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生石灰の毒性について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:毒性・中毒・生石灰・quick lime・酸化カルシウム・calcium oxide・乾燥剤・脱水剤

Q:乾燥剤としても使用される生石灰の毒性について

A:生石灰(quick lime)は、酸化カルシウム(calcium oxide)の別名である。

  • 本品を強熱したものは定量するとき、酸化カルシウム(CaO)98.0%以上を含む。
  • 本品は白色の堅い塊で粉末を含み臭いはない。
  • 本品は熱湯に極めて溶け難くエタノール(95)に殆ど溶けない。
  • 本品1gは水2,500mLに殆ど溶ける(水を注ぐと、暫時の後、激しく発熱して水酸化カルシウムとなる)。
  • 本品は空気中で徐々に湿気を及び二酸化炭素を吸収する。
  • 用途:薬品や食品の防湿(酒、弁当等)又は乾燥、あるいは脱水に用いる。土壌改良剤としても用いられる。日本薬局方収載。
  • 毒性:成人(経口)致死量10g、マウス(経口)LD50:7.3g/kg。酸化カルシウムは皮膚、粘膜に附着すると水酸化カルシウムとなり、局所の腐蝕を起こす。工業中毒としてしばしば見られるが、稀酢酸(皮膚)、4%-塩化アンモニウム水溶液(結膜など)で汚染部を速やかに洗浄した後、一般火傷と同様の治療を行う。
  • 作用:水分と反応して脱水、発熱(加温)。発熱及びアルカリ性を示し、粘膜腐食作用、潰瘍を起こす。経口摂取した場合、消化管粘膜や組織内の水分と反応して強く発熱する。長時間使用されていた生石灰は、水分を徐々に吸収し、大部分は消石灰(水酸化カルシウム)あるいは炭酸カルシウムになるため、毒性は低い。生石灰はアルカリ腐食剤、乾燥剤が新しいほど生石灰の比率が高い。生石灰そのものの毒性は弱いが、粘膜に附着しやすい。口内や消化管粘膜に附着し、脱水、発熱作用を起こし、刺激糜爛、出血を起こす。

症状

  • 経口:口唇・咽頭・食道・胃等、直接触れた局所の糜爛、浮腫、疼痛。時に嚥下困難。重篤な場合には食道狭窄。
  • :粉末固着による結膜・角膜の激痛、浮腫、潰瘍。
  • 皮膚:化学熱傷性の発赤、疼痛、水疱形成。

処置

  • 経口:胃洗浄・催吐は禁忌(消化管と再接触によって腐蝕増強)。活性炭は嘔吐を誘発させるため不可。下剤の投与は不可。摂取後1時間以内であれば、牛乳(120-240mL、幼児15mL/kg以下)、卵白、粘膜保護剤(アルロイドG、マーロックス)を頻回に投与。消化管糜爛、潰瘍、瘢痕狭窄に対してはステロイド療法(プレドニゾロン1-2mg/kg又はデキサメサゾン0.1mg/kg/日)を3週間を限度に実施。3週間以降に食道狭窄が見られた場合、ブジー挿入等拡張法、外科的措置。
  • :直ちに流水で十分洗眼。長時間続けるほどよい(結膜円蓋内がpH試験紙で中性になるまで洗浄。対症療法。)
  • 皮膚:附着部分を流水で十分洗浄及び対症療法。

 [63.099.CAL:2003.9.16.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(4):341-342(1999)
  3. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル社,2001
  4. 鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒の手引き;薬業時報社,1999
  5. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

生検・ポリープ切除時に注意を有する薬剤

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:臨床薬理・生検・ポリープ切除・血小板凝集抑制性・抗血小板作用・ト ロンボキサンA2合成阻害

Q:病院の外来診察室前に『生検・ポリー プ切除時に注意を有する薬剤』として、次の薬剤が掲げられていた。各薬剤のいわれている理由は

アンプラーグ錠・エパデールカプセル・コメリアン錠・サアミオン錠・ドル ナー錠・バイアスピリン腸溶錠・パナルジン錠・プレタール錠・プロレナール錠・ペルサンチン錠・ロコルナール錠・ワーファリン錠

A:各薬剤について、調査した結果は下記の通りである。

[分類]一般名・商品名(会社名) 機序
[339]aspirin

バイアスピリン腸溶錠(バイエル)

バファリン81錠(ライオン)

t1/2:2-5時間

*aspirinはシクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害し、血小板寿命 (約10日間)の間、TXA2 産生を妨げる。

機序]血栓塞栓症における本剤の効果は、血小板トロンボキサンA2(TXA2) 合成の阻害によると考えられる。TXA2 は血小板凝集の強力な誘発物質である。

また本剤は活性化された血小板におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)によるTXA2 合成を抑制し、血小板凝集を抑制するの報告も見られる。

[禁忌]出血傾向(血小板機能異常→出血傾向助長)。

[慎重]*手術前1週間以内の患者(手術時の失血量が増加の報告)

[339]beraprost sodium

ドルナー錠(東レ-山之内)

プロサイリン錠(科研)

t1/2:1.11時間

[機序]血小板及び血管平滑筋のプロスタサイクリン受容体を介して、アデニレートシクラーゼを活 性化し、細胞内cAMP濃度上昇、Ca2+流入抑制及びトロンボキサンA2生成抑制等により抗血小板作用、 血管拡張作用等を示す。

[禁忌]出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、上部消化管出血、尿路出血、喀血、眼底出血等)。

[339]cilostazol

プレタール錠(大塚)

t1/2:α相2.2時間・β相18.0時間

[機序]ウサギ血小板のセロトニン放出を抑制するか、セロトニン、アデノシンの血小板への取り込 みには影響を与えない。

トロンボキサンA2により血小板凝集を抑制する。

また、cAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害すること で、抗血小板作用及び血管拡張作用を発揮する。

[禁忌]出血している患者(血友病、毛細血管脆弱、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)→出血助長。

[217]dilazep dihydrochloride

コメリアン錠・顆粒(興和)

t1/2:約4時間

[機序]微小循環を改善するとともに冠血流量を増大する。血小板凝集の抑制や赤血球機能の正常化 作用を有する。
[217]dipyridamole

ペルサンチン錠(ベーリンガー)

アンギナール錠・散(山之内)

ペルサンチン-Lカプセル(ベーリンガー)

t1/2:24.6分(20mg・静注)

[機序]抗血小板作用による血栓・塞栓の抑制作用、尿蛋白減少作用を有するほか、心筋のミトコン ドリア保護作用、冠動脈の副血行路系の発達促進作用、冠血管を拡張し冠血流量増加作用を有する。

アデノシンの再取込抑制、ホスホジエステラーゼ阻害作用によるc- GMP、c-AMP増加作用により抗血小板作用、血管拡張作用を示し、また糸球体係蹄壁の陰荷電減少を抑制し、尿蛋白を減少させる。[副]出血傾向(眼底 出血、消化管出血、脳出血等の出血傾向)中止・処置。

[339]ethyl icosapentate

エパデールカプセル(持田)

ソルミラン顆粒(森下仁丹-帝人)

t1/2:?

[機序]抗血小板作用、動脈の進展性保持作用、血清脂質低下作用などの多面的薬理作用を有し、閉 塞性動脈硬化症に対して高い有用性が認められている。

[禁忌] 出血している患者(血友病、毛細血管脆弱、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)→出血助長。[慎重]出血傾向(出血助長)、手術を予定している患者(出血助長)

[339]limaprost alfadex

プロレナール錠(大日本)

オパルモン錠(小野)

t1/2:?

[機序]強力な血管拡張作用、血流増加作用及び血小板機能抑制作用を有し、臨床的には閉塞性血栓 血管炎に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの虚血性諸症状に対する効果が認められている。[慎重]出血傾向(助長)。
[219]nicergorine

サアミオン錠・散(田辺)

t1/2:?

[機序]ADP(adenosine diphosphate;アデノシン二リン酸)、コラーゲン等による血小板凝集抑制作用及び赤血球変形能亢進作用を有する。
[339]sarpogrelate hydrochloride

アンプラーグ錠・細粒

(三菱ウェルファーマ)

t1/2:0.69時間

[機序]血小板及び血管平滑筋における5-HT2レセプターに対する特異的な拮抗作用を示し、その結果、抗血小板作用及び血管収縮抑制作用を示す。

[禁忌]出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)→出 血増強。

[慎重]出血傾向並びにその素因(出血傾向増強)。

[339]ticlopidine hydrochloride

パナルジン錠・細粒(第一)

t1/2:1.6時間

*効果発現時間:血小板凝集能の低下は投与後24時間後に発現する。効果 が現れるまで数日要する。また、中止後数日間は血小板機能低下を示す。

[機序]血小板のアデニレートシクラーゼ活性を増強して血小板内cAMP産生を高め血小板凝集 能・放出能を抑制し、また、赤血球の変形能増大等の血液レオロジー的性状も改善する。

上記作用により脳及び末梢の血管における血栓と塞栓の治療効果又は血 流障害の改善効果を示す。

[禁忌] 出血している患者(血友病、毛細血管脆弱、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)→出血助長。[慎重]出血傾向及びその素因(出血傾向増強)、手術を予定している患者(出血増強)

*手術の場合、出血を増強するおそれがあるので、10-14日前に投与を中止(ただし、血小板機能の抑制作用が求めら れる場合を除く)。

[217]trapidil

ロコルナール錠・細粒(持田)

