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『時不待』

日曜日, 1月 27th, 2008

 

                                                                      魍魎亭主人

 

平成18年(2006年)12月17日オヤジが死んだ。明治43年3月12日生まれということであるから享年97歳。年齢的には死を悼む年ではないが、入院していた当人は、死について全く考えていなかった節がある。

おふくろが死んだ後、ほぼ16年、一人暮らしをしていたオヤジが、いよいよ心細くなって、末の弟の家に同居することになった。そこから機嫌良くディケアサービスを受けるために通所していたようであるが、その行き帰りに使いもしない杖を持っ歩いていたようである。更に室内では全く使用する必要のない杖を、玄関に置いたままにしたことが気になったのか、下の三和土に下りずに、上がり框から手を差し伸べて取ろうとして、三和土に転げ落ちて、大腿骨を骨折してしまったということであった。

入院した病院では、高齢でペースメーカを装着している事、更には腎機能が低下しているために手術には耐えられないと判断したようである。積極的な治療を希望するのであれば、手術して骨折部の処置をしますが、もし積極的な治療の必要はないということであれば、骨折部が自然接合するのを待って、車椅子に乗れるようになれば退院ということにしたいと思いますがという話があったようである。

高齢者が転んで骨折し、入院するということは、もし骨折が治癒したとしても、そのまま寝たきりになる比率は高いということを意味している。年齢的に見てどの程度の回復が望めるか分からないとしても、自然治癒を待つという選択をせざるを得ないということである。ただ最悪な場合、容体が急変することがあっても、人工呼吸器を使用する選択はしないということは最初に決めた。人工呼吸器を挿管されて、ただ機械的に呼吸をしていたとしても、それは回復期を迎えることを意味してはいない。

入院当初、意識も清明とはいえない状態から、人の顔が認識できるまでに回復し、比較的早く退院できるかもしれないと思われたが、食事が出来るようになった結果、食べ物を誤嚥して感染症を併発し、結局は不帰の人となってしまった。

会社を定年退職してから既に三十数年が過ぎており、更に親子二代にわたって住んでいた町内も引き払い、住んでいた家も壊して更地してしまった。その意味では旧町内も含めて、知り合いに案内を出しても、貰った方も迷惑をするといけないということで、葬儀は密葬でやることにした。それこそ兄弟とその身内だけということでやったが、田舎のしきたりとはやや違った事もあり、中には口伝てにお聞きになり葬儀に見えられた方もいた。その意味では、幾ばくかの方々には不義理をしたかもしれないが、将に『時不待』である。オヤジも会社を退職した後、市の幾つかの任務を担っていた時期もあったようであるが、それさえも遠い昔ということである。

『時は待たず』ただ過ぎ去るのみ。最早人々の記憶からは欠落していると思われる一人の男の人生は、粛々と終わりにさせていただいた。

一周忌は、本来は死んだ日か、あるいは前に持ってくるのが常識だということであるが、家族の都合とお寺の都合も付かず、平成19年12月22日に、これも兄弟と参加できる孫達とで実施した。

しかし、人生って何だろうね。六十代で死ねば、葬儀に集まる人は多いかもしれないが、九十を過ぎた年齢では、友人、知人の殆どは亡くなってしまっていないということである。
葬儀に人が来ないのは寂しいかもしれないが、それは死んだ人間に分かるのだろうか?。

                                                            (2008年1月10日)

医薬品情報管理学[1]

土曜日, 1月 26th, 2008

医薬品情報21
                                                                        古泉秀夫

医薬品情報とは

 

1]情報とは何か

 

断片的なものを収集し、連続させることによって、一つあるいは複数の意味を持つものに変化する流れである。

また、意味を持つ一つ一つの断片が、集積されることによって、大きな意味を持つ物語に変換する過程であるとすることも出来る。

言ってみれば、山に降った雨が、散り積もった腐葉土に染みこみ、一定の年限を経て小さな流れとなり、やがて大河となる。その流れ出る水が情報であり、一定のルールに従い、人に役立つように利用するとともに、暴走して大洪水とならないよう管理すること、これが情報の管理であるということが出来る。

河川の護岸工事をし、水源を造って水を溜める。その水を発電用に使用するのかあるいは農業用水にするのか、飲料用水にするのかの使途による再度細流を作る。情報管理とは、用水の管理をするのと同じ作業であるとすることが出来る。

従って、医薬品情報管理を考える場合、その基本となるのはあくまで総合的な情報管理の技術であって、医薬品情報に限定した情報管理技術はない。言ってみれば総合的な情報の水源から流れ出た細流の一つを固定して管理しているということに過ぎないのである。

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その意味では、医薬品情報管理学の入門書として、特別なものを考えるのではなく、一般的な情報管理に関係する入門書を読むことを推奨する。参考図書として、次の図書を紹介する。

①梅棹忠夫:知的生産の技術;岩波新書,1969
②加藤秀俊:整理学;中公新書,1963
③川勝 久:新整理学;ダイアモンド社,1985
④河野徳吉:情報整理術;日本経済新聞社,1977
⑤加藤秀俊:情報行動;中公新書,1972
⑥加藤秀俊:取材学;中公新書,1975

⑦野口悠紀夫:「超」整理法;中公新書,1993

なお、これらの図書を読む場合、初読時に必要と思われる事項に黄色の蛍光マーカーでマークし、再読時に必要と感じた事項に別の色でマークするという方式を取ると、視点の変化が明瞭になるばかりでなく、重要と思われる事項は二重にマークされることになるので、後で参照する必要が生じた場合に、必要事項の検索が容易になる。

この方式は、文献等の抄録を作成するための訓練、key wordを選定するための訓練としても重要であり、key word選定目的の場合には、最初に1文献当たりの必要key word数を決定し、作業にかかることが必要である。

 

2]医薬品とは何か

 

専門職能である薬剤師に対して『医薬品とは何か?』等と質問するのは、甚だ失礼であるの謗りを受けるかもしれないが、既に御承知の通り、薬事法第二条に、医薬品に関する法律上の定義がされている(図2)。

図2.医薬品とは

*薬事法上の定義(第二条)

 

① 日本薬局方に収められている物。
② 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、器具器械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でない物(医薬部外品を除く。)。
③ 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、器具器械でない物(医薬部外品及び化粧品を除く。)。

しかし、医薬品情報管理学の立場から見た医薬品は、この法律の定義とは若干異なった見方が必要となってくる。

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図3.医薬品情報管理学から見た医薬品

 

  医薬品原料として使用される物として、鉱物・生物成分・植物成分・動物成分・魚類を含む海産物成分等、多くの物質が考えられる。これらの成分を医薬品とすべく、最初に開始されるのが『基礎的研究』である。

勿論、従来、我が国で行われてきた漢方薬による治療では、植物・鉱物・動物等の原体を、そのまま粉末化して服用するか、浸煎剤等として、医薬品としての使用がされてきたが、現在では、それらに含有される成分を単離することによって、より有効・安全な薬物の創製が追求されている。

『基礎的研究』の結果を受け、更に健康人による『第I相臨床試験』において人における安全性等の検討がされ、『第II相前期臨床試験』・『第II相後期臨床試験』において、少数の患者群による安全性・有効性・至適投与量等の確認が行われた上で、本格的な医薬品としての『第III相臨床試験』へと展開していく。

患者を対象とした臨床試験は、『GCP(Good Clinical Practice)」による規制がされている。
つまり『臨床試験成績の信頼性確保』のために『科学的に』、『適正な実施』することが求められており、更に臨床試験結果の信頼性・患者の人権擁護の立場から『説明された上での自由な同意(Informed consent)』を求めるべく、実施する医療機関が遵守すべき事項が厳しく定められている。

これらの開発期間は、その『物』に対する『医薬品』としての情報集積期間であり、各種臨床試験の総合的な結果を受けて、医薬品としての製造承認がされる。つまり医薬品とは、『物』に付加価値としての『情報』が付け加えられることによって『医薬品』として承認される物であり、薬剤師が医薬品の管理を行うということは、これらの情報管理も含めて、管理を行うということなのである。

また発売後の医薬品についても、PMSにより、現在、発売後6年間の副作用調査が義務付けられており、患者の安全確保を図るべく努力がされているが、これも本質的には、安全に医薬品を使用するための情報の集積業務である。

従って、薬剤師の業務として、『医薬品情報管理業務』は至極当たり前の業務であり、情報量の増加が『情報管理業務』を独立化・専門化させているのである。その意味では全ての医療機関に、医薬品情報管理室及び管理のための専門家が配置されていないことが、問題であるといわなければならない。

                      [東京都病院薬剤師会会誌,44(3):161-163(1995.6.30.)以降に連載]

医薬品情報管理学[2]

木曜日, 1月 24th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

 

医薬品の特性

 

1]医薬品の情報量と製品特性

 

医薬品の情報量は、個々の薬剤によって異なる。基礎実験開始時、0であった情報が、基礎・第I相臨床試験→第II相前期臨床試験・第II相後期臨床試験→第III相臨床試験の各試験段階を経過するにつれて付加され、増大する。

従って、基礎実験の開始から承認申請段階までの時間経過が長期になればなるほど、その薬剤の情報量は増加する。

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図3. 開発年数と情報量増大の関係

 

開発に要する年数と情報量の関係は『年数のx乗』の関係にあるといえるが、実際には計測不能な数値であると考えられる。

また、商品としての医薬品を見た場合

有効性[A]+副作用[B]+無効[C]=医薬品

という関係が成立し、対価として支払われる医薬品費の中には、当初から『副作用』あるいは『無効』も含まれていると考えることが出来る。更に問題なのは A=0・B=0の事例が存在した場合A+B+C=100の事例では、C[無効]=100、つまり全く効果がないという場合もあり、これは服用後でなければ確認出来ないということである。

効果を期待して医薬品の対価を支払いながら、服用者に何の利益ももたらさない商品が存在するということである。更に最悪な場合には、治療目的で服用したにもかかわらず、『副作用』であるBのみが発現し、生命の維持を困難にする事例も存在する。又は副作用の治療に更に医薬品を使用するという矛盾した状況が派生する。

一般に市場に流通する『各種製品』を考えた場合、使用目的以外の結果がでれば、それは明らかに『欠陥商品』であり、使用者から苦情が来ることは当然である。しかし、医薬品については、専門職能の判断が、直接の使用者であり、最終の使用者である『患者の判断』より優先されるという性格を持っており、消費者の意見が直接反映しないという商品特性を持っている。

有効と無効の関係を見る場合、従来であれば、患者側の要因として不明確な部分があり、薬剤の反応式に『個人差』があるのは当然のことであるとされてきたが、治療に対する対価を支払う側-患者側からすれば、その理論は通用しない。更に無効のみならず副作用だけが発現する事例も当然のこととして考えられる。

従って、医薬品を選択する医師あるいは薬剤師は、患者の安全確保に万全の体制を構築し、厚生労働省・製薬企業・病院・保険薬局等がそれぞれの立場から国民の健康保持に努めることが求められており、医薬品に関する情報の整備が必要とされるのである。

医薬品を取扱う専門職能は、常に最終消費者である患者の立場を代弁する位置にあるということを忘れてはならないのである。

その意味で『最小の薬物で最大の効果を上げる方策』を模索することが、医薬品情報管理業務の重要な柱の一つであるとすることが出来る。

 

2]適正な医薬品情報管理と安全性確保

 

医薬品の作用には、常に(正)の薬理作用と(負)の薬理作用が混在する。正の薬理作用は『有効性』であり、負の薬理作用は『副作用』として発現する。ただし、正と負の薬理作用の関係は、常に同一の関係を保つということではない。例えば高血圧治療薬として開発された末梢血管拡張剤であるminoxidil(米・Upjohn社)は、経口投与後3~6週間後に、約80%の症例で副作用として多毛が発現したと報告されている。

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図4.正・負の薬理作用模式図

開発された末梢血管拡張剤であるminoxidil(米・Upjohn社)は、経口投与後3~6週間後に、約80%の症例で副作用として多毛が発現したと報告されている。

しかし、一方では、これを外用剤として頭皮に塗布することで、円形脱毛症に対する治療薬としての検討がされていたが、現在では毛生え薬として OTC薬としての市販がされている。ただし、外用剤として頭皮に塗布した場合、頭皮からの吸収が見られるとされており、吸収されることによって血圧低下が発現した場合、経口剤での『有効性』が外用剤では副作用ということである。

 

一般名・商品名
(会社名)
適応症 副作用 適用 転換適応 適用
[114]aspirin(各社) 鎮痛解熱薬 血小板機能低下-出血時間延長 経口

抗血小板作用(少量)-血小板凝集抑制を目的80mg/回/日。
脳梗塞(血栓)再発予防

経口

[124]atropine sulfate
(各社)

胃腸の痙攣性疼痛・痙攣性便秘・疝痛・潰瘍性大腸炎 散瞳、眼調節障害、緑内障 経口・注射 診断又は治療を目的とする散瞳と調節麻痺 点眼

[217]minoxidil
(米・[商]ロゲイン)
-国内治験段階で中止-

血管拡張性降圧薬・
降圧剤としての評価↓

約80%で多毛(頭部・顔) 経口 育毛剤(米国・男性3200人に使用/1年間-84%に育毛効果確認;皮下血流増大-毛母細胞活性化) 塗布
[252]sildenafil citrate(米・[商]バイアグラ)

