トップページ»

クコの効用について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・枸杞・クコ・薬効・薬理・食効・枸杞葉・地骨皮 ・枸杞子・抗脂肪肝作用・コリン様作用

Q:健康食品として市販されているクコ茶等の原料であるクコの効用について

A:漢方薬として使用される枸杞(クコ)は、ナス科の植物である枸杞(Lycium chinense Mill.)あるいは寧夏枸杞(Lycium bararum L. )の成熟した果実(枸杞子)・柔らかい茎と葉(枸杞葉)・根皮(地骨皮)である。

[成分]

枸杞子:カロチン(3.39mg%)、ビタミンB1(0.23mg%)、ビタミンB2(0.33mg%)、ニコチン酸(1.7mg%)、ビタミンC(3mg%)が含まれ、β-シトステロール、リノール酸も抽出されている。日本産枸杞の果実にはゼアキサンチン、ベタイン、フィリイエン等のアルカロイドが含まれている他、アルギニンやグルタミン酸、アスパラギン酸等の必須アミノ酸5種が含まれている。その他1種のビタミンB1抑制物質が含まれ、果皮はフィザリエンが含まれる。アミノ酸も多く、蛋白質は菠薐草の2倍含有している。

枸杞葉:日本産枸杞葉はベタイン、ルチン、ビタミンC、β-シトステロール-β-Dグルコシド、ビタミンB1抑制物質(この抑制作用はシステイン及びビタミンCにより消去される)を含む。乾燥した葉の熱湯抽出液中にはイノシン、ヒポキサンチン、シチジル酸、ウリジル酸、極めて少量のコハク酸、ピログルタミン酸、蓚酸及び多量のグルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、セリン、チロシン、アルギニンが含まれる。

[薬理]

  1. 抗脂肪肝作用:動物実験の結果として、寧夏枸杞子の水浸液は、軽度に脂肪の肝細胞内沈着を抑制し、かつ肝細胞の肝細胞の新生を促す作用を持つ。
    水抽出物の抗脂肪肝作用は肝機能障害の防止として現れる。
    かなり長期(75日)にわたって枸杞の水抽出物若しくはベタインを経口投与すると、血液及び肝臓の肝臓中のリン脂質水準が増加する。四塩化炭素中毒のラットは、肝臓内のリン脂質、コレステロール総合含有量が低下するが、あらかじめあるいは同時にベタイン若しくは枸杞の水抽出物を与えた場合には増加が見られ、かつBSP、S-GPT、アルカリフォスファターゼ、コリンエステラーゼ等の試験においても好転させる作用がある。
    枸杞の持つ脂質代謝及び抗脂肪肝に対する作用は、主として枸杞に含まれるベタインによるもので、ベタインにはin vivoでメチル基供与体の作用が見られる。
  2. コリン様作用:枸杞の水抽出物をウサギに静脈内注射すると血圧の低下と呼吸の興奮が起きるが、アトロピンの使用若しくは迷走神経の切断によって抑制できる。
    摘出したウサギの心耳を抑制し、摘出した腸管を興奮させ、ウサギの耳の血管を収縮させるなどの作用を持つ。
    ベタインにはそのような作用はなく、ウサギの耳の血管に対しては、逆に拡張作用が見られる。
    メタノール、アセトン、酢酸エチルなどによる抽出物にも軽度の降圧作用が見られる。従って枸杞による上記の作用は、ベタイン以外の成分によると考えられる。
    ベタインは内服の場合、その作用はかなり小さく、皮下注射ではコリン類似作用をもたらす。
    枸杞の抽出物には、乳酸菌の成長と酸の生産を著しく促進する働きがあるので、食品工業における利用価値もある。
    枸杞に含まれるアルカロイドは神経に働き、疲労した神経を興奮させる。その結果、精気がみなぎったような感じになる。枸杞の主たる効用はアルカロイドによる強壮作用である。
    ベタインは消化器系の分泌、運動を促し、神経の伝達が円滑になり、胃腸病に対して間接的な効果を発揮し、便秘の解消にもつながる。
    枸杞葉ではルチン(ビタミンP)の効用が大きい。ルチンは体内の活性酸素消去作用と共に毛細血管強化作用があり、高血圧症や低血圧症に効くといわれる。
    血管が強化されることにより血行が順調になるためで、高血圧の症状として現れる肩こり、頭痛、手足のシビレが無くなり、動脈硬化の予防にも役立つとされている。
    更に葉の葉緑素に肝の解毒作用を助ける働きがあり、肝臓病の予防・治療に効果があるとされる。
    また枸杞タンニンという枸杞の葉にのみ含まれるタンニンは、酸化還元作用を持ち、老化を防ぐと共に、癌の予防効果も期待されている。
    漢方薬としての枸杞の効用は、疲労回復、精力増強、機能低下の回復、急性結膜炎、視力減退・夜盲症の治療等に内服、痔の腫れ・炎症に煎液で熏洗する等の報告がされている。
    植物の成分の場合、その植物に含まれる全ての成分が測定されているとは限らない。また、測定した全ての成分が発表されているとは限らない。
    枸杞葉の場合も葉緑素が存在する以上、光合成に必要とされるビタミンKの含有が見られるはずであるが、その存在は上記文献らも報告されていない。従って、warfarin服用中の患者では、枸杞葉を主体とする健康食品を喫食する場合、十分注意することが必要である。

[015.9LYC:2000.7.5.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001