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ガルシニアについて

木曜日, 8月 9th, 2007

?KW:健康食品・ガルシニア・ダイエット法・ガルシニアダイエット・タマリンド・マラバール

Q:ガルシニアとは何か、また主成分は

A:米国においてダイエット法の一つとして、“ガルシニア・ダイエット”がいわれている。使用される成分は、南アジア原産の植物ガルシニア・カンボジアの果実の皮を乾燥したものの抽出成分で、古くからインド南西部等で酸味のある調味料として利用されてきた。

別名:タマリンド・マラバール。

タマリンドエキスは、南アジア産の植物の果実から得られるもので、この植物は「マラバール・タマリンド」、「ゴラカ」等として知られているもの。タマリンドはオレンジ大の果実で、カボチャの形に似た形状を示す。南インドやタイではカレーなどの調味料(酸味)として使用され、生魚の保存や消化補助の目的で使用されている。最近、この果皮から抽出したタマリンドエキスが、ダイエット素材として注目を集めている。

タマリンドエキス中には、化学名ハイドロキシシトリックアシド(hydroxycitric acid;HCA)とするクエン酸に類似した物質が豊富に含まれ、1960年代にその存在が確認された。

タマリンド(Tamarindus indica L.)。Tamarind[英]、amli[ヒンズー]、puli[タミル]、hunase[インド]、siyambala[スリランカ]、magyi[ビルマ]、asam jawa[マラヤ]、wit asam[ジャワ]、makam[タイ]、sampalok[フィリピン]、trai me[ベトナム]、ampil[カンボジア]、mak kham[ラオス]、羅晃子、酸梅、酸角[中国]。  果実を調味料、清涼飲料、チャトニイ、酒とする。

  • 成分]果実は糖類、d-酒石酸、クエン酸、ギ酸、L-リンゴ酸等の有機酸を含み、また、セリン、β-アラニン、プロリン、フェニルアラニン、ロイシン等のアミノ酸及びピペコリン酸を含む。葉はd-酒石酸、L-リンゴ酸、ビテキシン、イソビテキシン、オリエンチン、イソオリエンチン等を含み、若葉と芽は銅を多く含む。
  • 薬理]果肉は緩下作用があるが、これはおそらく大量の酒石酸を含むためであり、煮熟するとその作用は消失する。種皮の外皮は大量のタンニンを含み、アフリカでは下痢の治療に用い、煎剤を膿瘍の治療に用いる。本植物のある部分は抗菌作用があるが、樹皮にはない。葉はin vitroでグラム陽性球菌、大腸菌に対して抑菌作用があり、有効成分は恐らくビテキシンであろう。

その他、ガルシニアの果実の皮に大量に含まれるHCAは、エネルギー合成や脂肪合成に関係するクエン酸回路中の酵素の働きを阻害する。余剰な糖質は、体内で通常は脂肪となって蓄積されるが、HCAが働くと脂肪、つまりコレステロールや中性脂肪の合成がブロックされるため、肥満解消や血中脂質の低下に直接関連する。

また、結果としてエネルギーの生産がより効率よく長時間行われるようになり、同時に余剰の糖質はグリコーゲンとしての貯蔵に回される。このようにHCAにより、脂肪の合成が減少するだけでなく、体全体のエネルギーレベルが上昇する等の報告がされている。

ガルシニアの主な働き

  1. 脂肪の合成を減少させる。
  2. 悪玉コレステロールの浄化を助ける。
  3. グリコーゲンの産出を増やす。
  4. 食欲を抑制する。
  5. その他、中枢神経を刺激しないので、その弊害が少ない。体に害がなく、糖尿病患者にも安全である。妊婦・乳幼児を除き、長期に摂取しても安全である等の報告がされている。

 [1998.8.25.古泉 秀夫]


