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こむら返りの発現理由

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・こむら返り・有痛性筋痙攣・腓返り・ふくらはぎ・腓腹筋・平目筋・痙攣・つる

Q:最近、店頭で足がつる等の相談を受けることがあるが、『つる』の表現にはこむら返りが含まれ ていると考えられるが、これの発生原因について。

A:“こむら返り”の“こむら”は、ふくらはぎのことであり、“こむら返り”とは、ふくらはぎの筋肉、腓腹筋と平目筋が痙攣を起こすことを指している。

いわゆる筋肉が“つる”という状態で、他の場所の筋肉でも“つる”という状態はよく起こるが、なかでもふくらはぎの筋肉は、非常に“つり”やす いことで知られており、これが代表的な呼称になり、他の筋肉がつった場合でも、“こむら返り”(有 痛性筋痙攣)として、症状を訴える場合があるとされている。

“つる”という現象は、一つの筋肉に痙攣が起こり、連続的に収縮が起こるために、一つの筋肉だけが硬くなって盛り上がった状態が続き、その筋肉 がかなり痛いというのが特徴である。

こむら返り”の原因については、

  1. 制御装置が働かない場合
  2. 細胞の興奮性が異常に亢進している場合

があると考えられる。また、“こむら返り”には、

  1. 生理的に起こる(普通の健康なヒトに起こる)こむら返り
  2. 病気の症状として起こるこむら返り

の二つの原因があると考えられている。

腓返りの発生原因 発生理由
生理的原因 準備運動不足状況での激しい 運動。同じ動作の繰返しによる筋肉の硬化による痙攣。筋肉疲労。睡眠中に突然寝返りを打った時に“つる”という状態。
病的原因 電解質異常(低カルシウム血 症状態・低カリウム血症状態。特にナトリウム低下が影響)。嘔吐・下痢による電解質低下。脱水。塩分不足。ホルモン異常(甲状腺機能低下症等)。糖尿病時 (非常に早期-他の症状発現前-原因不明)。慢性肝炎・肝硬変。脊髄の運動細胞の病気、末梢神経の病気。β-遮断剤服用、一部の抗癌剤服用。

何年かに1回程度の発作であれば、特に心配はないが、年に何回か必ず起こるという場合(健常人でも起こる)には、何かの病気の始まりである可能 性がある。月に何回も起こるということであれば、何か異常があると考えるべきで、精密検査を受ける。

単なる“こむら返り”の場合には、運動前・就寝前に、ふくらはぎの筋肉の伸縮を十 分に行う準備運動を実施すれば、“こむら返り”を惹起させない効果があるとされている。

就寝時に起こる『こむら返り』について、爪先が延びて、足の後ろ側のふくらはぎ の筋肉が縮んだ状態になっている。

このようにふくらはぎの筋肉が縮んでいると、運動神経の末端が変形して興奮しやすくなるといわれている。大脳から指令もでないのに、勝手に末梢神経が興奮して筋肉を収縮させ、痙攣を惹起する。

更に寝ている時は足の裏に圧がかかっていないので、緊張をゆるめるためのフィードバック機能もあまり働かず、筋肉の収縮をますます促進してしまうとされている。

水泳中の『こむら返り』も睡眠中と同様に、水中で爪先が真っ直ぐ伸びてふくらは ぎの筋肉が縮んだ状態になっているために惹起するとされている。

[615.8.CRA:2004.6.1.古泉秀夫]


  1. 社団法人日本薬剤師会・編:気になる症状から見た疾患-木下真男:こむら返り;薬事日報社,2001
  2. 水谷智彦:ちょっと気になる身体の異常-こむら返り;ヘルシスト,No.0147:52-55(2001.3.1.)
  3. 北岡治子:こむらがえり;臨床と薬物治療,12(6):793-796(1993.9.)
  4. 亀谷麒与隆:慢性肝疾患とこむら返り;日本医事新報,No.3290(1987)
  5. 宮川俊平:こむら返りの原因と治療;日本医事新報,No.3743(1996)
  6. 広瀬源二郎:高齢者での下肢筋痙攣(こむら返り);日本医事新報,No.4059(2002.2.9.)
  7. 葛原茂樹:就寝中に起こる有痛性筋痙攣;日本医事新報,No.3656(1994)

降圧剤の併用について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・降圧剤・併用療法・高血圧治療ガイドライン・Ca拮抗薬・ACE阻害薬・AII受容体拮抗薬・利尿薬・α-遮断薬・β-遮断薬

Q:現在、高血圧治療薬服用中の患者にCa拮抗剤が追加処方された。高血圧治療目的でどの範囲ま で併用療法は承認されるのか

A:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会による『実地医家のための高血圧治療ガイドライン』に次記の記載がされている。

[1]第一選択薬の決定

Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AII受容体拮抗薬)、利尿薬、β-遮断薬(含αβ遮断薬)、α遮断薬の何れか を低用量から用いる。降圧薬の選択に際しては、以下の要因を考慮し、個々の患者に適した薬物を使用する。

  • 心血管病の危険因子:高齢、性別、喫煙、肥満、高脂血症、耐糖能異常、心血管病 の家族歴など。
  • 標的臓器障害、心血管病、他の合併症
  • 降圧薬の副作用、QOLへの影響
薬剤 積極的な適応 禁忌
Ca拮抗薬 高齢者、狭心症、脳血管障 害、糖尿病 心ブロック(ジルチアゼム)
ACE阻害薬 糖尿病、心不全、心筋梗塞、 左室肥大、軽度の腎障害、脳血管障害、高齢者 妊娠、高カリウム血症、両側 腎動脈狭窄
AII受容体拮抗薬 ACE阻害薬と同様、特に咳 でACE阻害薬が使用できない患者 妊娠、高カリウム血症、両側 腎動脈狭窄
利尿薬 高齢者、心不全 痛風、高尿酸血症
β-遮断薬 心筋梗塞後、狭心症、頻脈 喘息、心ブロック、末梢循環 不全
α-遮断薬 脂質代謝異常、前立腺肥大、 糖尿病 起立性低血圧

[2]降圧薬の変更と追加

低用量の第一選択薬によって140/90mmHg未満に到達しない場合は、忍溶性が良ければ同薬を増量するが、常用量の2倍以上の高用量は避ける。

同一薬の増量によっても目標血 圧値に到達しない場合には相加・相乗効果が期待できる薬物を併用する。

実地臨床でしばしば行われる併用療法には以下のものがある。第一選択薬の投与で効果が見られず忍溶性が悪い場合には、別のクラスの降圧薬に変更する。

併用時組合せ 各薬剤の特徴
Ca拮抗薬 ACE阻害薬 Ca 拮抗剤:血管平滑筋の細胞外から細胞内へ入るCa++ を抑制して血管拡張をもたらす。

降圧効果が良好で、重篤な副作用がないことから日本では最も多く使用されている。

Ca拮抗剤の利点は、降圧にも係わらず脳循環、冠循環、腎循環及び末梢循環を良好に保ち、糖・脂質代謝への悪影響がないことである。

ベンゾジアゼピン系に属するジルチアゼム(降圧効果はそれほど強力ではないが、心伝導系への抑制効果を有し、心収縮力の軽度の低下と心拍数を減少させる特徴がある)は、心伝導系の抑制により徐脈や房室ブロックをきたすことがある。

副作用:顔面紅潮、頭痛、動悸、更に上・下肢の浮腫、便秘、歯肉増生などが見られることがある。

Ca拮抗剤を高血圧治療薬として用いる場合、短時間作用型は安定した高圧が得ら れ難く、動悸・頭痛などの副作用が出現しやすく、しかも服薬継続率が悪いので、長時間作用型を用いるべきである。特に短時間作用型で見られる反射性交感神経活性亢進は虚血性心疾患を増悪させる可能性がある。

Ca拮抗薬 AII受容体拮抗薬
Ca拮抗薬

(DHP)

相互作用-併用回避

ジルチアゼムのような徐脈をきたすCa拮抗薬とβ遮断剤の併用

β-遮断薬
ACE阻害薬

相互作用-併用回避

高カリウム血症をきたしやすいACE阻害薬とカリウム保持性利尿薬の併用

利尿薬 ACE阻害薬は、降圧効果に 加えて心血管系の肥厚を改善させ、動脈硬化の進展阻止効果を有している。

糖代謝や脂質代謝に悪影響を与えず、インスリン抵抗性を改善させる効果も有する。

その他蛋白尿減少効果、心不全や心筋梗塞後の予後改善効果がある。

また脳血流自動調節能下限域の上方偏位を改善する。

副作用:咳嗽(服用者の20-30%)、稀に血管神経性浮腫による呼吸困難を生ずることがある。

妊婦に伴う高血圧には使用禁忌。両側腎動脈狭窄症や高カリウム血症にも使用を避ける。

AII受容体拮抗薬

相互作用-併用回避

高カリウム血症をきたしやすいAII受容体拮抗薬とカリウム保持性利尿薬の併用

利尿薬 心血管系にはACE以外にキ マーゼなど、アンジオテンシンIからAIIを産生する酵素が存在することからAII受容体拮抗薬はACE阻 害薬より広範囲にAIIの作用を抑制すると考えられる。

降圧効果はACE阻害薬と同等であるが、副作用は少なく、特にACE阻害薬に見られる咳は起こらないので、良好な服薬継続が期待できる。適応・禁忌は ACE阻害薬に準ずる。

β-遮断薬 α-遮断薬 β-遮断薬は各薬物によってその性状がかなり異なる。β受容体のうち、主としてβ1受容体に選択的に作 用する薬物か、β2受容体の遮断効果をも有する薬物かどうか、脂溶性か水溶性か、あるいは内因性交感神経刺激作用を有するか否かによって分類される。更に最近α1遮断効果やCa拮抗作用あるいはカリウムチャンネル開口作用などを有し、末梢血管拡張作用を有するβ-遮断薬が登場している。