エステリノール錠(高田-塩野義)

t1/2:6時間

[機序]トロンボキサンA2の合成阻害及びプロスタサイクリン生成促進に より血管拡張作用及び抗血小板凝集作用を示す。冠状動脈に対する冠拡張作用並びに側副血行路の形成促進作用、前負荷・後負荷減少作用を有するほか、抗動脈 硬化作用、脂質代謝改善作用を持つ。
[333]warfarin potassium

ワーファリン錠(エーザイ)

t1/2:36.3時間

*抗凝血効果:投与後12-24時間目に発現、48-72時間目まで持 続。

又は抗凝固効果が発生するのに少なくとも36-48時間かかるとする報告。

治療中止後プロトロンビン時間が正常に戻るには5日間掛かる。

[機序]ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制して 抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮する。

また、本剤投与によって血中に遊離するPIVKA(プロトロンビン前駆体)は、抗凝血作用及び血栓形成抑制作用を持 つ。[禁忌]*出血している患者(血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の凝固障害、月経期間中、手術時、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産褥婦、頭蓋内出血の疑い) →出血助長・時に致命的。

中枢神経 系の手術又は外傷後日の浅い患者(出血助長・時に致命的)

[適用上の 注意]手術や抜糸するときは事前に主 治医に相談する。

*予定手術では手術の4-5日前よりwarfarinの投与量を若干減量し、凝固能の抑制を一般に 治療域の下限近くまで緩和(INR:2.0-2.5、TT:約12-17%)して行う。

止血困難例では、局所における止血処置を工夫する。

緊急手術は warfarinを中止し、ビタミンK:0.5-2.5mgを緩徐に静注し、凝固能の抑制を速やかに治療域(INR)の下限近くまで緩和して行う。

warfarinの絶対適応例(機械人工弁置換例、再発性肺塞栓症)ではwarfarin減量による凝固能亢進に注意すること。

*抜歯:INRが2.5以下(TTでは約12%)であればwarfarin継続のままで抜歯可能で ある。止血困難例では歯肉縫合、ガーゼ圧迫、局所止血剤を応用する。

*筋肉生検・生検を伴う内視鏡検査・骨髄生検時の凝固能コントロールレベル:INR≦2.0。

*polypectmy(ポリープ切除術)時の凝固能コントロールレベル:INR≦1.5。

上記薬剤はそれぞれ血小板凝集抑制剤[339]、抗狭心症薬(その他の冠拡 張薬)[217]、脳循環改善薬[219]、抗凝固剤[333]に分類される薬剤である。

これらの薬剤のうちaspirin・ethyl icosapentate・ticlopidine・warfarinの4種類については添付文書中に手術時の対応について注意事項の記載がみられるが、その他の薬剤では手術時の対応についての記載はされていない。

これはそれぞれの薬剤の血小板凝集抑制作用・抗凝固作用の強度あるいは作用持続時間により手術時の影響に変化が見られるためと考えられる。

なお、本表に収載されている薬剤は、いずれも疾病治療上重要な薬剤であり、休薬の是非・期間等は原疾患の治療を行っている医師と相談の上で決定すべきものであると判断する。

従って「生検・polypectmy」の実施が必要な場合、現に治療を行っ ている医師が実施するのであれば患者の服用している薬については理解しているはずであるから問題がないとして、他の医師が行う場合には、主治医と相談の上、施術医に連絡することが必要である。

[015.4.OPE:2003.8.12. 古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. 青崎正彦・他監修:warfarinの適正使用情報 第2版;エーザイ 株式会社医薬情報研究部,1996
  3. 麻生芳郎・訳:一目でわかる薬理学 第4版;メディカル・サイエンス・ インターナショナル,2003
  4. 越前宏俊:図解 薬理学;医学書院,2001

セスデンの副作用-全身のしびれ感

日曜日, 8月 12th, 2007

Q:朝食前30分に当帰芍薬散1 包を服用。朝食後にルル3 錠・三共胃腸薬1 包を服用した。その後胃のむかつきが治まらないためセスデン1 Capを牛乳で服用したところ手指から全身がしびれ、口もきけなくなり救急車で運ばれた。尚、当帰芍薬散は常時服用していた。薬剤が原因だとすれば服用薬剤のうちどれが該当するか

A:各薬剤の組成及び報告されている副作用等は次ぎの通りである。

当帰芍薬散エキス(津村順天堂)

  • 本品7.5g中に芍薬 4.0g ・蒼朮 4.0g ・沢瀉 4.0g ・茯苓4.0g・川キュウ 3.0g ・当帰 3.0g 。
  • 本剤の適応症は貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎等であり、添付文書中に副作用等の記載はされていない。また、本剤は常時服用していること及び服用後の時間経過から見て、服用後既に1時間以上経過したと考えられるため、本剤による副作用の可能性は除外できるものと考える。

三共胃腸薬

  • 「新三共胃腸薬(三共株式会社)」として散剤・細粒剤・顆粒剤・錠剤が市販されており、どの商品名に該当する薬剤かは不明であるが、散剤の処方について検討する。
  • 1.4g中にタカジアスターゼA 150mg・タカジアスターゼN1 25mg・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(乾燥物) 320mg・炭酸水素ナトリウム 300mg・沈降炭酸カルシウム 225mg・l-メントール 2mg・黄連末 15mg ・黄柏末 35mg ・桂皮末 74.5mg ・ウイキョウ末 20mg ・チョウジ末10mg・生姜末 24.5mg ・甘草末 118mgを含有する製剤で、配合されている薬剤を見る限り、該当する副作用を惹起する薬剤は配合されていないものと考えられる。

新ルルA錠(三共)

  • 9 錠中にフマル酸クレマスチン 1.34mg ・塩化リゾチーム 60mg (力価)・アセトアミノフェン 900mg・リン酸ジヒドロコデイン 24mg ・ノスカピン 36mg ・dl- 塩酸メチルエフェドリン 60mg ・グアヤコールスルホン酸カリウム 240mg・無水カフェイン 75mg ・ベンフォチアミン(ビタミンB1) 24mg を含有する製剤で、上記含有量は成人1 日量である。

セスデン(田辺製薬)

  • 1 錠中にtimepidium bromide 30mg を含有する鎮痙・鎮痛剤であり、経口投与時の副作用として全身のしびれ感等は報告されていない。本剤の相互作用については三環系抗欝剤・フェノチアジン系薬剤・MAO阻害剤・抗ヒスタミン剤との併用で、本剤の作用増強の報告がされている。
  • 尚、本剤の注射剤の副作用として頭痛、眩暈、頭重感、眠気、しびれ感、脱力感等が報告されている他、ショックの発現も報告されている。但し、該当する副作用の発現率は記載されていない。
  • また、動物(イヌ)実験の結果として、鎮痙作用を示す薬用量の3倍を静脈内投与したとき血圧は一過性に下降し、心拍数は増加するが、呼吸は変化しないとする報告が見られる。
  • 本剤の成分であるtimepidium bromideの原末は脂溶性の物質であり、牛乳での服用により本剤の吸収が促進され、急激な血中濃度の上昇が見られた場合、注射剤使用時と同様のしびれ感等が発現する可能性は存在すると考えられる。
  • また、新ルルA錠中には併用により本剤の作用増強がいわれる抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン)が配合されており、これらの複合的な影響により発現したものと推測されるが、あくまで推論の域を出ない。多剤併用時の副作用発現を一種類の薬剤に絞ることは困難である。

 [124.FD18.065TIM][1991.8.7.・1999.4.2.一部修正.古泉秀夫]


  1. ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒添付文書,1986
  2. 日本医薬品情報センター・編:一般薬医薬品集 1990 ?1991;薬業時報社,1989
  3. セスデン添付文書,1990
  4. セスデン注射液添付文書,1990
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.144,1991.8.19.より転載

泉源について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬名検索・ 泉源 ・核酸・DNA・効能・効果・副作用・相互作用

Q:患者が持参した泉源の効能・効果・副作用・相互作用等はわかるか

A:FAX.で送付された外装から次の検索事項が入手できた。各項目を用いた検索結果について、次に報告する。

  • 「泉源」→検索不能
  • 「SENGENBIO851」→検索不能
  • 「バイオ851栄養補助食品」→検索不能
  • 「BYMITUIKKK..」→電話番号案内からの情報では、東京都内に「MITUIK.K.」する企業の登録はされていない。地元企業と考えられるため、電話案内で確認されたい。
  • 「BioDNARNA:Bio851HealthSupplements」→原料は「核酸」と推定。「**核酸」→一部文字判読不能も主原料「核酸」と確認。

上記の結果から、本品の直接情報の確認は出来なかったが、他社製品から核酸について調査した。

商品名:オリヒロDNA核酸粒・ダイエット核酸粒

  • 容量:80g(約320粒)(50g/約200粒)
  • 会社名:オリヒロ株式会社〒370-24群馬県富岡市南蛇井51-1
  • 電話0274-67-3773FAX.0274-60-2004
    薬品・健康食品事業部学術課
  • 商品特性:DNAを豊富に含有する鮭の白子を10%
    RNAを豊富に含有するビール酵母を10%
    肌の若返りが注目されている杜仲葉エキス10%
  • 核酸の種類:DNAアデニン、グアニン、シトシン、チミン、RNAアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル

核酸とは?