  1. 株式会社フィリア・私信,1996.8.6.[03(3664)8201][商品名:ガルシニア]
  2. 熱帯植物研究会・編:熱帯植物要覧;養賢堂,1991
  3. 上海科学技術院出版社・編:中薬大辞典 第2巻;小学館,1985
  4. ガルシニア;日刊スポーツ,1996.4.10.
  5. ダイエットハーブ加工食品;日刊工業新聞,1995.5.9.
    [商品名:ガルシニア・スリム(大阪府堺市鳳北町10の39・中垣技術士事務所 0722(63)2356)]
  6. カレースパイスでやせる-インド原産ガルシニアエキス;読売新聞,1995.8.26.[商品名:ガルシニア・ダイエットスペシャル(ライフニック社;東京・渋谷)
  7. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編「ガルシニアについて」NHS.DI-News,No.1544,1997.5.26

カネミ油症事件の原因物質と治療法

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:中毒・公害・カネミ油症・米糠油・ライスオイル・PCB ・ポリ塩化ビフェニール・PCB・polychlorodiphenyl

Q:カネミ油症事件の原因物質と治療法

A:1968年(昭和43年)福岡県・長崎県等の西日本一帯で原因不明の皮膚障害が多発し、その共通点からカネミ倉庫株式会社製の米糠油(ライスオイル)が原因媒介物質であることが判明した。ライスオイル中毒患者の母親から死産した胎児の皮下脂肪と胎盤を検査した結果、PCBが検出され、原因物質として同定された。

ライスオイル製造工程の最終段階において、米糠の中にステンレスパイプを通し熱媒体としてPCB (KC400;[商]カネクロール400;塩素含量約48%)を循環させることにより脱臭を行っていたが、このパイプに穴が開きライスオイル中に混入したことが明らかになった。カネミ油症事件の裁判では、カネミ側の責任と鐘淵化学工業の責任が問われたが、和解により裁判は終結した。1993年(平成5年)現在、全国のカネミ油承認定患者は1867名とされている。

尚、現在PCBはその市販が中止されているが、過去数十年の使用によって、ある程度の環境の汚染が生じており、本邦における健常者の血中PCB濃度を見ると、0という健常者は少なく、1?9ppbの値を示す者が多い。この程度では健康に影響はないと考えられている。汚染ライスオイルからは、熱媒体として使用していたポリ塩化ビフェニール(PCB;polychlorodiphenyl)よりも250倍も高濃度の PCDFs(塩化ジベンゾフラン;polychloro-dibenzofuran)が含まれていた。これは熱媒体として加熱している間にPCBの一部が PCDFsに変化したためであると考えられている。その他、PCQ(ポリ塩化クオータフェニル;polychloro-quaterphenyl)も熱分解の結果発生していた。これらはダイオキシンの一種であり、カネミ油症事件の場合、これら熱分解物質が原因の主役を演じたと考えられている。

臨床上、顔面、臀部などのざ瘡様皮疹(塩素ニキビ)、色素沈着、眼脂過多などが特徴的所見で、この他全身倦怠感、四肢のパレステジア、腹痛などを呈する。また皮膚にメラニン沈着をきたした新生児や低出生体重児の誕生、小児の成長抑制、永久歯の萠出遅延などの影響も認められている。治療法としてはPCBやPCDFの排出促進を目的とした絶食療法や吸着剤の経口投与の他、対症療法として肝庇護剤(解毒剤)や脂質代謝改善剤などの投与が試みられているが、PCBの化学的特性のため、根治は困難である。

その他、本症の治療法について厚生省全国油症治療研究班(班長:吉村英敏・中村学園大学教授)の1996年6月19・20 日開催研究班会議において、植物繊維のリグニンを含む米糠ファイバーとコレステロール低下剤のコレスチラミンの併用が効果がある等の治療指針の見直しがされたとする報道がされている。これは両者の併用療法により体内に吸収された原因物質のPCBF(ポリ塩化ジベンゾフラン)とPCB(ポリ塩化ビフェニール)の体外排出を促す効果が確認されたためとされている。この班会議では福岡県保健環境研究所により食品添加物(着色料)の銅クロロフィリンナトリウム及びそれを含む藻類のクロレラとスピルリナが、体外排出促進剤として有望であることも報告された。これは動物実験(ラット)の結果、米糠ファイバーなどの 1.8倍の効果があったとするものである。