虚血性心疾患を有する高血圧や頻脈を有する高血圧に適する。心筋梗塞の予防効果 を有することが証明されている。

副作用:徐脈、房室ブロック等があり、末梢循環障害をきたしやすい。更に喘息等の閉塞性肺疾患を増悪させる。倦怠感や運動の能力低下をきたしやすく、高齢者には適さない。

α-遮断薬の降圧効果は、細動脈の拡張作用に基づき、交感神経活性の高い例に効 果的である。糖・脂質代謝に良好な効果を有し、前立腺肥大を有するものでは排尿障害を改善する利点がある。

副作用:起立性低血圧、高齢者の食後血圧低下等。

利尿薬 β-遮断薬 サイアザイド系利尿薬及びその類似薬が最も良く用いられる。

低カリウム血症、低マグネシウム血症をきた しやすいほか、高尿酸血症、高脂血症、耐糖能異常、血液濃縮、勃起障害などの副作用をきたすが、低用量で用いればこれらの副作用は少ない。

低カリウム血症を防止するために、ACE阻害薬(AII受容体拮抗薬)やカリウム保持性利尿薬(スピロ ノラクトン、トリアムテレン)、あるいはカリウム製剤の併用が勧められる。

ループ利尿薬とし てはフロセミドが頻用されており、血清クレアチニンが2.0mg/dL以上の腎不全を有する高血圧に 用いられる。

◆Ca拮抗薬を狭心症薬として用いる場合、Ca拮抗薬単剤でコントロールできない 場合に硝酸薬との併用、更にはnifedipineとdiltiazemの併用(nifedipineの血中濃度が上昇)が有用である。また降圧薬として用いる場合、Ca拮抗薬(nifedipine、diltiazem)は他の降圧薬(降圧利尿薬、β-遮断薬、ACE阻害薬)と併用しやすい。

◆K保持性利尿薬は、単独では利尿降圧効果は弱く、チアジド系利尿薬、ループ利尿 薬による低K血症の阻止、利尿効果の増強のための補助に用いることが多い。チアジド系利尿薬は、降圧利尿薬として高血圧症に対する第一選択薬の一つである。最近では、使用量を少量に止め、他剤との併用が行われている。

等の報告がされている。

[035.1.HYP:2004.4.6.古泉秀夫]


  1. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会・編:実地医家のための高血圧治療ガイドライン;日本高血圧学会,2001
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

骨粗鬆症治療薬の投与簡略化

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・骨粗鬆症治療薬・投与簡略化・ビスホスフォネート製剤・アレンドロン酸ナトリウム・alendronate sodium・フォサマック・Fosamax

Q:週1回の投与で治療可能な骨粗鬆症治療薬について

A:ビスホスフォネート製剤であるアレンドロン酸ナトリウム(alendronate sodium)の製剤であるフォサマック(FosamacTM)は5mg/錠が万有製薬から市販されているが、国外において新規格単位製剤として70mg/錠の製造承認申請がされたとする報告がみられる。

70mg錠は、週1回の投与で、5-10mg毎日1回投与と同等の効果を示すことが、閉経後骨粗鬆症の臨床検討において確認されたと報告されている。

また週1回投与のalendronate(FosamaxTM)35mg及び70mg錠がFDAで承認され、閉経後骨粗鬆症の予防及び治療薬として有用だとされているが、その他にもリセドロネート(risedronate)製剤であるアクトネル(ActonelTM)が新しい週1回投与製剤の開発を進めており、製造承認が得られ次第、発売を計画しているとされる。

alendronateの様なビスホスホネートは、破骨細胞の機能を阻害し、骨吸収を低下させる。本剤の活性は、骨において数週間持続する。

1日1回投与のalendronateの主な欠点は、重症の食道粘膜刺激の可能性を避けるために必要な投与方法、空腹時に背筋を伸ばしコップ1杯の水で素早く服用し、少なくとも30分間は正しい姿勢を保った後、横になる前に食事を取らなければならないことである。

alendronateの週1回投与と1日1回投与を比較した臨床試験は、1件しか発表されていない。この閉経後骨粗鬆症の女性889例を対象とした1年間の試験で、いずれの投与法でも骨密度の増加における効果は同等であることが示されたが、骨折の低下に関する比較資料はない。消化器毒性も同等であったとする報告が見られる。

またrisedronate sodium hydrate(Procter & Gamble)の週1回投与型の製剤は、骨粗鬆症の適応で2002年1月17日にFDAに承認されたとする報告も見られる。

[035.1.ALE:2004.3.16.古泉秀夫]


  1. 週1回投与の骨粗鬆症治療薬;薬事日報,2000.4.14.
  2. 週1回投与のアレンドロネート(Fosamax);The Medical Letter<日本語版>,17(6):25-26(2001.3.19.)
  3. 明日の新薬CD-ROM版,2002.8.27.
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

昆虫忌避剤について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬名検索・殺虫剤・防虫剤・虫除け剤・昆虫忌避剤・蚊・刺咬症・ディート・DEET・AUTAN・DEET・DETAMIDE・ Dieltamid・Diethyltoluamide・シトロネラ・Citronella・ユーカリオイル・eucalyptus-oil・ペルメトリン・permethrin・ピカリジン・picaridin・六塩化ベンゼン・BHC・リンデン・HCH

Q:寄生虫による刺咬を防止するための虫忌避剤について

A:種々の防虫剤(昆虫忌避剤)について、次の報告がされている。なお、昆虫忌避剤ではないが、適応外使用で疥癬虫感染症への投与がいわれている薬剤について、参照迄に収載した。

化合物名 概要 性状
六塩化ベンゼン

(benzene hexachloride;benzol chloride)

別名:BHC・リンデン・HCH・六塩化ベンゼン

1,2,3,4,5,6-hexachlorocyclohexane

*接触性殺虫剤であるが、農薬としての使用は全面的に禁止されている(1949年2月24日登録・ 1971年12月30日失効)。接触毒で、角皮より吸収されて神経系を侵す。また揮発性であるため、呼吸毒としての作用もある。殺虫剤。家庭用殺虫剤。防疫用剤。シロアリ駆除剤。

*有機塩素系の薬剤で、幾つかの異性体の混合物だが、γ-BHCのみに速効性の 接触毒作用があり、その精製品はリンデンと称される。

*疥癬の治療に際しpermethrintの方がBHCよりも(臨床的及び寄生 虫的、主観的治療の面で)効果的なように思えた。臨床的治療の面で評価すると、クロタミトンとBHCとの間に違いはないように思えた。

*純品は白色の結晶で、幾分 揮発性があり、通常のものは僅かに黄色を帯びた白色で、特異な刺激臭がある。水には不溶、各種の有機溶媒に溶ける。

*LD50(マウス経口)74mg/kg(γ体 95%)。

シトロネラ (Citronella) *citronella-oil。セイロンシトロネラソウ(Cymbopogon nardus Rendle)又はジャワシトロネラソウ(C.winterianus Jowitt)の葉の水蒸気蒸留で得られる精油。

*本剤を用いた虫除け剤は、蚊に対して短時間の防虫効果(1時間未満)があるが、おそらくダニには無効である。

*室内試験において、本品を活性成分とするものは約20分の持続効果を示した

*虫除け、蚊遣り、洋服の虫除等。また室内のダニ対策に。「レモングラス」を強力にした柑橘系の芳香をであるが、イネ科植物である。皮膚刺 激があるので、直接皮膚に塗布しない。

*Citronellaはイ ネ科植物。インドに産し、熱帯各地で栽培される多年生草本。全草を水蒸気蒸留し、シトロネラ油を得る。

geraniolとcitronellalを主成分とし、食品、香粧品香料などにされる。

ディート(DEET)

別名:AUTAN;DEET;DETAMIDE;Dieltamid;Diethyltoluamide。化学名:N,N- diethylmetatoluamide。

[商]Ultrathon(米国・3M)・虫除けキンチョールパウダーイン(大日本除蟲菊)・サラテクト(アース)・ウナコーワ虫除けスプレーS(興和)

*現在、最も効果が持続するのは本品であるが、合成繊維やプラスチックを腐蝕する。種々の蚊、ツツガム シ、ダニ、ノミ及びサシバエを寄せ付けないが、ミツバチやスズメバチのように針で刺す昆虫に有効な虫除け剤はない。

*DEETは兵士用に米軍が開発した。蚊やダニから、及び蚊やダニが媒介する病 気(ツツガムシ病や日本紅斑熱など)から個人を防護するためには非常に優れた薬剤である。

また、風土病が蔓延するような地域では特に重要な薬剤である。

*米国で販売されているDEETは5-40%及び100%製剤である。

含有量20%未満のDEET製品が完全に昆虫を予防できるのは1-3 時間である。防虫効果の持続時間は濃度が高くなるほど長くなる(最大12時間)が、濃度が50%を超えるとプラトーに達する。

元々は米軍のために開発された長時間作用型昆虫忌避剤。本剤は皮膚表面からの吸収や蒸発による損失を防ぐ長時間作用型ポリマー製剤に25%又は33%のDEETが含まれる。

周囲の状況や蚊の種類によって異なるが、この製品は6-12時間にわたり蚊による刺咬を95%以上防止し、この効果はアルコールを基剤とする75%DEETだったとする報告。

*DEETに対する毒性反応やアレルギー反応は殆ど無く、重篤な副作用は稀であ る。

指示通り使用した場合、最大50%の濃度までは幼児でも安全だと思われる。

中毒性脳障害は、一般に幼児及び小児に長期使用又は過量を使用した場合に認められているほか、ときに製品の経口摂取によって認められている。

発疹は軽度の炎症から蕁麻疹及び疱疹までの範囲で報告されており、一部のDEET製品は、患者の皮膚に不快な油っぽさや、べたつき感を与える。

DEETは妊娠の中期及び後期にも安全に使用されている。

*長期連用により脳障害を起 こすの報告。

*DEETは合成繊維で作られた衣類、メガネのフレームに用いられているプラスチック及び腕時計のガラスに損傷を与えることがある。

*湾岸戦争症候群の原因物質の一つとしてDEETは疑われており、DEETは他の農薬などと同時に使用すると、単独の化学物質が起こすより、重度の神経障害を招くことが知られている。DEETを使用する場合、他の薬物に被曝しない注意が必要である。カナダでは厳しく規制することになった。

