緩下剤と制酸剤の相互作用

KW:相互作用・緩下剤・制酸剤・フェノール系緩下薬・アントラキノン誘導体・sodium picosulfate・bisacodyl

 

Q:大腸刺激性下剤(アントラキノン系誘導体、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム)と制酸剤との相互作用

A: 各緩下剤の特性は次の通り報告されている。

一般名

sodium picosulfate

bisacodyl

powderd rhubarb

商品名
(会社名)

ラキソベロン錠(帝 人)

テレミンソフト坐薬(日本ヘキサル)

大黄末(各社)

性状

本品は白色の結晶性の粉末で、臭い及び味はない。本品は水に極めて溶け易く、メタノールにやや溶け易く、エタノール(99.5)に溶け難く、ジエチルエーテルに殆ど溶けない。

本品は光りにより徐々に着色する。本品1.0gを水20mLに溶かした液のpH は7.4-9.4。

bisacodyl
本品は白色の結晶性の粉末である。本品は酢酸(100)に溶け易く、アセトンにやや溶け易く、エタノール(95)又はジエチルエーテルに溶け難く、水に殆ど溶けない。

本品は希塩酸に溶ける。

本品は換算した生薬の乾燥物に対し、sennoside A 0.25%以上を含む。本品は褐色を呈し、特異な臭いがあり、味は僅かに渋くて苦い。

噛めば細かい砂を噛むような感じがあり、唾液を黄色く染める。

来歴

フェノール系緩下薬の緩下作用と胃腸への刺激性も、本質的にはその構造中の遊離水酸基に基づくものであるという観点からビサコジルのアセチル基を硫酸エステル基に変えた水溶性の物質が本品である。*フェノールスルホン酸-ピリジン系。

本薬は1953年に開発された坐剤用緩下剤である。
*フェノール酢酸-ピリジン系。
神農本草経の下品に収録されている。現在でも漢方の要薬であり、緩下薬として多量消費されている。
薬効・薬理

胃、小腸では殆ど吸収されず、大腸の蠕動運動を亢進させ、緩和な瀉下作用を示す。経口投与後殆ど吸収されることなく大腸部位にそのまま到達した後、大腸細菌叢由来のアリルスルファターゼにより加水分解され活性型のジフェノール体が生じ、本物質が大腸粘膜を刺激し、蠕動運動を亢進させるとともに、水分吸収を阻害することにより緩下作用が発現する。

一部吸収されたものはジフェノール体として胆汁中に排泄されるが、同様に大腸部位で局所的に作用すると考えられている。

刺激性の緩下作用を示す。結腸・直腸粘膜の副交感神経末端に作用して蠕動を高め、また腸粘膜への直接作用により排便反射を刺激する。更に結腸腔内における水分や電解質の吸収を抑制するが、これは腸管のNa+、K+-ATPaseの抑制作用によると考えられている。

直腸坐薬とすれば15-60分以内に作用が発現し、効力はフェノールフタレインの約5倍強力である。

薬効成分はsennoside A、B、C、D、E、F及びrheinoside A、B、C、D等である。主瀉下成分のsennoside Aは胃腸で吸収されず、大腸で腸内細菌によりrhein anthroneに加水分解されて瀉下作用を示す。

なお遊離型のアントラキノン誘導体のrhein、emodin、aloe-emodin、 chrysophanol、physcionには実際上瀉下作用は認められない。

相互作用 制酸剤との相互作用-特に報告無し。 制酸剤との相互作用-特に報告無し。 制酸薬-酸化マグネシウムがアルカリ性のためセンナ、大黄と配合すると次第に赤褐色に変わる。変色しても無害で薬効に影響がない。

上表を見る通りphenol系緩下薬である『sodium picosulfate・bisacodyl』については制酸剤との相互作用は何等報告されていない。アントラキノン誘導体を含有する『powderd rhubarb』は、制酸薬(magnesium oxide)との配合で、変色することは事実であるが、従来から薬効に変化はないとして、薬袋等に注意事項を押印することはあっても併用回避の処置はとっていない。 今回の患者の質問が何に依拠してのことが不明であるが、質問の根拠を確認されたい。

[015.2.BIS:2004.2.3.古泉秀夫]


  1. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  2. テレミンソフト坐薬1号添付文書,2002.2.改訂
  3. センナリド錠添付文書,2002.7.改訂
  4. ラキソベロン錠添付文書,2002.6.改訂 5)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004