PCB混合物によるヒトにおける毒性(油症)

PCBがヒトに対して有毒であることは、PCB製造従事者や製品取扱者に強度の塩素ざ瘡や肝障害が認められることから、一種の職業病としてかなり以前から知られていた。それらは主として経皮的あるいは経肺的に摂取されたPCBによる中毒症であったが、経口的、しかも非職業病的に惹起したのは油症がはじめてである。

油症の特徴的所見は、顔面や背中などのざ瘡様皮疹が挙げられる。その他、歯肉、爪、結膜などへの色素沈着や眼瞼マイボーム腺の分泌過多などの皮膚粘膜症状が特に初期において顕著に認められた。全身症状としては月経異常や性欲減退などの内分泌症状、咳や喀痰の増加などの呼吸器症状をはじめ、全身倦怠感や頭痛、腹痛、四肢の感覚異常などの自覚症状も訴えられた。これら諸症状のうち皮膚粘膜症状については、過角質化による嚢腫形成やメラニン色素の沈着が、また呼吸器症状については肺細気管支の異常等いくつかは病理学的にも証明されているものがあるが、依然として不明のものも多い。

臨床検査によっては、血清中トリグリセリドの著明な増加が認められ、発症後3年を経過した時点でもなお健常人の平均2倍の値を示し、脂質代謝の異常を疑わせた。しかし血清中コレステロールやリン脂質への影響は殆ど認められなかったという。肝機能検査では、稀に軽度の機能低下を思わせる例はあったが、大部分の患者では異常は認められない。形態学的には肝生検例で小胞体の異常な増殖が観察され、これはPCBの酵素誘導作用と密接に関連する所見である。その他、血液所見としてはビリルビンの低下、ある種の免疫グロブリンの減少、それに貧血症状を疑わせる所見も報告されている。特に免疫グロブリンの減少は、免疫機能の低下を意味し、事実油症患者が感染性疾患に対して抵抗力が低下している可能性が示唆されている。

油症患者の妊婦からは”黒い赤ちゃん”とよばれた強度のメラニン色素の沈着を示す新生児が産まれ、母胎を通して胎児への影響も明らかになった。

この油症は、約1000ppmのPCBが含まれたライスオイルを2?6カ月にわたり不定期に摂食したために発症した亜急性のPCB中毒である。成人患者がその間摂取したPCBの総量は、KC-400として0.5?7g、平均2g程度ではないかと推定されている。このように多量のPCBを短期間に摂取した患者の体内PCB濃度は当然健常人のそれよりも高く、発症後5年を経過した時点での血中PCB濃度の分析結果(患者平均7ppb 、健常人3ppb)でも確認されている。

[1998.8.17.古泉秀夫]


  1. 山科 則之:PCBの分解・浄化に挑む;
    http://www.pluto.dti.ne.jp~keaton/pcb/PCB3.html ,1998.8.11.
  2. 旭 正一:質疑応答(20)-PCBが人体に与える障害;日本医事新報社,1993
  3. 南山堂医学大辞典,1992
  4. カネミ油症の新治療法;読売新聞夕刊,1996.7.1.
  5. 山根 靖弘・他編:環境汚染物質と毒性-有機物質編-化学の領域;南江堂,1980.p.57-68
  6. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・私信,1998.8.11.