ユーカリオイル

(eucalyptus-oil)

*最近発売されたeucalyptus-oilを用いた虫除け剤は、野外試験で蚊に対して最大4時間の 防虫効果を示した。室内試験では短時間のみの防虫効果を示した。

*主成分はcineole(eucalyptol)(約70%以上)である。

*eucalyptus-oilは拡散浸透性が強いため、ヒョウダニ駆除に有効 性を示す。スプレーされたeucalyptus-oilの微粒子が、布地の織目-顕微鏡的な繊維の間隙にまで浸透し、ヒョウダニの体を直撃する。

油とよく混和すること、これと拡散浸透力が強い性質によって、洗濯のとき、普通の洗剤だけでは到達しない織目の間隙に水や洗剤を浸達させ、間隙にひそむヒョウダニを溺死させるとする報告がみられる。

*ユーカリ油は、ユーカリの 木(Eucalyptus globulus Labillardi

口内清拭に使用する消毒剤の安全性

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:滅菌・消毒・口内清拭・消毒剤・安全性・イソジンガーグル・ Povidone-Iodine・ポビドンヨード・アズノールガーグル・アズレンスルホン酸ナトリウム・sodium azulene sulfonate・オキシフル・オキシドール・oxydol・ネオステリングリーン・benzethonium chloride・塩化ベンゼトニウム

Q:現在入院中の気切(気管切開)患者の 内の1名が、2週間毎に気管カニューレを交換していますが、薬剤耐性菌が増えてしまいました。口腔ケアとして、現勤務場所では、イソジンガーグル使用の口腔内清拭をしておりません。

私が勤務し始めた時、なかなかMRSAが消えない患者がいたのですが、その時主治医に、イソジンガーグルによる口腔内清拭と、経管栄養チューブの交換、気管カニューレの交換を同一日同一時間にする事を提案し、実行したところ、その患者のMRSAは消失し、現在までに菌の再発生は見られていません。

その事もふまえて、他の患者で耐性菌が増えた患者に対し、イソジンガーグルを使用しての口腔清拭の提案をした所、主治医は、イソジン等の消毒薬を長期スタンスで使う事による安全性や弊害について、情報が無いため許可し辛いと薬剤処方をためらっています。口腔内の清浄衛生の維持として、看護現場では、イソジンガーグルやアズレンなどを使うのですが、口腔清潔のための薬剤と、その効用及び影響・禁忌など教えて下さい。副作用も有りましたら宜しくお願いします。

A:口腔清浄等の目的で使用される医薬品について、次の通り紹介する。

一般名・商品名(会社名) [226]sodium azulene sulfonate (アズレンスルホン酸ナトリウム)

アズノール・ガーグル(日本新薬)

[添加物:乳糖、アラビアゴム、デキストリン、炭酸水素ナ トリウム、ポリビニルアルコール(部分鹸化物)、含水二酸化ケイ素、香料]

用法・用量:1回2-3包(アズレンスルホン酸ナトリウムとして4- 6mg)を適量(約100mL)の水又は微温湯に溶解し、1日数回含嗽する。

適応症 咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷
副作用 口中の荒れ、口腔・咽頭の刺激感[抜歯後等の口腔創傷の場合、血餅の形成が阻害されると思われる 時期には、激しい洗口を避けさせること]
作用機序等 実験的口内炎に対し、本品は40μg/mL以上の濃度で有意に創傷治癒促進作用を認めている。ま た角膜上皮剥離等の実験的創傷において治癒促進効果を認めている。

本品はin vitroにおいて白血球遊走阻止作用を認めるとともに、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を示し、各種起炎物質による浮腫、胸膜炎等種々の実験的炎症を抑制する。

一般名・商品名(会社名) [261]oxydol[3w/v%](オキシドール)

オキシフル(三共)

[添加物:アセトアニリド]

pH:3.0-5.0

用法・用量:

1.創傷・潰瘍:原液のままあるいは2-3倍に希釈して塗布・洗浄する。

2.耳鼻咽喉:原液のまま塗布、滴下あるいは2-10倍(耳科の場合、時 にグリセリン、アルコールで希釈)に希釈して洗浄、噴霧、含嗽に用いる。

3.口腔:口腔粘膜の消毒、齲窩及び根管の清掃・消毒、歯の清浄には原液 又は2倍に希釈して洗浄・清拭する。口内炎の洗口には10倍に希釈して洗口する。

適応症 *創傷・潰瘍の殺菌消毒

*外耳・中耳の炎症、鼻炎、咽喉頭炎、扁桃炎などの粘膜の炎症

*口腔粘膜の消毒、齲窩及び根管の清掃・消毒、歯の清浄、口内炎の洗口

副作用 連用により口腔粘膜を刺激することがある(頻度不明)。

重要な基本的事項:長期間又は広範囲に使 用しないこと。

その他の注意:長期大量経口投与によりマウスの十二指腸に腫瘍の発生が認められたの報告。

作用機序等 使用濃度において、栄養型細菌に対して殺菌作用を示すが、その作用は緩和で持続性がない。発泡に よる機械的清浄化作用がある。

本品は組織、細菌、血液、膿汁などのカタラーゼによって分解し、発生機の 酸素を生じ、殺菌作用を呈するが、低濃度の場合その作用発現は極めて遅い。石炭酸係数は黄色ブドウ球菌:0.012、大腸菌:0.014で強力とはいえず、持続性にも乏しく、浸透性も弱い。3%液は0.1%-昇汞水と同程度の殺菌力であるとされる。グラム陽性菌・陰性菌に有効。

一般名・商品名(会社名) [226]Povidone-Iodine 70mg/mL(ポビドンヨード)

イソジンガーグル(明治製菓)

[添加物:エタノール、チモール、l-メントール、濃グリ セリン、サッカリンナトリウム、サリチル酸メチル、ユーカリ油]

用法・用量:

用時15-30倍(本剤2-4mLを約60mLの水)に希釈 し、1日数回含嗽する。

適応症 咽頭炎、扁桃炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒
副作用 重大な副作用:ショック、アナフィラキシー様症状(0.1%未満)。

その他の副作用:総症例 1166例中嘔気(4例)、口内刺激(3例)、その他不快感・口内の荒れ・口腔粘膜糜爛・口腔内灼熱感(各1例)。

*慎重投与:甲状腺機能に異常のある患者[血中ヨウ素の調節が出来ず、甲状腺ホルモン関連物質に影響を与える恐れがある]。

作用機序等 本品の30倍希釈液の殺菌力

作用時間1分で死滅する細菌:Staphylococcus aureus 209P(黄色ブドウ球菌)、Streptococcus pneumoniae(連鎖球菌肺炎)、Streptococcus hemolyticus(溶連菌:溶血性連鎖球菌)。

作用時間10分で死滅する細菌:Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)。

作用時間15分で死滅する細菌:Streptococcus viridans(口腔連鎖球菌)。

本品は殺virus効果が認められる。コクサッキーウイルス、エコーウイ ルス、エンテロウイルス(AHC)は本品原液30秒以内の接触で不活化。ヒト免疫不全virusは本品の30倍希釈液で30秒以内に不活化。その他ポリオウイルスに対しても効果が認められた。

一般名・商品名(会社名) [261]benzethonium chloride(塩化ベンゼトニウム)

ネオステリングリーン 10%液(日本歯科製薬

[添加物:?]

用法・用量:

口腔内の消毒には、塩化ベンゼトニウムとして、0.004% (50倍希釈)溶液を用いる。抜歯後の感染予防には、塩化ベンゼトニウムとして、0.01-0.02%(10-20倍希釈液)溶液を使用する。

適応症 口腔内の消毒、抜歯創の感染予防。
副作用 過敏症:過敏症が発現した場合には投与を中止すること。刺激感。

[抜歯後等の口腔創傷の場合、血餅の形成が阻害されると思われる時期に は、激しい洗口を避けさせること]

作用機序等 本剤の主成分であるbenzethonium chlorideは、陽イオン界面活性剤で、芽胞のない細菌、カビ類に広く抗菌性を有し、低濃度で強い殺菌効果を示す。しかも毒性が低く、刺激が少なく、洗浄作用をも有する。

急性毒性(LD50)420mg/kg(ラット  経口)。

現在、含嗽用として使用可能な製剤は上記の4製品であるが、『アズレンス ルホン酸ナトリウム』製剤は、感染予防用ではなく、感染予防に使用可能な製剤は3製品である。

ただし、塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)を主成分とする消毒薬として、ハイアミン液(三共)等も市販されているが、ハイアミン液の場合『口腔内消毒』の適応は承認されていない。

一方、塩化ベンゼトニウムを主成分とする『ネオステリングリーン(日本歯科製薬)』は、口腔内洗浄の用法のみが承認されている製剤である。

Povidone-Iodineの毒性として、次の報告がされている。

  • (1)急性毒性(mg/kg)
    経口 皮下 静脈内
    マウス(JcI-ICR) 8,500 5,200 480
    8,100 4,100 580
    ラット(Wistar) >8,000 4,090 640
    >8,000 3,450 642
  • (2)亜急性毒性 Povidone-Iodineの10、25、50、100mg/kgを 家兎背部皮膚に35日間塗布した試験で、薬剤と関連する変化は認められなかったの報告。

    背部皮下に5、10、25、50/kgを35日間投与した試験では、一般状態、摂餌量推移、平均体重推移25mg/kg以下の投与量では薬物起因と考えられる障害はなく、血液学的検査、血清及び尿の生化学検査では 25mg/kg投与群でBUN(尿素窒素)又はNaの変動を認めたが、薬物量及び投与期間との相関関係もなく、病理組織学的検索でも、これらの変動を裏付ける変化はなかった。また病理組織学的検索では、投与部位の出血、浸潤、壊死等の障害を除けば、各投与群に肝細胞の壊死、繊維化、細胞湿潤、グリソン鞘付近の細胞湿潤、腎におけるうっ血、尿細管の拡張、腎盂部の粘液うっ滞等を認めたが、これら肝、腎に及ぼす影響は極めて軽度で、薬物との相関関係も認められなかったとする報告が見られる。

