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『B12含有食品について』(改訂第二版)  

金曜日, 8月 17th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・vitamin・ビタミンB12・cobalamin・コバラミン・cyanocobalamin・シアノコバラミン・食品・末梢神経障害改善効果・手足のしびれ感・疼痛・糖尿病性神経障害改善・覚醒リズム異常・男性不妊症・生活習慣病発症予防

vitamin B12 は、13種類あるvitaminの中で最も分子量が大きく、複雑な構造をした赤色の化合物である。

化学構造上の特徴は、コリン環の中心にコバルト原子を含む環状構造を持ち、下方から5,6-ベンズイミダゾール構造が配位しており、これらの二つの構造を有する化合物はcobalaminと総称されている。このうち上方配位子と呼ばれる部分がシアノ基(CN)、水酸基(OH)、アデノシル基(Ado)、メチル基(CH3)になっている4種類が、vitaminとしての生理活性を持つ。cobalamin化合物のうち最も安定かつ活性が高いのはcyanocobalaminである。この水溶性のvitamin は、1973年に化学合成された。

vitamin B12 は動物性食品に含まれ、植物には含まれない。cobalamin構造は、細菌や藻類等の微生物のみが合成でき、ヒトの摂取源としては、動物の肝臓や魚介類の動物性食品が寄与している。

通常、厳格な菜食主義者ではなく、普通の食生活をしているヒトでは、vitamin B12欠乏はみられない。

食品中のvitamin B12は、その殆どが蛋白質と結合している。結合しているのは胃内、小腸上部で、ペプシンや膵液のプロテアーゼの作用により、蛋白質と切り離される。分離されたvitamin B12は、内因子と呼ばれる胃液分泌中の蛋白質がvitamin B12と結合して、回腸での吸収を促進する。正常な条件下でのvitamin B12の吸収率は30%だが、内因子が存在しない場合、吸収率は1%未満となる。vitamin B12と内因子の結合のためには塩酸が必要である。

vitamin B12 の吸収は、加齢あるいは鉄又はvitamin B6欠乏によって低下し、妊娠中は増大する。体内では主に肝及び腎に最高2000μgまで貯蔵され、過剰分は尿に排泄される。vitamin B12は利用速度が遅く、組織貯蔵量もかなりあるので、欠乏 [組織貯蔵が0.1mg未満及び血清レベルが150pg/mL(110pmmol/L)未満]が起こるには通常多くの年月を要する。vitamin B12の肝臓での貯蔵は正常では十分であるので、内因子の欠如の場合は3?5年間生理的必要量を保持できるが、腸管循環による再吸収能全体の欠如の場合は、数カ月から1年しか保持できない。しかし、肝臓での貯蔵は限られており、成長の速さによる需要は高いので、血液学的及び神経学的変化はより速く起こる。

第6次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準-によれば、各年齢別のビタミンB12の1日摂取量は以下の通りである。

年齢(年) 男性所要量(μg) 女性所要量(μg)
0-(月) 0.2 0.2
6- (月) 0.2 0.2
1-2 0.8 0.8
3-5 0.9 0.9
6-8 1.3 1.3
9-11 1.6 1.6
12-14 2.1 2.1
15-17 2.3 2.3
18-29 2.4 2.4
30-49 2.4 2.4
50-69 2.4 2.4
70以上 2.4 2.4
妊婦 ? +0.2
授乳婦 ? +0.2

ビタミンB12 含有食品一覧(可食部100g当たり:μg)