カンニャボについて

木曜日, 8月 9th, 2007

?KW:健康食品・カンニャボ・kannyabo・ねじれた棒・伝承医療・肝臓病・キセル貝・ツメキセル貝

Q:肝疾患に有効とされるカンニャボとはどのようなものか

A:カンニャボ(kannyabo)とは福島県郡山地方で古くから肝臓病の薬として伝承されてきた巻き貝の一種である。カンニャボとは、「ねじれた棒」を意味する郡山地方の俗称で、正式にはキセル貝の一種で「ツメキセル貝」であるとする資料が見られる。

キセル貝は、軟体動物門、腹足綱、有肺亜綱、柄眼目、中輸尿管亜目、煙管貝超科、キセルガイ科に属する陸棲の貝である。尚、キセルガイ科に属する名称として、「ツメキセル貝」は見あたらないとする回答も得られたが、「小さい」の意味で「ツメ」の呼称が付けられているとも考えられる。

カンニャボは約1.5cmの巻き貝で、福島県阿武隈山系、特に郡山地方の桑畑の桑の木の根元に生息しているとされている。キセルガイには多くの種類があり、阿武隈山系に棲息するキセルガイは、「ツメキセル貝」が9割を占めると報告されている。

カルシウム 32.5g
ビタミンE 42.6mg
グリコーゲン 1.2g
タウリン 7.1mg

伝承されている効果:カンニャボにはカルシウム、グリコーゲン、タウリンが豊富に含まれている。グリコーゲンは、肝臓に蓄積される多糖類で、肝臓が自ら働くためのエネルギー源であり、肝臓の種々の働きに重要な役割を果たしている。タウリンは肝臓の解毒作用を活性化する働きを持っており、肝機能障害に対し、効果を発揮する。

カンニャボの肝機能改善効果は、ほぼ摂食後1カ月程度から発現されるとされている。

製品については現在、カンニャボについては、キセルガイから特殊な方法で抽出したエキスを加えた清涼飲料水「肝宝(カンポウ)」、有効成分の安定性を考慮した低温乾燥による粉末及び顆粒製品「肝若奉(カンニャボ)」が市販されている

 

株式会社カンニャボ

〒963-8041

福島県郡山市富田町字墨染56-3

TEL.0249-23-3615 (代)

FAX.0249-23-3616

その他、福井県における上大納鷲鞍岳地区の環境紹介に関連し、貝類では鷲鞍岳にハゲギセル、オオタキコギセル、チビギセル等のキセル貝、ナミベッコウ、ツノイロベッコウマイマイ等のベッコウ貝が多く確認されたとする報告も見られ、陸棲貝の種類は相当数あるものと考えられる。

尚、「ツメキセル貝」の民間伝承療法における服用法についての詳細は不明である。

[1998.7.17.古泉秀夫]


  1. 安藤 尚廣:カンニャボってなーに;
    http://infonet-cw.com/c/kannyabo/what.htm(1998.7.10.)
  2. 山田 克則:福井県環境科学センター大気科学部環境情報研究グループ・私信,1998.7.16.[FAX.0776-54-8759・E-mail:yamada@erc.pref.fukui.jp]
  3. 福井県環境科学センター大気科学部環境情報研究グループ;
    http:// www.erc.pref.fukui.jp/eco/bank1/47.html[1998.7.15.]

ガラナについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・ガラナ・ ガラナ子・ガラナエキス・カテキン・薬効・薬理

Q:ガラナとは何か

A :ガラナについて、次の報告がされている。 ガラナ(ムクロジ科)、Paullina cupapana Kunth。ブラジル・アマゾン河流域原産のつる性低木。

  • 薬用部分:種子(ガラナ子)。種子を粉末にしキャッサバ澱粉と共に水で練って褐色の円筒形にし、燻煙乾燥して固めたものをガラナエキス(通称:ガラナ)Gauarana、Guarana Pastと呼んでいる。
  • 成分:ガラナエキスにはカフェイン3?4%、タンニン約8.5%、サポニン、油脂などを含みカフェインの含量はコーヒーの約3倍。
  • 薬効:ブラジルでは興奮性飲料として偏頭痛や神経強壮剤に、またタンニンに富むので腸疾患に薬用として使用する。
  • 使用法:ガラナをけずり温湯又は水に溶かして服用する。最近ではガラナエキスを配合した製剤が日本でも市販されている。また、強精剤・催淫剤を標榜し市販されている商品も見られる。