狭心症薬
大動脈圧・末梢血管抵抗性の軽減等↓

勃起 経口 性機能障害治療剤(性的興奮による陰茎勃起ではない) 経口

 

服用する患者にとって、有効性・安全性の両面で評価され『有用性』の高い薬剤が最良の薬剤である。しかし実際には、抗がん剤等の事例でも解るとおり、有効性・安全性の両面で問題とされる薬物が存在することもまた事実である。

この様な薬物の使用に際しては、より高い安全性を確保する意味で、情報の提供を行い、副作用の発現による患者の苦痛を極力抑えるよう努力することが必要である。医薬品情報管理業務に携わる薬剤師は、常に医薬品に関する情報を蒐集し、より効率的で敷衍性のある資料に加工し、日常的に医師・薬剤師等の医療関係者に提供する体制を確立することが必要である。

次に必要とされる資料として現在までに集合加工したものの一部を紹介する。

 

資料表題 内容の概略
*光線過敏症を惹起する薬剤 光線過敏症を惹起すると報告のある薬剤の一覧と患者に提供すべき情報
*手術前後の投与に注意を要する薬剤 添付文書上に手術前後における投与中止あるいは休薬期間の一覧
*授乳婦に投与可能な薬剤 添付文書中の授乳婦への投与に関する記載内容と文献情報の比較及び投与の可否判断
*注射薬の配合変化に関する資料 注射薬調剤に関連して配合変化試験結果・用時溶解注射薬の安定性・皮内反応実施指摘薬剤一覧
*抗コリン作用を有する薬剤 薬理作用として抗コリン作用を有する薬剤と緑内障患者への投与可否判断資料

 

ただし、これらの資料を作成する場合、作成者の都合を優先することは避けなければならない。利用する側が常に利用しやすい資料として提示すべきである。しかし、利用者が利用しやすいということは、逆説的にいえば情報を加工する側は、一つの資料を作成する際に膨大な労力を費やすことが求められるということである。

『資料の作成は常に利用者側の利益を優先する』

が、医薬品情報管理を業務として行う際に忘れてはならないことである。


  1. 古泉秀夫:医薬品情報管理学[2];THPA,44(6): 313-315(1995)

紅葉巡礼(3)

木曜日, 1月 24th, 2008

鬼城竜生

紅葉の写真を撮りに高幡不動に出かけた(2007年12月4日火曜日)。川崎駅から南部線で分倍河原に出て、京王線に乗り換えて高幡不動で下りると、直ぐ不動尊の参道入り口の看板が眼に入った。しかし、東京に住んで既に30年を超えるが、高幡不動、ある高幡不動-001 いは京王線の各駅に出るのは、新宿駅経由しかないと思いこんでいたので、高尾山等を含めて、南部線経由で足を伸ばせるということには、驚きを禁じ得なかった。従前は新宿方面に住んでいたので、高尾山も百草園も新宿からしか行っていないが、その当時でも高幡不動には特段の興味を持つことはなかった。今回、高幡不動に出かける気になったのは、前の日にTVで、紅葉が見頃だという放映がされていたので、紅葉の写真でも撮るかということで出かけた。

参道を真っ直ぐ行くと突き当たりに仁王門が見えたが、総門はやや左側にあり、総門の正面は山門を経由して大日堂に至る道になっており、仁王門は後ろに不動堂、奥殿が並んでいた。更に総門の左手に五重塔が見えたが、全く五重塔があるなどと思っていなかったので、素直に驚かさせていただいた。

大体、高幡不動とはそも何者なのかといえば、真言宗智山派別格本山、高幡山明王院金剛寺が正式な名称のようである。山号寺号でいえば『高幡山金剛寺』ということのようである。古くから関東三不動の一つに挙げられており、高幡不動尊として親しまれているという案内がされている。

その草創は古文書によれば大宝年間(701年)以前とも、奈良時代行基菩薩の開基とも伝え高幡不動-002られるが、1,1004年前、平安時代初期に慈覚大師円仁が、清和天皇の勅願によって東関鎮護の霊 場と定めて山中に不動堂を建立し、不動明王を安置したのに始まるとしている。建武二年(1335年)8月4日夜の大風によって山中の堂宇が倒壊したため時の住僧儀海上人が康永元年(1342年)に麓に移築したのが現在の不動堂で、関東近県内では稀に見る古文化財である。それに続いて建てられた仁王門ともども重文に指定されてい高幡不動-003ると解説されている。
足利時代に汗かき不動と呼ばれたとされているが、丈六不動三尊は関東唯一の平安時代の巨像で、本尊は本丈六・両童子半丈六で、古来日本一の不動三尊と伝えられ、三尊に火炎光背を加えた総重量は1100キロを超すとする紹介文があるが、誰がこんなものを量ったというのだろう。確かに拝見するところ凄まじい迫力で、関東武士勃興期の気分を伝える豪快な尊像で十一世紀末頃の造立というが、その当時の金額でどの程度かかったの か。そういう詰まらない考えが直ぐに頭を過ぎるというのは、信心が足りないということなのかもしれないが、民百姓から掠めた金で、所の権力者が建てたのだろうなどという罰当たりな発想に取り付かれてしまうのである。

まあ、そんなことはさておき、土方歳三の銅像を過ぎて大師堂の前に出ると、そこに見事な紅葉が見られたが、人が多すぎて話にならないということで、取り敢えず裏山不動ヶ丘に登り、八十八カ所の大師像が奉られているという道筋を歩くことにした。上から五重塔を紅葉越しに俯瞰できる位置を探して歩いたが、一度行ったきりで草々都合の良い位置を見つけ出すことは難しいということで、まあそこそこの写真が撮れたというところである。
紅葉を見ながら歩いて、それはそれで納得はしたが、裏山不動ヶ丘の植生は紫陽花が多いのではないかと思ったが、丈六不動三尊(重文)の参拝記念の半券裏面の説明によれば、裏山不動ヶ丘には桜・紫陽花・紅葉等四高幡不動-004 季とりどりの景色が味わえるとされている。しかし、歩いている間、桜の木は眼に入らなかったが、桜があるという認識を全く持たずに歩いていたため、見過ごしたということのようである。
何れにしろ納得いく写真を撮るためには、何回か通わなければ駄目だということになるのだろうが、風景を切り取るという作業は、太陽光や空気中の湿度に大きく影響されるという面もあり、行った時がその時だとは限らないため、結局は下手な鉄砲も数打ちゃ当たるの実践ということだと思われる。

今回は万歩計も1万を超えており、さほどきつい思いもせず、歩けたのは、自然の大地を踏んで歩いたということなのかもしれない。帰りに遅昼を食ったが、参道に面して店を開けていた飯屋で天丼を食ったが、店内の雰囲気としては、狭いなりに彼方此方に贔屓がいる店のようであった。

(2008.1.23.)

第2回薬害イレッサシンポジウム傍聴記

日曜日, 1月 20th, 2008

                                                                  医薬品情報21
                                                                        古泉秀夫

 

2007年12月8日(土曜日)『薬害イレッサ東京支援連絡会』が主催する『第2回薬害イレッサシンポジウム』に出かけてきた。

会場は野口英世記念会館で、JR千駄ヶ谷駅から四谷四丁目方向に9分ばかり歩いたところにあるということなので、2時からの開会であったが、11時30分には家を出た。少なくとも品川まで30分、千駄ヶ谷まで30分として、探し当たる時間と、地図上では御苑正門なる書き込みが見られるので、時間があれば紅葉の写真でも撮るかという余計な計画を付け加えての早立ちである。

しかし、驚いたことに御苑正門は、あまり正門には見えない門があり、しかも閉鎖中のため、ここからは入れませんという案内が出ていた。塀沿いに入り口までと考え、野口英世記念会館前を通り過ぎて、しばらく歩いてみたが、入り口に行くためには、とてものことに時間が足りそうもないということで、紅葉の写真を撮るのはあきらめ、食事をすませて早めに会場に入った。

プログラムは第一部が朗読劇『がん患者の命の重さを問う』-切り捨てられた、三津子の生から-。

第二部がパネルディスカッションで、パネリストは別府宏圀(医師・医薬品治療研究会代表)・松山圭子(青森公立大学教授)・清水鳩子(主婦連参与)・山村伊吹(薬害ヤコブ病東京訴訟原告団副団長)の4氏で、司会は水口真寿美氏(薬害イレッサ弁護団・薬害オンブズパースン会議事務局長)が担当していた。

弁護士が中心で、大衆的な支援の輪を広げたいという目的が前面にでているため、些か情緒的にならざるを得ないという点からいえば、第一部の朗読劇は、将に大衆受けを狙った企画ということで、その意味ではそれなりに成功していたということかもしれない。

ただ、パネルディスカッションについては、薬害を糾弾すればいいということで、視野狭窄的な発言の流れが出来てしまうということは避けるべきではなかったのか。例えば1985年に聴神経腫瘍摘出手術の際に移植を受けた『ヒト乾燥硬膜ライオデュラ』によってクロイッフェルトヤコブ病に感染したという事例で、その当時、医師は『ヒト乾燥硬膜ライオデュラ』の使用について、何の説明もしなかったという発言がされていたが、インフォームド・コンセントが定着している現状に照らし合わせて判断されたのでは、医療関係者はたまったものではない。

第一あの当時、医療材料である『ヒト乾燥硬膜ライオデュラ』から、クロイッフェルトヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)が感染するなどという考えは、誰も思ってもいなかったというのが正直なところではないか。その危険性に気付いていた医師や役人がいたかといえば、誰もいなかったというのがあの当時の実態だったのではないか。

更に副作用のない薬はないという現実に立って論議を進めることも必要ではないのか。例えば『間質性肺炎』については、イレッサだけの副作用ではなく、小柴胡湯等の漢方製剤でも発現するのである。

『薬』の人に対する作用には『正』の作用と『負』の作用があり、ヒトにとって好ましい『正』の作用を効果といい、好ましくない『負』の作用を副作用と、これはヒトが勝手に決めていることである。更に多種多様な薬が開発され、その結果ヒトの寿命が延びたということもまた事実である。従って、薬について論議する場合、薬=悪という短絡的な論議に特化することは避けなければならないと考えている。

しかし、このような私見を述べたからといって、イレッサの問題を容認しているわけではない。第一他の国に先駆けて、2002年1月の承認申請から僅か6カ月という短期間で、承認しなければならない特段の理由があったのかどうか。兎に角ものは抗がん剤である。十分に検討しなければならない性質の薬を短期間で承認してしまったという点については、些か納得がいかないのである。

更に副作用による死亡例が何例出たら製造・販売を中止するという基準はないようであるが、イレッサの場合、急性肺障害・間質性肺炎の副作用が発症した1,708人中676人が死亡したとされている。何れにしろ死亡者数が多すぎはしないか。この間、投与された患者のうち何名の患者が治癒したのか知らないが、1薬物の副作用死としては、明らかに多すぎる。因果関係がどうであれ、取り敢えず使用を中断し、使用の是非について検討すべきではないのか。何を躊躇っているのか判らないが、厚労省の対応の仕方には疑問を持たざるを得ない。

  『疑わしきは使用せず』。

これが医薬品使用上の鉄則のはずである。

                                                              

   (2007.12.14.)

医薬品情報管理学[3]

日曜日, 1月 20th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

情報管理の基本

 

1] 守備範囲の決定

 

『情報は限りなく空間を占有する』。

 

情報管理業務を行う上で、最も重要な課題の一つは、蒐集した情報の保管をどうするかということである。病院における医薬品情報管理室を考えた場合、病院より大きな薬局は存在し得ないのと同様、薬局より大きな医薬品情報管理室は存在しない。薬局は病院にとって一つの機関であり、医薬品情報管理室は、1 機関における一つの機能でしかない。従って、膨大な情報量を蒐集したとしても、保管する場所がなければ、それは単なる紙屑を蒐集したに過ぎないということである。

例えば5種類の月刊雑誌を購入しているとして、12冊×5=60冊の雑誌が年間配本されることになる。これだけの雑誌の数を数年にわたって保存するだけで、広大な空間を占有されることになるのである。更に5種類の雑誌で全ての情報を網羅することは困難である。いずれにしろ医療・医薬品に関する情報は際限なく作成される。その全ての情報を1情報管理室で蒐集・管理することは不可能ということである。

情報の奔流の中に三連の水車を設置し、情報を汲み上げたところで、全ての情報を汲み上げることは出来ない。まして情報の奔流をせき止めたとすれば、大洪水を起こし、情報の管理は不可能になる。

従って、1医療機関 の医薬品情報管理室で実行できる情報管理の守備範囲には、自ずから限界があるということである。また、そのことを前提に、業務の推進を図らなければ、情報管理室そのものの機能を停止させかねない。更に直接的な診療報酬の対象とならない情報管理室に、多くの薬剤師を配置するということは、資本主義経済の原則である投下資本に見合う収益性を考えた場合、不可能である。医薬品情報管理室が機能し、新薬採用に伴う致命的な相互作用を阻止したとしても、あるいは医薬品の誤用による事故の際に、情報の提供により致死的状況を防いだとしても、収益性が無いという大前提の下では、人員配置要求も説得力がないということである。

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図5.情報蒐集モデル例-朝倉三連水車(写真提供:倉田稔氏)

 

2]添付文書

 

