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紫蘇の食効について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:機能性成分・健康食品・紫蘇・シソ・ロスマリン酸・rosmarinic acid・シソ科タンニン・labiataetannin・リノレン酸・linolenic acid・α-リノレン酸・α-linolenic acid

Q:紫蘇の食品としての効果について

A:シソ科シソ属に属する『紫蘇』の名称がある植物として、次のものが報告されている。

植物名 シソ・紫蘇

[英]perilla

別名:野生紫蘇
(ヤセイシソ)

アオジソ・青紫蘇

別名:大葉(オオバ)

チリメンジソ・縮緬紫蘇。

別名:赤蘇、紫蘇、紅紫蘇、皺紫蘇(シュウシソ)、尖紫蘇。

学名 Perilla frutescens(L.)Britton var.acuta Kudo(Beef-steak Plant) Perilla frutescens(L.)Britton var.acuta Kudo forma viridis Makino Perilla frutescens(L.)Britton var.crispa(Thunb.)Decne.

Perilla frutescens(L.)Britton var.crispa(Thunb.)Hand.-Mazz.

原産地 中国南部原産の1年草。

日本には古代に渡来し現在は食用。

中国南部原産の1年草。

日本各地で広く栽培され、中国でも殆ど全域で栽培。

中国中南部の原産の1年草。

日本には古代に渡来し、現在は食用、香料用などに広く栽培される。

薬用部分 葉(蘇葉、紫蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。 葉(紫蘇葉、蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。 葉(紫蘇葉[局])・種子(紫蘇子)。
成分 葉:精油中にイソアミル-3-フリル-ケトン、ペリルアルデヒド(perillaldehyde)、α-pinene、β-pinene、d-limonene、l-リナロール、カンフェン、menthol、 menthone、ペリラアルコール、ジヒドロペルラアルコール、オイゲノール、ペリラケトン、エルショルチアケトン、ジラピオール、ミリスチシン (myristicin)、p-クマリン酸エステル、アデニン、アルギニン

種子:perillaldehyde、d-limonene、β-pinene、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸 (linolenic acid)。

香気成分は紫蘇油で、ペリラアルデヒド55%を含み防腐力が強い。

全草に精油約0.5%を含み、その主成分はペリルアルデヒドで、他にl-limonene、α-limoneneを含む。種子には脂肪油を含み、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸等を含有。

ジヒドロペリラルアルコール、menthol。

全草に精油のperillaldehyde約55%、l-limonene 20-30%、α- pinene少量の他アルギニン、クミン酸、シアニジン3-(6-p-クマロイル-β-D-グルコシル)5-β-D-グルコシド、β-pinene、ペリラケトン、ナギナタケトン、エルショルチアケトン、エゴマケトン、イソエゴマケトン。種子:ペリラケトン、ステアリン酸、パルミチン酸、 linolenic acid、オレイン酸等。

アントシアニン色素のシアニジン、アントシアニン配糖体ペリラニンが抽出される。

薬効・薬理 紫蘇葉の煎剤はウサギに対し2g/kg経口投与で解熱作用、ブドウ状球菌に対する抑制作用。紫蘇油には強い防腐作用。紫蘇葉、紫蘇子とも発汗、解熱、鎮咳、鎮痛薬として用いられる。

種子は魚肉中毒の解毒薬として用いられる。

風邪。

葉には殺菌、防腐、解熱、鎮痛、鎮静、解毒作用。種子には鎮咳、利尿作用。

不眠症、神経痛、リウマチ、ノイローゼ、神経衰弱、風邪、魚による中毒。糖尿病。

紫蘇葉の煎剤及び浸剤は温刺発熱ウサギに対し、2g/kgの経口投与により比較的弱い解熱作用があり、試験管内でブドウ状球菌に対し、成長抑制作用がある。

また紫蘇油はウサギに対し0.35mL/kgの経口投与によって、血糖上昇作用が見られる。紫蘇葉・紫蘇子とも発汗、解熱、鎮咳、鎮痛薬として気管支炎、胃腸炎、感冒、胎動不安などに用いられる。

使用法 風邪に紫蘇葉か紫蘇子1日量6-10gに200mLの水を加え、半量になるまで煎じつめたものを1回量3-6g水で服用する。 葉、種子ともに1日量5-10gを500-700mLの水で煎じ、2-3回に分服。紫蘇酒にして食欲増進や貧血に対しても効果を得られる。紫蘇酒は水洗いした200gの葉を水切りした後、輪切りのレモン2個分とホワイトリカ1.8Lを広口瓶に入れ密閉する。 鎮咳、発汗などに、紫蘇葉1日量5-15gを500- 800mLの水で煎じたものを3回に分服。

シソ科タンニン(labiataetannin)と呼ばれるロスマリン酸(rosmarinic acid)はカフェー酸の2量体に相当し、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、シソ(Perilla frutescens)、ウツボグサ[夏枯草](Prunella vulgaris var.lilacina)、メリッサ(Mellisa officinalis)、セージ(Salvia officnalis)等多くのシソ科植物に分布する。

