Archive for 2月, 2008

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『I先生からの手紙』

金曜日, 2月 22nd, 2008

                                                                        鬼城竜生

 

I先生から絵葉書を頂戴した。左の背後に電飾された東京タワーが聳え立ち、緑青色にライトアップされたプリンスホテルが俯瞰的に写し出されている絵葉書である。絵葉書の画面を眺めているうちに、先ず最初に胸に来たのは、この写真は何処から写したのか ということである。高い位置から撮らなければこのような写真を撮ることは出来ないが、他の建物に邪魔されずにこのような写真が東京タワー-001 撮れるところが、あの立て込んだ地域の何処にあるのだろうかという疑問である。

次に唐突に思いが至ったのは、そういえば東京タワーは遠くから眺めたことはあるが、側に行ったこともなければ登ったこともないということである。

まあ、一度位は行っておくかというので、1月16日(水曜日)にカメラ片手に出かけた。

大江戸線大門駅で降り、日比谷通りを横切って増上寺(三縁山広度院増上寺)の庭に入り、増上寺の建物を取り込んだ東京タワーの写真を何枚か撮した。

その後、時間としては、昼を過ぎていたので、東京タワーに登る前に、眼に付いた増上寺の境内にあったお休み処(芝縁)で、覗いてみたら偉く閑散としていたので、昼飯を食うことにして入ってみた。入ったは良いが、注文した鰊蕎麦に口を付けるまでは、失敗したかなと若干心配していたが、妙なところにある店の割には、真っ当な蕎麦が出てきたので安心して食うことが出来た。

店を出ると千躰子育て地蔵を左手に見て、一般道が通っており、それを通り抜けると東京タワーに出る。東京タワーでは大展望台東京タワー-002 (150m)と特別展望台(250m)の展望券を販売していた。どうせ番度登りに来るところではないということで、両方まとめて面倒を見ることにしたが、人の建て込んでいる日では上に揚がるのは相当手間暇かかるだろうと思われたが、流石に平日のこともあり、足 止めをされることなくエレベータに乗ることが出来た。大展望台で下りて一回り周りを見学し、次に特別展望台行きのエレベータに乗り換えて、250mの位置にある特別展望台に揚がった。残念なが ら快晴とはいかず、パンフレットに書かれている富士山を見るほど遠方の風景を見ることは出来なかったが、それでも海の見える風景は、大きな広がりを見せて眼に迫ってくるため、納得をするものであったが、写真が撮れたかどうかは別の話である。何せガラス越しに撮る写真である、完成度が低くても仕方がない。

早々に下りてきて東京タワー水族館に入ってみたが、世界初の観賞魚専門の水族館として1978年に開館したということであるが、館内に生臭系の臭いが充満しているのには些か参った。他の人は平気な顔をして見学していたようであるが、あれはそういうもんだと思って見学していたのではないかと思うが、とてものことに長居は出来なかった。もう少し換気の工夫はした方がいいのではないか。

帰り際に再度増上寺の境内に入り『徳川将軍家墓所』を拝見させていただき、大殿の中を見学させていただいた。その時、外国の子供東京タワー-003達が大勢、先生に連れられて見学して歩いていたが、何か特別の謂われがあるのかどうか。境内にグラント杉なるものが植えられており、明治12年(1879年)、アメリカ合衆国第18・19代大統領グラント将軍が訪日の際、参拝記念に植樹されたものの説明がされており、この関係で外国人学校の小学校の子供達が、見学に来るのかもしれない。
帰りは芝公園の中に足を踏み入れたが、紅葉滝なる滝が流れ落ちていた。都会のど真ん中に、小なりとはいえ滝を維持するのは  大変なことと思うが、関係者の努力に拍手を送る次第。

大江戸線大門駅に戻る途中、居酒屋“秋田屋”によって燗酒1本(2合徳利)とお一人様1本限りの『タタキ』と『タン塩』で一杯やったが、本日の歩数は11,272歩ということである。

ところでI先生の絵葉書に『八十路に酒のみ遊ぶ友が好し』、『年老いて真実話せるガキ大将』の二句が書かれていたが、I先生は川柳作家である。何時もお手紙を頂く度に、幾つかの句が書かれているが、現在の世相を洒落のめすという句風より、先生御自身の心象風景を切り取って見せてくれるとい句風であると拝察させていただいている。

最も故地虎は川柳は全く駄目で、へぼ句を捻る程度であるから、正確な評価は出来ないが、I先生の作品を読ませていただいているうちに、その辺の見当が付くようになったということである。

                                                                  (2008.1.31.)

適応外使用『フィブリン糊』

金曜日, 2月 22nd, 2008

                                                                  医薬品情報21
                                                                        古泉秀夫 

薬害C型肝炎問題で、手術時の縫合用接着剤として使用された『フィブリン糊』で感染したとみられる患者2人が、国などに対する損害賠償請求訴訟に加わったことが、7日終わった。血液製剤フィブリノゲンによる感染で提訴した原告は170人以上いるが、この製剤に別の薬品を加えて作るフィブリン糊の使用による提訴は初めて。『糊』は心臓外科などで、フィブリノゲン使用者の3分の1以上に当たる7万9000人に使われたと推定されているが、被害調査も遅れている。患者は「潜在的な感染者が多数いるはず、早急な調査と救済を」と訴えている[読売新聞,第47328号,2007.12.7.]。

フィブリン糊:フィブリノゲンに他の複数の製剤を配合して使う。1981年頃から1987年頃まで外科、心臓外科、脳外科、整形外科などで縫合時の止血用として使われた。旧ミドリ十字は19人の感染例を把握していた1989年に「『糊』による感染者はゼロ」と厚生省(当時)に虚偽報告。1988年以降他社がキットとして発売したが、これによる感染報告はない。

東京都内の私立病院で心臓手術時に縫合用接着剤『フィブリン糊』を930人に使い、このうちの少なくとも57人がC型肝炎ウイルスに感染していることが12日分かった。薬害C型肝炎集団訴訟の被害者救済法では『糊』も血液製剤「フィブリノゲン」と同様に救済の対象になるが、原告207人のうち『糊』を使用した人は2人に止まっている。『糊』による感染症は厚生労働省の調査でも50人弱しか判明しておらず、実態把握が大幅に遅れていることが改めて浮き彫りになった。

