界面活性剤について

KW:語彙解釈・界面活性剤・surface active agent・surfactant・アニオン界面活性剤・カチオン界面活性剤・非イオン界面活性剤・両性イオン界面活性剤

 

Q:界面活性剤について

A:界面活性剤(surface active agent,surfactant)。

別名:表面活性剤。

溶液にしたとき、気-液、液-液又は固-液界面に吸着して界面の性質を著しく変化する性質。

界面活性の大きい物質で、分子中に親水性及び親油性の原子団を有する両親媒性物質である。

一般に、界面活性剤は洗浄力、分散力、乳化力、可溶化力、湿潤力、殺菌力、起泡力、浸透力等に優れ、種類、目的によって広範囲に応用されている。また界面活性剤は水溶液にした場合に、ある濃度以上でミセルを形成し、この濃度において表面張力、粘度、電氣伝導率などが著しく変化する。

界面活性剤の種別 概要

アニオン界面活性剤(anionic surfactant)

[用途]:洗浄剤・乳化剤・湿潤剤・染色助剤・浸透剤・精練剤・分散剤・起泡剤等として食品工業、繊維、化粧品等。

別名:陰イオン界面活性剤、陰イオン表面活性剤。水溶液中でイオンに解離し、界面活性を示す部分がアニオンになるような界面活性剤をいう。水溶液としたとき、洗浄、乳化、可溶化、分散などの活性を示す。[例]:普通石鹸、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等非常に多くある。

*N-アシル-N-メチルグリシン塩(N-acyl-N-methylglycin)、*アルキルスルホン酸ナトリウム(sodium alklsulfonate)、*アルキル硫酸ナトリウム(sodium alkylsulfate)、*ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(polyoxyethylene alkyl ether carboxylate)、*ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、*脂肪酸石鹸(Soaps)等。

カチオン界面活性剤(cationic surfactant)

[用途]:顔料分散剤・帯電防止剤・金属防錆剤・染色助剤・沈降促進剤・浮遊選鉱・殺菌消毒剤等。

別名:陽イオン界面活性剤、陽イオン表面活性剤、逆性石鹸。水溶液でイオンに解離し、界面活性を示す原子団がカチオンとなる界面活性剤で、分子中に親水性原子団と親油性原子団を持っている両親媒性物質である。一般には耐アルカリ性の小さいものが多いが、耐酸性、耐硬水性が大きく、他のタイプの活性剤と同様に界面張力低下能、乳化力、分散力、起泡力、浸透力などに優れ、また陽荷電を持っていることから陰荷電を持つ物質、例えば金属表面、鉱石、顔料、染料、繊維、合成樹脂などに強く吸着して強力な吸着被膜を形成して、これらの物質表面を親油性にする性質を有する。[例]:アミン塩(アルキルアミン塩、アミド結合アミン塩、エステル結合アミン塩等)、第4級アンモニウム塩(アルキルアンモニウム塩、アミド結合アンモニウム塩、エステル結合アンモニウム塩、エーテル結合アンモニウム塩等)、ピリジニウム塩(アルキルピリジニウム塩、アミド結合ピリジニウム塩、エーテル結合ピリジニウム塩、エステル結合ピリジニウム塩等)等がある。

*塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)、*脂肪族アミン塩(alkylamine salt)、*脂肪族4級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)等。

非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)

[用途]:乳化剤・分散剤・精練剤・洗浄剤・湿潤剤・染色助剤として鉱油系添加物

及び食品工業等多方面に用いられる。

別名:非イオン表面活性剤。水溶液中でイオンに解離することなく界面活性を示す界面活性剤をいう。分子中に水酸基-OH、エーテル結合-O-、エステル基- COOR、酸アミド基-CONH2-等の親水性原子団とアルキル基やアルキルアリル基などの長鎖の親油性原子団とを有する。[例]:酸化エチレン系(アルキルアリルエーテル型、アルキルエーテル型、アルキルアミン型等)、多価アルコール脂肪酸エステル系(脂肪酸グリセリンエステル型、アンヒドロソルビトール脂肪酸エステル型など)、ポリエチレンイミン系及び脂肪酸アルキロールアミド系など非常に多くある。

*ポリオキシエチレン高級脂肪族アルコール(polyxyethylene higheraliphatic alcohols)、*ラウロマクロゴール(lauromacrogol)等。

両性イオン界面活性剤(amphoteric surfactant)

用途:殺菌・洗浄・キレート効果を利用。

カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤とカチオン(又はアニオン)界面活性剤の組み合わせのように、2種類の性質を同時に備えた界面活性剤を指す。一般には陽イオンとなる基と陰イオンになる基を同一分子中に持っているものをいう。

陰イオンとなる部分としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、そして陽イオンとなる部分にアミノ基を持っているものが多い。

*塩化アルキルポリアミノエチルグリシン(alkylpolyaminoethylglycine hydrochloride)、アミノカルボン酸塩(aminocarboxylate)、アルキルアミンオキシド(alkylamine oxide)、イミダゾリニウムベタイン(imidazolinium betaine)、カルボキシベタイン型(carboxy betaine)等

 

[615.8.SUR:2005.6.13.古泉秀夫]


  1. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  3. 高杉益充・編:改訂版 消毒剤-基礎知識と適正使用-;医薬ジャーナル社,1990
  4. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003