人間の細胞は60兆あると言われていますが個々の細胞に細胞核が存在します。核の中にはその細胞が増殖したり活動したりするために必要な情報が非常に精密な形(1/8400)で、染色体として保存されています。この情報の基本となっている物質がDNA(遺伝子)です。 RNAは、遺伝子DNAの情報を元に、細胞の活動に必要なアミノ酸を合成し、そのアミノ酸を部品として蛋白質を合成します。

これら一つ一つの細胞活動が、生物の生命活動の源になっています。

DNAは生殖器官、骨髄、皮膚、消化管等の細胞分裂の活発な組織に高濃度に存在し、分裂活動の鈍い組織(脳など)では比率が低下します。

RNAは脳細胞の中に高濃度に存在します。主に、記憶を維持するために重要な働きを果たします。特に脳内のアミノ酸は特殊なアミノ酸(分枝アミノ酸)が多くRNAの働きが活発であり重要です。

ワンポイント豆知識

  • 1日の核酸必要量は1.5gと言われ、本品は1日目安量(12粒使用時)で約必要量の40%を摂取できます。
  • 核酸の合成(核酸を作る部品の合成)は主に肝臓で活発に行われますが、老いと共に各組織への供給が不十分になります。これが細胞の若返りを妨げ、老けとなって現れます。
  • 核酸の合成にはデ・ノボ合成とサルベージ合成があります。前者は主に肝臓由来の核酸合成で、後者は摂取した核酸などが主体の合成です。幼児期はデ・ノボ合成が活発に行われ、年と共にサルベージ合成による核酸合成が主体となります。
  • 高窒素食品は代謝産物である尿酸の生成が増し通風が懸念されましたが、V.Cを配合することで改善しています。
  • 痴呆症の治療薬としてフランス、中国では実際に核酸が使用されています。
  • アメリカでは65歳以上の5%が痴呆症と診断され、80歳以上では25%です。
  • 鮭の白子には、プロタミンという成分が含まれます。プロタミンは脂肪やコレステロールの吸収を抑え、またアルギニン、リジンと言った塩基性のアミノ酸を多く含み、これらのアミノ酸にはダイエット効果のあることがわかっています。

原材料

鮭白子核蛋白(DNA)、ビール酵母(RNA)、杜仲葉抽出エキス、V.C、V.E、糊料(CMC-Na)、ショ糖脂肪酸エステル、シェラック

召し上がり方・保存方法

  • 1日に8?12粒を目安に噛まずに水などでお召し上がり下さい。
  • 使用後は蓋をしっかり締め、高温多湿を避け保管して下さい。
  • 製造日より2年間有効。

核酸DYNAシリーズ栄養補助食品 核酸NueBIOシリーズ基礎化粧品

  • 株式会社プラネット
  • 東京都千代田区麹町3丁目1番地泉屋ビル12階
  • 電話03-3265-7122(代表)FAX.03-3265-1800

核酸ヘルス1000DNA&RNA[サケ白子加工食品]

  • 東京自然堂
  • 東京都調布市西つつじケ丘3-34-25
  • 電話0424-81-6661
  • 内容量:90g(300mg×300粒)
  • 細胞から10歳若返るといわれるデオキシリボ核酸(DNA)と、その指令でアミノ酸を組み合わせ蛋白質(細胞)をつくるリポ核酸(RNA)の働きで、健康と体力を維持します。20歳から減少する核酸を補給。
  • 原材料:サケ白子抽出物、ブドウ糖、還元麦芽糖、酵母抽出物、ステビア、ショ糖脂肪酸エステル
  • 成分:10粒(3g)中サケ白子抽出物(DNA核蛋白)/1000mg、酵母抽出物(RNA・蛋白)/60mg、ビタミンC/250mg、ビタミンB1・B2・B6・B12・ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビタミンE

核酸ダイエットゴールド[減量用補助食品]

  • マンナンフーズ
  • 東京都中央区日本橋人形町2-17-10
  • 電話03-3661-6071
  • 今アメリカで注目されているデオキシリボ核酸とリボ核酸を中心に各栄養素をバランス良く配合しています。
  • 原材料:ダイエタリーファイバー、卵白、スピルリナ、デオキシリボ核酸、リボ核酸、複合アミノ酸、きのこ抽出エキス、ナイアシン、パントテン酸Ca、ビタミンB1・B2・B6(20代/鉄、30代/ビタミンE、40代/ローヤルゼリー)。
  • 内容量:20代ダイエットゴールド・30代・40代・(各108g/約900粒)。

マンナンベターライフ核酸[サケ白子加工食品]

  • 美容と健康に重要な栄養素・核酸を、おいしく召し上がりやすい粒状にした栄養補助食品です。
  • 原材料:DNA含有サケ白子抽出物、RNA含有酵母抽出物、乳糖、クエン酸、甘味料(ステビア)、ショ糖脂肪酸エステル
  • 成分:1粒(250mg)中DNA/63mg、RNA/2.5mg
  • 内容量:250mg×120粒970円

LSL-21リバ・クラフト[栄養補助食品、月見草油・酵母・核酸]

  • アイ・エム・シー
  • 東京都渋谷区笹塚1-56-6千葉ビル6F
  • 電話不明
  • 月見草油に含まれるγ-リノレン酸、酵母エキスに多量に含まれる蛋白(トリペプタイド)、鮭白子抽出物の核酸(DNA)は、日常の食生活では不足しがちです。美容と健康維持のための栄養バランス食品として、いつでもどこでも手軽にお召し上がり下さい。
  • 原材料:月見草油、酵母エキス、鮭白子抽出物、小麦胚芽油、大豆レシチン
  • 成分:1粒(450mg)中月見草油/135mg(γ-リノレン酸12.2mg)、酵母エキス/54mg(ペプタイド4.5mg)、鮭白子抽出物/90mg(DNA54mg)、リノール酸/140mg
  • 内容量:450mg×90粒9,800円

以上の各報告から「泉源」も核酸含有補助食品と考えられるが、核酸単品とは考えられないため、配合されている内容の確認が必要であるが、その標榜している対象は、上記製品と基を一にするものと考える。

食品であるため、核酸そのものの副作用・相互作用は検索不能であるが、通常のアミノ酸製剤で報告されている範囲と考えられる。

[799.011.1SEN][1996.3.13.・1999.3.19.一部修正.古泉秀夫]


  1. オリヒロ株式会社薬品・健康食品事業部学術課・私信,1996.3.11.
  2. 日本核酸栄養協会・私信,1996.3.13.[TEL.03-3265-2403]
  3. 健康産業新聞;第831号,1996.1.4
  4. 平岡勝美・編:ビタミンガイド’95飲料・食品編;株式会社シー・ティー・イー,1994
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.1434,1996.12.5.より転載

ストナリニSの妊婦・授乳婦への使用について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:副作用・OTC薬・ストナリニS・マレイン酸クロルフェニラミン・塩酸フェニレフリン・ダツラエキス・催奇形性・乳汁中移行・母乳中移行

Q:OTC薬ストナリニSの妊婦・授乳婦への使用について

A:ストナリニS(佐藤製薬)は時間差作用の二重構造の錠剤であり、鼻炎用内服薬である。成分は下記の通り。

成分 内核 外層 作用機序
マレイン酸
クロルフェニラミン
6mg 6mg アレルギーによる鼻づまり・鼻水を抑制
塩酸フェニレフリン 6mg 6mg 鼻粘膜の鬱血(血が滞ること)や腫れを抑え、鼻づまりを緩和する。
ダツラエキス 12mg 12mg 副交感神経に働いて、鼻炎による症状を改善する。

添付文書に記載されている『妊婦又は妊娠していると思われる人』に対する注意は具体的な記載はなく、『相談事項』である。各成分の催奇形性及び授乳婦への投与に関する注意事項は、以下の通りである。

  1. dl-chlorpheniramine maleate:催奇形性-有益性[未確立]。文献(3-[A]。
  2. d -chlorpheniramine maleate:催奇形性-有益性[未確立]。文献(3-[A]。
  3. phenylephrine hydrochloride:催奇形性-有益性[動物-胎仔毒性(低酸素血症)]。文献(3-[B2]。
  4. datura extract:催奇形性-回避[胎児、新生児に頻脈等惹起事例]。文献(3-[B2]。授乳婦-回避[乳汁分泌抑制]。

[註]ダツラ(Datura):マンダラ葉は、ナス科植物である洋種チョウセンアサガオ(Datura stramonium L.var.chalybea Koch)又は白花洋種チョウセンアサガオの花期の葉を乾燥したものである。全草が有毒部分で、共通する成分としてヒオスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどのアルカロイドを主要成分とし、いずれも有毒成分は強力である。

喘息煙草(燻煙剤) :ダツラ100・硝酸カリウム30を混和茶剤とする。1茶匙にマッチで点火しその煙を吸入。datura extractは、ダツラアルカロイド(ヒヨスチアミンとして 0.95?1.15%を含む)。である。本品はロートエキスに代用したものである。

[A]:多数の妊婦及び妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。

[B2]:妊婦及び妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られている薬だが、奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究は不十分又は欠如しているが、入手しうるデータは、胎仔への障害の発生が増加したという証拠は示されていない。

以上の報告から『chlorpheniramine maleate・phenylephrine hydrochloride』の両剤は、妊婦の服用によって直ちに催奇形性の問題があるとはいえない。また授乳婦への投与については『chlorpheniramine maleate・phenylephrine hydrochloride』では、添付文書中に授乳婦への投与に関する注意事項の記載はされていない。

『datura extract』は、datura-alkaloid[ヒヨスチアミン(hyoscyamine)C17H23O3N=289.36として)を0.95-1.15%を含む。