主に産科の出血時に使われたフィブリノゲンとは異なり『糊』は薬事法で承認された使用方法ではなかった。しかし、発売元の旧ミドリ十字は、小冊子を作るなどの広く使用法を紹介し、心臓外科、整形外科、脳外科などで止血用や手術時の縫合用(縫合時の縫い目の封鎖用)として幅広く使われた。厚生労働省は『糊』の使用者を7万9000人と推計している[読売新聞,第47364号,2008.1.13.]。

手術時の縫合用接着剤として使用された『フィブリン糊』が、火傷や鼻血の治療、美容外科手術など幅広い分野で使用されていた実態が、医師の証言などから判ってきた。2008年1月11日に成立した薬害C型肝炎被害者救済法の救済対象に含まれるが、自分の治療に使用されたこと自体を患者側が知らないことから、被害実態の調査が遅れているとされる[読売新聞,第47365号,2008.1.14.]。

しかし、『フィブリン糊』の使用は適応外使用であり、使用の実態は、医師以外の誰にも判らない。従って、医師が使用した患者を記憶していなければ、患者側は全く判らないということになる。感染の恐れがあるのは1981年から1987年頃までで、旧ミドリ十字が製造販売したフィブリノゲンを原料にして調製した『糊』ということである。その間に使用した記憶がある医師は、可能な限り患者の掘り起こしに努力すべきであり、この時期に観血的処置を受けた記憶のある人は、検査を受けてみた方がいいのではないかと思われる。

更に旧ウェルファイド社が調べた『フィブリン糊』の使用された疾患名と用途が次の通り報告されている。

脳腫瘍、脳出血、角膜移植、鼻血、中耳炎、歯肉出血、気胸、大動脈瘤、心臓手術、ペースメーカー埋め込み、悪性腫瘍、胃潰瘍、子宮筋腫、骨折、アキレス腱接合、胆石症、火傷、皮膚移植、神経縫合、椎間板ヘルニア等』

これらの疾患名で治療を受けた記憶のある人は、治療を受けた医療機関に積極的に相談すべきではないか。また医療機関も、患者からの相談があれば、丁寧な対応を取るべきである。

ただ、実際には、更に広い範囲で使用されていたのではないかと思うが、果たしてどうなんだろうか。病院によっては、医師の依頼を受け、『院内特殊製剤』として薬剤部の製剤室で調製していた可能性もある。ただし、1981年頃ということであれば、既に26年が過ぎている。あるいはその当時製剤に携わっていた薬剤師は、既に退職している可能性もあり、製剤伝票も保存はされていないと思われる。退職者にも声を掛け、兎に角使用していた事実を確認することが先ず最初にすることで、そこから手繰り寄せなければ、全体的な様相を把握することは出来ないのかもしれない。

兎に角、適応外使用で使用されたということである。使用実態を正確に把握するためには、医療機関の努力無しには調査は完結しない。

                                                                    (2008.1.23.)

ワクチン接種歴

金曜日, 2月 22nd, 2008

魍魎亭主人

 

北里大学では来年4月に入学する学生約1,700人に対し、はしか、風疹(ふうしん)の免疫の有無を確認させ、免疫が不十分な場合、自主的なワクチン接種を要請するなど徹底した対策を実施する方針を決めた。大学の一部では、入学後に免疫検査を実施しているところもあるようであるが、入学前に接種を求めるのは異例。はしかが流行する4-5月までにワクチンの効果を高める狙いがある。新入生全員に、

(1)はしか、風疹などワクチン接種証明書を入学時に提出する
(2)はしか、風疹のワクチン接種歴が1回以下の場合、入学前に検査を受け、免疫がない場合

ワクチンを接種するよう通知するというものである。

大半の学生はワクチン接種は1回のみと見られる。入学後の健康診断でも血液検査を行い、場合によっては追加のワクチンも接種する。北里大はこれまで医学部など病棟での実習がある4学部で入学後の免疫検査、ワクチン接種を実施してきたが、今年5月に4学部以外の1年生を含む2人がはしかを発症。全7学部の1年生に休講措置を取ったという[読売新聞,第47332号,2007年12月11日]。

傘下に病院をもち、病院実習をしなければならない大学であれば、当然の配慮ということであるが、予防接種を強制されたことで、事故が発生した場合の対応策等は考えておられるのか。甚だお節介な話だが、今後、病院実習が義務付けられる薬科大学も、病院実習をする前に、予防注射歴を確認し、免疫低下者には予防接種を強制するとすれば、その辺の問題が気になるのである。予防注射による副作用の発現はさておくとして、強制的な予防注射が必要とするのであれば、国の責任で行うべきではないのか。

ところで、突然『貴方は破傷風ワクチンを接種してますか』ときかれて、明確に回答できる方々がどの程度いるのであろうか。

破傷風ワクチンが特殊すぎるというのであれば、『麻疹ワクチン』でもいい。

摂取したことがあるのか無いのか。乳幼児の頃のワクチン接種の記憶など、殆どの方々が記憶中枢の外に脱落させてしまっているのではないか。特に現在中年以上、あるいは団塊の世代といわれる世代の人達にとっては、そのような情報は正確に記憶していないというのが実情ではないかとおもわれる。

最も、突然この様な話を持ち出されても、どの辺に話の意図があるのか分からないということになるのかもしれないが、先日知り合いが怪我をして熱が下がらないということから、破傷風ではないのかという話になり、破傷風ワクチン接種の記憶にまで立ち至ったというわけである。

今後、予防医学を充実させるとすれば、感染症対策として、間違いなくワクチン接種の重要性が増す。それに従って種々のワクチンを接種する機会が増えることは間違いないと思われるが、接種したワクチンの種類と、再接種の時期を当人が明確に認知する手立てが取られていないというのは問題ではないか。電子化した健康保険証のカードの中に、個人の病歴やワクチン接種歴を登録する等ということは出来ないのかどうか。

勿論、盗難対策や紛失時の対策は十分にしなければならないが、二重、三重の検査等医療費の無駄を省くためにも、通院時に電子化した情報を持っていくという事は必要になるのではないか。

                                                                    (2008.1.1.)

