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緩下剤と制酸剤の相互作用

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:相互作用・緩下剤・制酸剤・フェノール系緩下薬・アントラキノン誘導体・sodium picosulfate・bisacodyl

 

Q:大腸刺激性下剤(アントラキノン系誘導体、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム)と制酸剤との相互作用

A: 各緩下剤の特性は次の通り報告されている。

一般名

sodium picosulfate

bisacodyl

powderd rhubarb

商品名
(会社名)

ラキソベロン錠(帝 人)

テレミンソフト坐薬(日本ヘキサル)

大黄末(各社)

性状

本品は白色の結晶性の粉末で、臭い及び味はない。本品は水に極めて溶け易く、メタノールにやや溶け易く、エタノール(99.5)に溶け難く、ジエチルエーテルに殆ど溶けない。

本品は光りにより徐々に着色する。本品1.0gを水20mLに溶かした液のpH は7.4-9.4。

bisacodyl
本品は白色の結晶性の粉末である。本品は酢酸(100)に溶け易く、アセトンにやや溶け易く、エタノール(95)又はジエチルエーテルに溶け難く、水に殆ど溶けない。

本品は希塩酸に溶ける。

本品は換算した生薬の乾燥物に対し、sennoside A 0.25%以上を含む。本品は褐色を呈し、特異な臭いがあり、味は僅かに渋くて苦い。

噛めば細かい砂を噛むような感じがあり、唾液を黄色く染める。

来歴

フェノール系緩下薬の緩下作用と胃腸への刺激性も、本質的にはその構造中の遊離水酸基に基づくものであるという観点からビサコジルのアセチル基を硫酸エステル基に変えた水溶性の物質が本品である。*フェノールスルホン酸-ピリジン系。

本薬は1953年に開発された坐剤用緩下剤である。
*フェノール酢酸-ピリジン系。
神農本草経の下品に収録されている。現在でも漢方の要薬であり、緩下薬として多量消費されている。
薬効・薬理

胃、小腸では殆ど吸収されず、大腸の蠕動運動を亢進させ、緩和な瀉下作用を示す。経口投与後殆ど吸収されることなく大腸部位にそのまま到達した後、大腸細菌叢由来のアリルスルファターゼにより加水分解され活性型のジフェノール体が生じ、本物質が大腸粘膜を刺激し、蠕動運動を亢進させるとともに、水分吸収を阻害することにより緩下作用が発現する。

一部吸収されたものはジフェノール体として胆汁中に排泄されるが、同様に大腸部位で局所的に作用すると考えられている。

刺激性の緩下作用を示す。結腸・直腸粘膜の副交感神経末端に作用して蠕動を高め、また腸粘膜への直接作用により排便反射を刺激する。更に結腸腔内における水分や電解質の吸収を抑制するが、これは腸管のNa+、K+-ATPaseの抑制作用によると考えられている。

直腸坐薬とすれば15-60分以内に作用が発現し、効力はフェノールフタレインの約5倍強力である。

薬効成分はsennoside A、B、C、D、E、F及びrheinoside A、B、C、D等である。主瀉下成分のsennoside Aは胃腸で吸収されず、大腸で腸内細菌によりrhein anthroneに加水分解されて瀉下作用を示す。

なお遊離型のアントラキノン誘導体のrhein、emodin、aloe-emodin、 chrysophanol、physcionには実際上瀉下作用は認められない。

相互作用 制酸剤との相互作用-特に報告無し。 制酸剤との相互作用-特に報告無し。 制酸薬-酸化マグネシウムがアルカリ性のためセンナ、大黄と配合すると次第に赤褐色に変わる。変色しても無害で薬効に影響がない。

上表を見る通りphenol系緩下薬である『sodium picosulfate・bisacodyl』については制酸剤との相互作用は何等報告されていない。アントラキノン誘導体を含有する『powderd rhubarb』は、制酸薬(magnesium oxide)との配合で、変色することは事実であるが、従来から薬効に変化はないとして、薬袋等に注意事項を押印することはあっても併用回避の処置はとっていない。 今回の患者の質問が何に依拠してのことが不明であるが、質問の根拠を確認されたい。

