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こむら返りの発現理由

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・こむら返り・有痛性筋痙攣・腓返り・ふくらはぎ・腓腹筋・平目筋・痙攣・つる

Q:最近、店頭で足がつる等の相談を受けることがあるが、『つる』の表現にはこむら返りが含まれ ていると考えられるが、これの発生原因について。

A:“こむら返り”の“こむら”は、ふくらはぎのことであり、“こむら返り”とは、ふくらはぎの筋肉、腓腹筋と平目筋が痙攣を起こすことを指している。

いわゆる筋肉が“つる”という状態で、他の場所の筋肉でも“つる”という状態はよく起こるが、なかでもふくらはぎの筋肉は、非常に“つり”やす いことで知られており、これが代表的な呼称になり、他の筋肉がつった場合でも、“こむら返り”(有 痛性筋痙攣)として、症状を訴える場合があるとされている。

“つる”という現象は、一つの筋肉に痙攣が起こり、連続的に収縮が起こるために、一つの筋肉だけが硬くなって盛り上がった状態が続き、その筋肉 がかなり痛いというのが特徴である。

こむら返り”の原因については、

  1. 制御装置が働かない場合
  2. 細胞の興奮性が異常に亢進している場合

があると考えられる。また、“こむら返り”には、

  1. 生理的に起こる(普通の健康なヒトに起こる)こむら返り
  2. 病気の症状として起こるこむら返り

の二つの原因があると考えられている。

腓返りの発生原因 発生理由
生理的原因 準備運動不足状況での激しい 運動。同じ動作の繰返しによる筋肉の硬化による痙攣。筋肉疲労。睡眠中に突然寝返りを打った時に“つる”という状態。
病的原因 電解質異常(低カルシウム血 症状態・低カリウム血症状態。特にナトリウム低下が影響)。嘔吐・下痢による電解質低下。脱水。塩分不足。ホルモン異常(甲状腺機能低下症等)。糖尿病時 (非常に早期-他の症状発現前-原因不明)。慢性肝炎・肝硬変。脊髄の運動細胞の病気、末梢神経の病気。β-遮断剤服用、一部の抗癌剤服用。

何年かに1回程度の発作であれば、特に心配はないが、年に何回か必ず起こるという場合(健常人でも起こる)には、何かの病気の始まりである可能 性がある。月に何回も起こるということであれば、何か異常があると考えるべきで、精密検査を受ける。

単なる“こむら返り”の場合には、運動前・就寝前に、ふくらはぎの筋肉の伸縮を十 分に行う準備運動を実施すれば、“こむら返り”を惹起させない効果があるとされている。

就寝時に起こる『こむら返り』について、爪先が延びて、足の後ろ側のふくらはぎ の筋肉が縮んだ状態になっている。

このようにふくらはぎの筋肉が縮んでいると、運動神経の末端が変形して興奮しやすくなるといわれている。大脳から指令もでないのに、勝手に末梢神経が興奮して筋肉を収縮させ、痙攣を惹起する。

更に寝ている時は足の裏に圧がかかっていないので、緊張をゆるめるためのフィードバック機能もあまり働かず、筋肉の収縮をますます促進してしまうとされている。

水泳中の『こむら返り』も睡眠中と同様に、水中で爪先が真っ直ぐ伸びてふくらは ぎの筋肉が縮んだ状態になっているために惹起するとされている。

[615.8.CRA:2004.6.1.古泉秀夫]


  1. 社団法人日本薬剤師会・編:気になる症状から見た疾患-木下真男:こむら返り;薬事日報社,2001
  2. 水谷智彦:ちょっと気になる身体の異常-こむら返り;ヘルシスト,No.0147:52-55(2001.3.1.)
  3. 北岡治子:こむらがえり;臨床と薬物治療,12(6):793-796(1993.9.)
  4. 亀谷麒与隆:慢性肝疾患とこむら返り;日本医事新報,No.3290(1987)
  5. 宮川俊平:こむら返りの原因と治療;日本医事新報,No.3743(1996)
  6. 広瀬源二郎:高齢者での下肢筋痙攣(こむら返り);日本医事新報,No.4059(2002.2.9.)
  7. 葛原茂樹:就寝中に起こる有痛性筋痙攣;日本医事新報,No.3656(1994)