『アルツハイマー病ワクチン』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・ワクチン・アルツハイマー病・AβN-20・amyloid-β・アミロイド-β・点鼻用ワクチン・AN-1792

 

Q:アルツハイマー病のワクチンが開発中と聞いたが、それはどの様なものか

A:アルツハイマー病ワクチンについて、次の報告が見られる。

アルツハイマー病ワクチン経口剤AβN-20(化血研-ジェノラックBL)は、アルツハイマー病(Alzheimer disease)の原因となる老人斑構成成分であるamyloid-βを乳酸菌を担体として組込んだAlzheimer diseaseの治療・予防薬である。
アルツハイマー病の病態について、amyloid-βの凝集・沈着による老人斑の形成が原因であるとするアミロイドカスケード仮説が有力であるが、この仮説をもとにアルツハイマー病の新しい治療法としてのワクチン療法が注目されている。ワクチン療法の目的はamyloid-βをワクチンとして投与し、それに対する抗体を体内で産生させ、抗体が老人斑を除去し、更に分泌されたamyloid-βの凝集・沈着を抑制することにより神経細胞の脱落を防止しようとするものである。
amyloid-βの液性免疫惹起部位を含む断片をコードするDNAをもとに、微生物を形質転換させ、AβN-20を発現する発現ベクター構築した。その微生物として乳酸菌を使用した。AβN-20の懸濁液各投与量をマウスに週7日間に6回経口投与し、4週間継続投与した。血液中の抗体産生を確認するため、実験開始前、投与開始から3週間後、5週間後、6週間後、7週間後の計5回採血した。その結果、AβN-20投与マウス群では、amyloid-βを発現しないベクターのみを投与したコントロール群に比較して血清中の有意な抗体上昇が認められた。

アルツハイマー病点鼻ワクチン(ディナベック-長寿医療センター)は、センダイウイルスベクターを利用したアルツハイマー病治療用点鼻ワクチンである。センダイウイルスベクターにアルツハイマー病の原因となる蛋白質amyloid-βの一部を作るRNA(リボ核酸)を組込む。これを鼻から吸入すると細胞に入り込み、amyloid-βに似た物質を作り始める。その結果、人体の免疫機能が働いてamyloid-βの固まりを除去する抗体を生み出し、症状を改善する仕組み。マウスへの1回経鼻投与で、脳の前頭葉や頭頂葉等でアルツハイマー病特有の老人斑が大幅に減少することが確認された。髄膜脳炎等の副作用は認められなかった。開発機関2009年を目途に臨床開始を目指している。センダイウイルスベクターは細胞質で働くため、外来の遺伝子が挿入される事により起きる副作用は回避されると報告されている。

Aβ42ワクチン(Novartis Pharma-東京都神経科学総合研究所):松本陽・分子神経病理学部門長らはアルツハイマー病の予防や治療につながる安全性の高いワクチンを開発した。DNA(デオキシリボ核酸)を運び役に使い、病気の原因と疑われる物質の増加を抑える遺伝子を患者の体内に導入する。スイスの製薬大手ノバルティスと共同で動物実験に成功、早期の臨床試験開始を目指す。アルツハイマー病は脳に「amyloid-β」と呼ぶたんぱく質の小片が蓄積して老人斑と呼ぶ染みができ、神経細胞が死んで起きるとされる。最近の研究で、amyloid-βを体内に入れると免疫反応が起こり、脳内に蓄積したamyloid-βの量が減ることが分かっている。都神経研の松本部門長と大倉良夫研究員らはこの仕組みに着目。amyloid-βを作る遺伝子を患者の体内に入れる遺伝子治療技術を応用し、穏やかな免疫反応を起こすワクチン療法を考案した[2004年9月14日/日経産業新聞]。Aβ42ワクチンはAβペプチドワクチンに替えて、プラスミドと呼ぶ環状DNAにamyloid-βの遺伝子を組込んだワクチン(非ウイルス性AβDNAワクチン)を開発したもの。遺伝子治療で一般的なウイルスベクターを使う方法よりも遺伝子導入率が弱く、繰返し注射が必要だが、ウイルス異常増殖や白血病などの副作用の危険が少なく、安全性が高いと報告されている。

AN-1792(Elan社-Wyeth社):2001年9月から欧米の計5カ国で行われていたアルツハイマー病ワクチンAN-1792のフェーズIIの臨床試験が中止されたことが分かった。3月1日に、臨床試験を共同で実施していたアイルランドのElan社と米国のWyeth社が、プラセボ群を含む360例のうち15例の患者に、重篤な脳炎症状の副作用が出現したため、治験を中止すると正式に発表した[日経メディカル 2002年4月号]。

 

1)研究開発Report;New Current,18(3):51(2007.2.1.)
2)治験薬一覧表;New Current,17(28):27(2006.12.20.)

                                               [011.1.ALZ:2007.3.23.古泉秀夫]

「オレンジベンジンについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:院内製剤・特殊製剤・オレンジベンジン・石油ベンジン・etroleum Benzin・オレンジ油・Orange Oil・sweet orange oil・bitter orange oil

 

Q:『オレンジベンジン』なるものが、絆創膏痕の清拭用に用いられていると聞くが、これはどの様なものか

A:院内製剤として調製し、使用しているものと思われるが、処方内容については公表された資料の入手ができないため、調査不能である。
ただし、使用原材料はいずれも局方品として市販されているので、各使用薬物の内容について以下に紹介する。

[日局]石油ベンジン(Petroleum Benzin): 本品は石油から得た低沸点の炭化水素類の混合物である。

本品は無色澄明の揮発性の液で、蛍光がなく、特異な臭いがある。本品はエタノール(99.5)又はジエチルエーテルと混和する。本品は水に殆ど溶けない。本品は極めて引火し易い。

[貯 法]火気を避け、30℃以下で保存する。気密容器。

[薬効薬理]局所刺激作用が強く、深部の疼痛に対するcounter-irritantとして皮膚に塗布することがある。ジギタリス、バッカク、ホミカ等の生薬の脱脂の他、甲状腺やその他の臓器の脱脂に利用される。軟膏を塗布した皮膚の清拭にも使用される。脂肪、樹脂などの溶剤として用いられる。

