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肝油ガーゼの調製について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:特殊用例・院内製剤・肝油ガーゼ・肝油・codliver oil・滅菌法

Q:骨等が見える深い創傷に肝油ガーゼを使用したいとして調製の依頼があったが、肝油の滅菌法は?

A:肝油(CodLiverOil)の性状については、次の通り報告されている。

本品は黄色?橙色の輸液で、僅かに魚臭を帯びた特異な臭いがあり、味は緩和である。

本品はエーテル、クロロホルム又は石油エーテルと混和する。

本品はエタノールに溶け難い。本品は空気又は光によって分解が促進される。

また、本品は定量するとき1gにつき2,000?5,000ビタミンA単位を含む。

貯法については遮光した気密容器に入れ、殆ど全満するか又は空気を「窒素」で置換して保存する。肝油には天然の安定剤が含まれているが、長時間空気又は太陽光線に晒すなどビタミンA及びビタミンDが分解されるので、遮光した気密容器に入れ、殆ど全満するか又は空気不活化ガスである窒素で置換して保存する。その他、不快な敗油性の臭気の発生は油の酸化を示すもので、ビタミンAの破壊を示し、服用に不適である。

肝油の原料についてはマダラとスケトウダラに限定し、脂肪油としての性格を明らかにするために8局から比重、酸価、けん化価、不けん化物、ヨウ素価が日本における実情を調査の上決められた。幽門垂が肝臓に次ぐ重要なビタミンの資源であることが発見されて以来、我が国では両者が肝油の抽出原料として利用されている。従って名称は肝油であっても、実際にはこれら両者から得た脂肪油である。

本品はビタミンA及びDを含有するためその総合的効果が期待される。ビタミンAの融点は62?64℃、沸点は120?125℃。ビタミンD2では、融点115?118℃で昇華等が報告されており、肝油製剤を発売している企業からの報告では、120℃以上の加熱滅菌は好ましくないとの回答が得られた。また、ビタミンAの滅菌については、遮光・窒素置換した状態で115℃- 20分とする報告もされている。肝油製剤に対する滅菌法として140?150℃-3時間(スウェーデン薬局方)、170℃-3時間(オランダ薬局方,1958)とする資料もみられるが、肝油原料の相違等も勘案しなければならず、ビタミンAの滅菌法に準拠することが無難である。但し、院内製剤を調製する際、窒素置換装置及び遮光状態での滅菌設備が設置されていない場合、ビタミンAの滅菌法に準拠する滅菌操作を行うことは不可能である。従って、本剤を用いて製剤する場合、工場での無菌製剤処理を前提に、未開封の肝油を用い、無菌操作法により調製する。

尚、無菌操作法により調製した製剤の長期保存は避けることを原則とし、遮光気密容器中に保存して使用する。用時調製製剤の臭気等に注意し、不快な敗油性の臭気の発生している製剤については、直ちに廃棄すること等の注意が必要である。

[311.FD14.014.22CO][1991.2.6.・1999.3.24.一部修正.古泉秀夫]


  1. 第十一改正日本薬局方解説書;廣川書店,1986
  2. 高野正彦:今日の皮膚外用剤;南山堂,1981,p.316
  3. ワカサ製薬株式会社・私信,1991
  4. エーザイ株式会社学術課・私信,1990
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.16,1991.2.6.より転載