医薬品の場合、各個別の商品に、その薬に関する情報を添付することが、法的に定められている。従前、『能書(効能書)』、『説明書』、『巻紙』等といわれていたが、法的には『添付文書』である。

添付文書等の記載事項については、薬事法第52条に『医薬品は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包に、次の各号に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生省令で別段の定めをしたときは、この限りではない。』と定められている。

  1. 用法、用量その他使用及び取扱い上の注意
  2. 日本薬局方に収められている医薬品にあっては、日本薬局方においてこれに添付する文書又はその容器若しくは被包に記載するよう定められている事項
  3. 第42条第1項の規定によりその基準が定められた医薬品にあっては、その基準においてこれに添付する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項
  4. 前各号に掲げるもののほか、厚生省令で定める事項

また、添付文書等への記載禁止事項については、第54条『医薬品は、これに添付する文書、その医薬品又はその容器若しくは被包(内袋を含む。)に、次の各号に掲げる事項が記載されていてはならない。』と定められている。

  1. 当該医薬品に関して虚偽又は誤解を招くおそれのある事項
  2. 第14条(第23条)において準用する場合を含む。以下同じ。)又は第19条の2の規定による承認を受けていない効能又は効果(第14条第1項の規定により厚生大臣がその基準を定めて指定した医薬品にあってはその基準において定められた効能又は効果を除く。)
  3. 保健衛生上危険がある用法、用量又は使用期限

*第14条:医薬品等の製造の承認(14-2:前項の承認は、申請に係わる医薬品、医薬部外品等の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等を審査して行うものとし………)。

*第19条の2:外国製造医薬品等の製造の承認

以上に見るまでもなく、医薬品そのものは厚生大臣の許可なしには製造できないものであり、医薬品の使用は、製品に添付されている添付文書によることが当然ということである。つまり医薬品に関する情報の基本は、法律で定められた『添付文書』によるということである。

添付文書は、製薬企業が医薬品として開発すべき『物』を選択して基礎実験を開始し、各段階の臨床試験を実施する過程で蒐集した多くの情報を圧縮して収載したものである。ただし、臨床治験段階の医薬品は、ある意味で“選別した患者”を対象としたものであり、その薬剤の本質的な部分で、一部不明のまま市場に出されるという問題点を抱えている。例えば、

  1. 『腎障害のある患者への投与』
  2. 『肝障害のある患者への投与』
  3. 『高齢者・幼児・小児への投与量』
  4. 『食物・嗜好品と薬の相互作用』
  5. 『母乳中移行』
  6. 『配合変化』

等の情報は、臨床治験段階では、種々の困難があって、簡単には入手出来ない情報だといえる。

情報媒体-010

図6.添付文書の情報内容

 

これらの情報の多くは、臨床現場で医薬品として使用されて初めて確認できる情報であり、時には臨床治験段階では予測されなかった使用によって、初めて入手される情報なのである。

 

3]添付文書情報の重み

 

添付文書情報の重要性は、単に薬事法上に定められた文書というだけではなく、その薬を使用する上で、患者の安全性を確保するための最低限の情報を提供するものであるということである。

『医薬品の添付文書の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するにあたって添付文書に記載された使用上の注意義務に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである』

1996年(平成8年)1月23日、ペルカミンSによる腰椎麻酔に関連した医療事故に対する最高裁判決中に見られる判断である。

1972年(昭和47年)に0.3%-ペルカミンSの添付文書中に、血圧対策として『麻酔剤注入前に1回、注入後は10-15分まで2分間隔で血圧を測定する』の記載が追記された。しかし、この当時の医療上の慣行では『5分間隔で血圧を測定する』というのが一般開業医の常識とされており、1審及び2 審では、これを『当時の医療水準を基準とする限り、過失とはいえない』として患者側が敗訴していた。

これに対し最高裁は『医師が医薬品を使用するにあたって、医薬品の添付文書に記載された使用上の注意事項に従わなかったことについて、特段の合理的理由がない限り、医師の過失が推定される』として、担当医師には『2分ごとに血圧測定を行わなかった過失があり、この過失と患者の脳機能低下症発症との間には因果関係がある』として、原判決を一部破棄し、破棄部分を原審に差し戻しした(その後、高裁で和解)。

[註]

医療水準;一般的には『診療当時の臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるものではなく、診療にあたる当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従って注意義務を尽くしたと、直ちにいうことは出来ない』

添付文書は、患者の安全性を確保するため、その医薬品の効能、危険性等について最も情報を把握している製造業者等にこれを使用する医師等に対し、必要な情報を提供すべく薬事法第52条により義務付けた規定である。

従って、医師が医薬品を使用するに際には、特段の合理的理由がない限り、原則として添付文書の記載事項に従う義務があるとするのは自明のことであり、添付文書の注意事項に高度の規範性を認めたこの最高裁判決は、画期的な判断を示したということが出来る。更に1985年(昭和60年)4月9日の『チトクロームC』の使用方法に関する最高裁判決は、『添付文書に十分な記載がされていなくとも、それに付加し、適切な問診が不可欠であることが臨床医の間で一般的に認められている場合、これに従うべきである』としている。

添付文書に関するこの判決は、最高裁の判決であり、今後の医療訴訟の際の判断基準とされるものであり、医薬品を使用する際、『添付文書は最低限守るべき規範』であるとすることが出きる。

 


1)増田聖子:医薬品の添付文書と医師の注意義務;臨床医,27(4):540-543(2001)

医薬品情報管理学[4]

金曜日, 1月 18th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

情報源としてのインタビューフォーム

 

1]Interview Formの概要

 

Interview Form(以下「IF」と略す)は、当初、病院において医薬品情報を担当する薬剤師が、製薬企業の医薬品情報担当者(以下「MR」と略す)と面談し、情報を蒐集する際、聞き取り調査をするための項目チェックを目的として作成されたものである。しかし、実際には、項目が細分化するにつれて、MRの対応が大変だということで、製薬企業がそれぞれ印刷して配布するようになったという経緯がある。

 情報媒体-004b

図7.添付文書とIFの相関図

添付文書は、薬事法の規定があり、膨大な情報を圧縮するという作業が必要になるが、IFには紙数の制約はなく、また、記載する内容についても、出典が明示される限り、何等制約は設けられていない。つまりIFは、添付文書に収載できない各種情報を詳細に収載できるということで、添付文書に収載された情報の投影図であるとすることが出きる。

 

2]IFの問題点

 

本来であれば、添付文書とIFを蒐集することによって、その医薬品の基本的情報の80%程度が蒐集可能であるという状況が必要であるが、実際には添付文書の焼き直し程度のIFを発行している製薬企業もあり、何の目的で発行したのか意味不明な内容のものもある。更に記載されている項目別に詳細に検討すると、書き込み不足と思われる部分が多い。製薬企業もIFに対する認識を変え、添付文書では出来ない情報を提供する媒体として明確に位置付けるべきである。IFの情報内容が充実すれば、基本的な情報について、一々製薬企業に問い合わせる必要が無くなり、製薬企業側にとっても、大きな利益となるはずである。

 

項目 添付文書 IF
記載内容の法的規制 無 [ただし、出典明記]
記載内容の量的規制
情報の優位性 第1位 補助的
情報の詳細性 限界 無限界
変更情報の確保 即応性 非即応性
収載項目 法規制 日病薬IF委員会設定
情報の範囲 限界 無限界
情報の深度 限界 無限界(文献的裏付)
改訂の即応性

なお、添付文書とIFの記載項目を比較検討すると、表4.の通りである。

I.概要に関する項目

記載項目 IF 添付文書
1. 開発の経緯 改訂新文書(削除)
2.製剤の特徴及び有用性、類似薬との比較
3.主な外国での発売状況

II.名称に関する項目

記載項目 IF 添付文書
4.商品名
5.一般名
6.構造式又は示性式

III.原薬の性状に関する項目

記載項目 IF 添付文書
7.原薬の規制区分
8.起 源
9.物理化学的性状
10.原薬の安定性
11.原薬の確認試験法
12.原薬の純度試験法 (定量法)
13.構造上関連ある化合物又は化合物群

IV.製剤に関する項目

記載項目 IF 添付文書
14.剤 形
15.製剤上の特徴
16.製剤の組成
17.製剤の安定性
18.他剤との配合変化
19.混入する可能性のある夾雑物
20.製剤中の原薬確認試験
21.製剤中の原薬定量法
22.容器の材質
23.その他

V.治療に関する項目

記載項目 IF 添付文書
24.効能・効果
25.用法・用量
26.臨床適用
27.その他の薬理作用
28.診断的特徴

VI.使用上の注意に関する項目

記載項目 IF 添付文書
29."警告"とその理由
30."一般的注意"とその理由及び処置方法
31."禁忌"とその理由
32."慎重投与"とその理由
33.副作用
34.薬物アレルギーに対する注意・試験法
35.高齢者への使用に関する注意
36.妊婦等への使用に関する注意
37.授乳婦への使用に関する注意
38.未熟児、新生児、乳児、幼児、小児への使用に関する注意
39.相互作用
40.臨床検査値への影響
41.適用上の注意
42.薬剤交付時の注意事項
43.過量投与時の処置
44.腎障害時の投与
45.肝障害時の投与
46.その他

VII.薬効薬理に関する項目

記載項目 IF 添付文書
47.薬理学的に関連ある化合物・化合物群
48.薬理作用
49.薬理学的特徴

VIII. 体内薬物動態に関する項目

記載項目 IF 添付文書
50.血中濃度の推移・測定法
51.薬物速度論パラメータ
52.作用発現時間
53.作用持続時間
54.吸収
55.分布
56.代謝
57.排泄
58.透析等による除去率

IX.非臨床試験に関する項目

記載項目 IF 添付文書
59.一般薬理
60.毒性
61.動物での体内動態

X. 取扱い上の注意、包装、承認等に関する項目

記載項目 IF 添付文書
62.有効期限又は使用期限
63.貯法・保存条件
64.薬剤取扱い上の注意点
65.包装・単位
66. 同一成分、同効薬
67.製造・輸入承認年月日、承認番号
68.薬価基準収載年月日
69. 再審査期間の年数
70.長期投与の可否
71.厚生省薬価基準収載医薬品コード
72.国際誕生日

XI.文献

記載項目 IF 添付文書
73.引用文献
74.その他の参考文献
75.文献請求先
76.問い合わせ先
77. 会社名及び住所

 

表4.の各項目は、IF上に設定されている項目である。添付文書欄の○印は、添付文書上に記載されている項目であり、△印は添付文書上に記載されているが、情報源としては、不十分な内容と判断されるものである。空欄は当然のこととして添付文書上には記載されていない情報であることを示す。

 

3]新たに追加が求められる情報

 

上記以外にIF上に更に追加が求められる情報として、次のものが上げられる。

  1. 血管外漏出時の処置:添付文書上に点滴静注時に血管外に漏出した場合、組織障害が起こるの記載がされているが、具体的な処置方法の記載がされていないため、より具体的な処置方法の記載が求められる。
  2. 定期的な検査の具体的間隔:重篤な副作用防止のために、『定期的な検査』の必要性が添付文書上に記載されているが、定期的の具体的な頻度の記載がされておらず、投与初期にはどの程度の間隔で実施するのか、長期投与の際の検査間隔等の具体的記載がされていない。患者の安全性確保のために必要とされる重要な情報であり、より具体的な記載が必要である。
  3. 手術前後の投与上の注意:添付文書の一部には記載されているが、技術的に進歩している現在の手術でも、同様な注意が必要なのかどうか。また必要とすれば、より具体的な処置方法の記載が求められる。
  4. 他臓器障害時の投与上の注意:腎障害時の投与については、具体的な記載が見られるが、肝障害等の多臓器障害時の投与方法についてより具体的な情報。
  5. 妊婦への投与:表記が曖昧であり、FDA評価等の具体例を参照して、実務に役立つ評価法を明示すべきである。
  6. 授乳婦への投与:添付文書上の記載は、具体性のない安易な記載がされており、具体的に臨床現場で役立つ情報を記載

等が求められる。

更に製薬企業は、社内資料として、未公開を前提条件とする資料を持参することがあるが、公表できない情報は情報ではない。最低限IFに収載可能な情報として精度の高い情報にまで高めるべきであり、臨床現場が必要とするより実務的な情報作成の基本姿勢を示すべきである。


  1. 古泉秀夫:医薬品情報管理学[3];THPA,45(1):13-21(1996)

医薬品情報管理学[5]

木曜日, 1月 17th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

添付文書の問題点[1]-副作用表記の不統一性

1]computerによる文書管理

医薬品を使用する際、添付文書が重要な情報源であることに異論はない。また、添付文書が『computer』による情報管理を前提として作成されていないことも承知している。しかし一方で、添付文書が電子媒体化され、厚生労働省の手により『internet』上で公開されるという状況に到達していることもまた事実である。

厚生労働省は添付文書の電子媒体化に際し、文書管理方式としてSGML方式を導入したが、添付文書情報をcomputerで管理するという仕組みを確立するための基本的な部分は、未だに改善されないまま放置されている。

computerで文書を管理する際の最大の問題点は、『検索語』の確立ということである。この検索語の確立という視点から添付文書の副作用表記を見た時、現在の添付文書には多くの問題点が存在する。