その他、次の報告も見られる。

東京大学分子細胞生物学研究所の瀬戸治男教授らの研究グループは、アルツハイマー病を惹起すると考えられているベータアミロイドという蛋白質の毒性を抑える新たな物質を発見した。

生薬からの抽出物で、ネズミの脳の培養細胞を使った実験でベータアミロイドの毒から神経細胞を守る働きを確認した。痴呆症防止に利用できる可能性もあるとしている。有効成分はタンニンの母体であるカテキンという物質の一種。

アマゾン地方で強壮剤として使用されている植物「ガラナ」の実に含まれており、有機溶媒で抽出した。数千に及ぶ植物や微生物を試したが、ガラナからとったカテキンが最も良く効いた。ベータアミロイドの毒性を抑制する物質として知られているトコフェロール(ビタミンE)よりも効果は強かった。ベータアミロイドは細胞の呼吸を妨げる作用もあるが、培地にガラナ由来のカテキンを加えると呼吸は回復した。ブラジル・アマゾン産植物のガラナの成分「カテキン」には、アルツハイマー病の原因とされる物質(ベーター蛋白)による神経細胞の死滅を防ぐ効果があることを東大分子細胞生物学研究所の瀬戸治男教授(生理活性物質研究室)らが突き止めた。まだ、試験管レベルの研究だが、「痴呆予防薬開発への一歩となるのではないか」とされている。

ラット胎児脳からとった神経細胞を培養し、一方にはベータ蛋白だけを、他方にはベータ蛋白とカテキンを与え、5日後に電子顕微鏡で観察したところベータ蛋白(濃度5万分の1)だけで処理した細胞は約4割が死滅。これに対しカテキン(濃度20万分の1)を加えた細胞はほとんど死ななかった。カテキンを加えた方は、神経細胞内の活性酸素量も非常に少なくなっていた。

[1998.4.28.古泉秀夫]


  1. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  2. アルツハイマー病の誘引物質-毒性抑える成分発見 東大「ガラナ」から抽出;日経産業,1996.4.12
  3. アマゾン産植物の成分「カテキン」-神経細胞の死滅防ぐ;読売新聞,1997.2.26.

ボレイの成分及び効用について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:漢方薬・健康食品・ボレイ・牡蠣・成分・薬効・薬理・近江牡蠣・ 長牡蠣・大連湾牡蠣

Q:ボレイの成分及び効用について

■近江牡蛎(Ostrea rivularis Gould):貝殻は2枚、硬くて厚く、円形、卵形、三角形など。中国の沿海に等しく分布し、広東、福建、山東の沿海では養殖も行われる。

■長牡蛎(Ostrea gigas Thunb.):貝殻は大型で硬く厚く、長い条形、背腹はほぼ平行、一般に殻長は殻高の3倍である。中国の沿海に分布する。河口及び湾内の養殖に適した品種である。

■大連湾牡蛎(Ostrea talienwhanensis Crosse):貝殻は大型、中位の厚さで、前後とも長く延び、貝殻から後部に向かうにつれ拡張して三角形に近くなる。

成分]:80?90%の炭酸カルシウム、リン酸カルシウムの他、マグネシウム、アルミニウム、珪素及び酸化鉄などを含む。大連湾牡蛎の貝殻には炭酸カルシウム90%以上、有機質約1.72%を含むとされている。

なお少量のマグネシウム、鉄、珪酸塩、リン酸塩と塩化物が含まれる。強火で焼いた後、炭酸塩は分解し、塩化カルシウムなどが生じるが、有機質は破壊される。

生体内カルシウムの99%は、骨及び歯牙の構成成分として存在し、残りは血漿その他の細胞外液に含まれ、血液凝固因子として作用し、またカリウムに拮抗して不随意筋の収縮を促進し、神経の興奮性を抑制し、あるいは骨格筋の正常活動を維持するとされている。

牡蛎はカルシウム欠乏症に対する補給剤として使用される。

[015.9OST:2000.7.3.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000

海水中の塩分量について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:物理・化学的性状・海水・塩分濃度