[副 作 用]大量の誤飲又は吸入により15分から1時間くらいの間に、急性胃腸炎、嘔吐、眩暈、錯乱、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼ、肺水腫などの症状が現れる。汚染環境に長時間曝露されるときには慢性中毒に陥り、眩暈、頭痛、四肢麻痺、神経痛、全身の衰弱、貧血、記憶力の減退などの他、肝、腎や真菌の脂肪変性、肺炎などの病変が認められる。

[製 剤]複方チアントール・サリチル酸液

[日局]オレンジ油(Orange Oil):本品はCitrus属諸種植物(Rutaceae)の食用に供する種類の果皮を圧搾して得た精油である。集油率は0.3-0.5%である。本品は黄色-黄褐色の液で、特異な芳香があり、味は僅かに苦い。本品は等容量のエタノール(95)に濁って混和する。

[貯 法]遮光して保存する(主成分のlimoneneは不安定で、光や空気によって酸化、重合し易く、特有の香味が変化し易い)。気密容器。

[名 称]オレンジ油には2種類有り、Citrus sinensis(L.)Osbeckより得られる精油をsweet orange oilといい、Citrus aurantium L.subsp.amara L.より得られる精油をbitter orange oilという。生産量はsweet orange oilの方が多い。
[成 分]主成分はd-limonene約90%であり、その他テルペン類、少量のdecylaldehyde、d-linalool、citral等を含む。果皮を圧縮して得たオレンジ油は、果皮から移行した不揮発性成分(フロクマリン類など)を含んでおり、冷蔵中に結晶として析出することがある。水蒸気蒸留して得たオレンジ油は、それらの成分を含まない変わりに、風味が劣る。

[適 用]賦香料

[製 剤]加香ヒマシ油

[製 法]加香ヒマシ油

ヒマシ油 990mL
オレンジ油            5mL
ハッカ油              5mL
全量               1000mL
以上を秤取し混和して製する。

加香ヒマシ油の処方に配合されているオレンジ油の配合率は0.5%である。なお、オレンジ油の投与経路別最大使用量は、経口投与0.3mL、一般外用剤10mg/gとする報告も見られる。

その他、市販されている洗剤中のオレンジ油の含有量を0.03%とする資料がみられる。これは100mL中にオレンジ油0.03mLが加えられていることを意味する。

従って、石油ベンジン100mL中にオレンジ油0.03mLを加え、着香状態、絆創膏痕の除去状態を検証しながらオレンジ油量を調整することをお勧めする。

但し、石油ベンジンの使用は、皮膚過敏症を惹起するの報告がされているため、使用に際し注意が必要である。

[貯 法]遮光して保存する。気密容器。

 

1)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
2)日本医薬品添加物事典;株式会社薬事日報社,2005 

  [014.16.ORA:2007.3.12.古泉秀夫]

『トリクロサンについて』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:滅菌・消毒・トリクロサン・triclosan・イルガサンDP-300・固形石鹸・液体石鹸・デオドラントスプレー等体臭防止剤・CAS-3380-34-5

 

Q:殺菌消毒薬トリクロサンについて

A:トリクロサン (triclosan) は、白色の粉末で僅かに特異臭がある。mp:55-58℃。本品は水に溶け難く、アルカリに溶ける。酸、アルカリに安定で、200℃で安定。triclosanは次亜塩素酸やジクロルイソシアヌール酸などに対しては不安定である。またtriclosanは紫外線や高温下に長く放置すると変色するが、分解は殆ど無いとされる。化学名:2,4,4′-trichloro-2′-hydroxy diphenyl ether、IUPAC:5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(5-chloro-2-[2,4-dichlorophenoxyl]phenol)。分子式:C12H7Cl3O2=289.5。CAS-3380-34-5。

triclosan(イルガサンDP-300)は、 ビスフェノール構造をもった抗菌・抗真菌作用を示す物質で、 熱に安定な性質のため、 手指消毒用の石鹸やローションから歯磨き粉等のヘルスケア用品をはじめ、 子供用玩具、 台所用品や手術用ドレープなどのプラスチックや布地などに、 幅広く使用されている。triclosanは他の消毒剤と同様に、 細菌側の多種類のターゲットに作用して効果を発揮すると考えられてきたが、 近年、 その作用機序はenoyl-acyl carrior protein reductase(FabI)をターゲットとする脂肪酸合成阻害にあることが示された。細菌による薬剤耐性獲得機序は、 FabIの変異や過剰発現によるもの、 triclosanを含む多剤排出ポンプによるもの、 triclosanを分解することによるものがあるが、 triclosan耐性が他の薬剤と交差耐性もつ可能性も指摘されている。

ネオグリンス(丸石製薬)は医薬部外品原料規格に収載されている殺菌剤triclosan(イルガサンDP-300)を0.3w/v%含有しており、皮膚の殺菌・消毒及び洗浄に適している薬用石ケン液である。

 
ネオグリンスの適応は

 
○ 医局・薬局・病室等で直接医療に従事する者の手指の殺菌・消毒
○ 手洗所等における手指の殺菌・消毒
○ 入浴・シャワー時の全身洗浄
○ 体臭や汗臭の予防

等とされている。

適用範囲:殺菌消毒剤:固形石鹸・液体石鹸(一般用:デオドラント石鹸、薬用石鹸、工業用:病院用・食品工場用・公衆衛生用の石鹸)、デオドラントスプレー等体臭防止剤、衣料品の衛生加工、医療用の洗剤、衛生仕上げ剤、業務用繊維製品の殺菌。

抗菌性:グラム陽性菌、グラム陰性菌に有効であるが、グラム陰性菌の中には効果の低いものがある。

作用機序:低濃度で細菌に吸着し、栄養物等の摂取を妨げる。高濃度では細菌の原形質膜を破壊する。

使用濃度:薬用石鹸・デオドラント石鹸・洗顔剤:0.3-0.5%・ デオドラントスプレー等体臭防止剤:0.15%

抗菌性(MIC)

細菌名 濃度
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌) 0.1ppm以下
Escherichia coli(大腸菌) 0.3ppm以下

 

安全性:[経口(LD50)]マウス:4500mg/kg、イヌ:5000mg/kg、ウサギ:9300mg/kg。光毒性、発癌性、再生試験に対する毒性は認められていない。

