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ミオグロビン尿を惹起する薬剤一覧 第3改訂

金曜日, 8月 17th, 2007

■ミオグロビン尿(myoglobin uria):myoglobin(Mb)は、筋肉ヘモグロビンとも呼ばれる。骨格筋、心筋中に見出されるヘム蛋白質。血中濃度が15mg/dL程度までは血清中のmyoglobin結合蛋白に結合するため、尿中に排泄されないが、筋ジストロフィ、皮膚筋炎、横紋筋融解等の原因で、一時に200g以上の大量の骨格筋が崩壊すると尿中に排泄されるようになる → ポートワイン色尿(コカコーラ色様尿)。

■筋組織の崩壊が広範囲にわたるような場合、色素円柱による尿細管閉塞が原因で、急性腎不全を生じることもある。試験紙法による尿潜血反応は、 myoglobinがヘムを有するため陽性を呈するが、沈渣は赤血球は殆ど認められない。

■心筋、骨格筋組織の障害の判定やその重症度の判定 → 血中・尿中のmyoglobin測定

■急性心筋梗塞・狭心症(胸痛発作時)

■骨格筋疾患[筋ジストロフィ・筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)・その他(筋変性を生ずる甲状腺機能低下症、低カリウムによる筋障害を生じる高アルドステロン症、腎不全、悪性高熱)

■マラソンなどの激しい運動、出産時 → 上昇

■重症心不全・筋肉内注射時 → 骨格筋から流出したmyoglobinの影響を受ける。

□myoglobin 尿に関連する副作用


連副作用名
薬効群・薬剤 副作用の解説
悪性高熱症(悪性高体温症) 全身麻酔剤 全身麻酔中に急激に体温が上昇し、40℃を超す高体温を生じ、アシドーシス、高炭酸ガス血症を呈し
循環虚脱に陥る症状をいう。多くの場合、筋強直を伴うが、筋強直を伴わない症例もあり、最近では精神科領域の悪性
症候群や、運動中に突然発生して死亡するmalignant hyperthermina on
effortも本症と関連あるとする考えもある。原因は不明であるが、Ca代謝に関係した筋小胞体の異常、ミトコンドリアの異常、自律神経・内分泌系の異
常等の説があり、誘因としてハロタン、スキサメトニウム等の薬物、ストレスも挙げられている。

性症候群(syndrome malin)□無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、引き続き発熱)。本症発症時、白血球の増加や血清CPKの上昇が多く、
myoglobin尿を伴う腎機能の低下。
抗精神病薬等 精神疾患で、butyrophenone系あるいはphenothiazine系などの向精神病薬の投与
中に発症する。希ではあるが重篤な合併症であり、1950年代頃に仏・米国で報告されて以来、多数の報告がある。主要症状は異常高熱、蒼白、発汗亢進等の
自律神経症状、振戦、筋強剛、ミオクローヌス等の垂体外路症状、意識障害、血清クレアチニンホスホキナーゼ
(CPK)の高値等で、死亡率は20-30%ないしそれ以上ともいわれている。本症候群の発症機序については未だ不明な点が多いが、薬物のドーパミン受容
体遮断による視床下部、基底核、脳幹機能の障害あるいはクリーゼとする考え方が有力である。最近ではL-ドーパ等の抗Parkinson病薬の急激な中止
により本症と類似の症状を発症することも分かっている。なお、悪性症候群の臨床像は、全身麻酔時の重篤な副作用である悪性高熱と極めて類似しており、発症
機序の異同が論じられている。治療は、向精神薬は原則として即時中止、脱水、栄養障害に対し輸液等による全身状態の改善処置、高体温に対しては体冷却、薬
物的にはL-ドーパ、ブロモクリプチン、アマンタジン等の中枢性ドーパミン賦活剤、筋弛緩薬のダントロレンの投与が有効とされている。
横紋筋融解症□筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中・尿中myoglobin上昇等 clinofibrate、clofibrate系薬剤、シンフィブラート、ベザフィブラート、
pravastatin sodium、シンバスタチン、vasopressin等
横紋筋と呼ばれる筋肉は骨格筋と心筋である。しかし、横紋筋融
解症は骨格筋だけを対象とした病名。本症は骨格筋細胞の融解や壊死の結果、細胞成分が血液中に流出した病態であるとされ、致命的となりうる疾患である。本
症は原因により外傷性(過度の運動、痙攣、熱射病など)と非外傷性(先天性代謝性心筋疾患、感染症、薬剤、麻薬など)に大別される。本症が発生すれば、細
胞内物質の血中濃度が異常値を示すが、特にmyoglobin、クレアチンホスホキナーゼ(CPK又はCK)、アルドラーゼ、LDH、GOT等が上昇す
る。中でもmyoglobinはその代謝産物とともに、腎尿細管細胞を著しく障害し、腎不全を起こす可能性が高い。
急性ニューロパシー-急性末梢神経障害- 高カロリー輸液 末梢神経障害の総括的名称。原因は遺伝、外傷、中毒、炎症、代謝異常、悪性腫瘍、末梢神経腫瘍圧迫など多
彩。症状は知覚障害、運動障害、筋緊張低下、反射喪失、自律神経障害など。筋電図では神経原性パターンを示し、末梢神経伝導速度低下を認める。病理所見
は、軸索変性、節性脱髄、Waller変性等の非特異的変化である。近縁語には多発性神経炎、神経炎がある。
偽性アルドステロン症-特発性アルドステロン症;本態性アルドステロン症- glycyrrhizin レニンアンジオテンシン、ACTH、カリウム等の既知のアルド
ステロン分泌刺激因子以外の未知の因子によって、両側の副腎皮質に過形成をきたし、二次性高血圧症を呈する。原発性アルドステロン症と違って次の特徴があ
る。(1)高齢者に多く、性差がない、(2)血清K値は、正常-やや低値にすぎない、(3)AC-THの影響は少なく、アルドスロン分泌に日内リズムはみられ
ず、デキサメサゾンによって抑制されない、(4)Na負荷、立位負荷で、アルドステロン値が上昇する等、本態は不明であるが、未知のアルドステロン分泌刺
激因子による過形成と考えられている。