2]副作用表記の不統一性

例えば必要があって『低カリウム血症』を惹起する医薬品の集合体を作ろうとする。しかし、『低カリウム血症』という『検索語』を設定し、電子媒体化された全添付文書情報を検索したとしても、副作用として低カリウム血症の記載されている全医薬品の集合体を作ることは不可能である。これは添付文書中に書かれている『低カリウム血症』の表記が、統一化されていないため、添付文書の記載内容を同一のものとして認識しないからである。

治療薬マニュアル 1999[高久史麿・他監修;医学書院]を利用し、『低カリウム血症』と同一の意味を持つ用語を全数調査した結果、同義語として次の9 語が捕捉された。

低K血症・血清カリウム低下・血清K低下・血清カリウムの低下・血清K値の低下・血清カリウム値の低下・血清カリウム値低下・血清K値低下・K低下

更に『味覚障害』を検索語として、JAPICが電子媒体化した情報源を用いて検索をかけると同時に、日本医薬品集1999年版を用いて全数調査を行った結果、同義語として次の用語が記載されていた。

味覚異常・味覚減退・味覚欠如・味覚消失・味覚症状・味覚喪失・味覚低下・味覚倒錯・味覚鈍麻・味覚不良・味覚変化・無味感・苦味感・口中苦味感・口中の苦味感・口中苦味・口中の苦味

『味覚障害』を示す同義語は17語あり、更に電子媒体化された情報の検索結果と図書との間で一致しない結果がでたため、精査したところ『昧覚障害』とする誤転換が見いだされた。たぶん添付文書をOCRを用いて電子媒体化する際に、添付文書上に何等かのゴミが付着しており、『味』を『昧』に誤転換したものと考えられる。

添付文書を電子情報化する意味の一つは、検索語により必要な情報を正確に検索することである。例えば同一の副作用を持つ薬剤の集合体を作成する必要があったとしても、現状では役立たないということである。

添付文書に記載されている副作用は、医師の報告に基づいた表記をそのまま記載するとされているが、そのことが添付文書の副作用の表記を曖昧にし、機械検索に馴染まないとすれば、早急に対応策を講ずるべきである。検索語となる副作用の基本語を定め、それにあわせて添付文書の改訂を行う等の思い切った方策を取るべきである。

ただし、味覚障害の場合、決定すべき検索語は『味覚障害』なのか『味覚異常』なのか。

『味覚障害』では回復不可能な状態を想像させる。しかし、添付文書情報として『味覚異常』とだけ表記されたのでは、患者から「どの様な症状がでるのか」との説明を求められたときに、他の資料を調査しなければ回答できないということになる。従って、『味覚異常(苦味感)』等、具体的な症状の併記をすることにより、添付文書が更に利用価値の高い情報源になるといえる。

光線過敏症・日光性皮膚炎・光線過敏性反応・多形型日光性皮膚炎・日光皮膚炎・光線過敏性皮膚炎

『光線過敏症』の同義語は5語あり、『光線過敏症』で機械検索(完全一致)した場合、同義語で記載された薬剤は検索できない。最終的にはマニュアル検索(曖昧検索=目視検索)により添付文書要約情報をまとめた成書を検索する事が必要である。

3]副作用表記の揺れ

1997年6月改訂のハイゼット錠の添付文書中-副作用の項『消化器』では、『ときに嘔吐、下痢、またまれに便秘、腹部不快感、食欲不振、腹痛、腹部膨満感、腹鳴、胸やけ、呑酸、無味感、口内炎』の記載がされている。治療薬マニュアル2000年版でも同様の表記となっており、現在もなお改訂されていないはずである。

この添付文書の表記の何が問題かといえば、『呑酸』とされている部分である。『呑酸』について医学大事典(南山堂)では、『呑酸?囃(ドンサンソウソウ)』という熟語と共に=『胸やけ』と紹介されている。しかし、大辞典では『呑酸』=『おくび』であり、『?囃』については不明である(・=口+曹)。

『おくび』=『?気』=『げっぷ』ということからすれば『呑酸?囃』は『げっぷ』がお囃子の如く騒々しいことということであろうか。更に『げっぷ』は時に『胸やけ』を伴うとされているが、ハイゼット錠の添付文書の表記は“胸やけ”なのか“げっぷ”なのか。“胸やけ”であるとすれば呑酸の前の“胸やけ”の表記はどうするのか、“げっぷ”であるなら、“?気”あるいは“げっぷ”と書くべきで、ここまで調べてなければ理解できない用語を添付文書に残しておくのはどうかということである。最も『げっぷ』あるいは『?気(アイキ)』についても、『?気』の表記では『おくび』と読むことは無理があり、添付文書の表記は『げっぷ』に統一すべきである(・=口+愛)。

更に添付文書によっては『陰萎』とする表記がされており、一方で『インポテンス・インポテンツ』の表記が見られる。しかし、『陰萎= impotence』であり、例えば『インポテンス』を惹起する薬剤の一覧が欲しいといわれたとき、『陰萎・インポテンツ』に気付かなければ、完成度の高い資料の作成は困難である。

少なくとも報告されている副作用の表記の揺れは、気付いた時点で排除すべきである。

4]機械検索への対応を

添付文書を電子媒体化する目的の一つとして、機械検索による情報検索の高速化がある。機械検索の最大の特徴は「完全一致検索」ということであるが、一方で、最大の欠点ともなるのがこの「完全一致検索」なのである。つまり検索語が完全に一致しなければ、情報の集合体の中に必要とする情報が含まれていたとしても検出できないということであり、機械検索の後に印刷媒体を用いて曖昧検索である目視検索を行わなければ精度の高い情報の入手ができないとすれば、電子媒体を利用する効果は半減する。ただ、精度の問題については、情報を作成するヒトの側の人為的な誤りが起こり得るので、常に100%を期待することには無理があるが、より完成度の高い情報源に進化させることは可能である。

患者の服薬指導に際し、『処方薬の入力、登録情報の総覧、必要情報の検索・抽出』等の作業が自動的に行える仕組みが出来上がれば、副作用を回避する情報・健康食品と薬の相互作用等の情報を含めたより高度な情報基盤の構築が可能になるはずである。

その為にも添付文書の用語の整理を図るべきである。特に副作用の表記の統一化は、何等法律等の改正なしにできることではないかと思われるので、厚生労働省が早急に取り組むことを期待したい。


  1. 古泉秀夫:添付文書の問題点[1]-副作用表記の不統一性;薬事新報,第2133号:1166-1167(2000)
  2. 南山堂医学大事典;南山堂,1992

医薬品情報管理学[6]

月曜日, 1月 14th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

添付文書の問題点[2]-使用上の注意-相互作用

[1] 使用責任の下方移行

同一薬効群に属する薬の一つに、何等かの事象が発現すると、その薬効群に属する全ての薬物の添付文書に、同一の注意書きが書き加えられるか、同一の内容を類推させる近似の注意書きが書き加えられる。追加記載を指示する厚生労働省や追加記載を実行する製薬企業は、そのことによって行政責任や Product Liability Prevention(製造物責任防衛)を果たせるということであろうが、臨床現場で仕事をする立場からすれば、全ての責任が処方医あるいは情報管理者である薬剤師に下方移行されていると見えるのである。

まして臨床上具体的な事象がでた薬物と具体的事象はでていないが、同一薬効群であることを理由に、同一記載・類似記載をした薬剤の区分が、甚だ曖昧であるということが、臨床現場での判断を困難にしている。勿論、同一系統・同一薬効群に属する薬剤が、将来同様の事象を起こさないという保証はないということは理解しているが、起こり得る事象を予測して注意を喚起する記載と、現実にその事象が臨床的に発現した事例では、より明確な書き分けが必要ではないかということである。

それをしない限り、添付文書の文書配列の順番を変えてみたところで、記載内容に対する情報価値を高めることはできないし、情報源としての信頼性の確保も困難である。

[2] 禁忌-アスピリン喘息

現在、市販されている消炎・鎮痛剤の殆どの添付文書に、禁忌として『アスピリン喘息又はその既往歴(NSAIDs等による喘息発作誘発)』の記載がされている。

この記載は、塩基性抗炎症薬に分類されている下記の3種類のうち、epirizole、tiaramide hydrochlorideの2種類にもされているが、emorfazoneでは『アスピリン喘息』に関する禁忌は記載されていない。

この経緯について、次の報告がされている。

一般名・商品名(会社名) 作用機序 禁忌(過敏症)
emorfazone

ペントイル錠(ヘキサル)

[適]1)以下の疾患並びに症状の消炎・鎮痛:腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症、会陰裂傷。

2)手術後並びに外傷後の消炎・鎮痛。

強力な鎮痛・解熱・抗炎症作用を示す。血管壁安定化作用により血管透過性亢進を抑制し、白血球の遊走を抑制するほか、特にキニンの遊離を抑制し、また発痛物質ブラジキニンの発痛作用に拮抗することが認められている。

プロスタグランジンの生合成阻害作用は認められない。

本剤成分-過敏症既往歴。
epirizole(mepirizole)

メブロン錠(第一三共)

[適]1)各科領域の手術並びに外傷後の鎮痛・消炎。

2)以下の疾患の消炎・鎮痛:腰痛症、頸肩腕症候群、関節症、神経痛、膀胱炎、子宮付属器炎、会陰裂傷、抜歯、智歯周囲炎、歯髄炎、関節リウマチ。

3) 以下の疾患の鎮痛:急性上気道炎。

炎症局所に末梢性、中枢性の鎮痛作用が協力的に働く。下垂体-副腎系に関与しない抗炎症作用がある。 本剤成分-過敏症既往歴。アスピリン喘息又は既往歴(NSAIDs等による喘息発作誘発)。
tiaramide hydrochloride

ソランタール錠(アステラス)

[適]1)各科領域の手術並びに外傷後の鎮痛・消炎。

2)以下の疾患の消炎・鎮痛:関節痛、腰痛症、頸肩腕症候群、骨盤内炎症、軟産道損傷、乳房鬱積、帯状疱疹、多形滲出性紅斑、膀胱炎、精巣上体炎、前眼部炎症、智歯周囲炎。

3)抜歯後の鎮痛・消炎。

4)以下の疾患の鎮痛:急性上気道炎。

炎症部位で起炎因子のヒスタミン、セロトニンと強く拮抗し、急性炎症を特異的に抑制する。 本剤成分-過敏症既往歴。アスピリン喘息又は既往歴(NSAIDs等による喘息発作誘発)。

塩基性抗炎症薬のうちtiaramide hydrochlorideについては、国内においてアスピリン喘息で負荷陽性の報告があったため、1994年の再評価のときに添付文書中に「投与禁忌」の記載が追加された。しかし、その報告内容は十分なものではなかった。延べ患者数で100例以上のアスピリン喘息患者にtiaramide hydrochlorideを処方してきたが、発作の悪化やピークフロー値の低下を認めた症例は皆無であったとする報告が見られる。

塩基性抗炎症薬のうちemorfazoneについては、1994年当時、再評価対象外であったため、[禁忌]蘭に『アスピリン喘息』の記載はされていない。

また塩基性抗炎症薬は、酸性抗炎症薬と異なりサイクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害しないため、アスピリン喘息患者にも安全に使用できるとする報告がされている。消炎・鎮痛剤であっても、塩基性のものでは、誘発作用があったとしても弱いか、あるいは殆ど無いと考えられている。

その他、acetaminophenについても、次の報告がされている。

一般名・商品名(会社名) 作用機序 禁忌(過敏症)
acetaminophen(paracetamol)

カロナール錠・細粒・シロップ

(昭和薬化工)

[適]1)頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、癌による疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛。

2)以下の疾患の解熱・鎮痛:急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)。シロップ:小児科領域の解熱。

視床下部体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張し、体温の放散を増大して発熱時体温を下降する。サリチル酸誘導体と異なり、抗リウマチ及び消炎作用を欠くが、サリチル酸誘導体と同様、作用機序は不明確だが、中枢性の鎮痛作用を呈する。 本剤成分-過敏症既往歴。アスピリン喘息又はその既往歴(NSAIDs等による喘息発作誘発;アスピリン喘息発症にPG合成阻害作用関与)

acetaminophenについても、添付文書中に『アスピリン喘息』は[禁忌]とする記載がされている。しかし、一方では『アスピリン喘息』既往者に対しても安全に投与することができる薬剤として報告されている。またWHOの喘息ガイドラインにも使用可能な消炎・鎮痛剤としてリストアップされている(ただし、初期は半量から投与し、2-3時間症状観察)とする報告が見られる。

ただし、喘息患者の場合、寛解期よりも有症状期の方が負荷閾値が低下することはよく知られているため、アスピリン喘息患者が少しでも喘息症状を伴っている時は、通常使用量の acetaminophenでも危険である。またアスピリン喘息の患者に対しては、高用量のacetaminophenは[禁忌]であるとする報告も見られる。

aspirin喘息誘発の機序については、未だ明確にされていないが、アラキドン酸カスケードにおけるサイクロオキシゲナーゼ(COX)抑制作用との関連があるとされている。しかし、化学構造上の類似性は必ずしもない。aspirinとインドール系酢酸のindometacinは強力な誘発作用を持つが、構造は全く異なっている。

*アスピリン喘息誘発作用の特に強いもの aspirin、indometacin、ibuprofen、aminopirin、diclofenac、naproxen、piroxicam等
*アスピリン喘息誘発作用のかなり特に強いもの mefenamic acid、flufenamic acid等