含有量の範囲 食品名
77.6-44.4μg/100g アマ海苔(干し海苔)77.6、シジミ(生)62.4、アゲマキ貝(生)59.4、鮭筋子(塩蔵)53.9、牛(肝臓)52.8、浅蜊(生)52.4、ホッキ貝(生)47.5、白鮭(イクラ)47.3、鶏(肝臓)44.4
39.1-11.0 μg/100g 鮟鱇(肝)39.1、青海苔(素干し)31.8、ハマグリ(生)28.4、牡蠣(養殖生)28.1、豚(肝臓)25.2、ウルメ鰯(丸干し)24.7、豚(スモークレバー)24.4、
牛(腎臓)22.1、牛(小腸-ヒモ、生)20.5、キャビア(塩蔵品)18.7、鱈子(生)18.1、秋刀魚(生)17.7、鰊(生)17.4、烏賊(塩辛-赤作り)16.7、
豚(腎臓)15.3、ホタルイカ(生)14.0、片口鰯(生)13.9、イタヤガイ(生)13.1、ムロアジ(焼き)12.9、シャコ(茹で)12.9、ムロアジ(生)12.8、ソウダ鰹(生)12.4、烏賊(するめ)12.3、牛(心臓)12.1、ホタテ貝(生)11.4、数の子(生)11.4、イカナゴ(生)11.0
10.7-5.2 μg/100g ホッケ(生)10.7、鯖(生)10.6、鮎(天然、生)10.3、鯉(生)10.0、真鰯(生)9.5、紅鮭(生)9.4、桜マス(焼き)9.2、本もろこ(生)9.0、タイセイヨウ鮭(生)8.9、泥鰌(生)8.5、鰹(生)8.4、キビナゴ(生)8.3、カラフトマス(焼き)7.9、ワカサギ(生)7.9、バカ貝(内臓除く-生)7.9、桜マス(生)7.6、フォアグラ(茹で)7.6、柳葉魚(生干し、生)7.5、馬肉
7.1、山女(養殖、生)6.6、牛(舌)6.1、白鮭(生)5.9、イサキ(生)5.8、鱈場蟹(生)5.8、黄肌鮪(生)5.8、虹鱒(海面養殖、生)5.7、虹鱒(生)5.7、あまご-養殖(生)5.5、チカ(生)5.4、サワラ(生)5.3、銀鮭(生)5.2
4.7-3.0μg/100g ボラ(生)4.7、ウズラ卵全卵(生)4.7、牛(スモークタン)4.7、ワタリガニ(生)4.7、カラフトマス(生)4.6、牛(第三胃-センマイ、生)4.6、メバチ鮪(生)4.5、タカサゴ(生)4.4、シラス干し4.3、カジキ鮪(生)4.3、ずわい蟹(生)4.3、イワナ(養殖、生)4.2、マスノスケ(焼き)4.1、助任鱈(生)4.0、鱚(生)3.9、マダラ(焼き)3.9、紅鮭(焼き) 3.8、豚(子宮、生)3.8、ホヤ(生)3.8、鰤(天然、生)3.8、紅鮭(焼き)3.8、ハマフエフキ(生)3.7、黒鯛(生)3.7、牛(第四胃-赤センマイ、茹で) 3.6、タイセイヨウ鮭(焼き)3.6、鰻(生)3.5、牛(ビーフジャーキー)3.5、ハマチ(鰤-養殖、生)3.4、ニギス(生)3.4、マスノスケ(生)3.4、チーズホエーパウダー 3.4、飛び魚(生)3.3、おおさが[別名:こうじんめぬけ](生)3.3、トコブシ(内臓除く、生)3.2、プロセスチーズ 3.2、シマアジ(養殖、生)3.2、虹鱒(海面養殖、焼き)3.1、マガレイ(生)3.1、マダラ(シラコ)3.1、マフグ(生)3.0、鶏卵卵黄(生)3.0、イトヨリ(生)3.0、メゴチ(生) 3.0
2.9-1.5μg/100g マコガレイ(生)2.9、銀鱈(生)2.8、ビンナガ鮪(生)2.8、イボ鯛(生)2.7、鯊(生)2.7、シイラ(生)2.6、グチ(生)2.5、豚(心臓)2.5、甘エビ(生)2.4、赤烏賊(内臓除く、生)2.3、カマス(生)2.3、テラピア(生)2.3、なまこ(生)2.3、穴子(生)2.3、ホウボウ(生)2.2、アイナメ(生)2.2、南鮪赤身(生)2.2、豚-舌(生)2.2、ヒラマサ(生)2.1、甘鯛(生)2.1、オヒョウ(生)2.1、牛(第二胃-ハチノス、茹で)2.0、ホタテ貝貝柱(生)2.0、牛(第一胃-ミノ、茹で)2.0、鱸(生)2.0、綿羊(マトン-脂身付、生)
2.0、牛(第一胃-ミノ、生)2.0、メカジキ(生)1.9、虎フグ(養殖、生)1.9、ハモ(生)1.9、ムツ(生)1.9、車海老(養殖生)1.9、毛ガニ(生)1.9、脱脂粉乳(国産)1.8、メジナ(生)1.8、牛(尾)1.8、乳用肥育雄牛(ヒレ)1.8、牛(子宮-茹で)1.7、ハタハタ(生)1.7、乳用肥育牛(肩ロース脂身無)1.7、乳用肥育牛(肩ロース脂身)1.7、鶏(心臓)1.7、 鶏(筋胃-砂肝)1.7、コチ(生)1.7、牛(直腸-てっぽう、生)1.7、乳用肥育牛(脂身-肩ロース)1.7、アラスカめぬけ1.6、牛乳(全粉乳)1.6、クロカジキ(生)1.5、目張(生)1.5、南鮪脂身(生)1.5
1.4-1.0 μg/100g 真鯛-養殖(生)1.4、ウマズラハギ(生)1.4、カワハギ(生)1.3、牛(大腸-しまちょう、生)1.3、サザエ(内臓除く、生)1.3、ウニ(生)1.3、平目(養殖、生)1.3、黒鮪(赤身、生)1.3、カマンベールチーズ1.3、石鯛(生)1.3、マダラ(生)1.3、真だこ(茹で)1.2、真鯛(天然、生)1.2、鮟鱇(生)1.2、乳用肥育牛(もも脂身付)1.2、乳用肥育牛(もも脂身無)1.2、カサゴ(生)1.2、烏骨鶏(全卵生)1.1、芝エビ(生)1.1、合鴨肉(皮付き)1.1、金目鯛(生)1.1、豚(ウインナーソーセージ
)1.1、綿羊(ラム-ロース、脂身付) 1.1、本鮪(脂身、生)1.0、豚(大腸、茹で)
1.0、平目(天然、生)1.0、キチジ(生)1.0
0.9-0.1 μg/100g ブラックタイガー(養殖、生)0.9、太刀魚(生)0.9、豚(胃-ガツ、茹で)0.9、鶏卵(全卵、生)0.9、豚(胃腸、茹で)0.9、メルルーサ(生)0.8、鰺(生)0.7、アコウダイ(生)0.7、イノブタ肉(脂身付)0.7、豚(ベーコン)0.7、豚(軟骨-ふえがらみ、茹で)0.6、鹿肉(生)0.6、豚(生ハム長期熟成)0.6、オコゼ(生)0.6、助任鱈(すり身)0.6
、マジェラン鮎魚女(生)0.6、エスカルゴ(水煮缶詰)0.6、豚(生ハム促成)0.4、豚(生ソーセージ)0.4、牛乳(ジャージー種)0.4、鮑(内臓除く、生)0.4、若鶏(もも皮なし)0.4、豚足0.4、豚(ロースハム)0.4、牛(腱-すじ、茹で)0.4、豚(小腸-ヒモ、茹で)0.4、豚(もも脂身無)0.3、豚(もも脂身付)0.3、鶏(胸皮)0.3、豚(ロース脂身付)0.3、豚(ロース脂身無)0.3、豚(ヒレ)0.3、マヨネーズ(卵黄型)
0.3、イトヨリ鯛(すり身)0.3、伊勢エビ(生)0.3、ヨーグルト(脱脂加糖)0.3、ワカメ(生)0.3、
普通牛乳0.3、ヨーグルトドリンクタイプ0.2、乾燥ワカメ(素干し)0.2、塩クラゲ(塩抜き)0.2、若鶏(ムネ皮無、生)0.2、乾燥ワカメ(灰干し、水晒)0.2、クリーム(乳脂肪)0.2、米味噌(淡色辛味噌)0.1、米味噌(甘味噌)0.1、モズク(塩抜き)0.1、マヨネーズ(全卵型)0.1、果実酢(葡萄酢)0.1、なが昆布(素干し)0.1、液状乳脂肪
0.1、醗酵バター 0.1、無塩バター0.1 、バター(家庭用有塩バター) 0.1

