カルキについて

KW:語彙解釈・カルキ・さらし粉・Bleaching powder・漂白粉・クロルカルキ・クロル石灰・次亜塩素酸カルシウム

 

Q:カルキの名称で呼ばれる物質はどのようなものか

A:カルキとはさらし粉(Bleaching powder)の別名である。さらし粉の別名としては、この他に『漂白粉・クロルカルキ・クロル石灰・次亜塩素酸カルシウム』が報告されている。さらし粉の他に高度さらし粉がある。[局方収載]、[食添収載]。

さらし粉の英名としては『calcium chlorinated lime、[英]chlorinated lime、hypochlorite、calcium hypochlorite、 [独]chlorkalk、 [ラ]calx chlorinata』とする表記が見られる。

さらし粉は1798年にTennantが石灰水に塩素を通じ、液状の漂白剤 を作ったのが始まりで、1799年になって固形のさらし粉が市販され、Tennant氏漂白粉と称した。

さらし粉を定量するとき、有効塩素(Cl:35.45)30.0%以上を含む。本品は白色の粉末で、塩素のような臭いがある。本品に水を加えるとき、一部が溶け、液は赤色リトマス紙を青変(アルカリ性)し、次に徐々にこれを脱色(次亜塩素酸によって色素が酸化されて脱色)する。

さらし粉は湿潤状態におかれると、その活性塩素が殺菌作用を発現する。この殺菌には分解によって発生する有効塩素と発生機の塩素の何れか又は両者があずかると考えられている。0.2%のさらし粉の存在で栄養型細菌は5分くらいで死滅し、また20%では破傷風芽胞も10分間で殺菌する。また有効塩素として0.4-1.5%に相当するさらし粉で飲用水を処理すると、水中に存在する細菌の約90%が死ぬとされている。

尿・糞便・喀痰等の排泄物の殺菌には、約2%量を加え、掻き混ぜて1-2時間放置する。この他、伝染病患者の使用した器具や食器の消毒にも用いられるが、漂白作用があるので衣類等には適さない。その他、漂白剤、殺菌剤、消毒剤としてパルプ、綿糸布、麻糸布などの漂白、澱粉、果皮、油脂、セラックなどの漂白、上下水、井戸水、プールなどの殺菌に使用する。

  • 性状:白色粉末、吸湿性がある。強い塩素臭があり、酸で分解。有効塩素量 30-38%(さらし粉)、60-90%(高度さらし粉)。
  • 安定性:空気中の炭酸ガスの影響を受けて分解する。日光によって酸素と塩化 水素に分解し、塩化カルシウムと炭酸カルシウムになる。
  • 抗菌作用:全ての微生物に抗菌作用を示す。次亜塩素酸ナトリウムに準じた殺 菌効果を示す。

カルキの名称の由来は『独逸語名のchlorkalk(クロールカルキ)の略称であるとされている。カルキそのものの語源は、オランダ語の「kalk」が語源で、「石灰」という意味である。クロールカルキは、ドイツ語で「Chlorkalk(塩化石灰)」のことで、さらし粉を意味する』。

-参照-

生石灰の名称としてCalx Usta(Calx Ust.)のほか、次の名称が報告されている。

Calcium Oxide The National Fomulary
Quicklime The National Fomulary
Oxyde de calcium French Codex
Gebrannter Kalk German Pharmacopoeia

 

その他、焼石灰とする標記も見られる。また、石灰(英lime 仏 chaux 独Kalk)について、酸化カルシウム(生石灰)の通称。石灰石(石灰岩)を950-1100℃で焼いて製造する。広義には水酸化カルシウム(消石灰)、炭酸カルシウム(石灰石)を含めた意味に用いられるとする報告が見られる。

[615.8.KAL:2004.4.13. 古泉秀夫]


  1. 防菌防黴剤事典;日本防菌防黴学会,1986
  2. 志田正二・代表編:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1999
  3. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  4. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  5. 岐阜県池田町ホームページ:http: //www.town.ikeda.gifu.jp/,2004.4.16.
  6. 第六改正日本薬局方注解;南江堂,1954
  7. 長倉三郎・他:岩波理化学辞典 第5版;岩波書店,1998