ロスマリン酸(rosmarinic acid)は、植物性由来の化学物質(fightchemical)で、シソ科の植物に含まれているポリフェノールの一種。本品は過剰になっている免疫反応を正常に戻し、ステロイド剤にかわる副作用のないアレルギー軽減物質として期待されている。花粉症と活性酸素の研究によると、抗酸化活性が強いシソエキス中のrosmarinic acidが、花粉症に効果があり、ヒトでの実験では、rosmarinic acid 50mgの服用で有効性を示したとする報告がされている。この量は縮緬紫蘇換算で20枚前後とされている。

ペリルアルデヒド(perillaldehyde)は、紫蘇の香り成分である。食添収載。殺菌・防腐作用があり、葉を刻むとその効果は更に上昇するの報告。

リノレン酸(linolenic acid)は、二重結合3個を有するC18の必須脂肪酸。植物性の乾性油中に多く含まれる。二重結合の位置によりα、γと区別される。γ-linolenic acidは動物体内でリノール酸から生じる。紫蘇中にはα-linolenic acidが含まれており、特に紫蘇油では不飽和脂肪酸であるα-linolenic acidが主体(含有量約70%)とされている。

α-linolenic acidはn-3系列の多価不飽和脂肪酸で、n-6系列のリノール酸同様にヒトの体内で合成することができず、食品から摂取しなければならない必須脂肪酸である。体内に取り込まれると、EPAやDHAと代謝されるため、α-linolenic acidを摂取することで、EPA、DHAの持つ機能も期待できる。n-6系列の脂肪酸から体内で作られるプロスタグランジンとn-3系列から作られるプロスタグランジンは、体内での作用を相互に抑制し合う場合が多いことが分かっている。例えばアトピー性皮膚炎はリノール酸の過剰摂取によって発症する典型的な症状の一つとされているが、アレルギー症状を解消するのに最も効果的な方法は、α-linolenic acidを摂取することである。その他、α-linolenic acidは癌細胞を変化させ増殖を抑制する、血圧を下げる、血栓を解消し、血液の流れをよくする等の作用が報告されている。

α-linolenic acidを含む油は非常に酸化しやすいので注意が必要である。また熱に弱いため、揚げ物や炒め物のように加熱する料理では使用せず、サラダ等のドレッシングとして使用する。保存する場所も高温・光を避け、なるべく速めに使い切ることが必要であるとされている。

なお、紫蘇の栄養成分については、次の報告がされている(可食部100g中)。

食品名 紫蘇葉(生) 紫蘇実(生)
kcal 37 41
水分 86.7g 85.7g
蛋白質 3.9g 3.4g
脂質 0.1g 0.1g
炭水化物 7.5g 8.9g
灰分 1.7g 1.9g
無機質(mg) Na 1 1
K 500 300
Ca 230 100
Mg 70 71
P 70 85
Fe 1.7 1.2
Zn 1.3 1.0
Cu 0.20 0.52
Mn 2.01 1.35
vitamin A レチノール (0) (0)
カロテン 11000μg 2600 μg
レチノール当量 1800 μg 440 μg
vitamin D (0) (0)
E 3.9mg 3.9mg
K 690μg 190μg
B1 0.13mg 0.09mg
B2 0.34mg 0.16mg
Niacin 1.0 mg 1.8 mg
B6 0.19mg 0.12mg
B12 (0) (0)
葉酸 110μg 72 μg
パントテン酸 1.00mg 0.80mg
C 26mg 5mg
脂肪酸 飽和 ? ?
一価不飽和 ? ?
多価不飽和 ? ?
コレステロール (0) (0)
食物繊維 水溶性 0.8g 0.8g
不溶性 6.5g 8.1g
総量 7.3g 8.9g
食塩相当量 0 0
廃棄率 0* 0*
備考 青紫蘇(オオバ)及び赤紫蘇。

*小枝付は40%。

硝酸イオン 0.1g。

青紫蘇。

穂紫蘇は35%。

硝酸イオンTr.

購入した青紫蘇(オオバ)の束を秤量したところ約5g強であった。一束の枚数は10枚、1枚当たり約 0.5gである。上表は100g中の含有成分であるが、概略オオバ200枚分である。

α-linolenic acidは熱に弱いためサラダでの摂取が勧められているが、オオバの相当量をサラダで摂取するのは困難ではないかと思われる。

[015.9.PER:2005.5.14.古泉秀夫]


  1. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  2. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大事典第二巻;小学館,1985
  4. 田中 治・他編:天然物化学改訂第6版;南江堂,2002
  5. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  6. 奥田拓道:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004-2005
  7. http://prshops.ciao.jp/tv/archives/cat1/, 2005.5.7.
  8. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005
  9. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001