また、同じサリチル酸系であっても、sodium salicylate(サリチル酸ナトリウム)は、aspirinとは異なり殆ど誘発作用はないとされている。

その他、サリチル酸製剤では『重要な基本的注意:サリチル酸系製剤とライ症候群との因果関係は明らかでないが、関連性を疑わせる疫学調査報告がある。15 歳未満の水痘・インフルエンザの患者にやむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察する』とする注意事項が添付文書に記載されたが、『サリチルアミド、エテンザミドについては、他のサリチル酸系薬剤と異なり、代謝によりサリチル酸を生じないが、一層の安全性の観点から同様の使用上の注意を記載する』として一括処理されている。

[3] 飲食物と薬物相互作用の考え方

飲食物と薬物の相互作用は、患者のQualiy of Life(QOL)に配慮する上からも単なる規制であってはならない。薬物服用中に喫食した患者に、臨床的な悪影響がでたという絶対的な『禁忌』ということであれば、喫食の中止もやむを得ないが、『併用注意』という程度のことであれば、食生活を規制するのではなく、飲食物と薬物の相互作用を回避しつつ、飲食物の摂取制限なしに薬物の服用ができるよう折り合いを付ける工夫が必要である。飲食物中の果実や野菜等は、その生育場所や気象条件等によって、含有する成分の同一性が必ずしも保証されているわけではない。従って、飲食物と薬物との相互作用は、必ず発現するとは限らないという曖昧性を持っている。

まして、薬物療法により完治しない高血圧症等では、2~3週間の薬物の服用で、治療が終了するということではない。服用開始から終命までの長期にわたって、基礎疾患である高血圧症等に起因する摂食制限が指示される。従って、相互作用による摂食制限を上乗せすることは、極力避けるべきであり、また患者の注意事項遵守を高める上からも、制限事項の数は増やすべきではないといえる。

[4] カルシウム拮抗剤とグレープフルーツジュースの相互作用

Ca 拮抗剤と飲食物の相互作用について、多くの文献報告がみられる。実験に使用されたグレープフルーツジュース(以下GF-j)は、濃縮ジュースを2倍に水で希釈してとする報告等も見られるが、中には生果を絞ったジュースなのか濃縮ジュースなのかの見分けがつかない報告も見られるようである。

実際に試験的に実施した搾汁では、1個455gのグレープフルーツから搾汁できたジュースは180mL、1個430gのグレープフルーツから搾汁できたジュースは210mLである。天然果汁の場合、水分量は89.5%であるのに対し、濃縮果汁では水分量44.1%とする報告もされており、含有成分量も当然異なることが考えられる。

現在市販されているCa拮抗剤のうちdihydropyridine系薬剤であるamlodipine besilateでは、GF-jとの相互作用の記載はされていない。同様にdiltiazemに属するdiltiazem hydrochlorideにも、相互作用に関する記載はされていない。更に具体的な臨床例が報告されていないため、記載する必要が無いと考えられる nilvadipineでは、『本剤の作用が増強されるおそれがある。ただし、本剤に関する症例報告はない:相手薬が本剤の代謝酵素(P450IIIA4)を阻害するため、本剤の血中濃度を上昇させるおそれ[添付文書,2001.7.改訂]』の記載がされている。

また、aranidipineでは添付文書に『他のCa拮抗薬(ニフェジピン等)でその血中濃度が上昇したとの報告がある:GF-jに含まれる成分が薬物代謝酵素チトクロームP450を阻害し、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある[サブレスタ顆粒添付文書,2000.3.改訂]』の記載がされているが、この薬剤では、現実的な事例は何等報告されていないということである。benidipine hydrochloride についても、添付文書には『血圧が過度に低下するおそれがある。GF-jが肝臓における本剤の代謝を阻害し、本剤の血中濃度が上昇[添付文書, 2000.4.改訂]』の記載がされている。

しかし、企業からの添付文書改訂情報では『本剤とグレープフルーツジュースとの相互作用については、従来より、国内においてグレープフルーツジュースの同時服用により塩酸ベニジピンの体内動態に変化が見られたとする知見が得られており、添付文書中の「適用上の注意」に、同時服用により本剤の血中濃度が上昇したとする報告があるある旨が記載されていた。

今回は、平成9年4月の添付文書の記載要領の変更により、[相互作用]の項については、「飲食物との相互作用についても重要なものを含む」とされたことから、[相互作用]の項に移動が行われた。なお、今回の[相互作用]の項では、血圧が過度に低下するおそれがあるとの記載となっているが、現在のところ、『同時服用により血圧が過度に低下したとする報告はなく』、本剤の血中濃度が上昇する懸念があることに基づいての内容となっている。』とする解説がされている。

そのほか、verapamil hydrochlorideでは、経口剤の添付文書にはGF-jとの相互作用が記載されているが、注射薬の添付文書には記載されていない。経口剤のみが問題であるとすれば、肝の薬物代謝酵素P450が抑制されるということでは、説明が付かないということになる。事実GF-jとの相互作用について、肝におけるCYP3A4の抑制ではなく、消化管に選択的に作用し、小腸上皮細胞のCYP3A4含有量を低下させるのではないかとする報告等も見られている。

これらの情報を検討するとCa拮抗剤とGF-jの相互作用は、限られた一部の薬剤では要注意情報であるが、他のCa拮抗剤では、患者に予測されない副作用が発現したときに検討する課題の一つと理解しておくことでいいのではないかと思われる。

ただ、Ca拮抗剤の添付文書で、理解できないのはfelodipine等で記載されている「患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な処置を行う。GF-jを同時服用をしないよう指導すること[添付文書,2001.6.改訂]」という記載である。

『患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な処置を行う。』とされているが、医療関係者が患者の状態を注意深く観察できるのは入院中だけであり、外来通院患者では観察は不可能である。この添付文書の表記は一体誰に何を期待しての記載なのか、苦慮するところである。

また、GF-jとの相互作用報告は、殆どGF-jによる実験結果であり、果実についての報告は見られていない。また、Ca拮抗剤服用中の患者が、果実を喫食しても『過度の血圧低下』等は見られていないという臨床医の意見もあり、その意味では、Ca 拮抗剤服用患者に、グレープフルーツの喫食を禁止する必要はなく、過度の喫食は避けるよう注意することでいいのではないかとおもわれる。更に現在、GF- jとの相互作用がいわれていないCa拮抗剤もあることから、それらの薬剤を選択することで、患者の生活を何等規制することなく治療は可能であるとすることもできる。

[5]グレープフルーツジュースとの相互作用に関する添付文書の記載一覧

一般名・商品名(商品名) 結果 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
[214]amlodipine besilate
ノルバスク錠(ファイザー)
記載無[添付文書,2001.7.改訂]  
[214]aranidipine
サブレスタ顆粒(大鵬)
他のCa拮抗薬(ニフェジピン等)でその血中濃度が上昇したとの報告がある。 GF-jに含まれる成分が薬物代謝酵素チトクロームP450を阻害し、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある[添付文書,2002.9.改訂]
[214]barnidipine
hydrochloride
ヒポカカプセル(アステラス)
作用増強(?) 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強される恐れがある。 GF-jによりCYP3A4が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する[添付文書,2002.7.改訂]
[214]benidipine hydrochloride
コニール錠(協和醗酵)
作用増強(?) 血圧が過度に低下するおそれがある。 GF-jが肝臓における本剤の代謝を阻害し、本剤の血中濃度が上昇[添付文書,2000.4.改訂]
[214]cilnidipine
アテレック錠(持田)
本剤の血中濃度が上昇することが確認されている。 発現機序の詳細は不明であるが、GF-jに含まれる成分が本剤の薬物代謝酵素のCYP3A4を抑制するためと考えられる。[添付文書,2001.11.改訂]
[214]efonidipine
hydrochloride

ランデル錠(塩野義)

作用増強(?) 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがある。患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な措置を行う。また、GF-jとの同時服用をしないよう指導すること。 発現機序の詳細は不明であるが、GF-jに含まれる成分がCa拮抗剤の代謝酵素(チトクロームP450)を抑制し、クリアランス低下させるためと考えられている。[添付文書,2002.4.改訂]。
[214]felodipine
スプレンジール錠(アストラ)
作用増強 本剤の血中濃度が上昇したとの報告がある。患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な措置を行う。GF-jとの同時服用をしないよう指導すること。 GF-jに含まれる成分が本剤の小腸での代謝(チトクロームP450)を抑制し、クリアランスを低下させるためと考えられている。[添付文書,2001.6.改訂]
[214]manidipine
hydrochloride
カルスロット錠(武田)
血中濃度上昇 本剤の血中濃度が上昇することが報告されている。 GF-j中の成分が、本剤の肝薬物代謝酵素であるCYP3A4を阻害することが考えられている[添付文書,1998.3.改訂]
[214]nicardipine
hydrochloride
ペルジピン錠(アステラス)
作用増強(?) 本剤の作用が増強されるおそれがある。 GF-jが肝の薬物代謝酵素P450を抑制し、本剤の血中濃度上昇[添付文書,2001.9.改訂]
[214]nifedipine
アダラートL錠
(バイエル)
作用増強 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがある。 発現機序は不明であるが、GF-jに含まれる成分が本剤の肝代謝(チトクロームP-450酵素系)反応を抑制し、クリアランスを低下させるためと考えられる →患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合、本剤を減量するなど適切な処置を行う。GF-jとの同時服用をしないように注意する[添付文書,1999.10.改訂]
[214]nilvadipine

ニバジール錠(アステラス)

本剤の作用が増強するおそれがある。ただし、本剤に関する症例報告はない 相手薬が本剤の代謝酵素(P450IIIA4)を阻害するため本剤の血中濃度を上昇させる恐れ[添付文書,2001.7.改訂]
[214]nisoldipine
バイミカード錠(アストラ)
作用増強 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがある。患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合、本剤を減量するなど適切な処置を行う。GF-jとの同時服用しないよう注意する。 発現機序の詳細は不明であるが、GF-jに含まれる成分が本剤の肝代謝(チトクロームP-450酵素系)反応を抑制し、クリアランスを低下させるためと考えられている[添付文書,2000.10.改訂]
nitrendipine
バイロテンシン錠
(田辺三菱)
作用増強 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがある。患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な措置を行う。また、GF-jとの同時服用をしないよう指導すること。 発現機序の詳細は不明であるが、GF-jに含まれる成分が本剤の肝代謝酵素(チトクロームP-450)を抑制し、クリアランスを低下させるためと考えられている。[添付文書,2001.11.改訂]。

(2)verapamil

一般名・商品名(商品名) 結果 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
verapamil hydrochloride
ワソラン錠(エーザイ)
血中濃度上昇 本剤の血中濃度を上昇させることがある。異常が認められた場合には、本剤を減量するなど適切な処置を行うこと。また、GF-jとの同時服用をしないよう注意すること。 GF-jに含まれる成分のチトクロームP450(CYP3A4)の阻害作用により、本剤の血中濃度を上昇させる[添付文書,2003.2.改訂]
verapamil hydrochloride
ワソラン注(エーザイ)
記載無[添付文書,2002.4.改訂]

(3)diltiazem

一般名・商品名(商品名) 結果 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
diltiazem hydrochloride
ヘルベッサー錠・注(田辺三菱)
記載無[添付文書,2002.4.改訂]

[6]グレープフルーツジュースその他の薬剤による相互作用[相互作用-併用注意]の項に以下を追記。

グレープフルーツジュース[QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作用を起こすおそれがあるので、グレープフルーツジュースの同時服用をしないように注意する。]

改訂の理由:グレープフルーツジュースとの相互作用の臨床報告はないが、欧州の添付文書を参考にして[相互作用]の項に追記した。

[発症機序]本薬はチトクロムP450 3A4(CYP3A4)で主に代謝されるが、グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害する。これらを併用すると、本剤の代謝が阻害されて血中濃度が上昇し、QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作用が発現する可能性があると考えられる。

[専門医からのコメント]グレープフルーツジュースと医薬品の相互作用については、最初フェロジピンを初めとするカルシウム拮抗剤で盛んに研究され、当初はグレープフルーツジュース中に含まれるナリンジンなどのフラボノイド類が原因物質と考えられていた。しかし、最近の研究では、グレープフルーツジュース中に含まれるフラノクマリン誘導体が主に小腸のCYP3A4を阻害するために起こる現象であるとされている。

フラノクマリン誘導体はグレープフルーツジュースの実(果実)に多く含まれているが、天然物であるため含量のバラツキが非常に大きい。また、オレンジ、ミカン、レモン、ザボン、ボンタン、ナツミカンにはこの物質は含まれないとされている。理論的には、CYP3A4で代謝される医薬品についてはグレープフルーツジュースとの相互

作用の可能性を念頭に置く必要があるが、実際にどの程度の影響が現れるのかについては、医薬品の種類や服用者の感受性によってかなりの差があるようである。

今回のpimozide における改訂についても、実際の臨床報告はないとのことであるが、やはりCYP3A4で代謝されるものであるため、相互作用の発現には注意が必要である。

グレープフルーツジュースとの同時服用でない場合、具体的に何時間ぐらい空ければよいのか等についての詳細なデータは報告されていない[会社報告]。

[薬局での留意事項]本剤を服用する患者に対しては、グレープフルーツジュースでの同時服用をしないよう助言する。

(参考)ピモジドと相互に作用するチトクロムP450の確認と特性[Desta Z.et al:J.Pharmacol.Exp.Ther.,285:428-437(1998)]