応用としてはベラドンナエキスと同様で、鎮痙鎮痛薬として特に喘息の治療に用いる。

hyoscyamineを含む植物アルカロイド製剤としてscopolia extract(ロートエキス)製剤があるが、同剤の添付文書に記載されている妊婦・授乳婦への投与に関する注意事項は『胎児又は新生児に頻脈等を起こすことがあるので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳中の婦人には投与しないことが望ましい。また,乳汁分泌が抑制されることがある。』とするものである。

なお、その他の資料で、hyoscyamine、belladonnaの妊婦への投与に関する評価は[B2]で、atropine sulfateは[A]である。

  [065.CHL:2006.6.26.古泉秀夫]


  1. ストナリニS添付文書,04111
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  3. 雨森良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改訂版);医薬品・治療研究会,2001
  4. 薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
  5. ポララミン錠添付文書,2005.6.
  6. ネオシネジンコーワ注1mg添付文書,2005.6.
  7. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  8. (10%)ロートエキス散添付文書,1999.5.
  9. 雨森良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改定版)-オーストラリア医薬品評価委員会先天性異常部会による評価基準;医薬品・治療研究会,2001

スルフィニルについて

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬名検索・スルフィニル・sulfinyl・ワサビ・山葵・わさびスルフィニル・活性酸素・解毒物質

Q:解毒効果があるワサビ成分のスルフィニルとはどの様なものか

A:ワサビ(和佐比)は、葉が葵に似ていることから生薬名『山葵』とされるアブラナ科の植物で北海道、本州、四国、九州の深山渓流に自生するが、古くから各地で栽培されている。

学名:Wasabia japonica Matsumura(Wasabi)。

薬用部分は根茎とされているが、葉等も食品として摂取される。

成分として辛み成分である芥子油配糖体のシニグリンが知られている。これが酵素ミロシン(myrosin)によって加水分解され、強い刺激性のアリルイソチオチアナート(allyl isothiothyanate)(アリルカラシ油)、セコブチルイソチオシアネート(sec-butyl isothiocyanate)等を生ずるが、これらは眼や鼻の粘膜を刺激し、辛味を感じさせるが、揮発性なので持続時間は短い。

山葵中に含まれるとされるスルフィニル(sulfinyl)は、最近の研究で山葵の根茎に含まれることが確認された成分『6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-methysulfinylhexy isothiocyanate)の慣用名である。

体内に摂取された有害物質を体外に排出するための肝臓の解毒酵素として、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S- transferase:GST)があるが、このGSTを活性化する作用がsulfinylに存在し、野菜の中では山葵中に最も含まれていると報告されている。

同じアブラナ科の植物であるブロッコリー中にはスルフォラファン(Sulforafan)という非常に強力な成分が含まれているが、山葵中のsulfinylは、Sulforafanよりは強力で、発癌抑制作用があるとされている。

体内では喫煙や紫外線、ストレスなどによって活性酸素が発生し、それが遺伝子を傷付けているが山葵中のsulfinylは活性酸素に対しても強力に作用するの報告がみられる。

なお、山葵の1日必要量として5g程度の量とする報告がみられる。

sulfinylは、山葵の根茎には特に多く含まれる成分であるとされるが、その含有量は約0.04%と甚だ貴重な成分で、山葵の品種ごとに含有量が異なるとされている。

但し、これらの報告は、未だヒトにおいて確定した報告とはなっていない。

 [011.1.SUL:2006.5.1.古泉秀夫]


  1. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  2. 奥田拓男・他:天然薬物・生薬学;廣川書店,1993
  3. 野菜の中で一番の毒消し効果-解毒効果を活性化-肝臓が元気に;Health;日経ヘルス,2006.2.

ステリスコープの交換時期

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:滅菌・消毒・ステリスコープ・glutaral・ glutaraldehyde・内視鏡専用殺菌消毒剤・緩衝化剤

Q:救急外来に、救急時に対応すべく内視鏡自動洗浄機がおかれているが、内視鏡室のように頻繁には使用しない。ステリスコープの交換時期の目安はどうすればよいか。

A:ステリスコープ3W/V%液(丸石製薬)は、glutaral溶液に、添付の緩衝化剤(液体)を加えて使用する用時調製の組合わせ医薬品であり、内視鏡専用殺菌消毒剤である。実用液中にはglutaral (glutaraldehyde) 3.09W/V%及び添加物としてpH調整剤、その他3成分が含まれる。

*緩衝化剤(液体):pH調整剤、青色1号含有。

ステリスコープ3W/V%液の貯法

  1. 遮光した気密容器に入れ、30℃以下で保存する。
  2. 開栓後の残余の液は、密栓して保管すること。
  3. 寒冷地では氷結することがある。このような場合、常温で放置して自然に溶かすこと等の注意が記載されている。使用期限:3年(容器に表示の使用期限を参照すること。)ステリスコープ3W/V%液の性状:無色-淡黄色澄明の液で、わずかに特異なにおいがある(pH3.0-4.0)。
  • glutaralの性状:無色-淡黄色澄明の液で、そのガスは粘膜を刺激する。水、エタノール又はアセトンと混和する。
  • 緩衝化剤(液体)の性状:青色-濃い青色澄明の液で、においはないか、またはわずかに酢酸臭がある。
  • ステリスコープ3W/V%実用液の性状:青色-淡青色澄明の液。

ステリスコープ3W/V%実用液の調製法

  1. 調製法:本品は用時調製の製剤で、次の調製法により製する。溶液1Lに対し、緩衝化剤(液体)30mLを加えて混和し、青色-淡青色澄明の液として製する。この液を用いる。
  2. 使用方法:あらかじめ洗浄、水洗を行った内視鏡を液に完全に浸漬させ、液との接触が十分行われるよう注意し、通常、15分以上浸漬させる。浸漬後、取り出した内視鏡を十分に水洗する。

使用上の注意(重要な基本的注意)

  1. 人体に使用しないこと。
  2. 本剤の成分またはアルデヒドに対し過敏症の既往歴のある者は、本剤を取り扱わないこと。
  3. glutaral水溶液との接触により、皮膚が着色することがあるので、液を取り扱う場合には必ずゴーグル、防水エプロン、マスク、ゴム手袋等の保護具を装着すること。また、皮膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと。
  4. 眼に入らぬようゴーグル等の保護具をつけるなど、十分注意して取り扱うこと。誤って眼に入った場合には、直ちに多量の水で洗ったのち、専門医の処置を受けること。
  5. glutaralの蒸気は眼、呼吸器等の粘膜を刺激するので、必ずゴーグル、マスク等の保護具をつけ、吸入または接触しないよう注意すること。換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて、空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があるので、窓がないところや換気扇のないところでは使用せず、換気状態の良いところでglutaralを取り扱うこと。
  6. 本剤による内視鏡消毒を行った後十分なすすぎが行われなかったために薬液が内視鏡に残存し、大腸炎等の消化管の炎症が認められた報告があるので、消毒終了後は多量の水で本剤を十分に洗い流すこと。
  • 副作用等発現状況の概要:本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
  • その他の副作用(頻度不明):過敏症(発疹、発赤等の過敏症状)。皮膚(接触皮膚炎)

注)上記のような症状があらわれた場合には、換気、防護が十分でない可能性があるので、glutaralの蒸気を吸入又はglutaralと接触しないよう十分に換気、防護を行うこと。また、このような症状が継続して発生している場合、症状が全身に広がるなど増悪することがあるので、直ちに本剤の取り扱いを中止すること。

適用上の注意(使用時)

  1. 誤飲を避けるため、保管及び取り扱いに十分注意すること。
  2. 本剤を用時調製する時、ピペット等で直接吸引して調製しないこと。
  3. glutaralには一般に、蛋白凝固性がみられるので、内視鏡に付着している体液等を除去するため予備洗浄を十分に行ってから薬液に浸漬すること。
  4. 浸漬の際にはglutaral蒸気の漏出防止のために、ふた付容器を用い、浸漬中はふたをすること。また、局所排気装置を使用することが望ましい。その他の注意:glutaralを取り扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では、眼、鼻の刺激、頭痛、皮膚炎等の症状が報告されている。また、glutaral取扱い者は非取扱い者に比べて、眼、鼻、喉の刺激症状、頭痛、皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告がある。
  • ステリスコープ3W/V%液の内視鏡に対する実用効果:ステリスコープ実用液(3W/V%)は、 15分の内視鏡浸漬消毒で、菌陰性化率はステリハイドL実用液(2W/V%)の30分浸漬消毒に相当する効力が得られた。また、使用感及び内視鏡への影響は特に問題なかった。

取扱い上の注意

  1. 調製後(緩衝化剤添加後)の実用液(3W/V%液)は、希釈しないで直ちに使用すること
  2. 緩衝化剤(液体)は、成分・分量、特性の関係で過飽和溶液の状態になっているので、ときに、結晶が析出することがある。

上記添付文書の記載内容を勘案すれば、『実用液の調製は用時調製し、直ちに使用する』のが原則であるとすることが出来る。

なお、参照として次の各資料を紹介する。

温度 実用液 1日目 3日目 7日目 14日目 21日目 28日目 31日目
20℃ 3.077%

(100.0%)

3.049%

(99.1%)

3.008%

(97.8%)

2.934%

(95.4%)

2.818%

(91.6%)

2.723%

(88.5%)

2.611%

(84.9%)

2.586%

(84.0%)

