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化粧品配合成分の安全性について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:毒性・中毒・安全性・化粧品原料・シャンプー・食品添加物・保存剤・製剤原料・パラベン類・paraben・ヤシ油脂肪酸

Q:化粧品・シャンプー等に配合されている、化学物質の安全性等について

A:質問された次の化学物質について調査した結果は下表の通りである。

ammonium chloride

NH4Cl :53.49

塩化アンモニウム。[食添収載]。白色の結晶性粉末又は結晶塊で、塩味及び清涼味がある。エジプトで駱駝の糞を燃やしたときに生ずるススを昇華して得たのが始まりといわれる。昭和25年5月19日食添指定。

[用途]膨張剤の配合原料としてベーキングパウダーの製造に用いられる。

この場合、炭 酸水素ナトリウムに約10%を配合する。ベーキングパウダーで菓子パンなどを作る場合は、小麦粉1kgに対し本品を10-20g使用する。この他せんべい、ビスケット、花林糖などの製造に用いられる。ADIは制限しないとされている。

試薬、医薬品の他、窒素肥料としても用いられる。

ammonium chlorideは酸形成塩で、大量を摂取すると胃を刺激して嘔気、嘔吐を起こし、また代謝性アシドーシス(高塩素血症)を招き、糖尿病様昏睡を起こすことがある。ammonium chlorideは生体内でNH4+とCl?に解離するため、血漿中にCl?増加。

急性毒性

イヌ(経口)—6-8g/animal 1時間以内で死亡。

ウサギ(経口)—2g/ animal 10分後死亡。

ウサギ(皮下)—50-100mg(NH3として)/kg

モルモット(皮下)—70-90mg (NH3として)/kg

マウス(皮下)—160mg (NH3として)/kg

*butylparaben

C11H14O3: 194.23

パラオキシ安息香酸ブチル(butyl prahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。昭和23年食添指定。昭和57年使用基準一部変更。本品のADIは0-10mg/kg(エステル類共通)。従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

ラットに2%及び8%の本品添加飼料を12週間与えたところ2%レベルでは毒性作用は 認められなかったが、8%レベルでは実験に使用した雄ラットは全数(12匹)死亡し、雌ラットの死亡率も高く、体重増加が著しく抑制された。動物は活動性がなく、運動量も低下したが、剖検では対照と大差ない程度の肺炎と肺硬変が見られた。

急性毒性

マウス(経口)LD50—-13,200mg/kg

*Cocamidopropyl

Hydroxy Sultaine

ヤシ油脂肪酸アミドプロピルスルフォベタイン。[英]Cocamidopropyl Hydroxy Sultaine。ココナッツ・オイル由来の脂肪酸。[用途]ペビーシャンプー、起泡性入浴剤、殺菌性皮膚洗浄剤。
*COCAMIDE MEA ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド。[英]Coconut Fatty Acid Monoethanolamide。INCI名:COCAMIDE MEA。
*DECYL GLUCOSIDE オリゴブドウ糖デカノール配糖体液。[英]Oligoglucose Decanol Glycoside Solution。INCI名:DECYL GLUCOSIDE。デシルグルコシド。

本質・基原:本品は主としてオリゴブドウ糖デカノール配糖体の水溶液である。

親油基のアルキル基と親水基の糖がグルコシド結合によって結合した、優れた洗浄力と高 い起泡性を有する低刺激性非イオン性界面活性剤である。

種々の陰イオン性、陽イオン性、非イオン性あるいは、両性界面活性剤と併用でき、毛髪洗浄剤や食器洗剤、その他洗浄剤などに用いることができる。

*DIDODIUM

COCOAMPHODIACETATE

N- ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム。[英]Disodium N-Cocoyl-N-carboxymethoxyethyl-N-carboxymethylethylenediamine。INCI名: DIDODIUM COCOAMPHODIACETATE。

ヤシ油脂肪酸ココアンホ酢酸Na。

別名:ウンデシルカルボキシメトキシエチルカルボキシメチルイミダゾリニウムベタインナトリウム液。

本質・基原:本品は、主としてN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウムからなる。

両性界面活性剤(アニオン界面活性剤)・界面活性剤低刺激・カチオニックシャンプー基材。

*ethylparaben

C9H10O3:166.18

パラオキシ安息香酸エチル(ethyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。

昭和23年食添指定。

昭和57年使用基準一部変更。

従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

本品2%を飼料に添加しラットの全生涯にわたって与えたところ、最初の2ヵ月間に成長の遅滞が見られたが、以後正常に復し、死亡率、血液、主要組織に異常は認められず、腫瘍の発生もなかった。

