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薬害根絶の日

水曜日, 8月 15th, 2007

『8月24日』が何の日なのか、知っている医療関係者はどの程度いるのか。中でも薬剤師、医師はどの程度承知しているのであろうか。

1999年8月24日、サリドマイド・スモン・薬害エイズなどの悲惨な薬害を引き起こした反省と謝罪の意味を込めて、旧厚生省が省内の前庭に「薬害根絶誓いの碑」を建立した。

これを契機として、被害者団体等が例年『8月24日』に「薬害根絶デー」として国への要望活動などを行っているが、その中で今年は、サリドマイド・スモン・薬害エイズ・ヤコブ病等の薬害訴訟に係わってきた弁護士が、組織的に薬害問題に取り組むための『薬害対策弁護士連絡会(薬害弁連)』を発足させるとともに総会を実施した。

日常的に処方せんを書く医師、その処方せんに基づいて調剤する薬剤師は、当人の意識は別にして、常に何等かの形で薬害に関与してきたことは間違いない。ただ薬剤師の場合、処方せんという物理的な物体による間接的な患者との接触であり、自分の患者という認識は持ちきれない。それだけに自分が勤務する病院の患者が薬害の被害者であったとしても、直接的な罪悪感は持ち得ない。

つまり薬剤師は、自分が薬を直接投与したわけではないという意識が潜在的に存在するため、自らを塀の外において、被害者の痛みを痛みとして受け入れず、係わりのない世界の出来事として見てしまうのである。それはある意味で、薬剤師に社会性がないということであり、薬剤師教育の中で、薬害につて、その発生の背景や原因についての詳細な分析がされておらず、伝達もされていないということに原因があるのかもしれない。

更に薬害に対して薬剤師の係わり、対応の仕方を教育していないということも、薬剤師が薬害を他人事としてみる原因になっているのかもしれない。更にいずれの薬害の場合も、それぞれの関係者の対応のまずさが原因の大きな部分を占め、薬害の発生が人害として取り沙汰されるため、自分とは関係のないこととして、観客席から出ようとしないのかも知れない。

しかし、薬害というほどには集団的な事例ではないとしても、医療現場で働く限り、薬による副作用の発現は避けられず、薬剤師も加害者になり得るということを常に認識しておかなければならない。

現在、薬剤師は、調剤した薬について、発現が予測される重篤な副作用の前駆症状を、印刷した用紙を患者に配布している。しかし、記載されている内容は、業者が電子媒体化した添付文書の内容そのままなのである。その意味では、患者にとっては単なる記号の羅列であり、具体性のない情報の提供を受けているということである。ただし、これは薬剤師も同じであり、前駆症状として紹介されている個別症状について具体的な説明を求めると沈黙してしまう。

薬剤師は、添付文書に記載されている副作用の前駆症状について、より具体的な症状を把握し、その内容の詳細を伝達する責任があるといえる。そのためには重篤な副作用を経験した患者の症状の詳細を、生の声として集める努力しなければならない。残念ながら発現した症状がどの様なものであったのかは、経験者以外は分からないというのが実情なのである。

(2005.9.9.)


  1. 全国薬害被害者団体連絡協議会;http://homepage1.nifty.com/hkr/yakugai/,2005.8.25.
  2. 読売新聞,第46496号,2005.8.25.