25℃ 3.077%

(100.0%)

3.024%

(98.3%)

2.927%

(95.1%)

2.753%

(89.5%)

2.534%

(82.4%)

2.343%

(76.1%)

2.203%

(71.6%)

2.146%

(69.7%)

40℃ 3.077%

(100.0%)

2.517%

(81.8%)

1.985%

(64.5%)

1.462%

(47.5%)

1.102%

(35.8%)

0.923%

(30.0%)

0.823%

(26.7%)

0.789%

(25.6%)

*ステリスコープ3W/V%実用液の経時安定性を保管温度条件(20・ 25・40℃)毎に測定した。実用液は調製後150mLのポリエチレン容器に分注し密栓した。各々の容器を恒温装置内に入れ、サンプリング日毎に取り出し含量を測定。含量測定法はガスクロマトグラフ法(1994.5.丸石製薬学術部)

以上の資料からglutaral濃度は、以下に示すような要因で、低下する。

  1. 経時的低下:実用液調製後は未使用状態でも経時的に濃度は低下する。
  2. 保存温度:保存温度が高いほど濃度低下は早まる。
  3. 使用回数:頻回の消毒により、濃度低下、実用液の汚染は当然のことながら増加する。
  4. 洗浄器の特性:内視鏡自動洗浄器を使用する場合、器械の特性により消毒薬は稀釈される。洗浄器槽内に残る水により稀釈される。希釈率は自動洗浄器の機種により大きく異なるとの報告がある。手洗いの場合に比較し、濃度低下は大きい。
  5. 消毒時間:ステリスコープ3W/V%液に15分間浸漬消毒後の菌陰性化率は94.8%であり、2w/v %-glutaral製剤30分の消毒と同様の効果とされている。経時的な濃度低下に対しては消毒時間の延長が必要である。
  6. 十分な予洗浄:消毒薬には有機物を除去する作用はなく、有機物の混入は消毒効果を減弱させるため、十分な予洗浄が必要である。
調製後日数 直後 1日 2日目 3日目 6日目 7日目
累積本数 0本 5本 10本 15本 20本 25本 30本 35本 40本 45本 50本
GA濃度(%) 3.06 2.86 2.77 2.63 2.53 2.41 2.34 2.27 2.13 2.05 1.96
残存率(%) 100 93 91 86 83 79 77 74 70 67 64

glutaralは、緩衝剤を添加した2%-実用液において、各種細菌、結核菌、真菌を殺滅し、従来消毒剤では殺滅困難とされていた細菌芽胞、B型肝炎ウイルス等の各種virusにも有効と報告されている。

日本消化器内視鏡技師会消毒委員会が編纂した『内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン』によれば、十分な洗浄後、少なくとも10分間は2w/v% -glutaralに浸漬すべきであるとしている。ステリスコープ3W/V%液の濃度低下、実用液の安定性は、使用環境(調製後の日数・使用頻度・温度・浸漬時間・洗浄器の種類)により大きく異なる。

従って一概に調製後2週間、何回の洗浄までは有効であるという機械的な回数の設定ではなく、ステリスコープ実用液の濃度判定のための簡易試験紙(ステリマーク)が存在するので、実用液濃度が2w/v%以上に保たれているか否かを測定し、判断することが必要である。

[615.28.GLU: 2005.3.15.古泉秀夫]


  1. ステリスコープ3W/V%液添付文書, 2003.7.改訂
  2. 日本消化器内視鏡技師会消毒委員会・編:内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン,1996
  3. ステリスコープ3W/V%液パンフレット;丸石製薬株式会社, 1997.9.改訂
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27 (3):221-222(2000)

水酸化ナトリウムの希釈法

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:物理化学的性状・水酸化ナトリウム・希釈法・試薬・JIS試薬特級・JIS試薬一級・日本工業規格・Japanese Industrial Standard・JIS

Q:水酸化ナトリウムの水溶液の作り方及び特級、1級の基準について

A:試薬は、用途に応じて一定の品質が保証されたものであるが、この品質の内容を定めたのが試薬規格である。

国が定めた試薬規格では、日本工業規格(Japanese Industrial Standard:JIS)と認証試薬規格(NR規格)があり、それぞれに規格制定がされている。また試薬の品質水準に応じて、通常、特級、1級等に区分されている。

その他、試薬の品位については、JIS試薬特級、JIS試薬一級の他に、試薬製造企業が自主的に設定している『試薬特級』、『試薬一級』の品位区分がされている等の報告がされており、原則的には不純物を除外し精製した試薬ということからいえば、『JIS試薬特級』を選択することになるが、必ずしも全ての試薬がJIS規格が制定されているわけではない。水酸化ナトリウム(sodium hydroxide:NaOH)は、定量するとき95.0%以上を含む。本品は白色の小球状、薄片状、棒状又はその他の塊で、堅く、もろく、断面は結晶性である。水又はエタノール(95)に溶け易く、ジエチルエーテルに殆ど溶けない。

本品は空気中で速やかに二酸化炭素を吸収する。本品は湿気によって潮解する。本品の水溶液(1→500)はアルカリ性である。 溶状:本品1gを水20mLに溶かすとき、液は無色澄明である。

本品は発熱して水に溶ける。

0℃ 5℃ 10℃ 20℃ 30℃
42.0 47.5 51.5 109 119

本品は腐食性が極めて強く、蛋白質、毛などを溶かす。本品は強電解質の一つで、水溶液は強アルカリ性である。以上の各報告から本品の希釈溶液を調製する場合、安全面での十分な注意が必要である。

必要とする濃度に対応する精製水をビーカー等に秤取し、必要量の水酸化ナトリウムを加え、ガラス棒で緩徐に攪拌する。調製に際し、直接手に触れないようゴム手袋をし、眼鏡を掛ける等の安全対策を施すこと。

[014.4.SOD:2004.1.13.古泉秀夫]


  1. CHEMICALS 32Ed.,2002
  2. 日本試薬連合会・編:改訂 試薬ガイドブック;化学工業日報社,1992
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001

スピルリナとwarfarinの相互作用

土曜日, 8月 11th, 2007

Q:ワーファリン錠服用中の患者が健康食品のスピルリナの摂取について相談してきた。本品中にビタミンKは存在するか

A:スピルリナ(英・spirulina)は、アフリカ、メキシコ等の熱帯地方の高温・高塩分・高アルカリの湖に生育するスピルリナ科に属する多細胞の藍藻で螺旋形をしている。食品として摂食された歴史も古く、16世紀に栄えたメキシコ高原のアステカ王国ではスピルリナを常食していたとする記録があるの報告がされている。1962年スピルリナの生産に関する研究が進められ、1972年SCP国際会議で発表された。我が国では大日本インキ化学が初めてスピルリナの量産化に成功し、健康食品素材として使用されるようになったとされている。

乾燥スピルリナ100g中の成分として次の資料が報告されている。

成分 含有量 成分 含有量
蛋白質 60-70g カリウム 1000-1400mg
炭水化物 15-20g カルシウム 100-400mg
脂肪 5-7g リン 300-700mg
繊維 5-7g ニコチン酸 9-12mg
灰分 3-6g パントテン酸 0.5-0.8mg
水分 4-6g イノシトール 80-100mg
葉緑素 800-2000mg プロビタミンA 110-200mg
カロチノイド 200-400mg ビタミンB1 3-4mg
フィコシアニン 16000-20000mg ビタミンB2 2.5-3.5mg
ナトリウム 450-500mg ビタミンB6 0.5-0.7mg
30-50mg ビタミンB12 0.15-0.25mg
マグネシウム 150-200mg ビタミンE 5-7mg

具体的な測定値としてビタミンKは報告されていないが、原料はクロレラ同様の藻類であり、成分中に葉緑素を含むことから当然含有していると考えられる。従って、ワーファリン錠服用者では、本品に由来する製品の摂食は回避すべきである。

なお、スピルリナの生理活性等については、次の通り報告されている。

  1. 豊富な蛋白質(含有量:60?70%)からなり、そのプロティン・スコアも高く優れた栄養補給源として利用される。
  2. ビタミン類が豊富に含まれており、特にプロビタミンAであるβ-カロチン含有量が高い。
  3. ビタミンAは発育を促進し、粘膜を丈夫にするので皮膚、消化器系、呼吸器系などの癌発生の抑制に効果がある。また風邪の予防、肌荒れ、老化防止、夜盲症、眼精疲労に役立つ。
  4. 本品に含まれているクロロフィルは脳障害、膵炎、肝炎、腎炎に対して有効であることが臨床的にも認められている。
  5. 本品は臨床的には、糖尿病、肝炎、貧血症、肝硬変、急性膵炎、胃潰瘍、慢性胃炎、胃下垂、老人性白内障、円形脱毛症等にも効果があったと報告されている。
  6. 本品は銅、亜鉛、セレニウム等の微量金属を含む。本品の安全性:ラット及びマウスに対する慢性毒性試験、ラットに対する生殖機能及び次世代試験の結果異常は認められなかった。本品に含まれるクロロフィル分解物であるフェオホルバイトは皮膚障害を起こすため、厚生省からフェオホルバイト含量に関する規制が出されている。

[1998.10.27.古泉秀夫]


  1. 福山忠男:健康食品便覧;食品と科学社,1985
  2. 日正出版編集部・編:症状別健康食品大百科;日正出版,1997
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,1998

