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労働条件の悪化を容認するのか?

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

2005年3月24日、厚生労働省で開催された第7回社会保障審議会医療部会において、日本病院薬剤師会会長が「医薬品安全対策の総合的推進について」の中で、参考人として発言の機会を得て、「医薬品の安全使用体制の確立に向けて」と題して病院薬剤師が取り組む課題を説明したという [薬事新報,第2363号:22-23(2005)]。

その中で

「薬剤管理指導業務の完全実施」、

「夜間・休日における薬剤業務体制の充実」

について触れたというが、いずれも基本的には薬剤師の員数の問題と関わってくる。特に「夜間・休日における薬剤業務体制の充実」に関しては、別の会議の場でも『病院薬局で宿日直業務の実施率が低いのは、薬剤師の増員を求める際に悪影響を及ぼす』とする会長発言をしているが、薬剤師の労働条件の悪化を前提とした業務の改善は、真の改善とはならない。

第一、宿日直の導入は、病院薬剤師の決意だけで、解決できる話ではない。

宿日直手当の問題、宿直室の整備の問題、特に女性を含めて宿直業務を行うとすれば、宿直室の防犯対策、宿直室と調剤室の防犯対策、更に日直・宿直業務の交代要員の確保等、一定の財源確保が求められる。

宿日直業務を含めた勤務時間については、労働基準法の遵守は最低の範囲であって、それ以下にすることは間違いなく経営者の責任問題とされる。例えば土・日に日直で出勤した場合、振り替え休日で処理するのか、休日出勤手当で対応するのか。土曜日の夜間、日曜日の夜間は、同一薬剤師による連続勤務にするのか、他の薬剤師との交代勤務とするのか。対応の仕方によっては薬剤師に長時間勤務を強いることになる。

年休の保証、病休の保証、学会出張、研修会の参加等を保証するとすれば、元々3人や 4人の薬剤師の配置で、宿日直業務をやれという方に無理がある。実施可能な薬剤師が配置されていながら、実施していない施設が無闇にあるというのであれば問題であるが、そうでなければ、発想の転換が必要である。

日直を実施するとすれば、1施設当たり何人の薬剤師が必要なのか。当直をするとすれば、1施設当たり何人の薬剤師が必要なのか。各施設毎の必要数を具体的に、例えばベッド数別に算出し、提案することも必要ではないか。

もし、薬剤師がいうように、薬剤に関連する医療事故をなくすために、365日24時間体制で薬剤師の配置が必要である。薬剤師を配置することで眼に見えて医療事故の大部分は減少させることが出来、医療事故発生に伴う、人的時間の浪費、財政的負担の軽減が可能だと経営者が認識すれば、薬剤師の一定数を直ちに採用するという決断を得られるかも知れない。

いずれにしろ病院薬剤師の世界に過酷な労働条件が導入されれば、病院薬剤師自身が実調剤、薬品管理で過誤を起こす可能性が増大し、過酷な労働条件が更に継続すれば、病院薬剤師の退職、就職拒否という事態を招きかねない。改善を急ぐあまり、足元の見えない感情論を持ち出すのは避けなければならない。

(2005.4.15.)