ヒト肝ミクロゾーム及び組換え型ヒトチトクロムP450(CYP450)を用いて、ピモジドの主要代謝経路及びCYP450阻害作用などについて検討した。その結果、in vitroでのピモジドの主要代謝経路は1,3-dihydro-1-(4-piperidinyl)-2H-benzimidazol-2-ne (DHPBI)への酸化的N-脱アルキル化で、これにはCYP3AとCYP1A2が関与しており、CYP3Aは主要な役割を果たしていたが、CYP1A2 の関与は僅かであった。また、文献上CYP2D6はピモジドを代謝するかもしれないと示唆されているが、試験結果ではピモジドからDHPBIへの代謝に CYP2D6は影響を及ぼさず、ピモジドのCYP2D6に対する強い阻害作用が見られた。

これらの結果から、CYP3Aの阻害剤であるアゾール系抗真菌剤やマクロライド系抗生剤、及びフルボキサミンやキノロン系抗生剤のような CYP1A2の阻害剤との併用は副作用の危険性がより大きくなることが予想され、リファンピシン、カルバマゼピンのようなCYP3Aの代謝誘導剤の存在下ではピモジドの作用が減弱する可能性が考えられる。また、喫煙者ではCYP1A2活性が亢進しているため、より高用量のピモジドが必要かもしれない。

いずれにしろ現段階では、Ca拮抗剤とG-jの相互作用に関する情報は輻輳している。患者のQOLを考慮した場合、服用薬剤毎に個別の対応が必要であり、添付文書の記載内容は、その指針を提供する情報源でなければならない。

しかし、現状の表記は、甚だ曖昧な部分が多く、臨床現場で患者に対応する薬剤師にとって、解読に難儀する表記がされているのではないかといえる。製薬企業としては、現状の学問的到達点を整理すると共に、より理解し易い文書表現とすべきであるといえる。


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. 厚生省医薬安全局:医薬品等安全性情報,No.151:2(1998.12.)
  3. 権田秀雄・他:アスピリン喘息;医薬ジャーナル,24(5):999-1003(1988)
  4. 谷口正実・他:アスピリン喘息に対する解熱鎮痛薬の安全な使用法-質疑応答第25集;日本医事新報社,1998
  5. 栃木隆男:アスピリン喘息患者の感冒罹患時における麻黄附子細辛湯の使用経験;漢方診療,11(9):29-31(1992)
  6. ピモジドとグレープフルーツジュースの相互作用[平成12年4月3日 企業自主改訂];日薬医薬品情報,4(5):20-22(2001.5)
  7. 香川 綾・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1997
  8. 金子孝子:グレープフルーツジュースとカルシウム拮抗剤の相互作用に関する患者への情報提供;日病薬誌,36(11):1547-1549(2000)

紅葉巡礼(2)

日曜日, 1月 13th, 2008

鬼城竜生

前回の散策では、納得する紅葉の写真が撮れなかったため、2007年12月6日、再度紅葉の写真を撮るべく出かけた。

品川駅から山手線で代々木駅に、代々木駅で中央線に乗り換え千駄ヶ谷駅で下車した。改札口を出て、右に行くか左に行くか迷ったが、見事に黄葉していた銀杏の木に惹かれて右側に行くことにした。銀杏並木が続き、何処を見ても黄葉、黄葉という風景に驚いたが、同時に、この黄葉が散った後の掃除は大変だろうな等とつまらないことを考えながら歩いたが、行き着いた先は“明治神宮”だった。
明治神宮-01 別に“明治神宮”を目指していたわけではなく、どちらかといえば“聖徳記念絵画館”方面を目指していたので些か当てが外れたが、昼飯前で戻る気力はなく、そのまま明治神宮内を散策することにした。
紅葉を見るという目的からすると、“明治神宮”の参道には紅葉する木はあまり見られなかった。ただ、広い参道に落葉が風に舞い、小さな子が頻りに椎のみを拾っていたが、付き添いの明治神宮-03父親は些かうんざりした顔で付き合っていた。
それはそうだろう。

女の子は無闇に落ちている椎のみに興奮して拾いまくっていたが、父親の手には既にB5版のビニール袋に半分程度の椎のみがあり、これを持ち帰ってどうするんだという思いが先に立ったということなんだろうが、大人と子供では価値観が違うということの典型みたいな雰囲気が見られた。

枯れ葉舞う/椎拾う子の/小さき背に

椎拾う/子に参道の/枯れ葉舞う

枯れ葉舞う/神宮道の/巨木かな

狙った写真は撮れないということで、今回は銀杏の黄葉だけかと思いながら大鳥居をくぐり、原宿方面に抜けようとした時、竹垣に囲まれた庭があるのが見えた。どうやら明治神宮御苑の東門の前に立ったようであるが、この門からは入れないので、北門に回れと書かれていた。

入り口を見た時はさほどの庭とは見えなかったが、この”御苑“、江戸の初期には『加藤家、その後は井伊家の下屋敷の庭園であったものが、明治時代には宮内省所管となり、代々木御苑と呼ばれて明治天皇、昭憲皇太后が度々訪れた庭園であるとされている。

総面積は約83,000平方メートル、曲折した小径がクマザザの間を縫い、武蔵野特有の雑木林の面影をとどめていると紹介されている。隔雲亭(写真)は昭憲皇太后が別荘として使用していたといわれているようで、この縁側からは庭を通して南池が見えるようになっているようであるが、内部の見学は認められていないので、確認はしていない。

明治神宮-04
隔雲亭の前を通って緩やかな坂を下ると、池に張り出した形で御釣台が見られる。これは説明書によると昭憲皇太后が魚釣りを楽しまれたところだというが、その当時何が釣れたのか、今見ると釣れる魚の種類は限定されていたのではないかと思われた。せいぜい鯉か鮒程度だったのではないだろうか。池沿いの道を奥に入ると菖蒲田があり、時期になると見栄えのする菖蒲田になるの ではないかと思われた。

菖蒲田から清正井の方を見ると見事な紅葉が見られたが、期待していなかっただけに思わぬ眼の保養をさせていただいた。何しろ人の数が少ないのが佳かった。静かに落ち着いて鑑賞することが出来たということである。

帰りは原宿口休憩所にある食堂で日本酒を1本と蕎麦を注文したところ、蕎麦はどういう訳か鰊蕎麦が出てきた。鰊蕎麦は専ら京都のものと思っていただけに驚いたが、別に何処で出しても良い訳で、驚く方がおかしいのかもしれない。

(2008年1月10日)

医薬品情報管理学[7]

日曜日, 1月 13th, 2008

医薬品情報21

古泉秀夫

医薬品情報提供媒体の評価

1.人為的失敗は常に存在する

どの様に優れた資料であっても、その作成の各段階で『人間』が係わる限り、常に誤りは存在する。作成する側は、最大限の注意を払い、努力をしたとしても、それでもなお『間違い』から完全に逃れることはできない。つまり『人間』の行動は、常に間違いを侵す危険性の上に成り立っていると考えておくことが必要である。

資料情報の成立を考えた場合

  1. 研究者の研究結果表記上の誤りあるいは文意表現の失敗
  2. 引用文献の誤読・引用時の誤記
  3. 編集者の校正時の見逃し

等の間違いを侵す機会が存在する。更に最近では、電脳の発達による筆記の機械化により、入力時の失敗、文字変換時の機械的失敗等に陥る機会が増えている。またOCRの利用により原文を機械的に変換することが行われているが、機械の精度がよくなるにつれて、人の眼ではつい見逃してしまうような紙本体の塵までが文字と認識され、結果的に誤植となるような事例も見られる。

2.具体的事例

2-1. 添付文書情報をOCRで取込み提供する情報サービス

『味覚障害』 → 『昧覚障害』

の誤植がされていたため、機械検索では異字として認識された例である。
人が眼で校正する場合、何気なく見逃してしまいがちであるが、電脳の精度が上がるにつれ、読取りが困難になる例が生じてくる。電脳を用いて検索を行った場合、これらは異字として認識されるため、検索結果からは脱落する。
従って、電脳で検索する場合、『検索された結果』が全てではないということを常に認識しておかなければならない。検索できないから『無』のでなく、あっても検索できない事例があることを常に頭に入れておくことが必要である。

2-2. 調査結果から誤記・誤植等が判明した事例

*『Burow’s(ブーロヴ液)』についての調査

調査依頼者から添付された資料によると『Burow’s solution: ブーロヴ液(アルブミンの塩基性酢酸塩と氷酢酸の製剤。皮膚の防腐及び収斂薬として用いる)[ステッドマン医学大辞典改訂第3版;メディカルビュー社]。』

しかし、調査の結果Burow’s solutionについては、次の報告がされていた。

Burow’s solution;Aluminum Acetate Solution(USP

本品の処方内容は、次の通り。

  • 塩基性酢酸アルミニウム液……545cc
  • 氷酢酸……………………………………15cc
  • 水………………………………………… 適量
  • 全量………………………………………1000cc

本品100cc中に(CH3COO)3Al:4.8~5.8w/v%を含み、pH4程度。用時10倍に希釈して用いるが刺激が強い。またこのブロー液は次のようにして作ることができる。
酢酸鉛150gを半量の水に溶かし、別に硫酸アルミニウム液87gを半量の水に溶かした後、前者の冷液を後者に攪拌しながら徐々に注加し、混合して1日放置、上清液を1000ccとする。
ブロー氏液にはまた次のような処方がある。

  • 酢酸鉛—–1.5g
  • 明礬——1.5g
  • 水——-適量
  • 全量——1000cc

以上を濾過して使用。
但し、上記処方例は旧処方例であり、6局では「酢酸アルミニウム液 USP」として紹介されている。
酢酸アルミニウム液は100mL中塩基性酢酸アルミニウム[Al(OH)(CH3CO2)2=162.06]7.3~8.3gを含む。塩基性酢酸アルミニウムの溶液は、その製法により組成は必ずしも一定しないので、局方は製法を規定している。本品はもと明礬と鉛糖を混合して作ったブロー氏液の改良品で、鉛を全く含まないため無害である。
本品は無色澄明の液で、酢酸臭と収斂性の甘味を有し酸性である。本品はコロイド溶液であって、チンダル現象を起こす。貯蔵すれば塩基性の多い塩の分離により、混濁し沈殿を生ずる。

  • 処方:0.6%- ブロー氏液
  • 8%-酢酸アルミニウム液(E.T.E)—75mL
  • 滅菌蒸留水——適量
  • 全量——–1000mL

8%-酢酸アルミニウム液(E.T.E)

  • 硫酸アルミニウム——1000g
  • 沈降炭酸カルシウム—–460g
  • 酢酸——1200mL
  • 酒石酸 ——-120g
  • 滅菌蒸留水—-適量
  • 全量—-4600mL

製法:3号グラスフィルターで吸引濾過した蒸留水1000mLを、115℃-30分間の高圧蒸気滅菌し、冷後蒸留水75mLを抜き取り、8%-酢酸アルミニウム液75mLを加えて製する。

8%-酢酸アルミニウム液(E.T.E)

  1. 陶製液量計に蒸留水2700mLを入れ、硫酸アルミニウムをガーゼに包んで吊し、静置して溶解する(約一昼夜)。これをろ過したろ液に蒸留水を加え、蒸留水を加え、比重計を用いて比重を1.152(15℃)に調節する。
  2. 別に沈降炭酸カルシウム460gに蒸留水600mLを加え、乳鉢で研和する。
  3. (2)を(1)に徐々に加え、続いて酢酸1200mLを加えて時々撹拌しながら放置する(3日間)。
  4. (3)の上澄みをろ過し、ろ液に蒸留水を加えて比重1.011~1.048(15℃)に調節し、安定剤として酒石酸120gを加えて調製した液の上澄液をろ紙でろ過する。

貯法:気密容器に入れ、なるべく冷所に貯えなければならない。漸次白色の沈殿物を生ずる。硝子栓の使用は膠着する恐れがある。
薬効:アルミニウムに起因する収斂性を有し、そのため消毒力もある。また創傷面の分泌を抑制し、肉芽発生を促進する。比較的刺激が少ない。
適応:収斂剤、防腐剤で10倍に薄めて咽喉炎の含嗽料、潰瘍面の洗浄用とし、またガーゼに浸して腫瘍等に包帯料とする。
収斂剤として専ら外用として用いる。鼻、耳、膣、子宮などの悪臭分泌物の洗浄剤としては2~15倍の希釈液を用い、また広く炎症性又は水疱性の皮膚疾患に冷罨法剤とする。口腔炎のうがい液としては0.25~0.5%液を用いる。
なお、ステッドマン医学大辞典改訂第3版中に記載されている「アルブミン」は、酸により変性するはずであり、明らかに「アルミニウム」の誤植であると考える。また、出典内容に基づき火傷の専門医に確認したところ、ブロー氏液のことではないかとする見解が得られた。

*ヨードに対するアルコールの影響

『業務に必要な図書を見ていたところ、皮膚消毒に関する記載中にヨード剤とアルコールの併用は不可とする記載がされていた。両剤の併用に問題があるのか。』とする調査依頼である。