スリーピング・ブッダについて

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬名検索・sleepingbudda・スリーピングブッダ・健康食品・食事補助食品・フェノチアジン系薬物・フルラゼパム・エスタゾラム・医療用医薬品違法配合

Q:FDAのホームページにでているとされるdietarysupplemen「sleepingbudda」とは何か

A:FDAのホームページに登載されているFDAstatementMaech10,1998の内容は次の通り。

「FDAは食事補助食品(健康食品)として市販されている”sleepingbudda”を購入使用している消費者に警告する。」

FDAから”sleepingbudda”について警告が出されている。この商品は食事補助食品として売り出されているもので、いわゆる健康食品であり、要処方薬ではない。FDAの販売・使用許可は得られていない。

“sleepingbudda”は、中国製のカプセル剤でカナダの”TreasureBox株式会社”から輸入・販売されている。不眠・不安を抑制する鎮静薬に代わりうるものとして販売されている。

本品についてFDAは、要処方薬である強い成分-ベンゾジアゼピン系のエスタゾラムを含有する製品であると判定した。エスタゾラムは胎児奇形を惹起するという重大な副作用を持つことが知られている。また、鎮静薬であるため、高所での作業、車の運転、アルコール又は他の鎮静薬との併用によりときに危険性がある薬物である。しかし、FDAは本品に関する副作用報告は受けていない。全消費者、特に妊婦に対するこの製品との関連性について注目すべきである。

TheCenterforDrugEvalutionandReseaech(CDER)は、1997年12月24 日に中国から輸入されている商品である”sleepingbudda”に関するカナダの消費者向け警告をHealthCanadaからの報告書として受領した。この製品についての報告書の概要は、

  1. 不眠と不安を抑制する。
  2. 30カプセル/瓶として市販されている。
  3. ハーブ取扱店で販売。
  4. ブリティッシュコロンビア、オンタリオとケベックで販売。

本品は中国・上海のMeiKangTangの製品であると報告されている。HealthCanadaの職員により2 ロットの製品がテストされ、要処方薬であるベンゾジアゼピン系のフルラゼパム、エスタゾラム(C-IVscheduledsrugs)が配合されていることが確認された。この申請されていない医薬品は、医師の処方なしに使用することは危険である。妊婦に投与すると中枢神経系の機能低下と先天的奇形を惹起する可能性がある。

二つの製品”HappyBuddha”、”ChineseInflu-X”は、申請されていないクロロフェニラミンとアセトアミノフェンを含有すると報告されている。これらの製品の他の組成は、異なっており未知のものである。

CDERは米国で市販されているSleepingBuddha・HappyBuddha・ChineseInflu-Xについて、これらの製品は新しい薬であるという誤った印象を与えると警告している。

[1998.4.24.古泉秀夫・志田貴子]

瑞香狼毒について

土曜日, 8月 11th, 2007

?KW:漢方薬・沈丁花科植物・瑞香狼毒 ・抗癌剤・抗がん剤・抗腫瘍効果

Q:沈丁花科植物で抗癌剤として用いられる瑞香狼毒について

A:生薬「瑞香狼毒」(StellerachamaejasmeL.)は、沈丁花科の多年生草本植物であり、華北の各地に分布していると報告されている。

石家荘人民病院腫瘍科主任-楊宝印らは抗癌生薬を選別する実験を行った際に、瑞香狼毒は顕著な抗癌作用を有することを突き止めた。動物実験及び臨床試験の結果によると、瑞香狼毒は肝臓癌、子宮体癌、EC腹水癌、肺腺癌及び脳膠細胞腫等の悪性腫瘍に対して、全て顕著な抑制作用を有することが分かった。

瑞香狼毒を使用し、60例の悪性腫瘍患者を治療した結果、完全緩解が3例、部分的緩解が9例、現状維持が3例であり、客観的有効率が63%であった。

60例中、中末期肝臓癌45例、完全緩解と部分的緩解者は27%を占めており、単純化学療法、総合療法及びここ数年来開発された幾つかの抗癌新薬の効果より優れていることが明らかにされた。

中国産の植物「瑞香狼毒」の根から制癌効果の高い物質を抽出することに国立がんセンター研究所のグループ(化学療法部:池川哲郎ら)が成功した。現在臨床で使用されている植物由来の制癌剤と同等以上の効果が動物実験で確かめられ、製薬化が有望だという。

白血病細胞を移植したマウスに対する実験で、抽出物を分離精製した物質は、2mg/kgの投与で100%を越える延命率を示したとされる。現在、同物質の化学構造を決定する研究が進められている。

[510.FD14.011.1STE][1991.2.25.・1999.3.25.一部修正.古泉秀夫]


  1. 生薬瑞香狼毒は顕著な抗癌作用を有する;中国医薬情報,3(11):12(1990)
  2. 中国産の植物の根から-制癌物質抽出;毎日新聞,1990.7.1
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.31,1991.3.1.より転載

水道水による消毒剤の希釈

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:物理化学的性状・安定性・常水・水道水・精製水・注射用水・消毒薬・水質基準・希釈用水・水質基準・省令・厚生省令第69号

Q:消毒薬の希釈に水道水を用いることの可否について

A:水道水については、「水質基準に関する省令」(平成4年12月21日厚生省令第69号)により、水道により供給される水は、基準に適合するものでなければならないと定められている。

それによると「健康に関連する項目」として1-29項目が挙げられ、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基本として安全性を十分考慮した基準が設定されている。

また、30-46までの項目として「水道水が有すべき性状に関連する項目」が挙げられており、水道水としての生活利用上(色、濁り、臭いなど)あるいは水道施設の管理上(腐食性など)障害が生じるおそれのない水準としての基準が設定されている。

[014.4.WAT:2002.1.15.古泉秀夫]


  1. 日本病院薬剤師会・編:院内における消毒剤の使用指針;薬事日報社,1987
  2. ディスオーパ消毒液0.55%添付文書,2001.10.作成
  3. アセサイド6%消毒液インタビューフォーム,2001.10.作成
  4. ホルマリン添付文書,1999.7.改訂
  5. ヂアミトール10%添付文書,1999.4.改訂
  6. ステリハイド2・20w/v%液添付文書,1999.1.改訂
  7. 20w/v%マスキン液添付文書,1999.1.改訂
  8. テゴ-51添付文書,2001.6.改訂
  9. イソジン液添付文書,1999.8.改訂

紫蘇の食効について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:機能性成分・健康食品・紫蘇・シソ・ロスマリン酸・rosmarinic acid・シソ科タンニン・labiataetannin・リノレン酸・linolenic acid・α-リノレン酸・α-linolenic acid

Q:紫蘇の食品としての効果について

A:シソ科シソ属に属する『紫蘇』の名称がある植物として、次のものが報告されている。

植物名 シソ・紫蘇

[英]perilla

別名:野生紫蘇
(ヤセイシソ)

アオジソ・青紫蘇

別名:大葉(オオバ)

チリメンジソ・縮緬紫蘇。

別名:赤蘇、紫蘇、紅紫蘇、皺紫蘇(シュウシソ)、尖紫蘇。

学名 Perilla frutescens(L.)Britton var.acuta Kudo(Beef-steak Plant) Perilla frutescens(L.)Britton var.acuta Kudo forma viridis Makino Perilla frutescens(L.)Britton var.crispa(Thunb.)Decne.

Perilla frutescens(L.)Britton var.crispa(Thunb.)Hand.-Mazz.

原産地 中国南部原産の1年草。

日本には古代に渡来し現在は食用。

中国南部原産の1年草。

日本各地で広く栽培され、中国でも殆ど全域で栽培。

中国中南部の原産の1年草。

日本には古代に渡来し、現在は食用、香料用などに広く栽培される。

薬用部分 葉(蘇葉、紫蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。 葉(紫蘇葉、蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。 葉(紫蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。
成分 葉:精油中にイソアミル-3-フリル-ケトン、ペリルアルデヒド(perillaldehyde)、α-pinene、β-pinene、d-limonene、l-リナロール、カンフェン、menthol、 menthone、ペリラアルコール、ジヒドロペルラアルコール、オイゲノール、ペリラケトン、エルショルチアケトン、ジラピオール、ミリスチシン (myristicin)、p-クマリン酸エステル、アデニン、アルギニン

種子:perillaldehyde、d-limonene、β-pinene、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸 (linolenic acid)。

香気成分は紫蘇油で、ペリラアルデヒド55%を含み防腐力が強い。

全草に精油約0.5%を含み、その主成分はペリルアルデヒドで、他にl-limonene、α-limoneneを含む。種子には脂肪油を含み、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸等を含有。

ジヒドロペリラルアルコール、menthol。

全草に精油のperillaldehyde約55%、l-limonene 20-30%、α- pinene少量の他アルギニン、クミン酸、シアニジン3-(6-p-クマロイル-β-D-グルコシル)5-β-D-グルコシド、β-pinene、ペリラケトン、ナギナタケトン、エルショルチアケトン、エゴマケトン、イソエゴマケトン。種子:ペリラケトン、ステアリン酸、パルミチン酸、 linolenic acid、オレイン酸等。

アントシアニン色素のシアニジン、アントシアニン配糖体ペリラニンが抽出される。

薬効・薬理 紫蘇葉の煎剤はウサギに対し2g/kg経口投与で解熱作用、ブドウ状球菌に対する抑制作用。紫蘇油には強い防腐作用。紫蘇葉、紫蘇子とも発汗、解熱、鎮咳、鎮痛薬として用いられる。