    その他、登録症例数139例(褥瘡患者)に白糖・ポビドンヨード製剤を8 週以上6カ月間塗布した結果、評価可能だった133例に、副作用は全く認められず、本剤の安全性には問題のないことが確認された。異常所見としてイソジンパッチテスト陽性例が1例認められ、本剤投与3カ月目のテストの結果であったため、本剤の投与は中止されたの報告がされている。

    Povidone-Iodineの長期使用による安全性については、皮膚 外用剤によるものが報告されているが、含嗽剤は、本来長期に使用することを目的としていないので、検討された資料はないとされている。従って、背部皮下あるいは褥瘡に使用された事例から、口腔内に使用した場合の安全性を予測せざるを得ない。

    一方、ヒトは通常、物理的・生理的な非特異的防御機構並びに特異的免疫機 構により、微生物の侵襲から生命を守っている。しかし、これらの防御機構の何処かに破綻が生じると、易感染性となり、常在菌の侵襲を受けて発病したり、感染症の重症化を招く。

    また易感染性宿主(compromised host)が日和見感染(opportunistic infection)を起こし、難治性の感染症に罹患することが報告されている。 従って、気管切開患者の口腔内に感染が見られる場合、全身性の感染症とし ないためにも、消毒薬による口腔内清拭の実施を選択しなければならない事例が考えられる。その際、判断の根拠となるのは、消毒薬の副作用による患者への影響と感染症の重症化による患者への影響とを較量し、より患者の利益となる方策は何かということである。 ただし、実施の最終判断は主治医の判断による。

[615.28.ORA: 2003.11.4.古泉秀夫]


  1. アズノール・ガーグル添付文書,2002.9.改訂
  2. オキシフル添付文書,N18-1
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  4. 高杉益充・編:改訂版消毒剤-基礎知識と適正使用;医薬ジャーナル社, 1990
  5. イソジンガーグル添付文書,2001.6.改訂
  6. 日本病院薬剤師会・編:院内における消毒剤の使用指針;薬事日報社, 1987
  7. イソジンガーグルインタビューフォーム,1994.9.
  8. 今村貞夫:褥瘡に対する白糖・ポビドンヨード製剤(ユーパスタコーワ) の長期投与における有効性と安全性の検討;皮膚科紀要,93(2):223-233(1998)
  9. 明治製菓株式会社学術課・私信,2003.10.28.
  10. 山西弘一・他編:標準微生物学 第8版;医学書院,2002
  11. ネオステリングリーン添付文書,1987.5.

紅麹について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・コウジ菌・麹菌・紅麹・黄麹・ベニコウジ色素・食効

Q:紅麹について

A:通常我国で清酒・醸造酒・味噌・醤油等の発酵食品に用いられる麹菌は、「黄麹」と呼ばれる種類(アスペルギルス属の糸状菌)であるが、中国・台湾では、紅色をした「紅麹」(モナスカス属の糸状菌)が、紅酒、紅老酒、紅乳腐などの醸造に古来から用いられていた。

紅麹は黄麹より繁殖力が弱く、管理が難しいため、日本では沖縄の加工豆腐に使用される程度で、1970年代の当初発ガン性の疑いがいわれた合成着色料に代わる天然色用色素として利用されるまで、それほど活用例はなかった。

紅麹色素(ベニコウジ色素:monascus color;モナスカス色素)

子のう菌類ベニコウジカビ(monascus pilosus K.Sato ex D.Hawksworth et Pitt)の菌体より室温時?微温時含水エタノール又は含水プロピレングリコールで抽出して得られる。

本品はアザフィロン系のモナスコルブリン、アンカフラビン等を主成分とする赤色色素である。本色素の色調はpHの変化に対して安定しているが、産生で沈殿を生ずる。

蛋白質への着色性は極めて良好であるため、水産練り製品や味付タコ等に広く使用されている。

本色素は光に対する安定性が比較的弱いため、本色素を用いて着色した製品の包装材料等は、可視光線の影響をカットするもの、又は赤色や橙赤色の包装材料を用いることが望ましい。

本来、紅麹は「消化・血行をよくし、内臓を賦活して胃を軽快にする」として漢方薬として使用されていたが、1980年代以降、機能性食品としての見直しが始まり、コレステロール合成阻害物質、ガン予防効果、特に顕著な血圧降下作用、血圧上昇抑制作用が相次いで発見された。

紅麹の血圧調整有効成分として、γ -アミノ酪酸が確認され、現在紅麹を使用した清酒・醸造酢・味噌等の多彩な醗酵製品が製造されている。また、メラニン生成抑制効果があるとする報告が見られる。

その他、紅麹(グンゼ株式会社)の主成分であるモナコリンK及びγ-アミノ酪酸のうちモナコリンKが体内のコレステロール合成の酵素であるHMG-CoAレダクターゼを特異的に阻害し、血中のコレステロールを減少する等の報告もされている。

その他、中国産の紅酵母抽出物から抽出されるロバスタチンは米国でコレステロール低下剤として市販されているが、ロバスタチン中にコレスチンが含まれている。サプリメントとして使用されるコレスチンは量も少なく、副作用等は見られない。

健康食品としてベニコウジ粉末400mg/粒とするコレステインTM(Cholestin)[ニュースキンジャパン]が市販されている。

エネルギー 3.00Kcal
蛋白質 0.10g
脂質 0.00g
炭水化物 0.50g
ナトリウム 1.00mg

その他の原材料:マルトデキストリン、微結晶セルロース、ブドウ糖、澱粉、ダイズ油、大豆ファイバー、微粒二酸化ケイ素、デキストリン、CMC-Na、大豆レシチン、クエン酸Na。

[011.1MON:2000.5.2.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 鈴木郁生・他監修:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  3. 健康産業流通新聞,第458号,1999.8.26.
  4. ニュースキンジャパン・私信,2000.5.2.

コラーゲンの効用について

金曜日, 8月 10th, 2007

?KW:健康食品・コラーゲン・collagen・膠原質・硬蛋白質・ゼラチン・ゼリー

Q:健康食品として取り扱われているコラーゲンの効用について

A:コラーゲン(collagen)について、次の報告がされている。

collagen(膠原質)は硬蛋白質の一つで、ゼラチンやゼリーもその類縁物質である。細長い繊維状を呈し、動物組織の細胞間物質の主成分として体重 50kgのヒトの場合3kgがcollagenであるとされ、特に皮膚、骨、腱等に多く含まれており、皮膚組織の70%はcollagenが占めるとされている。その弾力に富む頑丈な構造によって、細胞や組織が本来の機能を発揮できるよう相互にしっかりと繋ぎ止めている。collagen の種々のタイプが明らかにされており、皮膚、骨、眼の水晶体、関節の軟骨にあるタイプ等それぞれ性質の異なる15種類程度が知られている。

collagenの類縁物質とされるゼラチン(gelatin)について、次の報告がされている。

本品は動物の骨、皮膚、人体又は腱を酸又はアルカリで処理して得た粗コラーゲンを水で加熱抽出して製したものであるとされている。collagenは硬蛋白質の1種で、弱酸、弱塩基又は蛋白分解酵素の作用を比較的受けにくく、水にも溶けない。骨collagenはオッセイン(ossein)ともいう。 collagenは水と熱すると、非可逆的に水に溶け、また、蛋白分解酵素の作用を受けるとgelatinに変わる。この変化はcollagenのペプチド結合が一部加水分解されるためであると考えられるが、またペプチド鎖間のイオン結合や水素結合が開裂した結果とも考えられる。gelatinのアミノ酸組成は、collagenのものと似ているが、グリシン、プロリン、オキシプロリンを含み、シスチン、システインに乏しく、トリプトファンを含まず、栄養価は乏しい。膠は他の蛋白質も混在している不純なgelatinである。

gelatinは動物の骨、皮膚、人体、腱などを処理して得たにかわを精製したものである。原料としては牛、豚、鯨などの皮、骨、腱などを用いるが、牛の皮と骨が最も多く用いられる。

gelatinは医薬品の製剤原料として用途の広いもので、強固な弾力性のあるカプセルの製剤原料として最も多く用いられる。可逆性ゼラチン基礎剤として皮膚薬に、また錠剤、坐剤の基礎剤としてまた乳化剤として用いられる。注射剤に混合すると吸収を遅延させるので、作用時間を延長させる。また本薬の注射薬を静注すると血液の凝固性を高めるので、内出血の治療に用いられる。

本薬はトリプトファンのような必須アミノ酸を含有していないので完全な蛋白質ではないが、消化されやすく、糖質及び脂質を含有していないので食用として利用される。また、gelatinに免疫機能を賦活する可能性が高いのではとする検討がされているの報告が見られる。

絶えず新陳代謝を繰り返している体内では、collagenの産生が不可欠であり、細胞中でアミノ酸から産生される。しかし、全細胞において生成されるわけではなく、主に繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋芽細胞等の特殊な細胞で生成される。細胞内で生成された collagenは細胞外へ分泌されて必要な場所に定着し、繊維同士が縦横に結合し立体構造を構築し、細胞の増殖を促進、細胞機能の活性化を促す作用を示す。以上のcollagenの作用機作から従来は化粧品の保湿剤として主に用いられていたが、動物実験の結果、経口投与により皮膚の保湿や新陳代謝の活性化が認められたことから、経口によるcollagenの利用が検討されるようになった。

多様な効果が期待されるcollagen飲料は、多くが牛皮、豚皮、牛軟骨等を原料とし、腸管で吸収されやすいよう酵素醗酵により低分子化が図られているとされる。用いる酵素の種類や分解法により様々な特性を持った多種類の製品が供給され、健康食品のみならず、一般食品への活用も進んでいるとされる。

collagenの確立した効用としては、現在の所『皮膚の保湿効果』ということであるが、collagenは動物性の原料を用いて製造されているため、ゼラチン等によるアレルギーの既往等を有する者では、collagen含有飲料の摂取は回避することが無難である。