Q:海水中の塩分量について

A:海水中に含まれる各主成分について、天然の有機物質93種類のうち73種類までが、測定可能若しくは探知可能な量で含まれていると報告されている。ただし、海水中の各種成分含有量は、その自然環境に多分に影響されるとされているため、測定場所によって多少濃淡の差は見られるようである。例えば河川の流入が見られる河口近辺では、真水の流入により含有量は希釈される。従って、海水中の塩分量についても、当然同様の影響下(雨水の流入等も含めて)にあるものといえる。

これらの詳細については、次の引用を参照されたい。

海水中に含まれる溶解塩の量は、対象とされる水の塩分量と呼ばれる。海水の塩分量の平均値は、水1000に対して溶解物量33から37の幅を持つ。海洋学者たちは、通常この数値を1000分の33(33‰;パーミル)から37‰と表記する。海水の塩分量は、各地の状況に応じて違っている。例えば大きな河川や氷の溶けた水は塩分量を下げ、その一方で雨量が少ない地域や蒸発の激しい地域では塩分量は増加する。河川や雪解け水による淡水が大量に流れ込むバルト海は、塩分量が7.2‰と低い。あらゆる海の中で一番塩分量が高いのは紅海で、塩分量は 41‰にまで達している。

[1997.7.2.古泉秀夫]


  1. 大百科;丸善,1995

肝油ガーゼの調製について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:特殊用例・院内製剤・肝油ガーゼ・肝油・codliver oil・滅菌法

Q:骨等が見える深い創傷に肝油ガーゼを使用したいとして調製の依頼があったが、肝油の滅菌法は?

A:肝油(CodLiverOil)の性状については、次の通り報告されている。

本品は黄色?橙色の輸液で、僅かに魚臭を帯びた特異な臭いがあり、味は緩和である。

本品はエーテル、クロロホルム又は石油エーテルと混和する。

本品はエタノールに溶け難い。本品は空気又は光によって分解が促進される。

また、本品は定量するとき1gにつき2,000?5,000ビタミンA単位を含む。

貯法については遮光した気密容器に入れ、殆ど全満するか又は空気を「窒素」で置換して保存する。肝油には天然の安定剤が含まれているが、長時間空気又は太陽光線に晒すなどビタミンA及びビタミンDが分解されるので、遮光した気密容器に入れ、殆ど全満するか又は空気不活化ガスである窒素で置換して保存する。その他、不快な敗油性の臭気の発生は油の酸化を示すもので、ビタミンAの破壊を示し、服用に不適である。

肝油の原料についてはマダラとスケトウダラに限定し、脂肪油としての性格を明らかにするために8局から比重、酸価、けん化価、不けん化物、ヨウ素価が日本における実情を調査の上決められた。幽門垂が肝臓に次ぐ重要なビタミンの資源であることが発見されて以来、我が国では両者が肝油の抽出原料として利用されている。従って名称は肝油であっても、実際にはこれら両者から得た脂肪油である。

本品はビタミンA及びDを含有するためその総合的効果が期待される。ビタミンAの融点は62?64℃、沸点は120?125℃。ビタミンD2では、融点115?118℃で昇華等が報告されており、肝油製剤を発売している企業からの報告では、120℃以上の加熱滅菌は好ましくないとの回答が得られた。また、ビタミンAの滅菌については、遮光・窒素置換した状態で115℃- 20分とする報告もされている。肝油製剤に対する滅菌法として140?150℃-3時間(スウェーデン薬局方)、170℃-3時間(オランダ薬局方,1958)とする資料もみられるが、肝油原料の相違等も勘案しなければならず、ビタミンAの滅菌法に準拠することが無難である。但し、院内製剤を調製する際、窒素置換装置及び遮光状態での滅菌設備が設置されていない場合、ビタミンAの滅菌法に準拠する滅菌操作を行うことは不可能である。従って、本剤を用いて製剤する場合、工場での無菌製剤処理を前提に、未開封の肝油を用い、無菌操作法により調製する。