「与薬と管理/静脈内注入療法」(大西 和子・他監訳;照林社,1994)の80頁に「ヨード剤を用いた後にアルコールを使ってはいけません。アルコールはヨード剤の効果をなくしてしまうからです」の記載が見られる。
本書は「Susan,J.Hart.,et al:Drug administration/Intravasculartharapy,1992」の翻訳書である。
調査をする際には、本来は原著の確認をすることが基本原則である。しかし、調査依頼の内容から、今回は翻訳書の記載についてのみ検討している。
現在、ヨード剤の主力として使用されているpovidone-iodine(ポビドンヨード)の製品であるイソジン液(明治製菓)の添付文書中に記載されている希釈等液性に関する使用上の注意は下記の通りである。

  1. 深い創傷に使用する場合の希釈液としては生理食塩液か注射用水を用い、水道水や精製水を用いないこと。
  2. 石鹸類は本剤の殺菌作用を弱めるので、石鹸分を洗い落としてから使用すること。
  3. 衣類に付いた場合は水で容易に洗い落とせる。また、チオ硫酸ナトリウム溶液で脱色する。

なお、ヨウ素及びエタノールの揮散性、殺菌作用、局所刺激作用により、主として外用殺菌剤、刺激剤として使用されるヨードチンキは、ヨウ素・ヨウ化カリウムに70v/v%-エタノールを加えたものであるが、本剤の殺菌力については、既に有効性が証明されている。
その意味ではアルコールがヨード剤の効力を無効にするとする記載は誤解を与える記載であるとすることができる。
ヨードチンキは、表皮欠損のない皮膚の殺菌消毒には極めて有用であるとされており、手術野の殺菌消毒目的に使用されるが、その際、短時間放置後、消毒用エタノールでヨウ素を拭い去るとする手技が紹介されている。この方法は、ヨウ素がエタノールに溶解しやすいという性状を利用したものであるが、拭き取るという外的動作を加えない限り、ヨウ素剤の効力を減弱することはないと考える。
その他、手術野消毒時に、povidone-iodine等のヨード剤を使用後、脱色目的で使用されるハイポアルコールがある。ハイポアルコールによるヨウ素の脱色は、両者による化学反応を利用したものであり、水に難溶性のヨウ素を水に可溶性のヨウ化ナトリウムとすることにより着色の除去を図るものである。
従って、殺菌消毒目的でヨード剤を使用した後、直ちにハイポアルコールを使用した場合、ヨード剤の効力は甚だしく低下する。
上記の翻訳書の原著の記載がどのようになっているのかを確認せず、推測で判断することは避けるべきであるが、原著は、単純に「ヨード剤とアルコールの併用で無効になる」とする記載ではなかったのではないかと思われる。

*ブリの優先関係と階層関係(JICST 科学技術用語シソーラス,1993年版)

医薬品情報学入門(南山堂,1993)中で紹介されているシソーラスの引用例で、分類上別種の魚が加えられている。

  • ブリ(ブリ)
    UF ワラサ
    カンパチ
    イナダ
    ハマチ
    BT アジ科
    ・スズキ類
    ・・硬骨魚類
    ・・・魚類
    ・・・・脊椎動物
    ・・・・・動物

*thesaurus:Key wordとして用いられる用語間の階層関係、優先関係(同義語関係)、関連関係を整理し、索引作業や検索の際の効率の向上を図るために編集された辞書。

*UF:Used For:「~の代わりに用いよ」を意味する。
*BT:Broader Term:「上位概念語」を意味する。
*NT:Narrower Term:「下位概念語」を意味する。
*関東:ワカシ(若士)→ イナダ(魚秋)→ ワラサ(稚鰤)→ ブリ(鰤)
*関西:ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ

関東で『ハマチ』は『ワラサ(60cm)』クラスの養殖魚を指す。ちなみに『カンパチ』は、分類上別種の魚である。
*『カンパチ』(アジ科):Seriola purpurascens TEMMINCK&SCHLEGEL。ブリよりも側扁度が強く、体高が高い。幼魚では頭頂に黒褐色の八字形の斑紋がある。
*『ブリ』(アジ科):Seriol quinqueradiata TEMMINCK&SCHLEGEL。

ブリの代わりに用いる用語として、カンパチは不適当ではないかと考えられるが、原典を参照していないのでどの段階でカンパチが挿入されたのかは不明である。

その他、「看護婦が情報室に注射筒内の薬液がニトログリセリンか塩酸ドパミンか知りたいといってきた。そこで水薬用のカップに数滴取り二人で味見をした。甘かったのでニトログリセリンということになり、看護婦は直ぐに戻っていきました」とする調査事例が紹介されている。更に『誤解を受けるようなあまり好ましい例ではないが、薬剤師にとっては「物性」に関する極く初歩的な知識で十分対応可能であり、ある意味ではつまらないことのように思われるが、医療の現場ならではの情報活動の見本といえよう』とする記載がされている。
しかし、この調査事例の基本的な問題点は「ラベルのない薬剤(内容不明薬)は使用しない」という薬品管理の鉄則に反しているということである。本来、廃棄させるべきものを2名の官能検査で判断したという点で、甚だしく危険をはらんでいるといわなければならない。更に注射筒に吸引した注射薬を、院内を持ち歩くことによって、細菌汚染の機会を増やしているのではないかと危惧するのである。更に一度看護婦にこのような経験をさせると、次にも同じことをしないという保証はなく、その経験が将来誤薬につながる危険性を内在させているのではないかとの疑念を持つのである。

*写真・図の配置の失敗

編集者が陥りやすい誤りに、写真・図の配置が異なっていることに全く気付かないという事例がある。
中毒学概論-毒の科学-(薬業時報社,1999)では口絵として使用されているカラー写真のうち写真14-(b)オニダルマオコゼ・14-(c)ハナミノカサゴの説明に対し、(b)には『ハナミノカサゴ』が、(c)には『オニダルマオコゼ』が張り付けられている。

3.文献上の誤記・誤植に対する注意

電脳による検索結果の漏れを発見したのは、電脳による『昧覚障害』の検索結果と以前作成した『味覚障害を惹起する薬剤一覧』を突合した結果による。添付文書中に『味覚障害』の記載が、既にされていなければならない薬品名が欠落していたため、薬品名で検索し、添付文書要約情報の全文を確認したところ変換誤記が確認された。

Burow’s solution・ヨードに対するエタノールの影響については、調査する過程で説明不足が確認された事例であり、シソーラスの『ブリ』及び写真の移動の件についていえば、『ブリ』は『ボラ』同様の出世魚であり、『ワカシ』から『ブリ』までの順番について、従前調査した経験から『カンパチ』は異種ではないかと気付き調査した結果である。『ハナミノカサゴ』については、かって『ミノカサゴ』に刺された経験から、二度と掴むことのないよう記憶に留めていた結果である。
注射薬の官能検査利用による判断についていえば、現役の頃、『内容不明な薬剤は患者に一切使用しない』ということを先輩薬剤師から厳しく教育されていた。更にディスポの注射筒に入れたものと推定されるが、アンプルカットにより『無菌状態が解除された注射薬』をあちらこちら持ち歩いた上、患者に使用することの危険性は、臨床経験のある薬剤師なら十分理解できるはずである。

4.常に受信装置の整備を

ヒトは日常生活の中で多くの情報に接している。情報量が多ければ当然忘れていく情報も多いはずである。しかし、『第六感』や『閃き』といわれている部分は、実際には忘れてしまっていた断片的で潜在的な情報が背景にあり、ヒトの受信装置に反応するのではないかと考えている。文献や資料を読んだときに『何かおかしいと感知』するものがあった場合、過去の断片的な情報が反応することを奨めていると考えることもできる。アンテナに何等かの信号が得られた場合、『必ず精査する』という習慣づけをすることが、情報を取り扱う人間としては必要である。


  1. 注解 第六改正日本薬局方;南山堂,1951
  2. 第七改正日本薬局方第一部解説書;廣川書店,1961
  3. 国立病院東京災害医療センター薬剤科・私信,1998.3.19
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・私信,1998.3.19
  5. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第4版;薬業時報社,1997
  6. イソジン液添付文書,1996.2.改訂
  7. 第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
  8. 古泉秀夫・代表編:医薬品情報Q&A[1];(株)ミクス,1990

治験薬一覧:F

日曜日, 1月 13th, 2008
 

治験記号:FC/TA-891

<一般名:ritipenem acoxil hydrate>

概要

[商]ペネマック(田辺製薬)。ペネム系抗生物質。申請中。[剤型]錠剤。経口投与時に主に腸管壁のエステラーゼによりアセトキシメチル基が加水分解され活性体として吸収されるプロドラッグである。活性体は各種β-ラクタマーゼに安定で、グラム陽性菌、グラム陰性菌に広範囲な抗菌スペクトルを有し、特に好気性グラム陽性菌及び嫌気性菌に対して優れた抗菌力を示す。

出典

トライアルドラッグス2000;株式会社ミクス,2000・月刊ミクス,11:87(2000)

 

治験記号:FG-7051

<一般名:paroxetine>

概要

[商]Paxil(米国・GSK)、Seroxat(英国・GSK)、パキシル(日本・GSK)。選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)。抗うつ剤。[適]うつ病・うつ状態・パニック障害。

出典

The Medical Letter日本語版,19(14):53(2003.7.7)

 

治験記号:FK-199

<一般名:zolpidem tartrate>

概要

[商]マイスリー(藤沢)。2000年9月承認。非ベンゾジアゼピン系の入眠剤。催眠作用の発現が早く、残存作用がないなどの効果の他1.連用しても薬物依存性がなく耐性もない。2.禁断症状や反跳現象がない。3.循環器、呼吸器、記憶に対する影響も少ない等の特徴を有する。精神疾患を伴わない不眠症におけるニトラゼパムとの二重盲検試験で、本剤は有効性で有意に優れていた。仏・サノフィ-サンテラボ社提携。

出典

月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FK-317

<一般名:———>

概要

[治験薬]
抗ガン抗生物質。米国での第2相試験を2000年中頃に開始予定。国内では海外データ活用を目指し申請にトライする。(藤沢薬品)。放線菌が産生するプロドラッグタイプの注射用抗がん性抗生物質。固形癌に対して既存薬よりも高い抗腫瘍効果を示す。マイトマイシンC、アドリアマイシンとの交差耐性を示さない。臨床第II相試験段階。藤沢薬品。

出典

日刊薬業:第10427号,2000.2.25.・月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FK-366

<一般名:zenarestat>

概要

アルドース還元酵素阻害作用による糖尿病性末梢神経障害治療剤。米国において第II相臨床試験段階で神経生検を実施し、神経繊維密度、神経伝達速度等において有意な改善が見られた。Clinical
End Pointは神経伝達速度と痛覚などの自覚症状の改善である。96年3月一部地域を除く全世界を対象として米・ワーナー・ランバート社にライセンスした。臨床第III相試験段階。藤沢薬品。米国・臨床第三相段階。欧州・臨床第三相段階。

出典

月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FK-463

<一般名:——–>

概要

注射用深在性真菌治療剤。ミカファンギン。藤沢薬品。ヒト細胞に存在しない真菌の細胞壁合成を阻害するため、高い安全性が期待される。in vitroで強い抗菌活性を示し、カンジダ属からアスペルギルス属まで幅広い抗菌スペクトルを有する。99年9月米国の化学療法学会において臨床第II相試験での優れた有効性と安全性が報告された。臨床第III相試験段階。米国・臨床第三相段階。欧州・臨床第三相準備中。[治験薬]。抗真菌薬。米国第3相試験。欧州治験計画中。国内では海外データ活用を目指し申請にトライする。(藤沢薬品)

出典

日刊薬業:第10427号,2000.2.25.・月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FK-506

<一般名:tacrolimus hydrate>

概要

[治験薬]
タクロリムス。疾患修飾性抗リウマチ剤。藤沢薬品。放線菌Streptomyces tsukubaensisの代謝産物から発見された強力な免疫抑制作用を有する物質で、既に経口剤、注射剤が発売されている。自己免疫疾患を初めとした炎症性皮膚疾患の局所部位への適用に対応できる軟膏剤として開発されている。申請中。[商]プロトピック軟膏。

出典

高杉益充:Drug Information;月刊ミクス,5:100-101(2000)・トライアルドラッグス;株式会社ミクス,1999

 

治験記号:FK-614

<一般名:——–>

概要

グリタゾン系とは異なるベンズイミダゾール系のインスリン抵抗性改善剤。各種NIDDM(インスリン非依存性糖尿病)において先行品に比べ明らかに強い血糖低下作用を示し、高い安全性も確認されている。臨床第II相試験段階。藤沢薬品。[治験薬]。糖尿病治療薬。構造的にグリタゾン系に属さないインスリン抵抗性改善剤。国内では海外データ活用を目指し申請にトライする。(藤沢薬品)。

出典

日刊薬業:第10427号,2000.2.25.・月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FK-888

<一般名:——–>

概要

欧州での第2相臨床試験を2000年中に終了、速ければ年内に欧州又は米国で第3相試験を開始し、欧米で2002年申請、2003年度発売を見込む。国内では海外データ活用を目指し申請にトライする。(藤沢薬品)。ニューロキニン拮抗薬。1995年から勧められていた第II相試験の結果十分な有効性が得られなかったとして治験中止。

出典

日刊薬業:第10427号,2000.2.25.日刊薬業,2000.10.2.