[015.9COL:2000.7.4.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996

沙棘(サジー)について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・サジー・サージ・沙棘・Seabuckthorn・沙棗・シャソウ・錯柳果・サクリュウカ・酸刺・サンシ

Q:健康食品として市販されている沙棘とは何か

A:沙棘(サジー又はシャキョク)は、チベット原産とされる漢方名『錯柳果(サクリュウカ)』の原植物名である。

  • 基原:グミ科ヒッポファエ属の植物で、学名:Hippophae  rhamnoides L .。沙棘(シャキョク)の果実である。
  • 原植物名:『沙刺(シャキョク)』、『錯柳(サクリュウ)』、『酸刺(サンシ)』。 英語名:Seabuckthorn、
  • 中国名:沙棘、ドイツ名: Sanddorn、ロシア名:oblepikha、フランス名:Argousier。
  • 異名として沙棗(シャソウ) [高原中草薬治療手帳]、大彌ト興(チベット名)がある。
  • 沙棘には6種12亜種がある。
果実 イソラムネチン(isorhamnetin)、イソラムネチン-3-モノ-β-D-グルコシド(isorhamnetin-3-mono-β-D-glucoside)、イソラムネチン-3-β-ルチノシド(isorhamnetin-3-β-rutinoside)、クエルセチン(quercetin)、ケンペロール・オリゴシド(kaempferol oligoside)、リンゴ酸(malicacid)、ビタミンC(300mg%以上)、carotene(3-4mg%)、ビタミンE(10-15mg%)、ビタミンB1(0.2-0.4mg%)、ビタミンB2(0.4-0.5mg%)、葉酸(0.5-0.8mg%)、リンゴ酸
乾燥種子 油脂8%-飽和脂肪酸11.6%(パルミチン酸、ステアリン酸)、オレイン酸26.6%、リノール酸34.7%、リノレイン酸27.0%
種子油 不鹸化性物質2.1%(zeaxanthin、cryptoxanthin、β- carotene、γ-carotene、lycopene)、sitosterol(0.78%)、ビタミンE(212mg%)
樹皮 アルカロイド(serotonin)、carotene
ビタミンC(340.8mg%)、 carotene、isorhamnetin
新鮮な根瘤 hemin(2価のヘム鉄が3価に酸化されたもの)、0.03mg/g(根、その他の部分の5倍量)

その他、本植物中にハルモール(harmol)及びハルマン(harmane:loturine)を含むとする報告がある。またカルシウム、鉄、亜鉛、カリウム、セレン等も含有するとされる。その他、クマリン、ヒロカテコール、グリシン・ペタイン、5-オキシトリプタミン等の抗酸化物質・生理活性成分が含まれている。

  • 適応:健胃、打撲傷、咳嗽喀痰、呼吸困難、消化不良、腸炎、気管支炎、瀉下等。

その他、

  1. 循環器疾患に対する効果
  2. 虚血性脳疾患障害に対する効果
  3. 新陳代謝及び自己免疫系統に対する効果
  4. 腫瘍・癌に対する効果
  5. 呼吸器疾患に対する効果
  6. 消化器疾患に対する効果
  7. 肝臓の保護作用
  8. 各種炎症・皮膚再生効果
  9. 脳代謝改善作用
  10. 老化防止作用等が報告されている。
植物名 中国語名 英語名
サリシフォリア 柳叶沙棘 H. salicifolia D.Don
チベタナスケレチテンド 西蔵沙棘 H. tibetana Schlechtend
ヒッポファエラムノイデスsspシネンシス 中国沙棘 H. rhamnoides L. ssp.sinensis

[015.9.SEA:2005.3.1.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品Q&A;じほう, 2003
  2. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典,2004-2005改訂新版
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典 第2巻;小学館,1998

月経前症候群の薬物療法について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・月経前症候群・premenstrual syndrome・PMS・診断基準・治療法・対症療法・漢方薬

Q:月経前症候群の薬物療法について

A:月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS:月経緊張症)について、日本産科婦人科学会用語解説集では、次の通りいわれている。

『月経前3-10日の黄体期の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来と共に減退ないし消退するものをいう』とされている。

  • 病態:性ステロイド説、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン説、ビタミンB6説、中枢オピオイド、カテコールアミン、セロトニン代謝異常説等が報告されているが、本症候群の病因は未だ明確ではない。幾つかの病態が複雑に絡み合って発現しており、単一の異常にその原因を求めるのは適当ではない。一般に性成熟婦人の20-40%程度にPMSが認められ、うち約20%の婦人でライフスタイルや仕事、学業上の影響を認める。PMS発現の頻度・程度には、地域差があるとされている。
  • 症状:いらいら、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着かない、憂うつ、むくみ、渇水感、食欲亢進、味覚の変化が知られている。乳房症状も酷いものは約10%であるが、何等かの乳房症状は約70%の婦人が経験している。

PMSの診断基準

  1. 3周期以上にわたり月経前に繰り返す以下の訴えが、各々最低一つずつはある。
    肉体的:乳房痛、腹部膨満感、頭痛、四肢浮腫
    情緒的:抑うつ、いらいら、不安感、錯乱、孤独感
  2. 上記の症状が月経開始4日以内に軽快し、少なくとも13日までは症状が消えている。
  3. これらの症状は、薬物、ホルモン及びアルコール飲用とは無関係に認める。
  4. 夫婦関係、親子関係、仕事・学業が上手くいかない。社会的孤立感、自殺企図、肉体症状に対する薬物依存を認める。
  • 治療法:プロゲステロン療法やビタミンB6療法の有用性が報告されたこともあるが、現在では疑問視されている。

本症候群が原因不明で、単独の成因ではないことにより、対症療法を行うことが多い。最近、GnRH agonist(ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬)療法やserotonergic drugを用いた臨床成績の有用性が報告されている。

治療法については、その他、『黄体期中枢神経伝達物質の調節異常が関係していることからそこに焦点を合わせた治療法と頭痛、浮腫などの対症療法や漢方薬の併用が行われる。軽い症例では食事療法(糖、アルコール、カフェインなどの制限)、エアロビクスなどは内因性オピオイドを増加させるという点で試みるのも一つの方法である。以前投与されていたピルはプラセボと同等の効果しかなく、現在は投与に関して否定的である』とする報告が見られる。

  1. 消炎鎮痛剤—ibuprofen(100mg) 3-6錠 分3
  2. 利尿薬—spironolactone(50mg) 50-100mg/日 月経前7日間
  3. 抗不安・抗うつ—fluvoxamine maleate(25mg) 2錠 分2
    alprazolam(0.4mg) 2-3錠 分2-3(10-14日間 黄体期に内服)
  4. ホルモン剤による排卵抑制作用—leuprorelin acetate 1.88g/v・3.75mg/v 1回1v(皮下注)4週1回 4-6週間[適応外使用]
  5. 漢方薬—証によって『加味逍遙散又は桂枝茯苓丸』の何れか 2-3包/日

[035.1.PMS:2006.4.24.古泉秀夫]


  1. 中村康彦・他:premenstrual syndrome(月経前症候群);診断と治療,86<増刊号>:475(1998)
  2. 山口 徹・総編集:今日の治療指針;医学書院,2003
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006

経管栄養時に使用するチューブの交換時期

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・経管栄養・経管栄養法・tube feeding・チューブ交換時期・鼻腔栄養法・nasal feeding・経腸栄養法・enteral nutrition・胃瘻・gastric fistula・口腔ネラトン法

Q:経管栄養時のチューブの交換時期について。1週間程度で汚染されるとする資料を見たが。

A:経管栄養法(tube feeding)とは、経口摂取が不十分あるいは不可能な患者にチューブを直接消化管まで挿入して栄養物を注入する栄養法である。チューブは病変の状況によって

  1. 鼻腔経由(鼻腔栄養法:nasal feeding):鼻腔経由でチューブを挿入し、チューブの先端は、胃内・空腸内におかれる経腸栄養法(enteral nutrition)である。挿入したチューブは、交換時期が来るまで留置される。鼻腔栄養法の欠点は、常に咽頭に異物感がある、チューブ周辺の不潔、嚥下運動の妨げになる等であるとされている。鼻腔経由の場合のチューブの交換時期については、2-3週間に1回、約2週間に1回とする報告がされている。
  2. 外瘻(external fistula)(胃瘻:gastric fistula・空腸瘻):腹部に造設された外瘻あるいは胃瘻からチューブを挿入する方法で、抜去されないよう胃内固定版と体外固定版で固定されている。胃瘻カテーテルの種類は4種類あると報告されている。胃内に固定する型式で「バルーン型」と「バンパー型」、胃外に固定する型式で「ボタン型」と「チューブ型」である。
    カテーテル交換の目安は、バンパー型4-6ヵ月、バルーン型1-2ヵ月とする報告が見られる。但し、この期間設定は、清潔管理のための期間設定ではなく、保険適用となる期間のようである。

その他、口腔Nelaton法が報告されており、本法は、チューブを口から挿入し、栄養物の注入後は口からチューブを抜管する。利点として、注入時以外は抜管しているため、管理が容易であり、口腔咽頭の清潔が保たれる。注入時間が短い。挿入時の刺激で嚥下の訓練ができる等であるが、欠点として、咽頭反射が強いと挿入できない。経鼻経管より挿入の工夫が必要であるが、アデノイドがある場合、挿入が困難であるとする報告がされている。

[035.1.TUB:2005.10.25.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,2001
  2. http://www5d.biglobe.ne.jp/~taberu/sou-mokuji.htm,2005.10.24.
  3. 胃管留置・経管栄養管理マニュアル作成小委員会:経管栄養管理ガイドライン-旭川赤十字病院;http://city.hokkai.or.jp/~makky97/risk/tubefeedinggaidline.pdf#search,2005.10.24.
  4. http://www.chugei.or.jp/care/investigation/8(q&a)-4.html,2005.10.24.
  5. http://www.peg.ne.jp/news/report/040603.html ,2005.10.24.