[015.2.BIS:2004.2.3.古泉秀夫]


  1. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  2. テレミンソフト坐薬1号添付文書,2002.2.改訂
  3. センナリド錠添付文書,2002.7.改訂
  4. ラキソベロン錠添付文書,2002.6.改訂 5)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

カルキについて

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:語彙解釈・カルキ・さらし粉・Bleaching powder・漂白粉・クロルカルキ・クロル石灰・次亜塩素酸カルシウム

 

Q:カルキの名称で呼ばれる物質はどのようなものか

A:カルキとはさらし粉(Bleaching powder)の別名である。さらし粉の別名としては、この他に『漂白粉・クロルカルキ・クロル石灰・次亜塩素酸カルシウム』が報告されている。さらし粉の他に高度さらし粉がある。[局方収載]、[食添収載]。

さらし粉の英名としては『calcium chlorinated lime、[英]chlorinated lime、hypochlorite、calcium hypochlorite、 [独]chlorkalk、 [ラ]calx chlorinata』とする表記が見られる。

さらし粉は1798年にTennantが石灰水に塩素を通じ、液状の漂白剤 を作ったのが始まりで、1799年になって固形のさらし粉が市販され、Tennant氏漂白粉と称した。

さらし粉を定量するとき、有効塩素(Cl:35.45)30.0%以上を含む。本品は白色の粉末で、塩素のような臭いがある。本品に水を加えるとき、一部が溶け、液は赤色リトマス紙を青変(アルカリ性)し、次に徐々にこれを脱色(次亜塩素酸によって色素が酸化されて脱色)する。

さらし粉は湿潤状態におかれると、その活性塩素が殺菌作用を発現する。この殺菌には分解によって発生する有効塩素と発生機の塩素の何れか又は両者があずかると考えられている。0.2%のさらし粉の存在で栄養型細菌は5分くらいで死滅し、また20%では破傷風芽胞も10分間で殺菌する。また有効塩素として0.4-1.5%に相当するさらし粉で飲用水を処理すると、水中に存在する細菌の約90%が死ぬとされている。

尿・糞便・喀痰等の排泄物の殺菌には、約2%量を加え、掻き混ぜて1-2時間放置する。この他、伝染病患者の使用した器具や食器の消毒にも用いられるが、漂白作用があるので衣類等には適さない。その他、漂白剤、殺菌剤、消毒剤としてパルプ、綿糸布、麻糸布などの漂白、澱粉、果皮、油脂、セラックなどの漂白、上下水、井戸水、プールなどの殺菌に使用する。

  • 性状:白色粉末、吸湿性がある。強い塩素臭があり、酸で分解。有効塩素量 30-38%(さらし粉)、60-90%(高度さらし粉)。
  • 安定性:空気中の炭酸ガスの影響を受けて分解する。日光によって酸素と塩化 水素に分解し、塩化カルシウムと炭酸カルシウムになる。
  • 抗菌作用:全ての微生物に抗菌作用を示す。次亜塩素酸ナトリウムに準じた殺 菌効果を示す。

カルキの名称の由来は『独逸語名のchlorkalk(クロールカルキ)の略称であるとされている。カルキそのものの語源は、オランダ語の「kalk」が語源で、「石灰」という意味である。クロールカルキは、ドイツ語で「Chlorkalk(塩化石灰)」のことで、さらし粉を意味する』。

-参照-

生石灰の名称としてCalx Usta(Calx Ust.)のほか、次の名称が報告されている。

Calcium Oxide The National Fomulary
Quicklime The National Fomulary
Oxyde de calcium French Codex
Gebrannter Kalk German Pharmacopoeia

 

その他、焼石灰とする標記も見られる。また、石灰(英lime 仏 chaux 独Kalk)について、酸化カルシウム(生石灰)の通称。石灰石(石灰岩)を950-1100℃で焼いて製造する。広義には水酸化カルシウム(消石灰)、炭酸カルシウム(石灰石)を含めた意味に用いられるとする報告が見られる。