尚、無菌操作法により調製した製剤の長期保存は避けることを原則とし、遮光気密容器中に保存して使用する。用時調製製剤の臭気等に注意し、不快な敗油性の臭気の発生している製剤については、直ちに廃棄すること等の注意が必要である。

[311.FD14.014.22CO][1991.2.6.・1999.3.24.一部修正.古泉秀夫]


  1. 第十一改正日本薬局方解説書;廣川書店,1986
  2. 高野正彦:今日の皮膚外用剤;南山堂,1981,p.316
  3. ワカサ製薬株式会社・私信,1991
  4. エーザイ株式会社学術課・私信,1990
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.16,1991.2.6.より転載

芥子の食欲増進作用について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:漢方薬・健康食品・香辛料・芥子・芥子菜・カラシ菜・カプサイシン・唐辛子

Q:以前医師からの指示で、食欲増進のために毎日チューブ入りのねり芥子を2cm分絞り出してなめていた。カプサイシンに食欲増進効果があるとも聞いたが、食欲増進作用は本当にあるのか

A:芥子→カラシナの種子を粉末にした黄色の香辛料。

カラシナ(芥子菜)[アブラナ属-アブラナ科]。BrassicaJuncea(L.)Czern.etCoss.

  • 原産地:地中海沿岸あるいは中国といわれているがはっきりしない。日本には古くから渡来し、現在は各地で栽培されている。
  • 薬用部分:種子(芥子:ガイシ)8月に種子を採集して日干しにする。
  • 成分:種子に辛味配糖体のシニグリン、酵素のマイロシン、脂肪油のエルシン酸、アラキン酸、リノレイン酸、精油のシナピン酸、シナピン等を含む。その他、シニグリン、ミロシン、シナピン酸、脂肪油、蛋白質、粘液が含まれている。酵素分解すると揮発カラシ油とい う精油が得られ、このカラシ油はイソチオシアン酸のメチル-イソプロピル-、アリル-、ブチル-、sec-ブチル-、3-ブテニル-、4-ペンテニル-、フェニル-、ベンジル-、β-フェニルエチル-、3-メチルチオプロピル-エステル(イソチオシアナート)を含む。

    脂肪油は多種の脂肪酸すなわちエルカ酸、11-エイコセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、バルミチン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、ベヘン酸のグリセリドであるとする報告もされている。

  • 薬効・薬理:シニグリンは酵素のミロシンの作用によってイソチオシアン酸アリルを発生し、この成分は皮膚組織内に浸 透して知覚神経末梢を刺激して引赤を起こす。
    この局所作用は、一部は知覚神経末梢刺激に対する軸索反射であるが、一部は局所に産生されたヒスタミン様物質の作用による。更に知覚神経刺激に対する反射として内臓深部の鎮痛、炎症の治癒が起こる。また内臓神経の反射興奮によって過血糖が見られる。
    これらのことから引赤、鎮痛、去痰、辛味健胃薬としてリウマチ、神経痛、腰痛、肺炎の初期などに用いられる。
  • 刺激作用:芥子はシニグリンを含み、配糖体そのものには刺激作用はないが、水と一緒にしておくとミロシンの作用によ り精油を精製する。その主成分はアリル-イソチオシアナートで、鼻を突くような辛辣な味と刺激作用がある。皮膚につけると、温かい感じがして発赤し、酷い場合には水疱・膿疱ができる。
    一般に芥子の粉は、脂肪油を取り除いてから芥子軟膏として使用する。反射刺激剤(刺激性薬物を皮膚局部に使用したとき、その作用が薬物を使用した部位に限らず、その他の部位にまで及んで治療作用を生じた場合に、反射刺激作用又は誘導刺激作用と呼ぶ)として作用し、神経痛・リウマチ・強膜炎や捻挫などを治療する。
    芥子の粉を調味料として用いると、唾液の分泌とジアスターゼの活性を増加させ、心臓の体積と心拍数を減少させる。
    少 量で胃の粘膜を刺激して胃液と膵液の分泌を増加させることができ、時には頑固なしゃっくりを鎮める。
    大量に内服すると直ぐに嘔吐を起こすので、麻酔性薬物中毒の場合に使用できる。少量の芥子は調味料として内服できるが、大量になると嘔吐を引き起こし、更に大量になると胃・腸道を強烈に刺激する。
  • 使用法:芥子を粉末にし、50℃の温湯で練ったものを患部に塗布する。芥子は薬用の他、香辛料、調味料などに使用される。また防腐作用があるため、醤油の防腐剤などに用いられる。使用前にやや温かい水で湿らせておくとミロシンの作用(沸騰した湯はミロシンの作用を抑制する)を強める。使用時間は15?30分を越えてはならない。皮膚の敏感なものは5?10分しか使用できない。