壊死
colchicine 生体における一部の細胞又は組織の死を壊死といい、全身の死と
区別する。細胞が壊死に陥る病理学的変化は、細胞に酵素欠乏や栄養障害が起こると、細胞は変性し、細胞内の水解酵素が活性化されて細胞の融解をきたし、死
滅すると考えられている。壊死には凝固性が高まる凝固壊死と液化(融解)壊死が区別されている。

肢麻痺
steroid大量療法、長期筋弛緩薬使用後 四肢の運動麻痺をいう。傷害部位は頚髄が最も多い。両大脳半球、脳幹、末梢神経の障害でも起こり、神経に
障害がなくとも神経接合部及び骨格筋自体の麻痺によっても起こりうる。片麻痺が両側性に起こったとみられる場合と、対麻痺が更に上方へ広がったとみられる
場合がある。前者は垂体外路障害による麻痺であり、痙性となることが多いが、弛緩性の場合もある後者は末梢運動ニューロンの障害によるもので、常に弛緩性
四肢麻痺の形をとる。その他、筋萎縮性側索硬化症に見られるように中枢性運動ニューロン(垂体外路)と末梢運動ニューロンの両者が同時に侵されて、両者の
性質を持った四肢麻痺を呈する場合もある。

身筋強直(筋緊張)-ミオトニー;myotonia-
theophylline 筋最大収縮後の急速な弛緩が障害された状態をいう。この現象は
筋収縮運動を繰返しているうちに、次第に軽減する。筋細胞膜におけるClイオンの透過性の減少で起こるとされている。
低カリウム血性筋症-血清K欠乏性myopathy;低K血症性(壊死性)myopathy- glycyrrhizin 重度の低カリウム血症が持続したときに出現する
myopathy、血清K
0.6-2.3mEq/Lが持続すると出現する。血清Naはほぼ正常範囲。しばしば低Ca血症を伴う。血清CPKは正常の30-200倍と上昇し、Kの低
下とある程度相関している。臨床症状は骨格筋に限局した筋力低下があり、近位筋に著名である。深部反射は減弱することが多い。筋生検所見は、筋壊死が中心
で、空胞変性も見られる。血清K低下の原因は、原発性アルドステロン症、下剤の乱用、尿細管性アシドーシス、慢性alcoho中毒、
amphotericin B療法等。

オパシー(myopaty)-筋症、筋障害-
glycyrrhizin、procainamide他。
利尿剤
筋肉自体が侵されて生じる疾患の総称。大別して次の10種類に
分類される。(1)遺伝性筋変性疾患(進行性筋ジストロフィー症)、(2)先天性ミオパシー及び関連疾患、(3)ミオトニア(筋緊張症)、(4)代謝性筋
疾患
(1.糖尿病、2.脂質代謝異常、3.その他のエネルギー代謝異常、4.電解質代謝異常、5.その他)、(5)内分泌障害によるmyopathy、(6)
炎症性筋疾患、(7)その他の内科疾患に伴うmyopathy、(8)外傷・中毒に伴うmyopathy、(9)筋組織の腫瘍、(10)原因不明の
myopathy。


付文書中に副作用としてmyoglobin尿の記載されている薬剤

*一般名赤字は新規追加分

[1997.7.23.古泉秀夫・2005.10.4.第2 訂・2006.8.8.第3訂]


  1. 最新医学大事典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  2. 第4版広範囲血液・尿化学検査・免疫化学的検査(上巻);日本臨床,683<増刊号>,(1995)
  3. 日本薬剤師会雑誌,47(2):210-216(1995)
  4. アキネトン細流・錠添付文書,1996.11.改訂
  5. パーキン散添付文書,1996.11.改訂
  6. ヒベルナ散添付文書,1996.11.改訂
  7. ペントナ錠・散添付文書,1996.11.改訂
  8. 芍薬甘草湯エキス顆粒添付文書,1996.2.改訂
  9. 小柴胡湯エキス顆粒添付文書,1996.2.改訂
  10. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  11. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006