種子は魚肉中毒の解毒薬として用いられる。

風邪。

葉には殺菌、防腐、解熱、鎮痛、鎮静、解毒作用。種子には鎮咳、利尿作用。

不眠症、神経痛、リウマチ、ノイローゼ、神経衰弱、風邪、魚による中毒。糖尿病。

紫蘇葉の煎剤及び浸剤は温刺発熱ウサギに対し、2g/kgの経口投与により比較的弱い解熱作用があり、試験管内でブドウ状球菌に対し、成長抑制作用がある。

また紫蘇油はウサギに対し0.35mL/kgの経口投与によって、血糖上昇作用が見られる。紫蘇葉・紫蘇子とも発汗、解熱、鎮咳、鎮痛薬として気管支炎、胃腸炎、感冒、胎動不安などに用いられる。

使用法 風邪に紫蘇葉か紫蘇子1日量6-10gに200mLの水を加え、半量になるまで煎じつめたものを1回量3-6g水で服用する。 葉、種子ともに1日量5-10gを500-700mLの水で煎じ、2-3回に分服。紫蘇酒にして食欲増進や貧血に対しても効果を得られる。紫蘇酒は水洗いした200gの葉を水切りした後、輪切りのレモン2個分とホワイトリカ1.8Lを広口瓶に入れ密閉する。 鎮咳、発汗などに、紫蘇葉1日量5-15gを500- 800mLの水で煎じたものを3回に分服。

シソ科タンニン(labiataetannin)と呼ばれるロスマリン酸(rosmarinic acid)はカフェー酸の2量体に相当し、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、シソ(Perilla frutescens)、ウツボグサ[夏枯草](Prunella vulgaris var.lilacina)、メリッサ(Mellisa officinalis)、セージ(Salvia officnalis)等多くのシソ科植物に分布する。

ロスマリン酸(rosmarinic acid)は、植物性由来の化学物質(fightchemical)で、シソ科の植物に含まれているポリフェノールの一種。本品は過剰になっている免疫反応を正常に戻し、ステロイド剤にかわる副作用のないアレルギー軽減物質として期待されている。花粉症と活性酸素の研究によると、抗酸化活性が強いシソエキス中のrosmarinic acidが、花粉症に効果があり、ヒトでの実験では、rosmarinic acid 50mgの服用で有効性を示したとする報告がされている。この量は縮緬紫蘇換算で20枚前後とされている。

ペリルアルデヒド(perillaldehyde)は、紫蘇の香り成分である。食添収載。殺菌・防腐作用があり、葉を刻むとその効果は更に上昇するの報告。

リノレン酸(linolenic acid)は、二重結合3個を有するC18の必須脂肪酸。植物性の乾性油中に多く含まれる。二重結合の位置によりα、γと区別される。γ-linolenic acidは動物体内でリノール酸から生じる。紫蘇中にはα-linolenic acidが含まれており、特に紫蘇油では不飽和脂肪酸であるα-linolenic acidが主体(含有量約70%)とされている。

α-linolenic acidはn-3系列の多価不飽和脂肪酸で、n-6系列のリノール酸同様にヒトの体内で合成することができず、食品から摂取しなければならない必須脂肪酸である。体内に取り込まれると、EPAやDHAと代謝されるため、α-linolenic acidを摂取することで、EPA、DHAの持つ機能も期待できる。n-6系列の脂肪酸から体内で作られるプロスタグランジンとn-3系列から作られるプロスタグランジンは、体内での作用を相互に抑制し合う場合が多いことが分かっている。例えばアトピー性皮膚炎はリノール酸の過剰摂取によって発症する典型的な症状の一つとされているが、アレルギー症状を解消するのに最も効果的な方法は、α-linolenic acidを摂取することである。その他、α-linolenic acidは癌細胞を変化させ増殖を抑制する、血圧を下げる、血栓を解消し、血液の流れをよくする等の作用が報告されている。

α-linolenic acidを含む油は非常に酸化しやすいので注意が必要である。また熱に弱いため、揚げ物や炒め物のように加熱する料理では使用せず、サラダ等のドレッシングとして使用する。保存する場所も高温・光を避け、なるべく速めに使い切ることが必要であるとされている。

なお、紫蘇の栄養成分については、次の報告がされている(可食部100g中)。

食品名 紫蘇葉(生) 紫蘇実(生)
kcal 37 41
水分 86.7g 85.7g
蛋白質 3.9g 3.4g
脂質 0.1g 0.1g
炭水化物 7.5g 8.9g
灰分 1.7g 1.9g
無機質(mg) Na 1 1
K 500 300
Ca 230 100
Mg 70 71
P 70 85
Fe 1.7 1.2
Zn 1.3 1.0
Cu 0.20 0.52
Mn 2.01 1.35
vitamin A レチノール (0) (0)
カロテン 11000μg 2600 μg
レチノール当量 1800 μg 440 μg
vitamin D (0) (0)
E 3.9mg 3.9mg
K 690μg 190μg
B1 0.13mg 0.09mg
B2 0.34mg 0.16mg
Niacin 1.0 mg 1.8 mg
B6 0.19mg 0.12mg
B12 (0) (0)
葉酸 110μg 72 μg
パントテン酸 1.00mg 0.80mg
C 26mg 5mg
脂肪酸 飽和 ? ?
一価不飽和 ? ?
多価不飽和 ? ?
コレステロール (0) (0)
食物繊維 水溶性 0.8g 0.8g
不溶性 6.5g 8.1g
総量 7.3g 8.9g
食塩相当量 0 0
廃棄率 0* 0*
備考 青紫蘇(オオバ)及び赤紫蘇。

*小枝付は40%。

硝酸イオン 0.1g。

青紫蘇。

穂紫蘇は35%。

硝酸イオンTr.

購入した青紫蘇(オオバ)の束を秤量したところ約5g強であった。一束の枚数は10枚、1枚当たり約 0.5gである。上表は100g中の含有成分であるが、概略オオバ200枚分である。

α-linolenic acidは熱に弱いためサラダでの摂取が勧められているが、オオバの相当量をサラダで摂取するのは困難ではないかと思われる。

[015.9.PER:2005.5.14.古泉秀夫]


  1. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  2. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大事典第二巻;小学館,1985
  4. 田中 治・他編:天然物化学改訂第6版;南江堂,2002
  5. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  6. 奥田拓道:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004-2005
  7. http://prshops.ciao.jp/tv/archives/cat1/, 2005.5.7.
  8. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005
  9. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001

シクロスポリンと飲食物の相互作用

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:相互作用・薬物動態・pharmacokinetic interaction・シクロスポリン・ciclosporin・サンディミュン・飲食物・グレープフルーツジュース・脂溶性・血中濃度・薬物動態的相互作用・pharmacokinetic interaction

Q:「標準的な病院の朝食により、シクロスポリンの吸収の増加がみられる」とする資料をみたが、具体的な食事内容としては、どのようなものが考えられるのか。

A:シクロスポリン(ciclosporin)製剤であるサンディミュン内用液(ノバルティスファーマ株式会社)の添付文書において、飲食物との関係が明らかにされているのは、相互作用に関する以下の事項である。

相互作用

多くの薬剤との相互作用が報告されているが、可能性のある全ての組み合わせについて検討されているわけではないので、他剤と併用したり、本剤又は併用薬を休薬する場合には注意すること。特に、本剤は主に代謝酵素チトクローム P450 3A(CYP3A)系で代謝されるので、本酵素の活性に影響する医薬品・食品と併用する場合には、可能な限り血中濃度を測定するなど用量に留意して慎重に投与すること。

併用注意

対象物 グレープフルーツジュース セイヨウオトギリソウ
(St.John’s Wort)含有食品
臨床症状・措置方法 本剤の血中濃度が上昇することがあるので、本剤の服用時は飲食を避けることが望ましい。 本剤の代謝が促進され血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること。
機序・危険因子 グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することによると考えられる。 セイヨウオトギリソウにより誘導された代謝酵素が本剤の代謝を促進すると考えられる。

本剤とgrapefruit juiceによる相互作用の発現機序は、薬物動態的相互作用(pharmacokinetic interaction)であると考えられている。grapefruit juiceにより肝P450IIIA4の活性阻害が起こり、ciclosporinの血中濃度が増加するとされている。

『健康志願者7人においてシクロスポリン注射液1.5mg/kg(3時間点滴静注)とシクロスポリン経口製剤(ネオラール)5mg/kgを水で服用した場合とグレープフルーツジュースで服用した場合の薬物動態を比較した。グレープフルーツジュースはシクロスポリンのバイオアベイラビリティを45%増加させた。 [Ku,Y.M.et al:J.Clin.Pharmacol.38(10):959-965(1998)]』

注射液 経口+水 経口+grapefruit juice
AUC0-24(ng・hr/mL) 6,535±985 8,073±1,291 11,902±3,175
Cmax(ng/mL) 1,514 ±150 2,013±75 2,224 ±408
Tmax(hrs) 2.8 ±0.2 1.7±0.46 2.1 ±0.61

本剤とSt.John’s Wortによる相互作用の発現機序は、上記と同様薬物動態的相互作用であると考えられている。St.John’s Wortの摂取により薬物の代謝酵素であるチトクロームP450、特にサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2が誘導(活性化)されることが知られているの報告が知られている。

『60代、性別不明、虚血性心疾患のため11ヵ月前に心移植を施行した患者が生検のため入院。移植後のシクロスポリン血中濃度は安定していたが、入院の3 週間前から軽度の抑鬱のため、患者の判断でセント・ジョーンズ・ワート(商品名:Jarsin、ヒペリシン900μg含有)の服用開始。