化粧品配合成分の安全性について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:毒性・中毒・安全性・化粧品原料・シャンプー・食品添加物・保存剤・製剤原料・パラベン類・paraben・ヤシ油脂肪酸

Q:化粧品・シャンプー等に配合されている、化学物質の安全性等について

A:質問された次の化学物質について調査した結果は下表の通りである。

ammonium chloride

NH4Cl :53.49

塩化アンモニウム。[食添収載]。白色の結晶性粉末又は結晶塊で、塩味及び清涼味がある。エジプトで駱駝の糞を燃やしたときに生ずるススを昇華して得たのが始まりといわれる。昭和25年5月19日食添指定。

[用途]膨張剤の配合原料としてベーキングパウダーの製造に用いられる。

この場合、炭 酸水素ナトリウムに約10%を配合する。ベーキングパウダーで菓子パンなどを作る場合は、小麦粉1kgに対し本品を10-20g使用する。この他せんべい、ビスケット、花林糖などの製造に用いられる。ADIは制限しないとされている。

試薬、医薬品の他、窒素肥料としても用いられる。

ammonium chlorideは酸形成塩で、大量を摂取すると胃を刺激して嘔気、嘔吐を起こし、また代謝性アシドーシス(高塩素血症)を招き、糖尿病様昏睡を起こすことがある。ammonium chlorideは生体内でNH4+とCl?に解離するため、血漿中にCl?増加。

急性毒性

イヌ(経口)—6-8g/animal 1時間以内で死亡。

ウサギ(経口)—2g/ animal 10分後死亡。

ウサギ(皮下)—50-100mg(NH3として)/kg

モルモット(皮下)—70-90mg (NH3として)/kg

マウス(皮下)—160mg (NH3として)/kg

*butylparaben

C11H14O3: 194.23

パラオキシ安息香酸ブチル(butyl prahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。昭和23年食添指定。昭和57年使用基準一部変更。本品のADIは0-10mg/kg(エステル類共通)。従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

ラットに2%及び8%の本品添加飼料を12週間与えたところ2%レベルでは毒性作用は 認められなかったが、8%レベルでは実験に使用した雄ラットは全数(12匹)死亡し、雌ラットの死亡率も高く、体重増加が著しく抑制された。動物は活動性がなく、運動量も低下したが、剖検では対照と大差ない程度の肺炎と肺硬変が見られた。

急性毒性

マウス(経口)LD50—-13,200mg/kg

*Cocamidopropyl

Hydroxy Sultaine

ヤシ油脂肪酸アミドプロピルスルフォベタイン。[英]Cocamidopropyl Hydroxy Sultaine。ココナッツ・オイル由来の脂肪酸。[用途]ペビーシャンプー、起泡性入浴剤、殺菌性皮膚洗浄剤。
*COCAMIDE MEA ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド。[英]Coconut Fatty Acid Monoethanolamide。INCI名:COCAMIDE MEA。
*DECYL GLUCOSIDE オリゴブドウ糖デカノール配糖体液。[英]Oligoglucose Decanol Glycoside Solution。INCI名:DECYL GLUCOSIDE。デシルグルコシド。

本質・基原:本品は主としてオリゴブドウ糖デカノール配糖体の水溶液である。

親油基のアルキル基と親水基の糖がグルコシド結合によって結合した、優れた洗浄力と高 い起泡性を有する低刺激性非イオン性界面活性剤である。

種々の陰イオン性、陽イオン性、非イオン性あるいは、両性界面活性剤と併用でき、毛髪洗浄剤や食器洗剤、その他洗浄剤などに用いることができる。

*DIDODIUM

COCOAMPHODIACETATE

N- ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム。[英]Disodium N-Cocoyl-N-carboxymethoxyethyl-N-carboxymethylethylenediamine。INCI名: DIDODIUM COCOAMPHODIACETATE。

ヤシ油脂肪酸ココアンホ酢酸Na。

別名:ウンデシルカルボキシメトキシエチルカルボキシメチルイミダゾリニウムベタインナトリウム液。

本質・基原:本品は、主としてN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウムからなる。

両性界面活性剤(アニオン界面活性剤)・界面活性剤低刺激・カチオニックシャンプー基材。

*ethylparaben

C9H10O3:166.18

パラオキシ安息香酸エチル(ethyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。

昭和23年食添指定。

昭和57年使用基準一部変更。

従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

本品2%を飼料に添加しラットの全生涯にわたって与えたところ、最初の2ヵ月間に成長の遅滞が見られたが、以後正常に復し、死亡率、血液、主要組織に異常は認められず、腫瘍の発生もなかった。

急性毒性

マウス(経口)LD50— 2,500mg/kg。

マウス(腹腔)LD50—-520mg/kg。

ウサギ(経口)LD50— 5,000mg/kg。

イヌ(経口)LD50 —5,000mg/kg。

*lysine cocoate solution ヤシ油脂肪酸リジン液。[英]Lysine Cocoate Solution。本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸リジン塩の水溶液である。
magnesium cocoyl methyl

taurate solution

ヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウム液。[英]Magnesium Cocoyl Methyl Taurate solution。本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウムの水溶液である。
methylchloroisothiazolinone メチルクロロイソチアゾリノン。抗菌作用を持つため、化粧品およびトイレタリー用製品の防腐剤として使用される。
methylisothiazolinone(MIT) メ チルイソチアゾリノン。保存剤、防腐剤。普通の化粧品類に保存料として添加されている化学薬品であるMethylisothiazolinone (MIT)が、「試験管内での実験で」神経細胞の発達に障害をもたらした事が報告された。ローションやシャンプーに添加されるこの合成物質は、細菌を殺す事によって製品の長期保存を可能にしている。試験管内の細胞レベルの実験結果を、そのまま人間に当てはめる事は非常に無理があると、他の研究者達は指摘している。

また研究者自身も、この化学物質はおそらく製造現場でそれを扱っている人達以外の普通の利用者達には影響しないだろうとしている [2004.12.3.Nature]

methylparaben

C8H8O3:152.15

パ ラオキシ安息香酸メチル(methyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。従来報告されているparaben類の情報を纏めると、[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

PHENOXYETHANOL

C6H5OCH2CH2OH:138.17

フェ ノキシエタノール。[英]2-Phenoxyethanol。INCI名:PHENOXYETHANOL。

別名:フェニルセロソルブ。エチレングリコールモノフェニルエーテル(ethylene glycol monophenyl ether)。

性状:無色ないし淡黄色の油状液体。微かな芳香を有し、焼けるような味がする。

火災危険:小。水に難溶(2.67g/100mL水)、アルコール、エーテル、水酸化ナトリウム溶液に可溶。

抗菌保存剤・消毒剤。

本品はグリコールエーテルの一種である。分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。

その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また緑膿菌に対して殺菌作用をもち香粧品分野にも利用されている。

[規格]化粧品種別許可基準(1994)に記載がある。

[用途]ボールペンインキや香料、農薬などの溶剤として、アクリル酸エステルやリン酸エステルの原料として、香粧品や医薬品が緑膿菌で汚染されることを防ぐ目的で使われる。

[毒性]急性経皮毒性5,000mg/kg(ウサギ)。

皮膚、眼を刺激。

RTECS=急性経口毒性1,260mg/kg(ラット)。

液体の皮膚刺激性は軽度。

ウサギに点眼した場合、強い障害を与える。

POTASSIUM METHYL

COCOYL TAURATE

ヤ シ油脂肪酸メチルタウリンカリウム。[英]potassium N-Cocoyl-N-methyl Taurate。INCI名:POTASSIUM METHYL COCOYL TAURATE。

本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウムの水溶液である。

propylparaben

C10H12O3:180.20

パラオキシ安息香酸プロピル(propyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。

昭和23年食添指定。

昭和57年使用基準一部変更。

従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。?毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

イヌに0.7g/kgの量を90日間与えたが悪影響は見られなかった。

急性毒性

マウス(皮下)LD50—1,650mg/kg

マウス(腹腔)LD50—200mg/kg

イヌ(経口)LD50—6,000mg/kg

SODIUM C14-16 OLEFIN SULFONATE テトラデセンスルホン酸ナトリウム。[英]Sodium Tetradecenesulfonate。INCI名:SODIUM C14-16 OLEFIN SULFONATE。

別名:α- オレフィンスルホン酸ナトリウム。

オレフィン(C14-16)スルホン酸Na。

ミネラル原料(mineral source)から作った界面活性剤。

炭素が14-16個含まれるオレフィン酸系の界面活性剤で、「家庭用品質表示法」に基づいた場合「アルファオレフィン系」という系列に分類される陰イオン系(アニオン系)界面活性剤である。

SODIUM ISOSTEAROYL LACTYLATE イソステアロイル乳酸ナトリウム。[英]Sodium Isostearoyl Lactate。INCI名:SODIUM ISOSTEAROYL LACTYLATE。

本質・基原:本品は主としてイソステアロイル乳酸のナトリウム塩からなる。

乳酸エステル。潤い保持力を高め、髪にボリュームを与える。

SODIUM LAUROAMPHO ACETATE ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム。[英]Sodium 2-Undecyl-1-hydroxyethyl Imidazolinium Betaine。INCI 名:SODIUM LAUROAMPHO ACETATE。

別名:2-ウンデシル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム。[

基原]本品は主としてウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウムからなり、通常、「イソプロパノール」、「エタノール」、「精製水」又はこれらの混液を含む。

ラウロアンホ酢酸Na 。

両性界面活性剤。

起泡性、洗浄力は陰イオンに劣るが皮膚や目に対する刺激が少ない。洗浄剤、ヘアコンディショニング剤、起泡剤。

SODIUM METHYL COCOYL TAURATE ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム。[英]Sodium N-Cocoyl-N-methyl Taurate。INCI名:SODIUM METHYL COCOYL TAURATE。