[615.8.KAL:2004.4.13. 古泉秀夫]


  1. 防菌防黴剤事典;日本防菌防黴学会,1986
  2. 志田正二・代表編:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1999
  3. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  4. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  5. 岐阜県池田町ホームページ:http: //www.town.ikeda.gifu.jp/,2004.4.16.
  6. 第六改正日本薬局方注解;南江堂,1954
  7. 長倉三郎・他:岩波理化学辞典 第5版;岩波書店,1998

界面活性剤について

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:語彙解釈・界面活性剤・surface active agent・surfactant・アニオン界面活性剤・カチオン界面活性剤・非イオン界面活性剤・両性イオン界面活性剤

 

Q:界面活性剤について

A:界面活性剤(surface active agent,surfactant)。

別名:表面活性剤。

溶液にしたとき、気-液、液-液又は固-液界面に吸着して界面の性質を著しく変化する性質。

界面活性の大きい物質で、分子中に親水性及び親油性の原子団を有する両親媒性物質である。

一般に、界面活性剤は洗浄力、分散力、乳化力、可溶化力、湿潤力、殺菌力、起泡力、浸透力等に優れ、種類、目的によって広範囲に応用されている。また界面活性剤は水溶液にした場合に、ある濃度以上でミセルを形成し、この濃度において表面張力、粘度、電氣伝導率などが著しく変化する。

界面活性剤の種別 概要

アニオン界面活性剤(anionic surfactant)

[用途]:洗浄剤・乳化剤・湿潤剤・染色助剤・浸透剤・精練剤・分散剤・起泡剤等として食品工業、繊維、化粧品等。

別名:陰イオン界面活性剤、陰イオン表面活性剤。水溶液中でイオンに解離し、界面活性を示す部分がアニオンになるような界面活性剤をいう。水溶液としたとき、洗浄、乳化、可溶化、分散などの活性を示す。[例]:普通石鹸、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等非常に多くある。

*N-アシル-N-メチルグリシン塩(N-acyl-N-methylglycin)、*アルキルスルホン酸ナトリウム(sodium alklsulfonate)、*アルキル硫酸ナトリウム(sodium alkylsulfate)、*ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(polyoxyethylene alkyl ether carboxylate)、*ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、*脂肪酸石鹸(Soaps)等。

カチオン界面活性剤(cationic surfactant)

[用途]:顔料分散剤・帯電防止剤・金属防錆剤・染色助剤・沈降促進剤・浮遊選鉱・殺菌消毒剤等。

別名:陽イオン界面活性剤、陽イオン表面活性剤、逆性石鹸。水溶液でイオンに解離し、界面活性を示す原子団がカチオンとなる界面活性剤で、分子中に親水性原子団と親油性原子団を持っている両親媒性物質である。一般には耐アルカリ性の小さいものが多いが、耐酸性、耐硬水性が大きく、他のタイプの活性剤と同様に界面張力低下能、乳化力、分散力、起泡力、浸透力などに優れ、また陽荷電を持っていることから陰荷電を持つ物質、例えば金属表面、鉱石、顔料、染料、繊維、合成樹脂などに強く吸着して強力な吸着被膜を形成して、これらの物質表面を親油性にする性質を有する。[例]:アミン塩(アルキルアミン塩、アミド結合アミン塩、エステル結合アミン塩等)、第4級アンモニウム塩(アルキルアンモニウム塩、アミド結合アンモニウム塩、エステル結合アンモニウム塩、エーテル結合アンモニウム塩等)、ピリジニウム塩(アルキルピリジニウム塩、アミド結合ピリジニウム塩、エーテル結合ピリジニウム塩、エステル結合ピリジニウム塩等)等がある。

*塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)、*脂肪族アミン塩(alkylamine salt)、*脂肪族4級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)等。

非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)