急性毒性

マウス(経口)LD50— 2,500mg/kg。

マウス(腹腔)LD50—-520mg/kg。

ウサギ(経口)LD50— 5,000mg/kg。

イヌ(経口)LD50 —5,000mg/kg。

*lysine cocoate solution ヤシ油脂肪酸リジン液。[英]Lysine Cocoate Solution。本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸リジン塩の水溶液である。
magnesium cocoyl methyl

taurate solution

ヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウム液。[英]Magnesium Cocoyl Methyl Taurate solution。本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウムの水溶液である。
methylchloroisothiazolinone メチルクロロイソチアゾリノン。抗菌作用を持つため、化粧品およびトイレタリー用製品の防腐剤として使用される。
methylisothiazolinone(MIT) メ チルイソチアゾリノン。保存剤、防腐剤。普通の化粧品類に保存料として添加されている化学薬品であるMethylisothiazolinone (MIT)が、「試験管内での実験で」神経細胞の発達に障害をもたらした事が報告された。ローションやシャンプーに添加されるこの合成物質は、細菌を殺す事によって製品の長期保存を可能にしている。試験管内の細胞レベルの実験結果を、そのまま人間に当てはめる事は非常に無理があると、他の研究者達は指摘している。

また研究者自身も、この化学物質はおそらく製造現場でそれを扱っている人達以外の普通の利用者達には影響しないだろうとしている [2004.12.3.Nature]

methylparaben

C8H8O3:152.15

パ ラオキシ安息香酸メチル(methyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。従来報告されているparaben類の情報を纏めると、[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。

[5]毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

PHENOXYETHANOL

C6H5OCH2CH2OH:138.17

フェ ノキシエタノール。[英]2-Phenoxyethanol。INCI名:PHENOXYETHANOL。

別名:フェニルセロソルブ。エチレングリコールモノフェニルエーテル(ethylene glycol monophenyl ether)。

性状:無色ないし淡黄色の油状液体。微かな芳香を有し、焼けるような味がする。

火災危険:小。水に難溶(2.67g/100mL水)、アルコール、エーテル、水酸化ナトリウム溶液に可溶。

抗菌保存剤・消毒剤。

本品はグリコールエーテルの一種である。分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。

その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また緑膿菌に対して殺菌作用をもち香粧品分野にも利用されている。

[規格]化粧品種別許可基準(1994)に記載がある。

[用途]ボールペンインキや香料、農薬などの溶剤として、アクリル酸エステルやリン酸エステルの原料として、香粧品や医薬品が緑膿菌で汚染されることを防ぐ目的で使われる。

[毒性]急性経皮毒性5,000mg/kg(ウサギ)。

皮膚、眼を刺激。

RTECS=急性経口毒性1,260mg/kg(ラット)。

液体の皮膚刺激性は軽度。

ウサギに点眼した場合、強い障害を与える。

POTASSIUM METHYL

COCOYL TAURATE

ヤ シ油脂肪酸メチルタウリンカリウム。[英]potassium N-Cocoyl-N-methyl Taurate。INCI名:POTASSIUM METHYL COCOYL TAURATE。

本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウムの水溶液である。

propylparaben

C10H12O3:180.20

パラオキシ安息香酸プロピル(propyl parahydroxybenzoate)。製剤原料、保存剤。[食添収載]。

昭和23年食添指定。

昭和57年使用基準一部変更。

従来報告されているparaben類の情報を纏めると、

[1] paraben類は広範な分野で使用されているが、現在までのところ強調すべき問題は報告されていない。

[2]通常、2種以上のparaben類の組み合わせ で使用されている。

[3]生体と接触した場合、経口・経皮にかかわらず容易に吸収される。

[4]膜に対して作用するため、膜親和性が大であるbutylが最も抗菌 性が強く、従って生体に対する毒性も高いと考えられる。?毒性は主としてクエン酸回路で発現され、アセチルCoAを蓄積させる等の報告がされている。

イヌに0.7g/kgの量を90日間与えたが悪影響は見られなかった。

急性毒性

マウス(皮下)LD50—1,650mg/kg

マウス(腹腔)LD50—200mg/kg

イヌ(経口)LD50—6,000mg/kg

SODIUM C14-16 OLEFIN SULFONATE テトラデセンスルホン酸ナトリウム。[英]Sodium Tetradecenesulfonate。INCI名:SODIUM C14-16 OLEFIN SULFONATE。

別名:α- オレフィンスルホン酸ナトリウム。

オレフィン(C14-16)スルホン酸Na。

ミネラル原料(mineral source)から作った界面活性剤。

炭素が14-16個含まれるオレフィン酸系の界面活性剤で、「家庭用品質表示法」に基づいた場合「アルファオレフィン系」という系列に分類される陰イオン系(アニオン系)界面活性剤である。

SODIUM ISOSTEAROYL LACTYLATE イソステアロイル乳酸ナトリウム。[英]Sodium Isostearoyl Lactate。INCI名:SODIUM ISOSTEAROYL LACTYLATE。

本質・基原:本品は主としてイソステアロイル乳酸のナトリウム塩からなる。

乳酸エステル。潤い保持力を高め、髪にボリュームを与える。

SODIUM LAUROAMPHO ACETATE ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム。[英]Sodium 2-Undecyl-1-hydroxyethyl Imidazolinium Betaine。INCI 名:SODIUM LAUROAMPHO ACETATE。