取扱い上の注意:特にないが、皮膚や眼に触れた場合は、流水でよく洗い流すこと。
廃棄処理の方法:廃水中のtriclosanは汚泥に吸着し除去される。廃水中のphenolの規制を受ける。30ppm(phenol 5ppmに相当量)

triclosan自体は常温ではダイオキシン(dioxin)に化学変化することはないと考えられているが、dioxinの発生が懸念されるされるような低温焼却炉では、triclosanがdioxin類に転化する可能性が示唆されている。

 

1)日本防菌防黴学会事典編集委員会・編:防菌防黴事典;日本防菌防黴学会,1986
2)Y’sSquare:http://www.yoshida-pharm.com/text/05/5_4_3.html2007.3.2.
3)THE Merck Index,14th.,2006
4)ネオグリンス®添付文書,2006

 

[615.28.TRI:2007.3.5.古泉秀夫]

「アルツハイマー病治療薬tesofensineについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・テソフェンシン・tesofensine・NS2330・アルツハイマー病・パーキンソン病

 

Q:アルツハイマー病治療薬tesofensineについて

A:テソフェンシン(tesofensine)はデンマークのニューロサーチ社(NeuroSearch社)が開発したNA(noradrenaline)再取り込み阻害剤に分類されている。tesofensineは脳神経内ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンの3種の再取込阻害作用を有するアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病治療薬である。acetylcholine esterase阻害作用を有する既存薬とは作用の異なる薬剤で、軽度アルツハイマー病患者32例でのプラセボ対照第II相臨床試験では、アルツハイマー病評価スケールの認知項目であるADAS-Cogは用量依存的に改善され、投与終了後2週間目でも効果が維持されていた。また忍容性も良好であったと報告されている。

早期又は進行期パーキンソン病患者515例での第II相臨床試験では14週間投与した結果、早期患者への単独投与では、14週目のエンドポイントは数値的にも改善が認められたが、統計学的にはプラセボとの有意差に達しなかった。

治験記号:NS2330(デンマーク・NeuroSearch社)

2002年独・Boehringer Ingelheim社は、tesofensineの共同開発でNeuroSearch社と合意したが、2005年8月10日、アルツハイマー病患者とパーキンソン病患者を対象とした第II相臨床試験で、予め設定した基準をクリアできなかったことから、共同開発者であるBoehringer Ingelheim社は、アルツハイマー病患者を対象にしたNS2330の開発を中止すること決断した。但し、2006年1月25日、NeuroSearch社は、NS2330の開発を続行すると発表した。NS2330の共同開発者であるBoehringer Ingelheim社は、NS2330の権利を返還した。

 

1)治験薬一覧表:New Current,17(28):25(2006.12.20.)
2)Bio Today;http://www.biotoday.com/view.=11292,2007.2.14.

 

[011.1.TES:2007.3.5.古泉秀夫]

「アルツハイマー病治療薬isproniclineについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・イスプロニクリン・ispronicline・アルツハイマー病・認知症

 

Q:アルツハイマー病の治療薬isproniclineについて

A:イスプロニクリン(ispronicline)はアストラゼネカが開発中のアルツハイマー病・認知症治療薬である。

別名:AZD3480、RJR-1734、TC-1734、TC-1734-112。[CAS-252870-53-4]。

isproniclineは米・targacept社(ターガセプト社)が創製した脳選択的α4/β2ニコチン性アセチルコリン(ACh)受容体パーシャルアゴニストで、アストラゼネカ社とtargacept社が2005年12月に全世界での共同開発・販売契約を締結した。

2006年3月本剤は加齢に伴う記憶障害患者に対する第II相臨床試験において有効性が確認されたの報告が見られる。既に2004年には加齢に伴う記憶障害患者、軽度認知障害の患者において安全性の確認もされている。

本剤は経口投与で、大脳皮質からのACh放出を持続的に促進し、acetylcholine esterase阻害剤との相加又は相乗効果が示唆されたとされる。また本剤は、動物モデルで神経保護効果、抗鬱効果を発揮した。毒性試験では遺伝毒性、細胞毒性は認められていないとされている。

現在までに行われた第I相臨床試験において、何れの用法・用量でも忍容性は良好で、主な有害事象は軽度-中等度の眩暈、頭痛であった。また臨床検査値、心血管パラメータの異常変動も認められなかった。また第II相臨床試験においても重篤な有害事象や有害事象による脱落は殆ど無く、主な有害事象は眩暈、頭痛であったとされている。

 

1)研究開発Report;New Current,18(3):48-50(2007.2.1.)

   [011.1.ISP:2007.3.5.古泉秀夫]

『アルツハイマー病治療薬ipidacrineについて』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・ipidacrine・塩酸イピダクリン・amiridine hydrochloride・塩酸アミリジン・ipidacrine hydrochloride hydrate・塩酸イピダクリン水和物・アルツハイマー病・AD治療薬・NIK-274・CAS-90043-86-0

 

Q:アルツハイマー病治療薬ipidacrineについて

A:ipidacrine hydrochloride(塩酸イピダクリン)は、acetylcholine esterase阻害作用、Kチャンネルブロック作用及びNa、K-ATPase阻害作用を持つ薬剤として創薬された。

現在までに得られたipidacrineのコリン作動性神経系を賦活する機序としては、acetylcholine esterase阻害作用が考えられている。本品は近年学習・記憶障害を改善するための新たな作用機序として、長期増強現象を起こす作用を有している。またipidacrineは、米国でアルツハイマー病治療薬として承認されているtacrineに見られる肝障害が、治験段階では殆ど認められていない。

別名:ipidacrine hydrochloride hydrate(塩酸イピダクリン水和物)(日研)。

治験記号:NIK-274。

CAS-90043-86-0。

C12H16N2・HCl・H2O=242.75。

化学名:9-amino-235678-hexahydro-1H-cyclopenta(b)quinoline hydrochloride hydrate

本品は軽・中等度アルツハイマー型痴呆(AD:Alzheimer disease)改善又は進行抑制、特にAD患者の日常生活活動能力改善剤として有用である。本品は学習促進・記憶増強作用を有し、AD治療薬として有用である。またacetylcholine esterase抑制、筋肉・神経線維に対する直接作用による末梢神経系統の興奮刺激剤としても有用である。