以上の報告を見る限り、芥子成分として、カプサイシン(capsaicin)は報告されていない。

<<カプサイシン(capsaicin)>>

capsaicinは、唐辛子(トウガラシ)の辛味成分である。トウガラシ(唐辛子)capsicum、capsicifructus。

本品はトウガラシCapsicumannuumLinne又はその変種(Solanaceae)の果実である。蕃椒(バンショウ)。辣椒(ラツショウ)

  • 成分:辛味成分としてcapsaicin、dihydrocapsaicinが、カロチノイド色素としてcapsanthin、種子にはcapsaicinは含まない。その他、果実にアデニン、ベタイン、コリン、辛味成分のカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンが、 カロチノイドのクリプトキサンチン、β-カロテン、カプサンチン、ルテイン、クリプトカプサイシン、その他、ビタミンC、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などを含み、種子にはソラニン、ソラニジンを含み、更にソラマルギン、ソラソジン、ソラソニン等のアルカロイドを含む可能性が高いとする報告がされている。
  • 薬効・薬理:蕃椒を3?5%添加した飼料でラットを飼育すると発育が良好で、これらはカプサイシンなどの辛味成分が 消化器に適当な刺激を与え、消化液の分泌を亢進して消化機能を旺盛にするためと考えられる。煎剤はコレラ菌に対して強い殺菌作用がある。アルコールエキスは少量では血管を拡張し、血液の循環を活発にし、皮膚刺激作用がある。蕃椒は皮膚刺激薬として神経痛、筋肉痛に外用される。その他、capsaicinは局所適用又は皮下投与などで侵害受容器及び温覚受容器を選択的に遮断する感覚ニューロ ン遮断薬である。capsaicinは、脊髄からP物質、ソマトスタチンなどを放出させ、化学物質による痛覚、温覚の閾値を高めるが、皮膚のP物質含量及び血漿溢出も減少させる。また心房又は心耳で陽性変力作用、血圧下降作用、皮膚体温上昇作用、胃液分泌促進作用、ヒスタミンなどによる胃酸分泌抑制作用、回腸収縮作用、起炎又は抗炎症作用、アジュバント関節炎抑制作用、5-HETE及びPGE2生合成阻害作用が認められる等の報告もされている。
  • 使用法:蕃椒を刻み、その4倍量の45度のホワイトリカーに20?30日漬け、布でこして作った蕃椒チンキを患部に塗布する。皮膚刺激薬の原料、また粉末を辛味健胃薬として配合剤(胃腸薬)に微量添加することがある。

なお市販されている「チューブ゙ねりからし(ヱスビー食品)」は、原料として天然の芥子菜を使用しているとされるが、賞味期限の関係で防腐剤等の添加はされているようである。本品をそのまま摂食するのではなく、料理等に付けて摂食することで、食欲増進の効果は得られると考えるので、そのように処置されたい。

[510.015.4CAP][1996.11.13.古泉秀夫]


  1. 三橋博・監修:原色牧野和漢薬大図鑑;北隆館,1988
  2. 牧野富太郎:原色牧野植物大図鑑;北隆館,1986
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第1巻;小学館,1985
  4. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第4巻;小学館,1985
  5. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996
  6. ヱスビー食品株式会社学術課・私信,1996.11.13.[TEL.3668-0551]