[用途]:乳化剤・分散剤・精練剤・洗浄剤・湿潤剤・染色助剤として鉱油系添加物

及び食品工業等多方面に用いられる。

別名:非イオン表面活性剤。水溶液中でイオンに解離することなく界面活性を示す界面活性剤をいう。分子中に水酸基-OH、エーテル結合-O-、エステル基- COOR、酸アミド基-CONH2-等の親水性原子団とアルキル基やアルキルアリル基などの長鎖の親油性原子団とを有する。[例]:酸化エチレン系(アルキルアリルエーテル型、アルキルエーテル型、アルキルアミン型等)、多価アルコール脂肪酸エステル系(脂肪酸グリセリンエステル型、アンヒドロソルビトール脂肪酸エステル型など)、ポリエチレンイミン系及び脂肪酸アルキロールアミド系など非常に多くある。

*ポリオキシエチレン高級脂肪族アルコール(polyxyethylene higheraliphatic alcohols)、*ラウロマクロゴール(lauromacrogol)等。

両性イオン界面活性剤(amphoteric surfactant)

用途:殺菌・洗浄・キレート効果を利用。

カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤とカチオン(又はアニオン)界面活性剤の組み合わせのように、2種類の性質を同時に備えた界面活性剤を指す。一般には陽イオンとなる基と陰イオンになる基を同一分子中に持っているものをいう。

陰イオンとなる部分としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、そして陽イオンとなる部分にアミノ基を持っているものが多い。

*塩化アルキルポリアミノエチルグリシン(alkylpolyaminoethylglycine hydrochloride)、アミノカルボン酸塩(aminocarboxylate)、アルキルアミンオキシド(alkylamine oxide)、イミダゾリニウムベタイン(imidazolinium betaine)、カルボキシベタイン型(carboxy betaine)等

 

[615.8.SUR:2005.6.13.古泉秀夫]


  1. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  3. 高杉益充・編:改訂版 消毒剤-基礎知識と適正使用-;医薬ジャーナル社,1990
  4. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003

肝炎ウイルス感染者の血液眼飛散による汚染時の処置

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:滅菌・消毒・感染防御・肝炎ウイルス・血液眼飛散・血液汚染・眼飛沫・B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・HCV

 

Q:HCV感染患者の開腹術の際、誤って患者の血液が医師の眼に入ってしまったが、0.025%-ヒビテングルコネートを更に稀釈して洗浄することで感染防御可能か

 

A:ヒビテングルコネートの成分であるclorhexidine gluconateのvirusに対する殺virus効果については効力未定あるいは無効とする報告がされている。

現在、手術等の観血的処置を行う患者の場合、殆どの施設で前もって肝炎ウイルス等の検査を実施し、患者の感染の有無を確認していると考えられる。

その意味では、肝炎ウイルス等感染患者の手術等を行う際、患者血液による感染防御の方法として、術者が手術時ゴーグル等の眼飛沫感染防御の方策を講じることが第一である。更にB型肝炎ウイルスについては、予防注射を実施することが前提となる。

質問の事例は既にC型肝炎ウイルス感染患者の血液による飛沫汚染があった後であるため、原則として次の処置を行う。

  1. 流水による十分な洗眼を行う。
    消毒薬を使用するとすれば、evidenceはないが、povidone-iodineを使用する。
  2. povidone-iodineによる結膜嚢の洗浄・消毒に20-50倍稀釈イソジンを用いる。血液の付着・飛散による汚染に由来する発症率については、明確にされていないが、少なくとも注射針誤刺入による発症率よりも低いことが予測される。また、口腔・眼などの粘膜への付着・飛散による汚染の方が、創傷部位などの損傷皮膚の場合より発症率は低いと予測される。血液などが付着・飛散した場合、直ちに大量の水道水で洗浄することが重要である。創傷部位や粘膜に汚染血液が付着した場合、感染が成立するか否かは、virus量と接触時間が大きく関与すると考えられているからである。十分に流水で洗浄した後、念のために創傷部位はイソジン原液、眼や口腔は20 倍希釈液で消毒するの報告が見られる。

    従って、消毒剤による洗浄を検討するとすれば、virusに有効であるとされているpovidone-iodine製剤を用いる。povidone-iodineによる結膜嚢の洗浄・消毒には20-50倍稀釈イソジンを用いるとされているため、その濃度を参照する。

virus名 envelopeの有無 薬物感受性
B型肝炎ウイルス
[ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)]