更に本品は旧ソ連保健省により『amiridine hydrochloride(塩酸アミリジン)』として認可されており、効能・効果は「成人では、末梢神経系疾患(神経炎、多発性神経炎、多発性神経症、多発性神経根神経症)、球麻痺及び不全麻痺、運動機能障害を伴う中枢神経系器質性障害の回復期、筋無力症と各種筋無力症候群、脱髄性疾患の総合療法、AD及びアルツハイマー型老年痴呆、また産科では人工破水又は分娩前羊水流出後の陣痛促進にも用いられる」とされている。

臨床試験段階の副作用としては易怒、食欲不振、攻撃性、妄想、譫妄、腹痛(萎縮性胃炎)、嘔気・嘔吐、赤血球数増加、ヘマトクリット増加、薬疹が認められた(45mg投与群)。食欲不振、下痢、腹痛、全身倦怠感、嘔吐が認められた(75mg投与群)。入院を要した重篤な副作用としては譫妄、急性肺炎、食欲不振、脱水症状、性欲亢進が認められたと報告されている。

本品は1987年に臨床試験を開始し、1989年から第II相臨床試験、1992年9月から第III相臨床試験を開始した。しかし、“プラセボとの有意差が申請には不十分”として、1995年7月に試験のやり直しを決定、試験を実施したが、現在では開発が中止されている。

 

1)アルツハイマー病治療薬の現在と未来;クリニカルプラクティス,19(1):24(2000.1.)
2)アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する抗痴呆剤-塩酸イピダグリン;New Current,14(13):10-15(2003.6.10.)
3)特許情報;New Current,15(26):45-46(2004.12.1.)

  [011.1.IPI:2007.2.20.古泉秀夫]  

『アルツハイマー治療薬metrifonateについて』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・metrifonate・メトリフォネート・Ba-a9826・トリクロルホン・trichlorfon・アルツハイマー病・有機リン製剤

 

Q:アルツハイマー病治療薬metrifonateについて

A:metrifonate(メトリフォネート)は、コリンエステラーゼ阻害薬である。本品は有機リン化合物であり、1952年以降、殺虫剤や住血吸虫症の治療薬として数百万人の患者に投与されてきた。

分類:有機リン製剤。

治験記号:Ba-a9826(バイエル薬品)。metrifonateは生体内で活性代謝物dichlrvosに変換されて、AChE(acetylcholine esterase)阻害作用を示す。

別 名:トリクロルホン(trichlorfon)、chlorofos、DEP、DETF、dipterex、dimethyl-1-hydroxy-2,2,2-trichloroethanephosphonate、O,O-dimethyl(2,2,2-trichloro-1-hydroxyethyl)phosphonate、metrifonate、foschlor、trichlorofon、trichlorphon。CAS-52-68-6、CAS化学名:dimethyl 2,2,2-trichloro-1-hydroxyethylphosphonate。

trichlorfonは低毒性の有機リン殺虫剤である。白色の結晶。水に溶ける。浸透移行性が強い。蒸気圧が高く、残効性が低い。殺虫作用には比較的選択性がある。人畜毒性はマラチオンと同程度である。アルカリ性の条件で分解してDDVP(dichlrvos)になる。米、野菜、果実、茶などに使用。trichlorfonはmetrifonateの名前で、ヒトのビルハルツ住血吸虫(Schitosoma haematobium)症の治療に用いられていたことがあり、dichlrvosの発生源と見なされている。

農薬として使用されたtrichlorfonは土壌中で速やかに分解し、一般的には、使用後1カ月以内に、無視し得る濃度にまで減少する。また、水中ではpH5.5以下で比較的安定である。アルカリ側のpHでは、trichlorfonはdichlrvosに変化する。微生物及び植物はtrichlorfonを代謝すると考えられるが、最も重要な排除経路は非生物的な加水分解である。

metrifonateは、ヒト体内で代謝を受けて活性型となりcholinesterase(ChE)となる、いわゆる長時間作用型のプロドラッグとして働く。半減期は約2カ月と、効果は持続的である。典型的なコリン性副作用、全般的臨床スコア、認知機能ともに改善しているという結果が出ている。その他、非可逆性のAChE阻害剤として開発されたmetrifonateそのものはプロドラッグであり、体内で代謝を受け、活性型となり、AChE阻害作用を持つ。その活性型の半減期は60日と長いとする報告も見られる。

metrifonateは、新たな長時間作用型のAChE阻害薬。本剤の患者のADLに対する影響を検討した報告、介護者の負担感に対する影響を検討した報告、ApoE遺伝子型が本剤の反応を予測し得るか否か検討した報告は、エビデンスから除外した。 また対象例数の少ない報告もエビデンスから除外した。初期の検討では、副作用は少ないとされていたが、後の臨床試験において有害事象として呼吸麻痺や神経筋伝達における障害が報告され、開発が中止されている。 日本において開発の予定はないと報告されている。 実地臨床において推奨することはできない。

 

 

1)高杉益充:新薬展望2001-総論;医薬ジャーナル,37(増刊号):19-25(2001)
2)薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
3)トリクロルホン Trichlorfon;http://www.nihs.go.jp/html,2007.2.12.
4)トリクロルホン(DEP・ディプテレックス):環境汚染問題;http://www2.sala.or.jp/~bandaikw/index.htm,2007.2.12.
5)アルツハイマー型痴呆:Minds医療情報サービス,2007.2.12.
6)武田雅俊・他:第42回日本老年医学会学術集会記録<シンポジウムII:老年者の心の新しい医療>1.痴呆老人の治療とケア;老年医学会雑誌,37(11):879-881(2000.11.)