別名:2-ウンデシル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム。[

基原]本品は主としてウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウムからなり、通常、「イソプロパノール」、「エタノール」、「精製水」又はこれらの混液を含む。

ラウロアンホ酢酸Na 。

両性界面活性剤。

起泡性、洗浄力は陰イオンに劣るが皮膚や目に対する刺激が少ない。洗浄剤、ヘアコンディショニング剤、起泡剤。

SODIUM METHYL COCOYL TAURATE ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム。[英]Sodium N-Cocoyl-N-methyl Taurate。INCI名:SODIUM METHYL COCOYL TAURATE。

別名:N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム。

本質・基原:本品は主としてヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムからなる。

通常「イソプロパノール」、「エタノール」、「精製水」又はこれらの混液の溶液である。

ヤシ油(coconut oil、cocout oil、copra oil):ココナットオイルともいう。ヤシ科(Palmae)の一種、ココヤシ(Cocos nucifera)の果実核内のコプラ(copra)より得られる。常温で半固形の油。融点21-25℃。ヨウ素価8-9.5。植物油としては不飽和脂肪酸含量が極度に低く、酸敗しないので長期保存に耐える。石鹸原料、食用、特に各種の食品、菓子類の添加用に用いられ、また医薬品として軟膏基剤、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)原料にもなる。なおヤシから得られる油にパーム油(palm oil)、パーム核油(palm seed oil)がある。パーム油はヤシ科の一種Elaeis guineensisの果肉から、パーム核油は果実核から得られる。パーム油は一般の植物油と共通の構成脂肪酸であるが、パルミチン酸含量が高い(palmitic acidの言葉の起源)。パーム核油はココナットオイル(ヤシ油)に類似する性質を持つ。

methylhydroxybenzoate (メチルパラベン)、 ethylhydroxybenzoate (エチルパラベン)、 propylhydroxybenzoate(プロピルパラベン)、 buthylhydroxybenzoate(ブチルパラベン) 等のパラベン(hydroxybenzoic acid (PHBA) alkyl esters)は、防腐剤として食品、薬、化粧品、洗面用品等に広く使用されている。

ラットを用いた長期投与による毒性試験の結果、ブチルパラベンを除くパラベン類の混餌投与による無影響量が 20,000ppm(体重あたりの摂取量に換算:1000mg/kg)であったことから、食品添加物に関する FAO/WHO 合同会議において、ヒトの1日あたりの許容摂取量(ADI)はパラベン類の総量として体重あたり500mg/kg(参照:日本人対象)と定められている。

芳香環のパラ位に水酸基を有する化合物はエストロゲン活性を示す可能性が指摘されているなかで、Leminiらは CD1 マウスを用いた実験で PHBAの用量に依存して、幼若あるいは卵巣摘出動物の腟の角化亢進や子宮肥大がみられると報告している。

一方、Routledgeらは、酵母を用いた in vitro の系でパラベンはごく弱いエストロゲン作用を示し、その中でもブチルエステルのエストロゲン作用が最も強く、プロピル、エチル、メチルエステルの順に活性が弱くなることを明らかにし、さらに幼若動物あるいは卵巣摘出ラットを用いた in vivo の系ではブチルエステルを皮下投与した場合にのみエストロゲン作用が認められており、その強さは 17β-estradiol の1/100,000であると報告している。

今回の実験では、B6D2F1マウスおよび Wistarラットを用いて、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンのエストロゲン活性を子宮肥大試験により確認した。幼若の B6D2F1 マウスに、連続3日間、被験物質(100 mg/kg)を皮下・経口投与し、24時間後に屠殺して子宮重量を測定した。

その結果、いずれの被験物質についても 100 mg/kgまでの量は、子宮重量を増加させるようなエストロゲン活性は示さなかった。一方、幼若の Wistar ラットに皮下投与した結果、600 mg/kg/day のブチルパラベンで弱いエストロゲン活性が確認された。

ブチルパラベンは経口的に摂取されると速やかに PHBAとアルコールに分解され、すみやかに排泄されることが知られており、さらにエストロゲン活性がみられたブチルパラベンの量は著しく高い濃度であることから、パラベンは in vivoでは強いエストロゲン活性を示さないと結論される。

[63.099.COS:2005.3.22.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  3. http://www.eco-imagine.com/e-shop/info/ingredients.html,2005.3.2.
  4. 日本生活協同組合連合会:食品添加物の手引き(改訂版);日本生活協同組合連合会安全対策推進室,1999
  5. 日本化粧品工業連合会・編:日本汎用化粧品原料集 第四版;薬事日報社,1997
  6. 生化学大辞典 第3版;東京化学同人,1998
  7. 「齧歯類を用いた子宮肥大試験で調べた結果,食品保存剤として使用されているパラベンにはエストロゲン活性は無かった」[Food and Chemical Toxicology 38 : 319-323 (2000)];http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzen_news/33.html,2005.3.4.
  8. 鈴木郁生・他監修:第7版食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  9. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003
  10. 日本化粧品工業連合会・編:日本繁用化粧品原料集 第四版;薬事日報社,1997
  11. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992