造に際しては、シアン化水素による中毒を十分注意しなければならない。水蒸気蒸留直後の留液中ではbenzaldehyde及びシアン化水素は各々遊離して存在するが、次第に両者は結合してmandelnitrileの形となり、製品では殆どこの状態で含有される。

杏仁は、ホンアンズ(Prunus armeniaca L.)、アンズ(P.armeniaca L.var.anzu Max.)の種子であり、青酸配糖体amygdalin約3%、脂肪油30?50%を含み、前者の含量は桃仁より高い。oleic acid、linoleic acid、palmitic acidをはじめtriglyceride、glycolipide、phospholipidを含むとされている。

以上の報告から杏仁中のamygdalinは、杏仁水製造中にmandelnitrileに変換するため、杏仁水中にamygdalin は存在しないか存在したとしても痕跡程度であることが推定されるため、amygdalinによる相互作用を考える必要はないものと判断する。

[015.2AMY:2000.6.19.古泉秀夫]


  1. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996