*脂質に対して作用するエーテルや胆汁酸成分はvirusを失活させる。従ってenvelopeを持つvirusはエーテル感受性である。*envelopeを有するvirusは消毒薬に対して感受性である。多くのvirusは56℃・30分でcapsid(殻蛋白)蛋白質が変性して不活化される。エーテル、クロロホルム、フロロカーボン等の脂質溶剤により、envelopeを持つvirusは不活化される。

C型肝炎ウイルス

[フラビウイルス科(Flaviviridae)]

同上

    3.その他、B型肝炎ウイルスは比較的消毒剤抵抗性が強い。WHOはglutaralと次亜塩素酸ナトリウムを推奨しているが、アルコールやpovidone-iodineにも感染性不活化作用があり有効であるとする報告が見られる。

 

[615.28HCV.1994.2.21.古泉秀夫・1999.7.2.第1改訂・2005.9.28.第2改訂]


  1. 神谷 晃・他:消毒剤の選び方と使用上の留意点;薬業時報社,1992
  2. 尾家重治・他:B型肝炎・C型肝炎・エイズに関するQ&A;薬事35(6):1161(1993)
  3. 国立国際医療センター医薬品情報管理室・編:C型肝炎ウイルス汚染時の予防法;FAX.DI.News No.6(1991)
  4. 吉田眞一・他編:戸田新細菌学 改訂32版;南山堂,2002
  5. 小林寛伊・編:改訂消毒と滅菌のガイドライン;へるす出版,2004

局方ブドウ酒の入手法

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:薬名検索・局方葡萄酒・葡萄酒・ブドウ酒・局方ハチブドウ酒

 

Q:局方ブドウ酒の入手法。また、製造中止されているとしたら何年に中止されたのか

 

A:日本薬局方に収載されていた「局方ブドウ酒」は、合同酒精[03(3575)2711]により「局方ハチブドウ酒」として製造販売されていたが、薬効再評価等の課題が生じたため、昭和57年には製造が中止された。

本品の製造が中止されて以後、国内での局方ブドウ酒の入手は困難な状況にあったが、現在、局方ブドウ酒について、中北薬品株式会社[名古屋市中区丸の内3-11-9][連絡先;中北薬品株式会社・島津工場TEL.0567(32)1431]において製造が再開され、平成4年2月を目途に市販の準備がされている。

本品は赤ブドウ酒で、他のブドウ酒との相違点として、有機酸の含有率が高いため、酸味が強く、甘味が抑えられているの報告がされている。アルコール度14%未満、酸化防止剤として亜流酸塩が添加されている。

効能効果及び用法用量として、一般に食欲増進・強化・興奮のために、又は下痢の時などに1食匙又は1酒杯ずつ与えるが、不眠症や無塩食事療法等に用いる。リモナーデ剤に加える場合も多い。

貯法は直射日光を避け、なるべく涼しいところ(15?25℃)に保存する。飲用適温は約20℃。薬価は10mL:23.80円。(1997.4.現在)。

尚、リモナーデの処方例として次の処方が紹介されている。

  赤酒リモナーデ 濃厚赤酒リモナーデ
希塩酸 0.5mL 0.5mL
ブドウ酒 10.0mL 6.5mL
単シロップ 10.0mL 8.0mL
精製水 適量 適量
全量 100.0mL 15.0mL

 

以上1日量1日3回

[714.FD18.615.11WI][1991.10.3.・1999.4.8.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 合同酒精製造課・私信,1991
  2. 中北薬品株式会社・私信,1991
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.222,1991,12,16.より転載

強酸性水の消毒効果と適応部位

火曜日, 1月 1st, 2008

KW:滅菌・消毒・強酸性水・消毒効果・適応部位・強酸性電解水・強アルカリ電解水

 

Q:強酸性水を歯科、婦人科、内科の処置時に使用したいとの依頼があったが、現在判明している殺菌効果及び使用部位等について

 