vitamin B12 欠乏症:vitamin B12 の必要量は極微量であるため、動物性食品を適度に取り入れた通常の食事を摂取していれば、欠乏症を惹起することはない。稀に菜食主義者並びに胃腸疾患患者で、欠乏症が報告されている。胃切除、萎縮性胃炎、ピロリ菌の感染等によりvitamin
B12 の吸収に不可欠な内因子の分泌障害によるものと考えられている。典型的なvitamin
B12 欠乏症は『悪性貧血』である。その他、身体の痛み、脱力感、覚醒リズムの乱れ、神経機能障害がみられることもある。

vitamin B12 欠乏の原因として、コレステロール吸着剤、抗潰瘍薬、vitamin B12 の吸収又は代謝を阻害する薬剤を長期服用している患者も要注意。

vitamin B12 欠乏症状

見当識障害
[周囲の環境についての熟知感の喪失、方向感覚の喪失]
しびれ 四肢の刺痛 高齢者の痴呆 憂鬱 混乱
興奮 視力低下 妄想 幻覚 疲労感
活動性眩暈 吐気 白血球数低下 食欲低下 嘔吐
下痢 皮膚炎

[015.9.VIT:2003.4.8.古泉秀夫.第二改訂]


  1. 健康・栄養情報研究会・編:日本人の栄養所要量-食事摂取基準,第一出版,1999
  2. Otsuka Academy of Vitamin EXperts,1999
  3. 福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第17版 日本語版;日経BP社,1999
  4. 和田政裕:フォローアップ成分の栄養学 第25回;食生活,94(10):48-51(2000)
  5. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2000
  6. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2003