 

治験記号:FK-960

<一般名:——–>

概要

アルツハイマー型痴呆症治療剤。作用機序はゲノム研究により解明中であるが、海馬神経におけるソマトスタチンの遊離を促進、シナプス伝達を促進と考えられる。アルツハイマー型痴呆症の中核症状である記憶障害に対する有用性が期待され、口渇等のコリン刺激様の副作用がないと想定されている。臨床第II 相試験段階。藤沢薬品。[治験薬]。抗痴呆薬。記憶に深く関与する神経伝達物質セロトニン及び神経ペプチド・ソマトスタチンの両物質を刺激する新タイプの抗痴呆薬。米国での第2相臨床試験を2000年中に終了させ、第3相臨床治験を開始、2003年の申請、2004年度の発売を目指す。国内では海外データ活用を目指し申請にトライする。(藤沢薬品)

出典

日刊薬業:第10427号,2000.2.25・月刊ミクス,10:100(2000)

 

治験記号:FKK-138

<一般名:——–>

概要

遺伝子組換えによりヒト天然型t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)のN末端からKringe
I domainまでの領域を欠失させ、更に275位のArgをAspに変換した構造を有する1本鎖の蛋白質で、大腸菌を宿主として産生される。非臨床試験でプラスミノーゲン活性化におけるフィブリン依存性が高く、更に血中半減期が長いなどの特性を示した。ヒトでは血中半減期は、従来のt-PAの5~8倍を示す、約7分であったの報告がされている。[適]急性心筋梗塞。静注。(化血研)。

出典

高杉益充:DI室;月刊ミクス,3:62(2001)

 

治験記号:FPI-31

<一般名:human leukocyte interferon-α>

概要

[商]INFα(日赤・扶桑)。抗腫瘍性免疫賦活剤、抗ウイルス剤。申請中。[剤型]注射用凍結乾燥製剤。[適]B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、菌状息肉症。ヒト白血球にセダンウイルスを作用させて誘発し、生成物を精製したもの。抗ウイルス作用・抗腫瘍作用が期待されている。(扶桑薬品-日本ケミカルサーチ-日赤)。

出典

トライアルドラッグス2000;株式会社ミクス,2000

 

治験記号:FS-69

<一般名:———>

概要

作用時間を延長し、造影能を増強した第二世代の超音波造影剤。対象領域は心腔等。第II相及び第III相臨床試験臨床治験(中外-米・モレキュラーバイオシステム社)。

出典

月刊ミクス,12:73(2000)

 

治験記号:FTY-720

<一般名:——–>

概要

腎移植。新規作用機序-リンパ球のホーミング二より、副作用が少なく、安全性の高い免疫抑制剤。米国・欧州において第II相臨床試験段階(ウェルファイド-ノバルティス)

出典

月刊ミクス,3:38(2001)

「野生スイカについて」

土曜日, 1月 12th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・野生スイカ・カラハリスイカ・シトルリン・citrulline・猛毒活性酸素・ヒドロキシルラジカル・hydroxyl radical・メタロチオネイン・metallothionein

 

Q:TV放送されていた野生のスイカについて

A:カラハリ砂漠原産の野生スイカ(カラハリスイカ)は、水のない状態で強い光・乾燥に耐えることができるとされている。この強光・乾燥耐性は細胞内に大量のシトルリン(citrulline)を蓄積するためで、citrullineは安定で無害なアミノ酸であるが、肌の大敵である猛毒活性酸素(ヒドロキシルラジカル:hydroxyl radical)を強力に分解する。また、カラハリスイカは保水効果が高いと報告されている。奈良先端科学技術大学院大学は、世界に先駆けて、多くの野生スイカ特許を出願している。

アフリカのカラハリ砂漠で育つ野生スイカが特定のアミノ酸などの働きで、有害な活性酸素を抑制し、過酷な環境から身を守っていることが突き止められた。この仕組みの解明により、強い日差しや乾燥に強い植物の改良に役立つのではないかといい、原産地のアフリカ南部、ボツワナと共同研究を進めることを決めた。研究者らは、カラハリ砂漠に自生するスイカが、強い日差しと極度の乾燥のため、細胞を傷つける活性酸素が発生しやすい環境なのに水分を豊富に蓄え、枯れないことに注目し、分析した。その結果、葉にアミノ酸の一種citrullineが大量に蓄積され、活性酸素が活動する前に、瞬時に分解していることが分かった。メタロチオネイン(metallothionein)という蛋白質にも同様の働きがあった。

灼熱の太陽が照りつける南アフリカ・カラハリ砂漠で、青々とした実をつける野生スイカに、生物体内で有害な働きをする活性酸素を消去する物質が大量に含まれていることを奈良先端化学技術大学院大学の横田明穂教授、明石欣也博士らの研究グループが突き止めた。アミノ酸の一種、citrullineで、活性酸素により、遺伝子本体のDNAが傷つくのを効率よく防ぐことが実験で確かめられた。citrullineの含有濃度は53g/Lで、他の生物に比べて1000倍以上も大量に含まれていた。citrullineは、もともと全ての生物体内で働いているので、副作用が少ないこともわかった。安全な活性酸素除去剤として、食品、医薬品、化粧品への応用が期待されている。

citrullineの活性酸素分解作用について、試験管内で実験を行ったところ、このアミノ酸は、hydroxyl radicalを速やかに分解した。体内で発生した活性酸素がDNAや、生理活性に係る酵素を傷つける前に、即座に分解してしまうことも判明。濃度をあげても、体内の生理作用に悪影響を与えないことも明らかにした。

citrullineとは、側鎖にウレイド(カルバミド)基(-NHCONH2-)を有する天然アミノ酸。蛋白質中には通常存在しないが、ペプチジルアルギニンデイミナーゼによる翻訳後修飾によりアルギニン残基がシトルリン残基に変換する。C6H13N3O3=175.19。M.Wada(1930)によりスイカの果汁から単離、命名された。生体内では尿素回路におけるアルギニン生合成の中間体として重要。ミトコンドリア中で、オルニチンのカルバモイル化により生成する。

metallothioneinとは、金属(メタル)をチオール基(チオ)を介して結合している蛋白質(protein)ということでメタロ-チオ-ネインと呼ばれている。1957年にMargoshesとValleeによってマウスの腎皮質からSH基が富むカドミウム結合蛋白として単離されたmetallothioneinは、哺乳類のみならず、両生類、爬虫類、鳥類、魚類、無脊椎動物等動物全般、更には植物や真核微生物、原核生物に至るまで、広くその存在が確認されている。また、metallothioneinは重金属毒性軽減作用を有しており、metallothionein合成を誘導した動物や培養細胞がカドミウムや無機水銀などの有害金属に対し、耐性を示すことが知られている。

metallothioneinは、ヒトを初め各種動物のみならず藍藻類に至るまで亜鉛、カドミウムなどを結合した状態で見いだされ、metallothionein類として分類されている。多くの哺乳動物でmetallothionein-Iとmetallothionein-IIの2種の亜型が存在し、ヒトやマウスではmetallothionein-IIIとmetallothionein-IVを含めた4種の亜型が確認されている。これらの亜型は、構成アミノ酸(metallothionein-I:61、metallothionein-II:61、metallothionein-III:68、metallothionein-IV:62)のうち20個をシステインが占め、しかもS-S結合を一つも持たず、チロシンなどの芳香族アミノ酸やヒスチジンを含まない低分子蛋白質(分子量:約7,000)である。また栄養素としての微量金属の研究により、中でも亜鉛がmetallothioneinという光防御蛋白質を作ることに注目し、紫外線対策についていくつかの方法が提案されている。

  [015.9.CIT:2007.2.13.古泉秀夫]

 

1)http://bsw3.naist.jp/yokota/research/Plant_High-Tech_Institute/jigyo.html,2005.3.2.
2)http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20050302/20050302a4380.html,2005.3.2.
3)http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050302000347,2005.3.2.
4)http://www.g-osaka.co.jp/new/031117.html,2005.3.2.
5)http://www.north.ad.jp/hobia/contents/seminer18.htm,2005.3.2.
6)http://www.nara-shimbun.com/n_soc/050303/soc050303b.shtml,2005.3.2.
7)http://www.speciale.jp/word/07_metallo_01.html,2007.2.10.
8)佐藤雅彦・他:環境汚染バイオマーカーとしてのメタロチオネインの有用性;環境毒性学会誌2(1):27-34(1999)
9)薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
10)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998

『感染症の分類-重要な感染症-改訂第2版』

土曜日, 1月 12th, 2008

KW:滅菌・消毒・感染症・感染症分類・一類感染症・二類感染症・三類感染症・四類感染症・五類感染症

 

Q:重要な感染症について、表にまとめたものはあるか。

A:重要な感染症の『重要な』は、取り方によって異なると考えられる。感染症としての『重症度』なのか、あるいは『院内感染』としての重要度なのか、『有効な治療薬がない感染症』であるために重要なのか等である。
しかし、取り敢えずということで、我が国において法律に基づいて分類されている感染症を表示してあるので、それを紹介する。なお、更に詳細な表が必要な場合、『感染症法中の感染症の分類と措置等 第三改訂』を参照すること。

一類感染症 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう(天然痘)、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱 感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性が極めて高い感染症

二類感染症

急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)。 感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性が高い感染症
三類感染症 コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、 腸チフス、パラチフス  感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性は高くないが、特定の職業への就業によって集団発生を起こしうる感染症
四類感染症 E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ウエストナイル熱、エキノコックス症、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林熱、コクシジオイデス症、サル痘、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介性脳炎、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱。 既に知られている感染性の疾病であって、動物等の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定める感染症。
五類感染症

(全数把握)
ウイルス性肝炎(A型肝炎及びE型肝炎を除く)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、梅毒、麻しん、風しん。
-省令で定める疾病-
アメーバ赤痢、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介性脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血レンサ球菌感染症、ジアルジア症、髄膜炎菌性髄膜炎、先天性風しん症候群、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症。

(定点)
インフルエンザ(鳥インフルエンザを除く)、性器クラミジア感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症。
-省令で定める疾病-
RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎、水痘、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ(尖形コンジロームから変更)、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、ヘルパンギーナ、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、薬剤耐性緑膿菌感染症、流行性角膜炎、流行性耳下腺炎、淋菌感染症。

国が感染症発生動向調査を行い、その結果などに基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症。

 

今回、結核予防法が廃止(2007.4.1.)に伴い、『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』中に取込まれ、『二類感染症』として追加された。
また、今回、bio terrorへの使用が予測されるvirusが追加されており、その意味で重要な感染症の一覧とすることができる。

  [615.28.INF:2004.1.12.古泉秀夫・2007.4.9.・2008.1.7.改訂]

 

1)官報 号外第239号,15.10.16.
2)岡部信彦:感染症対策・予防接種の知識;調剤と情報,9(12):1679-1683(2003.11)
3)官報 号外第251号,15.10.30.
4)官報 第3716号,15.10.22.
5)基本医療六法編纂委員会・編:基本医療六法;中央法規,2002

『アルツハイマー病治療薬memantineについて』

土曜日, 1月 12th, 2008

KW:薬名検索・memantine・メマンチン・塩酸メマンチン・CAS-41100-52-1・SUN-Y-7017・axura・edixa・namenda・アルツハイマー病

 

Q:アルツハイマー病治療薬memantineについて

 

A:1982年、独逸において痴呆治療薬として使用されていた塩酸メマンチン(memantine HCl)が、アルツハイマー病の治療薬として、米国で最新の話題となっている。本剤は一部の試験で中等度から重度のアルツハイマー病に有効であることが示唆された。

化学名:1-amino-3,5-dimethyladamantane hydrochloride。CAS-41100-52-1

商品名:Namenda(米・Forest Laboratories社)。

別 名:Axura(Merz)、Ebixa(Lundbeck)。

治験記号:SUN-Y-7017(第一サントリーファーマ-第一製薬)。剤型:錠剤・液剤。

□アルツハイマー病に見られる退行性変化は、主にβ-アミロイドの蓄積に関連していると考えられている。β-アミロイドは色々多くの影響を及ぼすが、その中の一つは刺激性の神経伝達物質で、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体の賦活剤であるグルタミンの伝達を阻害することである。グルタミン酸伝達は、学習と記憶に重要だと考えられている。NMDA受容体拮抗薬であるmemantineの使用を支持する説は、NMDA受容体におけるグルタミン酸の過剰刺激がニューロンに毒性を与えるというものである。

□本品の分類はN-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト、グルタミン酸受容体のNMDAサブタイプ・アンタゴニスト、認知促進薬。適応症はアルツハイマー病の中等度ないしアルツハイマー型認知症。他の疾患における記憶障害。軽度認知障害。慢性頭痛。

□低ないし中等度の親和性を持つ非競合的(チャンネル開口)NMDA受容体アンタゴニストであり、NMDA受容体が調節する陽イオンチャンネルに優先的に結合する。アルツハイマー病で想定されている過剰なグルタミン酸遊離による持続的なNMDA受容体の活性化は恐らく阻害する。症状を改善し疾患の進行を遅らせることがあるが、変性過程をもとに戻すことはない。

副作用:恐らくNMDA受容体での過剰な作用による。ふらつき、頭痛、便秘。希にてんかん発作。

 

[011.1.MEM:2007.2.9.古泉秀夫]

 

1)Medical Letter<日本語版>,17(13)53(2001)
2)仙波純一・訳:精神科治療薬処方ガイド;メディカル・サイエンスインターナショナル,2006