別名:N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム。

本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムからなる。

通常「イソプロパノール」、「エタノール」、「精製水」又はこれらの混液の溶液である。

ヤシ油(coconut oil、cocout oil、copra oil):ココナットオイルともいう。ヤシ科(Palmae)の一種、ココヤシ(Cocos nucifera)の果実核内のコプラ(copra)より得られる。常温で半固形の油。融点21-25℃。ヨウ素価8-9.5。植物油としては不飽和脂肪酸含量が極度に低く、酸敗しないので長期保存に耐える。石鹸原料、食用、特に各種の食品、菓子類の添加用に用いられ、また医薬品として軟膏基剤、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)原料にもなる。なおヤシから得られる油にパーム油(palm oil)、パーム核油(palm seed oil)がある。パーム油はヤシ科の一種Elaeis guineensisの果肉から、パーム核油は果実核から得られる。パーム油は一般の植物油と共通の構成脂肪酸であるが、パルミチン酸含量が高い(palmitic acidの言葉の起源)。パーム核油はココナットオイル(ヤシ油)に類似する性質を持つ。

methylhydroxybenzoate (メチルパラベン)、 ethylhydroxybenzoate (エチルパラベン)、 propylhydroxybenzoate(プロピルパラベン)、 buthylhydroxybenzoate(ブチルパラベン) 等のパラベン(hydroxybenzoic acid (PHBA) alkyl esters)は、防腐剤として食品、薬、化粧品、洗面用品等に広く使用されている。

ラットを用いた長期投与による毒性試験の結果、ブチルパラベンを除くパラベン類の混餌投与による無影響量が 20,000ppm(体重あたりの摂取量に換算:1000mg/kg)であったことから、食品添加物に関する FAO/WHO 合同会議において、ヒトの1日あたりの許容摂取量(ADI)はパラベン類の総量として体重あたり500mg/kg(参照:日本人対象)と定められている。

芳香環のパラ位に水酸基を有する化合物はエストロゲン活性を示す可能性が指摘されているなかで、Leminiらは CD1 マウスを用いた実験で PHBAの用量に依存して、幼若あるいは卵巣摘出動物の腟の角化亢進や子宮肥大がみられると報告している。

一方、Routledgeらは、酵母を用いた in vitro の系でパラベンはごく弱いエストロゲン作用を示し、その中でもブチルエステルのエストロゲン作用が最も強く、プロピル、エチル、メチルエステルの順に活性が弱くなることを明らかにし、さらに幼若動物あるいは卵巣摘出ラットを用いた in vivo の系ではブチルエステルを皮下投与した場合にのみエストロゲン作用が認められており、その強さは 17β-estradiol の1/100,000であると報告している。

今回の実験では、B6D2F1マウスおよび Wistarラットを用いて、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンのエストロゲン活性を子宮肥大試験により確認した。幼若の B6D2F1 マウスに、連続3日間、被験物質(100 mg/kg)を皮下・経口投与し、24時間後に屠殺して子宮重量を測定した。

その結果、いずれの被験物質についても 100 mg/kgまでの量は、子宮重量を増加させるようなエストロゲン活性は示さなかった。一方、幼若の Wistar ラットに皮下投与した結果、600 mg/kg/day のブチルパラベンで弱いエストロゲン活性が確認された。

ブチルパラベンは経口的に摂取されると速やかに PHBAとアルコールに分解され、すみやかに排泄されることが知られており、さらにエストロゲン活性がみられたブチルパラベンの量は著しく高い濃度であることから、パラベンは in vivoでは強いエストロゲン活性を示さないと結論される。

[63.099.COS:2005.3.22.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  3. http://www.eco-imagine.com/e-shop/info/ingredients.html,2005.3.2.
  4. 日本生活協同組合連合会:食品添加物の手引き(改訂版);日本生活協同組合連合会安全対策推進室,1999
  5. 日本化粧品工業連合会・編:日本汎用化粧品原料集 第四版;薬事日報社,1997
  6. 生化学大辞典 第3版;東京化学同人,1998
  7. 「齧歯類を用いた子宮肥大試験で調べた結果,食品保存剤として使用されているパラベンにはエストロゲン活性は無かった」[Food and Chemical Toxicology 38 : 319-323 (2000)];http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzen_news/33.html,2005.3.4.
  8. 鈴木郁生・他監修:第7版食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  9. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003
  10. 日本化粧品工業連合会・編:日本繁用化粧品原料集 第四版;薬事日報社,1997
  11. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992

経口妊娠中絶薬の個人輸入規制について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:法律・規則・経口中絶薬・経口妊娠中絶薬・RU486・ミフェプリストン・Mifepristone・個人輸入

Q:新聞報道された「経口妊娠中絶薬」の個人輸入規制対象とされたRU486について

A:厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課が平成16年10月25日に発表した報道発表資料は、下記の通りである。

 

個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について

国内では承認されていない経口妊娠中絶薬は、ときに手術が必要となる出血を起こすことが知られており、欧米でも医師の処方と経過観察が必要とされる医薬品であるため、安易に個人輸入され、使用されることによる健康被害が懸念されます。そのため、医療機関を受診しないで個人で使用することの危険性を厚生労働省のホームページや報道機関を通じて呼びかけるとともに、個人で輸入して安易に使用されないよう、以下の措置を行うこととしましたので、お知らせします。

1. 厚生労働省のホームページの掲載による注意喚起等

1) 経口妊娠中絶薬を医療機関を受診せずに安易に服用することは危険ですので避けていただくよう、厚生労働省のホームページにQ&Aを掲載して、広く呼びかけることとしました。 2) 健康被害の実態を把握して、注意喚起の対応を進めるために、(社)日本医師会等の関係団体あてに協力を依頼しました。

 2. 個人輸入代行業者に対する監視指導の強化

個人輸入代行と称している場合でも、不特定多数の者に希望を募る広告を行う等、その形態によっては、薬事法違反に該当するおそれがあるため、あらためて 1) 各都道府県に対し、個人輸入代行業者のインターネット上の広告等について、監視指導の徹底を依頼 2) インターネットで広告を行っている個人輸入代行業者やプロバイダに対して警告メールの送付を行い監視指導の強化を図りました。

 3. 個人輸入に対する制限

経口妊娠中絶薬については、これまでは少量であれば厚生労働省での手続きが無くても個人で輸入できていた取扱いを改め、原則として、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合に限って輸入が可能となるよう、個人輸入を制限することとしました。

(参考)今回個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等

<一般名>ミフェプリストン(Mifepristone)

<販売名>(EU)ミフェジン(Mifegyne)・(米国)ミフェプレックス(Mifeprex)・(中国)息隠(米非司酉同片)。開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。

経口妊娠中絶薬「RU486」又は「ミフェプリストン錠」に関するQ&A

Q1. 経口妊娠中絶薬といわれている「RU486」あるいは「ミフェプリストン(mifepri- stone)」とはどのような医薬品ですか。日本では認められていますか。

A1.「RU486」又は「ミフェプリストン錠」は妊娠が継続するために必要なプロゲステロンと呼ばれるホルモンの作用を止める妊娠中絶薬です。我が国では未承認の医薬品であり、譲渡・販売等は薬事法で禁止されています。有効成分の「ミフェプリストン」は、子宮収縮作用のある他の医薬品と一緒に使用した時、妊娠後(最後の月経が始まった日から)49日以内であれば妊娠を終了することができるものとして欧米では認可され、医師が使用して経過を観察することが必要とされています。

Q2.「ミフェプリストン」は欧米ではどのように規制されていますか。個人で輸入してもいいのですか。

A2.欧米では、医師のみが処方できる医薬品とされています。膣からの出血などの副作用が知られており、医師による投与後の経過観察や、緊急時には医療機関を受診できることが必要とされています。欧米でも医師の処方せんなしで薬局で購入することはできません。また、インターネットを通じて販売されることは認められていません。また、本剤は、卵管妊娠(子宮外妊娠)には効果がなく、それに気付かずに適切な処置がなされなければ卵管破裂の危険があることから、米国では2002年4月に医療機関に対する注意喚起がなされています。このようなことから、インターネット上の個人輸入代行会社を通して本剤を入手し、個人で使用することは危険なので、やめてください。

Q3.外国で「ミフェプリストンを服用してはいけない」とされているのは、どの様な場合ですか。

A3.最後の月経が始まった日から49日を超えた場合は、この医薬品の適応の対象となっていません。また、次の方は服用してはいけないこととされています。・卵管妊娠(子宮外妊娠) ・子宮内避妊具(IUD)使用者 ・副腎に障害のある方 ・ステロイド薬物治療を受けている方 ・異常出血のある方、抗凝血剤を使用している方・ミフェプリストン、ミソプロストールあるいは同様の薬に対してアレルギー反応を持っている方

Q4. 「ミフェプリストン」によって起こる可能性のある副作用は何ですか。

A4.外国の添付文書によれば、ミフェプリストンを服用すると、膣からの出血を引き起こす可能性があります。時には、膣からの出血が非常に重くなることがあり、場合によっては外科的な処置により止血する必要があります。他の副作用としては、下痢、吐き気、頭痛、めまい、腰背痛等が知られています。

インターネットを通じて個人輸入の形で販売されている国内未承認の「飲む中絶薬」について、厚生労働省は18日ホームページで、敗血症などの細菌感染症と卵管破裂の危険性があると警告した。この薬は「RU486」。今年6月、香川県の20代女性から「出血が止まらない」などと被害報告があり、同省は先月25日、出血多量などの副作用の恐れがあるとして、安易な服用を避けるよう呼びかけていた

[読売新聞,第46218号、2004.11.19.]。

[615.1.MIF:2004.12.20.古泉秀夫]

クレソンの食効について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・クレソン・cresson・ウォータークレス・watercress・機能性成分・食効

