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パンセダンの毒性と処置

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:漢方薬・毒性・中毒・誤飲時処置・パンセダン錠・パッシフローラエキス・セイヨウヤドリギエキス・カギカズラエキス・ホップ乾燥エキス

Q:パンセダン10錠を1回に服用したとする患者が急患室に来ているが、本剤の毒性と処置は

A:パンセダン(佐藤製薬)は、1錠中に次の成分・含有量を有する植物性の静穏剤で、一般用薬としてして市販されている製剤である。

  • パッシフローラエキス…………40mg
  • セイヨウヤドリギエキス………10mg
  • カギカズラエキス………………22.5mg
  • ホップ乾燥エキス………………9mg

本剤の適応症は、神経衰弱症候の次の諸症として「不眠、いらいら、不安、興奮、眩暈、耳鳴、動悸、頭痛」であり、用法・用量として成人1回1?2錠、1日2回服用とされている。

本剤の動物による50%致死量は、マウス・ラットで92錠/kgとされており、ヒトにおける過量服用例が報告されていないため、確定した判断とはならないが、1回10錠程度の服用範囲であれば、致死的な作用は発現しなと考えられる。

服用後既に一定時間が経過した事例で、考えられる影響としては「眠気」等が挙げられるので、医師の監視下で安静状態を確保する必要があるかもしれない。

服用直後であれば、胃洗浄等適当な方法による薬物の除去も考慮する必要があるが、胃洗浄による患者負担を考えた場合、本剤の服用量によっては、そこまでの処置を要しないのではないかと考えられる。。

尚、参考までに、各配合剤の作用等について以下に紹介する。

パッシフローラエキス[学名:Passifloraincarnata]

トケイソウ科。南米原産のつる性の植物。その開花期における茎、葉は鎮静などに用いる。成分としてバルマン系アルカロイド等。

セイヨウヤドリギ[学名:Viscumalbum]

ヤドリギ科。ブナ、カシの樹上に吸根で固着寄生する。雌雄異株の常緑低木。鎮静剤として用いる。成分としてコリン、アセチルコリン、アルカロイド(ビスコトキシン)等。

Viscotoxinは、心収縮停止作用を持つ毒素である。viscotoxinはアミノ酸残基88個からなり、分子量9,600のポリペプチドである。毒性は腹腔内注射で概ね1.14mg/kg(マウス)程度である。

カギカズラ(釣藤)[学名:Uncariarhynchophylla]

アカネ科。日本、中国に自生するつる性の植物。その木化したカギ状の側枝を薬用に用いる。成分としてRhinchophyllin及びIso-rhinchophyllinの2種のアルカロイドを含有する。

リンコフィリンは少量で呼吸中枢を興奮し、青蛙の心臓に対してジギタリス様作用を呈する。血圧はリンコフィリンにより著しく下降し、末梢血管は拡大する。家兎の静脈内注射による一般症状は、著明なる呼吸促迫と運動麻痺で、致死量に達すれば呼吸麻痺により死亡する。最小致死量は、家兎静脈内注射で30?40mg/kg、0.3g皮下注射では呼吸頻数を示した。

ホップ[学名:Humuluslupulus]

クワ科。長野、北海道で栽培されている。雌雄異株のつる性の植物で、その成熟花序包葉に点在する腺毛を薬用に用いる。成分として精油、苦味質等である。苦味成分はhumulone、lupuloneといったクロログルシン誘導体である。また、純粋なイソプレノイドであるセスキテルペン、humuleneを精油中に含有する。

ホップ腺は、健胃、鎮静及び利尿薬として不眠症、膀胱カタル等に用いる。

[510.FD5.63.099PA][1991.4.15.・1999.3.29.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本医薬情報センター・編:一般日本医薬品集第5版;薬業時報社,1985
  2. パンセダン添付文書,512G
  3. 刈米達夫・他:和漢薬用植物;広川書店,1954,p.48,p.352
  4. 柴田承二・編:薬用天然物質;南山堂,1982
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.61,1991.4.15.より転載