[011.1.MET:2007.2.19.古泉秀夫]

「流石茶について」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:健康食品・流石茶・りゅうせきちゃ・さすがちゃ・赤芽柏・裏白樫・柿葉・隈笹・梅寄生・枸杞・波布茶・烏龍茶・籬通・杉菜・鬱金

 

Q:流石茶について

A:流石茶として市販されている製品の配合成分として、次のものが見られる。

配合成分 配合成分の食効
赤芽柏   トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉性高木。別名:ゴサイバ(五菜葉)、アカメガシワ。赤芽槲。中国名:野梧桐(ヤゴトウ)。学名:Mallotus japonicus Muell.Arg.。樹皮にはやや多量のタンニンがある。消炎・収斂作用。 胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症等の治療に使用。民間では、樹皮よりも、赤い新芽と新葉、赤い葉柄の干したものの方が効果があるとされている。
裏白樫   ブナ科コナラ属の常緑高木。和名:ウラジロガシ。学名:Quercus stenophylla Makino。薬用部分:小枝、葉。フラボノイドのクエルセチン、ケンフェロール、イソクエルセチン、トリテルペノイドのフリーデリン、エピフリーデリン、フリーデナロール、タラクセロールの他、コハク酸、エラグ酸、没食子酸、β-D-グルコガリン、カテコール、ピロガールなどを含む。裏白樫エキス(Uragilogashi Exe.)は動物実験の結果、膀胱内結石形成抑制作用・溶解作用が認められたと報告されている。民間療法として、胆石症、腎石症に用いられているとする報告が見られる。
柿葉   カキノキ科カキノキ属の落葉高木。学名:Diospyros Kaki Thunb.。柿渋中のタンニン様物質の水溶液は経口摂取で血圧降下作用を示すとの報告があるが、これは含まれるコリンの作用かもしれない。若葉にはvitamin Cが多い(生葉100g中1000mg)。その他、柿葉にはフラボノイドのケルセチン誘導体が含まれている。この物質は、血圧上昇に深く関与しているアンジオテンシンIIの生成を抑制する作用が認められている。果肉には糖質、タンニン、ペクチン、vitamin A1物質、酵素類を含む。
クマザサ
(隈笹)
  イネ科ササ属の多年草。別名:ヤキバザサ。学名:Sasa albo-marginata Makino et Shibata。薬用部分:葉。葉には葉緑素が含まれるが、その他の成分については未詳。葉緑素には皮膚や粘膜創傷面の治癒を促す作用がある。葉抽出エキスは、外国では胃炎・胃糜爛症・胃潰瘍等の治療剤として使用されている。
バイキセイ
(梅寄生)
  サルノコシカケ科マンネンタケ属に属する担子菌類の一品種。中国名:霊芝、和名:マンネンタケ。学名:Ganoderma lucidum。別名:瑞草、門出茸、仙草、吉祥茸、神芝、万年芝、赤芝。従来は梅の古木10万本に対し2-3個しか採集できないとされる希少品種であった。高血圧の改善、低血圧者の血圧を高める、動脈硬化の予防、高血圧症の改善、降圧剤の副作用軽減、老化防止等の作用が報告されている。β-グルカン、食物繊維ヘミセルロース、トリテルペノイド類のガノデリン酸、塩基成分のアデノシン、グアノシン等のヌクレオチド類、多糖蛋白質複合体のガノデランB、ガノデランC、ペプチドグリカン等を含有。
枸杞   ナス科クコ属の半落葉低木。学名:Lycium chinense Mill。薬用部分:葉、液果及び地下部の皮。葉にはカリウム、微量のルチン、vitaminB1、vitaminB2、vitamin C、メチオニン、硝酸カリ、葉緑素等。地下部の皮には消炎・解熱・強壮の効果があるとされ肺結核、糖尿病などによいといわれているが、僅かな消炎効果以外は望めない。枸杞実にはベタイン、フィリイエン等のalkaloidが含まれ、alkaloidは神経に働き疲労した神経を興奮させるとされているため、精気がみなぎったような感じになる。特にベタインは消化器系の分泌、運動を促し、胃腸病に対して間接的な効果を発揮するとされている。

ハブ茶
(夷草)

  マメ科カワラケツメイ属の1年草。学名:Cassia tora L.、別名:決明、ロッカク草。漢方名:決明子。ハブ茶は北米原産のエビス草(夷草)の種子を使用する。種々の眼病、習慣性便秘、高血圧、肝炎、脚気、浮腫等に使用された。ハブ茶は健康増進と、強壮、肝臓と腎臓の強化目的で使用される。
烏龍茶  

ツバキ科チャ属の常緑小高木。学名:Thea sinensis L.。烏龍茶は半醗酵の茶で、緑茶と紅茶の中間のお茶であるとされている。発酵の過程で生葉中にはない香気成分(ネロリドール、インドール、ジャスミンラクトン等)が発現するといわれている。烏龍茶はカフェインが少なく、放置してもタンニンの解毒・殺菌作用は変質しないため、いわゆる宵越しのお茶でも飲めるとされている。肥満予防、花粉症等のアレルギーの原因となるヒスタミン抑制効果がいわれている。

カキドオシ
(籬通・垣通)

  シソ科カキドオシ属の多年草。和名:連銭草、積雪草、生薬名:疳取草(カントリソウ)。学名:Glechoma hederacea L.。薬用部分:花期から夏期の全草。茎葉には精油(リモネン等)、タンニン、苦味質などが含まれる。その他、成分としてウルソール酸、硝酸カリ、コリン、タンニン、カリウム塩等を含むとする報告がある。効用として神経痛、肝臓病、胆石、糖尿病、虚弱体質、疲労、胃弱、浮腫等がいわれている。
杉菜  

トクサ科トクサ属の夏緑性多年草。薬用部分:栄養茎。学名:Equisetum arvense L.。全草中主成分はサポニン、P、K、Mg、鉄、銅、Mn、Ge、珪素等のミネラル類を多く含み、Caは100g中に1740mgにも達する。、vitamin C等。サポニンは血液中に入ると赤血球のコレステロール等と結びつき、赤血球の被膜の透過性を低下させ、その結果として溶血を引き起こすが、微量では気道からの分泌物を増やすため咳を誘発し、去痰剤となる。民間療法として利尿剤として利用されてきたが、利尿作用については薬理学的には未詳とする報告も見られる。米国で肉体疲労、貧血、前立腺肥大、尿路結石、肺結核、小児の夜尿症に有効の報告。

秋鬱金   ショウガ科ウコン属(クルクマ属)の多年草。漢名:鬱金。中国名:薑黄、学名:Curcuma longa L.。秋鬱金はクルクミンを多く含むことから染料や食材の着色料として利用される。ターメリックとしてカレー粉の材料になっている。特に春鬱金(学名:Curcuma aromatica S、中国名:鬱金)のクルクミンや精油成分について肝臓の解毒機能促進、胆汁分泌促進、胆道結石除去、利尿、強心、抗出血、抗菌、抗潰瘍、血中コレステロールの抑制作用があるとされている。