入院時、シクロスポリン血中濃度低下(95μg/L)以外に特に異常は認められなかったが、生検の結果、急性拒否反応を認めた。セント・ジョーンズ・ワートとの相互作用が疑われたため、セント・ジョーンズ・ワートの服用を中止。シクロスポリン投与量を250mg/dayから300mg/dayに増量し、コルチコステロイド 1g/dayを3日間投与したがしたが改善を認めなかった。

アザチオプリンをミコフェノール酸モフェチル2g/dayに変更し、ATG 1,250mg/dayを10日間投与したところ、拒否反応は回復した。セント・ジョーンズ・ワートの服用中止後は、シクロスポリンの血中濃度は治療域となり拒否反応も認めなかった。 [Ruschitzka,F.et al.:Lancet 355(9203):548-549(2000)]』。

「標準的な病院の朝食」については、原著は国外文献であり、具体的な飲食物名は報告されていないが、国内における病院給食とは、質的に異なるものと考えられる。ただし、ciclosporinの体内動態及び代謝について、「経口投与では投与後3-4時間で最高血漿中濃度に達するが、バイオアベイラビリティは 20-50%の範囲でばらつきがみられる。

本剤は脂溶性が高いため、全血中では60-70%が赤血球中に存在し、白血球中にも10-20%が分布する。一方、血漿中では93%がリポ蛋白質などに結合している。血液中からの消失半減期は約6時間で、肝臓で代謝を受けた後、胆汁中に排泄される。尿中には代謝物を含めてほとんど排泄されない。」の報告がされている。

本剤の経口投与については、「本剤の経口投与時の吸収は一定しておらず、患者により個人差があるので、血中濃度が高い場合の副作用並びに血中濃度の低い場合の拒絶反応の発現等を防ぐため、患者の状況に応じて血中濃度を測定し、トラフ値(trough level)を参考にして投与量を調節すること。」とする報告もみられる。

従って、血中濃度の上昇が必ずしも食事による影響とは断定できないが、本剤の「脂溶性が高い」とする報告から考えると、本剤服用時に脂肪分の多い食物を摂取した場合、何らかの影響を受けるであろう可能性は否定できない。

なお、本剤投与中の患者に対する尿細管への影響として、『カリウム排泄減少による高カリウム血症』、『尿酸排泄低下による高尿酸血症』、『マグネシウム再吸収低下による低マグネシウム血症』が見られるの報告がされているため、カリウム含有量の多い食品の摂取には注意が必要である。また、マグネシウム含有量の多い食品の摂取を検討することも必要とおもわれる。

[015.2.CIC:2005.6.13.古泉秀夫]


  1. サンディミュンカプセル添付文書,1998.2.改訂
  2. サンディミュン内用液添付文書,2005.1.改訂
  3. 厚生省薬務局研究開発振興課・監修:JPDI;薬業時報社,1996
  4. 「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班・編:改訂第2版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;薬業時報社,1995
  5. 日野原 重明・他編:今日の治療指針;医学書院,1998.p.1163
  6. 第十三改正日本薬局方解説書;廣川書店,1996

シアニジンについて

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬名検索・シアニジン・cyanidin・アントシアニジン・anthocyanidin・アントシアニン・anthocyanin・フラボノイド・flavonoid

Q:テレビで放映していたシアニジンについて

A:シアニジン(cyanidin)、3,5,7,3′,4-pentahydroxyflavylium。

cyanidinは最も一般的なアントシアニジンである。赤色系花の色素にはこの配糖体が多い。

アントシアニン(anthocyanin)は、ポリフェノールと呼ばれる植物に存在するフェノール化合物の一つで、5000種類あるといわれているポリフェノールの内、フラボノイド(flavonoid)化合物のグループに属している。自然界には、2000種類のflavonoidがあり、その構造からフラボン、フラバン、フラボノール、anthocyaninの四つのグループに分かれる。anthocyaninは、水溶性で常に糖がついている。anthocyaninから糖を除いた物質をアントシアニジン (anthocyanidin)といい、anthocyanidinは、C6-C3-C6のflavonoidの基本骨格を持っている。

anthocyanidinは2-phenylbenzopyrylium (flavylium)を基本骨格に持つ化合物群の総称である。anthocyanidinはBリングの違いからペラルゴニジン (Pelargonoidin)、シアニジン(Cyanidin)、ペオニジン(Peonidin)、デルピニジン(Delphinidin)、マルビジン(Malvidin)、ペツニジン(Petunidin)の六つの主な種類に分類される。anthocyanidinは、希に単体で植物に存在する場合があるが、通常は、配糖体であるanthocyaninとして自然界に存在する。糖は、C -3の位置に付くものが最も多く、2番目に多いのはC-5の位置で、希にC-7の位置に付くものも見られる。

糖には、グルコース、ガラクトース、ラムノースとアラビノースがあり、糖は、更に、p-クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピ酸、酢酸、マロン酸、p-ヒドロキシ安息香酸などの酸とアシル化(- CO-)して結合する。アシル化がおこるとanthocyaninの色素が安定するといわれている。グリコシル化(配糖体になる)とアシル化により300 種類以上のanthocyaninが存在する。

  • 黒豆色素:cyanidinは黒豆の黒い皮の部分に含まれる色素として知られている。cyanidinは強い抗酸化作用を持ち、身体に有害な活性酸素を除外する。また、黒豆には大豆特有の抗酸化成分であるサポニンも含まれており、cyanidinとのダブル効果が期待できる。更にcyanidinやサポニンには、血液中の中性脂肪を減少する作用もあるといわれている。
  • 紫トウモロコシ色素:イネ科トウモロコシ(Zea mays LINNE)の紫色の種子より、温時水又は弱酸性水溶液で抽出して得られる紫トウモロコシ色素の本質も、シアニジン-3-グルコシド(cyanidin- 3-glucoside)であると報告されている。紫トウモロコシ色素の性状として、暗赤紫色の液体で酸性食品に使用した場合、鮮明な赤色-紫赤色を呈する。本品は水、プロピレングリコール、アルコール、酢酸などに溶解するが、油脂、エーテル、無水アセトンなどには溶解しない。pHの変動により、かなり色調が変化する。酸性で赤色、中性で赤色-暗赤色、アルカリ性で赤紫-暗藍色を呈する。強アルカリ側では不安定で、酸性域での使用が必要である。本品は熱・光に対して比較的安定であるとされている。紫トウモロコシ色素は既存添加物名簿に収載されている。
  • 急性毒性:SD系雄・雌ラット死亡例認めず。
  • 亜急性毒性(13週):死亡例認めず。血液学的所見: 異常を認めず。臨床生化学的所見:異常を認めず。病理組織学的所見:異常を認めず。

黒ニンジン

皮が真っ黒な為に黒ニンジン(Daucus carota L.)と呼ばれている原種に近いニンジンで、3000年前からアジアで栽培され食用にされている。このニンジンを切ると内部は紫色をしている。皮が黒く見えるのも紫の色素が皮の中に豊富に含まれているためで、この色素は、anthocyaninと呼ばれる物質である。

黒ニンジンは、12世紀には、ヨーロッパでも栽培されるようになったが、 1750年頃にオランダで品種改良され、現在の西洋ニンジンが生産されるようになった。黒ニンジンは、色素が豊富に含まれるために、煮ると食べ物が紫色に着色してしまうため、それが、大衆に嫌がられ徐々に栽培が減少し、現在の西洋ニンジンに置き換わったといわれている。しかし、現在でもスペイン、アフガニスタン、エジプト、トルコなどで栽培され食用にされている。味は、フルーティな美味しい味で、トルコなどでは、ジュースにして飲まれている。

黒ニンジンに含まれるanthocyaninの種類は次の通りである(mg/mL)。

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-glucose-galactose): 0.607

cyanidin-3-(2”-xylose-galactose):0.533

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-sinapoyl-glucose-galactose):0.761

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-feruloyl-glucose-galactose):3.652

cyanidin-3-[(2”-xylose-6″-(4-cumaroyl)glucose-galactose):1.522

黒ニンジンのanthocyaninは、cyanidinの配糖体だけが含まれており、糖は全てC-3の位置に付いており、構造的に非常に良く似たanthocyaninで構成されている。これらの配糖体部分で、クマル酸、フェルラ酸、シナピ酸とアシル化しているanthocyaninが多く、アシル化しているanthocyaninは、安定性が高く脱色しにくい性質を持っている。その為、光や温度に対して、他のanthocyaninと比べて高い安定性を持つとされている。

anthocyaninの機能として、次の報告がされている。

  1. 抗酸化作用・フリーラジカル消去作用:フラボノイド化合物の1種である anthocyaninは、抗酸化作用とフリーラジカル消去作用を持っている。Bリングに付いている水酸基から水素を過酸化物に移動させることで過酸化物を除去したり、電子をフリーラジカルに転移させることで、フリーラジカルを消去する作用を持っている。
  2. コレステロール・中性脂肪の低下作用:anthocyaninは、低比重リポタンパク(LDL)コレステロールと中性脂質を低下させる。

[011.1.ANT:2005.4.26.古泉秀夫]


  1. 田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
  2. 海老塚 豊・監訳:医薬品天然物化学;南江堂,2004
  3. http://www.airgreen.co.jp/black%20carrot/black%20carrot%20catalog.html,2005.4.9.