A:強酸性水は、現在、消毒剤としての承認を得ておらず、消毒剤としての有効性も確立していないため、その適用範囲は自ずから限定されたものである。

現在、強酸性水の適応として公表されているのは、次表の通りである。

分野 強酸性電解水 強アルカリ電解水
農業・ゴルフ場

減農薬・育成促進

  • ハウス作物への散布 (減農薬)
  • 芝への散布 (減農薬)
  • 作物の成長促進
  • 土壌改良
 

衛生管理保全に/クリーンな環境作りに

食品・その他
  • 手洗い
  • 包丁・まな板・厨房器具の洗浄
  • 生鮮食品の洗浄(食品添加物としての使用はできません)
  • 器具・床・設備等の衛生保全
器具の前洗浄

 

強酸性電解水とは「水道水に食塩を微量添加し、電気分解して作られる水である。また、同時に強アルカリ電解水も作られる。

強酸性電解水には、除菌・抗菌作用が見られる。pH2.7以下、酸化還元電位+1100mV以上という厳しい環境を作り、更に溶存塩素(有効塩素:30?40ppm)と溶存酸素(20ppm以上)の存在が、除菌・抗菌作用に相加的に作用すると報告されている。

また、強酸性電解水は、pH2.5?2.7とかなり低値を示すが、pH値の低い(酸性)食品との比較では次表の通りである。

食品名

pH
(AGEC測定)

食品名

pH
(AGEC測定)

ポン酢 1.9 グレープフルーツ 3.1
味醂 2.1 甘夏蜜柑 3.1
レモン 2.1 柚ポン・味ポン 3.3
食酢 2.2 赤ワイン 3.5
コーラ 2.3 ヨーグルト 3.8
レモン果汁(100%) 2.3 ビール 4.1
*強酸性水 2.7 ウィスキー 4.2
フレンチドレッシング 2.8 日本酒 4.4
サイダー 3.1 醤油 4.4

 

有害微生物の除去・抑制効果

強酸性電解水は、pH 2.7以下、酸化還元電位+1100mV以上という、微生物が生存できない環境を作り出す。

本品はB.subtilis以外の菌については作用させた直後より強い除菌力を示した。耐久性の胞子状態にあるB.subtilisに対しては、除菌作用を示すには、10分以上の作用時間が必要であった。

その他、結核菌(M.tuberculosis)に対する除菌効果も弱く、ウイルスのうちエンベローブを持たないDNAウイルス;アデノウイルスには効果がないとする報告も見られる。

なお、強酸性電解水は、次亜塩素酸ソーダと同等以上の細菌の除去・抑制効果を持つことが確認されたとして、次の報告がされている。

本報告は初期個数20000?800万個の各種細菌が除去されるまでの所要時間の測定値を比較したものである。

菌株 強酸性水 次亜塩素酸ソーダ

塩素溶液(pH=2.6)

塩化ベンザルコニウム 水道水
大腸菌 30秒以内 30秒以内 24時間 30秒以内 2分
サルモネラ菌 30秒以内 30秒以内 24時間 30秒以内 2分
腸炎ビブリオ 30秒以内 30秒以内 30秒以内 30秒以内 30秒以内
MRSA 30秒以内 30秒以内 24時間 30秒以内 殺菌されず
カンジダ菌 30秒以内 5分 殺菌されず 10分 30分
ミズムシ菌 30秒以内 5分 殺菌されず ? 殺菌されず

 

安全性

 

強酸性電解水は、化学薬品・農薬と異なり残留性がなく、有機物や土壌に接触すると通常の水に変換する。強酸性電解水活性酸素と有効塩素は自然光(紫外線) や有機物に接触すると速やかに放電、分解し常水に変換する。また、次亜塩素酸ソーダに比較し、同等以上の除菌・抑制効果を示しながらトリハロメタン等の生成をより低い濃度に抑える等の報告がされている。

試験項目 試験法の概要 試験結果
眼刺激性試験 ウサギの眼に強制点眼後、検眼鏡で角膜、虹彩、結膜を観察する。 刺激性無し
単回経口投与試験 ラットに強制投与後、状態観察及び解剖 毒性無し
単回皮膚刺激試験