 

流石茶は医薬品ではないため、薬効を標榜することはできない。従って、惹句として『胆石、腎臓結石、尿路結石等の結石症を予防』する等としているが、次の点に注意が必要である。

生薬成分を含め配合されている植物には、多種多様な成分が含まれており、それぞれについて機能が報告されているが、茶剤として使用した場合、これらの含有成分が全て期待通りの機能を果たすわけではない。また、植物成分は、栽培地・栽培時の天候等種々の自然条件の影響により含有成分は必ずしも一定ではない。従ってあくまでも補助的な使用と考え、何等かの症状が自覚される場合、疾病が重篤化する前に、医療機関に受診すべきである。

 

1)伊沢凡人・他:カラー版 薬草図鑑;家の光協会,2003
2)奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004・2005
3)牧野富太郎:コンパクト版 原色牧野日本植物図鑑I;北隆館,2003
4)牧野富太郎:コンパクト版 原色牧野日本植物図鑑II;北隆館,2000
5)牧野富太郎:コンパクト版 原色牧野日本植物図鑑III;北隆館,2002
6)http://www.holos-web.com/1-005.html,2005.3.21.
7)http://www.taiseidrug.com/urajiro(o).htm,2005.3.21.
8)古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品;じほう,2003

                                                [015.9.MAL:2007.2.19.古泉秀夫]

「スコポリン・スコポレチンについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・スコポリン・scopolin・スコポレチン・scopoletin・オキシクマリン化合物・クマリン配糖体・ハシリドコロ

 

Q:スコポリン及びスコポレチンの関連性と薬理作用について

A:次の通り報告されている。

薬物名 スコポリン(scopolin) スコポレチン(scopoletin)
分子式 C16H18O9 =354.30 C10H8O4 =192.19
性状 無色針状晶、融点:218℃。水、エタノールに可溶、クロロホルム、エーテルに難溶。スコピンの異性体。 無色針状晶又は柱状晶(クロロホルム又は酢酸)、融点:204℃。水、エーテル、冷アルコールに難溶。酢酸、アルコールに熱時易溶、クロロホルムに可溶、二硫化炭素、ベンゼンに不溶。アルコール溶液は青色の蛍光を発し、FeCl3により緑色を呈する。フェーリング液及びアンモニア性銀液を還元する。
基原

*オキシクマリン化合物であるスコポレチンの配糖体。
*クマリン配糖体の一種で、スコポレチンの7-glycoside。ハシリドコロ(Scopolia japonicaやScopolia atropoides)の根茎に含まれる。
*スコポラミン(scopolamine)がアルカリ又は酸により加水分解を受ける時に生じる分解産物である。スコポラミンはスコピンとトロパ酸がエステル結合したものであるが、スコピンは分子中に不安定なエポキシ環を持つので、酸又はアルカリを用いた加水分解条件では開環し、新たに第二級ヒドロキシル基を生じるとともにトロパ酸とエステル結合していたヒドロキシル基がエーテル環を形成してスコポリンとなる。
オキシクマリン化合物。

*オキシクマリン化合物。
*クマリンの6-メトキシ-7-ヒドロキシ誘導体。配糖体(glycoside)スコポリンとしてハシリドコロ(Scopolia japonica)等の根茎に含まれる。
*1993年ハワイ大学でノニ(和名:八重山青木)の果実から抽出された物質である。

薬理作用

[1]副交感神経遮断作用
[2]中枢神経刺激作用

[1]血圧降下作用、[2]抗菌作用、[3]鎮痛作用、[4]うつ症・睡眠障害の改善。
scopoletinは、セロトニンの神経刺激伝達物質の合成に関与し、セロトニンの欠乏はアルツハイマー症等の原因になるとされている。

 

1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
2)今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998
3)奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004-2005
4)第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
5)西   勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル,2005

                                                  [011.1.SCO:2007.2.19.古泉秀夫]

「ウルソ錠の相互作用」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:相互作用・ウルソ錠・ursodeoxycholic acid・UDCA・ウルソデオキシコール酸・制酸剤

Q:ウルソ錠の相互作用として添付文書に制酸剤の記載があるが、併用処方が出された場合、処方医に確認すべきか

A:ウルソ錠(三菱ウェルファーマ)は1錠中にursodeoxycholic acid(UDCA)50・100mgを含有する製剤である。本剤の相互作用については『併用注意』として、次の記載がされている。

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
スルフォニル尿素系経口糖尿病用薬(トルブタミド等) 血糖降下作用を増強するおそれがある。 本剤は血清アルブミンとトルブタミドとの結合を阻害するとの報告がある。
コレスチラミン等 本剤の作用を減弱するおそれがあるので、可能な限り間隔をあけて投与すること。 本剤と結合し、本剤の吸収を遅滞あるいは減少させるおそれがある。
制酸剤(水酸化アルミニウムゲル等) 本剤の作用を減弱するおそれがある。 アルミニウムを含有する制酸剤は、本剤を吸着し、本剤の吸収を阻害するおそれがある。
脂質低下剤(クロフィブラート等) 本剤をコレステロール胆石溶解の目的で使用する場合は、本剤の作用を減弱するおそれがある。 クロフィブラートは胆汁中へのコレステロール分泌を促進するため、コレステロール胆石形成が促進されるおそれがある。

使用薬剤の詳細について、医師は十分理解した上で処方していると判断すべきであり、薬剤師が調剤する際には、『併用注意』等についても、医師は当然認識していると考えて作業することが前提である。

また添付文書上の『併用注意』については、現在までに併用を禁止する程度の重篤な副作用は発現しておらず、十分に注意して処方する分には、特に問題はないとする判断がされている薬物である。

従って、現に服用中の患者が、特に症状の変化等を訴えていない限り、併用注意の薬剤が同一処方せん上に記載されているからといって、特段の対応を取ることは必要ない。但し、『併用禁忌等の薬剤が記載されている場合には、誤記と考えられるため、患者に不必要な影響を与えることを回避』するためにも処方医に疑義照会する。

1)ウルソ錠・顆粒添付文書,2007.3.改訂(第12版)
2)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2007

[015.2.INT:2007.3.23.古泉秀夫]