Q:クレソンの食効及び機能性成分について

A:クレソン(cresson)は春先にでる若芽の呼称で、ウォータークレス(watercress)が英名での一般的名称であるとされる。

cressonはフランス名の呼称で、アブラナ科オランダガラシ属の多年草である。

  • 学名:Nasturtium officinale R.Br.
  • 和名:ミズガラシ、オランダガラシ(和蘭芥子)。

学名の属名はラテン語で『鼻がねじれる』の意。種名は薬効があるという意味で、元々は薬用植物である。

ヨーロッパ原産で、日本には明治初期に渡来し、在留外国人の食用に栽培されていたものが逸出し、帰化植物として全国の水の綺麗な河畔、溝などに群落を作るようになったとされる。

  • 薬用部分:全草(西洋菜乾;セイヨウサイカン)。全草又は青葉を採り、水洗いして日干しにして貯える。
  • 成分:全草にある辛味は、グルコナストルチイン(gluconasturtiin)の加水分解により、フェニール・エチル・イソチアナートを生じるためとする報告が見られる。
    その他、辛味成分としてシニグリン(sinigrin)という微量成分を含有する。又は成分として配糖体のグルコナスツルチイン (gluconasturtiin)、フェニルエチルイソチオシアネート(phenylethylisothiocyanate)の他、マンガン、鉄、燐、ヨウ素、カルシウムなどのミネラル、ビタミン類とする報告もされている。
  • 薬効:健胃、清血、増血、利尿、去痰、駆虫、解毒、解熱薬として用いられた。

なお、cressonの栄養成分(茎葉<生>可食部100g中)は以下の通り。

energy 15kcal
水分 94.1g
蛋白質 2.1g
脂質 0.1g
炭水化物 2.5g
灰分 1.1g
無機質 Na 23mg
K 330mg
Ca 110mg
Mg 13mg
57mg
1.1mg
亜鉛 0.2mg
0.05mg
Mn ?
vitamin A retinol (0)
carotene 2700μg
retinol当量 450μg
vitamin D (0)
E 1.6mg
K 190μg
B1 0.10mg
B2 0.20mg
niacin 0.5mg
B6 0.13mg
B12 (0)
葉酸 150μg
パントテン酸 0.30mg
C 26mg
脂肪酸 ?
食物繊維 水溶性 0.2g
不溶性 2.3g
総量 2.5g
食塩相当量 0.1g

[015.9.CRE:2005.8.1.古泉秀夫]


  1. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  2. 阿部 誠・他監修:ハーブスパイス館;小学館,2000
  3. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品;東洋医学舎,2004-2005
  4. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005

クロロアセトフェノンについて

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬名検索・クロロアセトフェノン・Chloroacetophenone・催涙ガス・化学的戦略剤・塩化フェナシル・phenacyl chloride・メイス・Mece

Q:催涙ガスとして使用されるクロロアセトフェノンについて

A:クロロアセトフェノン(Chloroacetophenone)。

別名:CN、塩化フェナシル、phenacyl chloride、メイス[Mece(エアロゾール溶媒中約1%含む)。

本品は白色の結晶で、水に不溶。アセトン、ベンゼンに溶解。リンゴの花の匂いを有する。融点:56℃、沸点:247℃。

毒作用:催涙が最初の作用である。

炭化水素溶媒か、又は包装用詰め物材料と混合したことによる激しい眼の障害が過剰汚染後に報告されている。

皮膚接触が、炎症、接触性皮膚炎、及び以後の曝露に対する感受性の増加をきたすことがある。

刺激の閾値は1m3当たり0.3-1.5mg。耐容限界閾値は1m3当たり5-15mg。致死量(ヒト):8,500-25,000mg・min/m3、行動不能効果:1.5mg・min/m3で即座に起こす。化学的戦略剤。

1918年米国で毒ガスとして開発され、主に暴動鎮圧や護身用のスプレーとして使用される。更に戦場でも作戦用毒ガスとしてしばしば使用されてきた。

催涙剤の特徴は、毒性が低く、行動不能にする濃度は極めて小さいということである。主に眼を刺激し、催涙作用がある。一方、皮膚に対しても一時的ではあるが、刺激性がある。新鮮な空気を吸えば、10-20分位で正常に戻る。

治療指針:皮膚と眼を冷水で流しながら、速やかに汚染を取り除くことが必要である。もしこれを完全に行わなければ、その後、クリームやローションを塗布した場合、関与した部位に拡大することがある。皮膚を空気に触れさせ、かつ衣服がそれ以上汚染されないようにすることが重要である。出来れば水よりも1%-重炭酸ナトリウムが眼や皮膚の洗浄によい。0.1%- idoxuuridine点眼薬が推奨されている。

[011.1.CHL:2003.9.9.古泉秀夫]


  1. Anthony T.Tu,Ph.D.:中毒学概論-毒の科学-;薬業時報社,1999
  2. 白川 充・他:薬物中毒必携-医薬品・化学薬品・動植物による毒作用と治療指針;医歯薬出版株式会社,1989
  3. 内藤裕史:中毒百科;南江堂,2001

クマザサについて

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:漢方薬・クマザサ・薬効・薬理・イネ科植物・隈笹・クマザサ・ニッコウザサ・オオバザサ・ミヤコザサ

Q:クマザサの効用について

A:クマザサ(学名:sasa veitichii rehd.)は、イネ科植物である。九州や中国地方など、西日本に多く野生するが、秋から冬にかけて、葉の周辺が白変して美しいので、全国各地に栽培されるようになった。また栽培されていたものが、野生化して、各地で見られる。ササは非常に種類の多い植物であるが、中では最も目に触れるものの一つである。

葉の縁が白く隈取りされるので隈笹の名があるが、隈取りされるササには、他にニッコウザサ、オオバザサ、ミヤコザサなどがある。但し、ミヤコザサは珪酸が多く、薬用には不適であるとする報告も見られる。

ササの食品防腐作用は、多くのササの種類に含まれている安息香酸の殺菌、防腐作用であることが近年明らかにされた。この他、ササ類に共通した成分として葉緑素、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2 、カルシウムが多く含まれているので、血液の弱アルカリ性化と、葉緑素の胃炎に対しての効果が期待される。その他、多糖体バンフォリンを含むとする資料もある。

適応として胃のもたれにササの葉の青汁を飲む。ササ類ならばどれでも薬効は同じなので、身近にあるササ類を利用すればよい。新鮮な葉の柔らかい部分を取って、ミキサーで青汁を作り飲む。新鮮な葉を1回20?30gの見当で使用する。あるいは夏期、新しい新葉、芯笹。青汁とともに乾燥した葉を用いるとする報告も見られる。芯笹はハトムギなどと混ぜて飲む。

クマザサ中の成分の一つである葉緑素について、次の報告がされている。葉緑素は、植物、藻類、細菌に存在するポルフィリン系の緑色色素で、テトラピロール環にマグネシウムが1原子結合しているマグネシウムの複合体である。クロロフィルは光合成における光エネルギーの化学エネルギーへの変換に重要な役割を果たす。共存する他の色素とともに種々の波長の光を吸収して励起を受け、その後に続く電子伝達系と協力してNADPを還元し、それと同時に光リン酸化を行う。

葉緑素の作用には、古くから造血作用、細胞賦活作用、組織刺激作用、脱臭作用など様々な作用を有することが知られている。

特に1973年に「水溶性の葉緑素が皮膚創傷面の細胞を賦活して肉芽組織の増殖と表皮形成を促し、優れた創面治癒促進作用を有すること」が認められ、主に概要として外科、皮膚科方面に応用されていた。

消化性潰瘍に使用した報告は1950年に論文発表された。それによると葉緑素を消化性潰瘍に使用した根拠を「消化性潰瘍の治療は、過剰な胃酸を除去したり、また酸分泌を抑制したり、食事量の制限や精神的不安を除く方法を試みたりしているが、いずれも間接的に自然治癒を助けるという方法でしかない。

それに対し葉緑素は皮膚の潰瘍に効果的で、肉芽組織の増殖を促進させるので、消化管中の潰瘍にも同じ効果が期待できるであろう」としている。

また、葉緑素には脱臭作用が知られているが、現在では、蛋白質との結合に代表される物理的・化学的吸着による脱臭効果や酵素阻害作用、抗菌作用などが挙げられている。この作用は消化性潰瘍でしばしば見られる口臭に対し、その除去作用として報告されている。また、マウスを用いた実験で、抗腫瘍作用の報告も見られる。

葉緑素中のマグネシウムを銅で置換して得られる銅クロロフィルナトリウム(安定な水溶性緑色色素)では抗ペプシン作用、胃粘膜のヘキソサミン増加作用も有しており、総合的に粘膜損傷を修復することが確認されているとする報告が見られる。

以上、クマザサの効用は、クマザサ中に含まれる葉緑素によるものが主要な効力であると考えられるが、隈笹の青汁を飲用する際、注意を要するのは、正確な含有量は報告されていないが、ビタミンKが含まれていることである。従って、warfarin服用中の患者では、飲用を原則的には避けるべきである。

なお、クマザサエキス関連医薬品としてはOTCで「サンクロン(太平生化学工業(株)」が市販されている。

  • 組成:クマザサ処理抽出クロロフィリンナトリウム0.25%。
  • [適]食欲不振、疲労回復、口臭・体臭除去、歯槽膿漏、口内炎。
  • [用]通常成人1回約2?3mL、小児1/2。希釈して1日3回食間。 但し、本品は本質的にはクロロフィリンナトリウムの製剤であり、クマザサはその抽出のための原料として使用されている。

[015.9.SAS:2000.3.14.古泉秀夫]


  1. 水野瑞夫・他:明解 家庭の民間薬・漢方薬;新日本法規,1983
  2. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  3. 福島県・編:福島県の薬用植物-知っていますか身近な薬草;福島県薬剤師会,1993
  4. 日本医薬品情報センター・編:一般薬日本医薬品集 第12版;薬業時報社,2000-01
  5. 梅田博史:シリーズ医食同源 食材、薬材-7.メサフィリン;日本薬剤師会雑誌,52(3):423-425(2000)