剃毛したウサギの背部に塗布後、状態観察

刺激性無し
反復皮膚刺激試験 剃毛したウサギの背部に繰返し塗布後、状態観察、病理検査を行う 刺激性無し
突然変異原性試験 (プレインキュベーション法):サルモネラ菌、大腸菌を用いて、変異コロニー数を数える。 陰性

[試験機関:(財)食品薬品安全センター]

 

安定性

 

強酸性電解水は、一般の化学薬品と異なり、薬物の残留性がない反面、その効果の持続は短く、保存管理に十分な配慮が必要である。特に有効塩素は揮発性がありまた光により分解を起こす。強酸性電解水は、密閉容器に入れ、暗所に保管することが必要である。

また、強酸性電解水による実際的な処理において、その被処理物が有機物である場合が殆どで、更に対象とされる菌株が脂質、蛋白質、炭水化物等の間隙に存在するため、試験管内テストの結果を直ちに再現し、完全に菌を除去・抑制することは困難である。本品の優れた特性を十分に活用するためには、適切な接触法、適切な処理時間、その他目的にあった処理技術の確立が重要である。

 

保存条件

 

  1. 遮光・気密容器に保存:約1カ月(溢れるほどに入れ蓋をする)
  2. 容器の蓋の開閉を繰返した場合:1?10日(開閉の回数が少ないほど長く保存ができる)
  3. 洗面器:約8時間(開放条件での保存は行わない)
分野 目的 用途
医療 病原体の感染予防(肝炎、エイズ、MRSA)

消毒(手洗い・咳嗽) 、床・壁・医療器具の洗滌

食品

サルモネラ菌等汚染防止

生鮮(カット野菜等)食品、食品加工洗滌

衛生管理

手洗い(寿司・ホテル) 、厨房(機器)洗滌

農業

減農薬植物栽培の病気予防土壌改良

野菜栽培(施設園芸)、ゴルフ場、ビニールハウス殺菌噴霧

健康 美容・理容 衛生維持
  衛生維持

便器の洗滌・消毒

以上の各報告から判断して、現状では、従来使用している消毒剤に代えて本品単独で消毒することは問題があると判断する。あくまで消毒剤による消毒の補助として、考えるべきである。

その他、提案されている強酸性電解水・強アルカリ電解水の使用法

強酸性電解水 強アルカリ電解水
調理用

*蕎麦・饂飩・スパゲティーの茹で水(こしが強くなる)*天麩羅の衣作(衣を溶く水に使うと、カラッと揚がる)*茹で卵(早く仕上がり、中身が飛び出さず殻が剥きやすくなる)

調理用

*御飯の炊き水(従来より水を少し減らす。時間が短縮でき、おいしく炊きあがる)*味噌汁(だしと味噌が少量ですみ、おいしくなる)*スープ(材料の味が一段と際だち、おいしくなる)*野菜の灰汁抜き(蕗、ほうれん草、蓬、ゼンマイ、蕨、牛蒡、玉葱等の灰汁抜き)*緑色野菜の茹がき加工飲料*お茶(タンニン酸が中和され、渋みが少なくなり、色が鮮やかで、香りが高い)

*コーヒー(まろやかで香りが高い。アイスコーヒーは特に苦みがなく味はまろやか)

*紅茶(色が鮮やかに出て、味をまろやかにする)

*ウイスキー(水割りに用いる。まろやかで口当たりがいい)

*製氷

[FD36.615.28ST][1995.12.28.・1999.9.1.一部修正.古泉 秀夫]


  1. OASYS BiOパンフレット:旭硝子エンジニアリング株式会社,1994.11.[〒290 千葉県市原市八幡海岸通り38]
  2. 強酸性イオン水技術資料:旭硝子エンジニアリング株式会社機能商品部,1993.10.1.
  3. 超酸化水:塩野義製薬株式会社,1994.3.
  4. 塩野義製薬株式会社社内資料,1994.3.
  5. 超酸化水生成関連装置の資料:塩野義製薬株式会社,1994.3.
  6. )国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1402,1996.10.21.より転載