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Compliance-薬剤師の責任

水曜日, 8月 15th, 2007

大衆薬(市販薬:OTC薬)について、厚生労働省は薬のリスクを3ランクに分けて、店側がきちんと消費者に説明し、買う側にも薬の副作用の度合いなどが分かるように販売ルールを改めるため、2006年1月20日からの通常国会に薬事法の改正案を提出する。1960年以来となる大改革は2008年から実施される予定。

現在の薬事法は、医師の処方せんを基に調剤ができる薬局と、薬店の中でも薬理作用が強い大衆薬(指定医薬品)を扱える薬店(一般販売業)に薬剤師の常駐を義務付けている。国内の薬剤師は24万人。薬剤師が常駐しなければならない薬局・薬店(一般販売業)は6万店余で、数字上は全店に常駐させることができる数ではあるが、実際は、就職先として病院や製薬会社の方が圧倒的に多く、薬局・薬店(一般販売業)は薬剤師の確保が困難な現状があるとされている。

2002年の厚労省の全国調査では、指定医薬品を売る薬店の16%、薬局の2%弱で薬剤師が不在だったとする報告がされている。

新制度が導入されると、大衆薬はリスクに応じてA-Cに3分類される。医療用医薬品から大衆薬に転用された胃腸薬「H2ブロッカー」など、高リスク薬はランクA。販売できるのは薬局のみで、薬剤師による対面販売が義務化される。解熱鎮痛薬の「アスピリン」など中程度のリスクの薬はランクB、ビタミン剤など低リスクの薬はランクCに分類。これらは全ての薬局、薬店で扱われるが、販売従事者としての資質確認のため、薬事法や副作用に関する知識を問う試験を新設し、合格者でなければ販売できなくなる。

B・Cランクの薬だけを扱う店では薬剤師の常駐は必要なくなる。A-Cのランクは全ての大衆薬の外箱、容器に表示されるようになる。

全身がケロイド状態になる「スティーブンス・ジョンソン症候群」をはじめ、大衆薬が原因と見られる副作用報告は、2004年だけで約300件に上る。サリドマイド薬害の被害者らで作る財団法人「いしずえ」の間宮清事務局長は「薬の販売を職業ベースで考えず、『かかりつけ医』のような存在に変わることが薬局・薬店には求められている」と話している。

  成分 主な製品名
A シメチジンなどH2ブロッカー(胃腸薬) ガスター10(ゼファーマ)
パンシロンH2ベスト(ロート製薬)
三共Z胃腸薬(三共)
ミノキシジル(発毛薬) リアップ(大正製薬)
塩酸ブテナフィン(水虫・たむし用薬) ブテナロック液(久光製薬)スコルバダッシュ(武田薬品工業)
B アスピリン
イブプロフェン(解熱鎮痛薬)
バファリンA(ライオン)
イブ(エスエス製薬)
ナロンA(大正製薬)
スクラルファート(胃腸薬) イノセアプラス錠(佐藤製薬)
インドメタシン(鎮痛消炎剤) バンテリンコーワ(興和)
パデックスID(第一製薬)
ビタミンA・D キューピーコーワゴールドA(興和)
チョコラA、D(エーザイ)
漢方処方製剤 葛根湯
C ビタミンB・C アリナミンA(武田薬品工業)
ハイシー1000(同)
尿素(外用薬) ワムナールプラスローション(ゼリア新薬工業)オイラックス潤乳液(ゼファーマ)

大衆薬はOTC薬と略称されることがある。これはOver the Counter Drugの略称であり、客と接するカウンター内の薬剤師が、その背にする棚に薬を置き、患者の容態を聞きながら、薬剤師が薬を選択し、患者に用法等の説明をしながら販売する薬ということの意味である。

いつの間にか、薬局も薬店も客が勝手に掴み出せるところに薬を陳列し、客が自ら選択する薬をただ売るだけという商売に成り下がってしまった。更に悪いことに、薬剤師は『セルフメディケーション』なる思想を我田引水的に解釈し、薬は客が客の責任で選択するものだということで、薬の説明をしなくなってしまった。

客は客で、薬局での説明に抵抗を示す傾向が見られていた。しかし、その原因を作ったのも多くは薬剤師なのである。薬局協励会の研修会等では、来客の客単価を上げるための研修会などが大流行で、如何に併売するかの接客術が伝達講習され、風邪薬を買いに来た客に、ビタミンCや総合ビタミン剤、時にはドリンク剤の抱き合わせ販売をするようにという話を微に入り細を穿ち講義されていた。つまり薬局に行って黙って付き合っていると、1回に数千円の薬を買わされるということで、薬局での説明に耳を貸さなくなったということである。

薬局で薬剤師が実施すべきことは、過去の服薬歴と副作用発現状況の把握、薬の相互作用を避けるための他の薬の服薬状況の把握、いわゆる健康食品の摂取状況、女性であれば妊婦・授乳婦への注意等である。

最も当人が高熱で、体調不良が極まれりという状況の中では、何よりも素早く的確な薬を渡すということが最優先される事項であり、このような場合の長広舌は、最も避けなければならないことである。将に余計なお世話になりかねない。更に客の体調によっては、医師への受診をすすめるべきであり、可能であれば、優秀な医師を紹介するところまで行くのが理想である。

これをするためには普段から近隣の医療関係者と付き合いがなければ不可能であり、人間関係の構築に努力することが求められる。地域の薬剤師会が支援すべきは、医師会等との連携構築ということである。

いずれにしろ今回の薬事法改正により、OTC薬の取扱がより明確にされる。更に新しい資格制度も導入される。それぞれの立場に立つ諸氏が、薬事法の法令遵守をすることが最重要課題であり、法律の主旨を曖昧にすることがあってはならない。

(2006.2.12.)