パラフェニレンジアミンの毒性
金曜日, 8月 17th, 2007| 対象物 | 白髪染-永久毛染第1液:酸化染料(p-フェニレンジアミン0.5-24%含有。p-又はo-アミノフェノール0.5%含有)・カップラー(m-フェニレンジアミン、m- アミノフェノール)・25%-アンモニア液(4-5%含有)・非イオン系界面活性剤(20-30%)・溶剤(プロピレングリコール、イソプロピルアルコー ル)5-10%。 第2液:酸化剤(過酸化水素5-6%含有) |
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| 成分 | パ ラ・フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)。[独]phenylenediamine、[仏]phénylénediamine。 別名:ジアミノベンゼン(diaminobenzene)。パラミン、p-ジアミノベンゼン(p-diaminobenzene)、略号:PPD。 |
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| 一般的性状 | 二 つのアミノ基の相対的位置によりo-、m-及びp-の3異性体がある。酸化染料。酸化還元試薬、色素製造原料。[劇物]。 C6H8N2=108.15。 [1]o-体:黄褐色結晶。融点:102-103℃。沸点:257℃の淡褐色結晶。エタノール、エーテル、クロロホルム等に溶ける。 [2]m-体:融点:63-64℃、沸点:287℃の白色結晶であるが、空気中で酸化されて赤褐色となる。水、エタノールによく溶けるが、ベンゼン、トルエン などには殆ど溶けない。アゾ色素の中間体である。また芳香族ポリアミドの成分となる。[3]p-体:融点:145-147℃、沸点:267℃。白色、淡紅色の結晶。酸素又は空気中に 放置すると、次第に紫褐色あるいは黒色に変わる(酸化される)。アルコール、エーテルなどに可溶、クロロホルムに難溶、冷水には1/100溶ける。酸化染 料の原料となり、毛皮や毛髪を黒く染める。またアゾ染料や硫化染料の中間物とする。p-phenylenediamineは皮膚に触れると炎症を起こすこ とがある。 [用途]アゾ染料の製造、白髪染原料、ゴム加硫促進剤、分析化学、写真現像薬。 吸収:消化管粘膜、皮膚、肺から速やかに吸収。 排泄:体内でキノンジイミンに酸化され、更にN-アセチル-p-フェニレンジアミンにアセチル化。あるいはグルクロン酸抱合、硫酸抱合されて尿中に排泄。 |
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| 毒性 | p- phenylenediamineの成人経口(推定)致死量:10g。 局所粘膜刺激作用、溶血、メトヘモグロビン血症。刺激性、多くの人々に接触皮膚炎を起こす。蒸気は眼の炎症を起こすことがある。皮膚からの吸収、蒸気又は塵埃の吸入、あるいは摂取により心臓血管系に重症 の作用が起こることがある。その他経口摂取で、眩暈、流涙、意識喪失、複視。変異原性を有する。RTECS=急性経口毒性LD50:8-0mg/kg(ラット)。 許容限度値:0.1mg/m3。ACGIH 0.1mg/m3(TWA)。IARC 3。 |
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| 症状 | 服 用後2時間以内に繰返し嘔吐が始まり、続いて顔面、頸部、咽頭の浮腫、呼吸困難、チアノーゼ。 呼吸器系:喘息、気管支痙攣、急性呼吸器不全(神経血管性浮腫による)は死因となる。 消化器系:上腹部痛、嘔吐、嚥下困難。肝細胞壊死、急性腎不全(腎尿細管壊死、二次的に血管内溶血)。その他:高カリウム血症、低カリウム血症、溶血、メトヘモグロビン血症、横紋筋融解。 眼:結膜・角膜炎、結膜浮腫、眼瞼浮腫。 皮膚:多形性紅疹、接触性皮膚炎など。 |
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| 処置 | * 家庭で可能な処置 眼:15分以上流水で洗浄。 皮膚:石鹸と流水で緩徐に洗浄。*医療機関での処置 胃洗浄、吸着剤・下剤の投与。 血液透析、血液灌流による薬物除去の有用性は不明だが、重症例には試みるべき。 対症療法 神経血管性浮腫:特異的治療法はない。抗ヒスタミン剤やステロイド剤投与が進められるが、有効性は証明されていない。 メトヘモグロビン血症(30%以上なら要処置):メチレンブルーの投与。 |
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| 事例 | 山 越は嘆息して「死因は心不全かもしれんけど、沢口辰彦には重い肝臓障害があった。………永松が遺体を拭いたとき、鼻と口から出てきた浸出液に、今まで嗅い だことのないベンゼンみたいな臭いに気がついたんや」 「………」 「永松はそのことを、痛夜の読経に来た飯田に喋った。聞いた飯田は、遺体の髪を切れ、と永松をそそのかした。………飯田には、砒素や農薬といった毒物は髪 の毛とか爪に残留するという知識があって、ひょっとしたら、こいつは金になるかもしれんと欲の皮を突っ張らかしたんやな」 ……………… 「これはガスクロマトグラフによる毛髪の分析結果や。高濃度のパラフェニレンジアミンが検出された」 [黒川博行:カウント・プラン-黒い白髪-;文春文庫,2000.4.10.] |
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| 備考 | 劇 物であるp-phenylenediamineを単独で使用したのではなく、白髪染をジワジワ飲ませることによって、臓器不全を起こさせ、病死に見せよう としたものである。実際に白髪染の臭気を嗅いだことはないが、アンモニア液が配合されており、無味無臭というのではないので、意図的に摂取するつもりがな い場合、第三者が当人に気付かせず、飲ませることは困難ではないかと思われるが、どうなんでしょうか。勿論、当人が嗅覚障害、味覚障害ということであれ ば、可能であるが、そう都合良くは行かない。しかし、物語の場合、読者に違和感なく読めるように書かれていれば、それでいい訳で、誰も実証しようなどとは思わない。毒殺物語を書く場合、毒物そのもの を実証的に書くことによって真実味を持たせる場合と、使用する毒物に、何の意味も見出すことなく、単なる道具としてみていると思われる作者がいるが、いず れの場合も読み手の喉越しの良さが勝負である。 |
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| 文献 | 1) 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990 2)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999 3)今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998 4)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999 5)白川 充・他:薬物中毒必携 第2版;医歯薬出版株式会社,19896)14303の化学商品;化学工業日報社,2003 |
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| 調査者 | 古泉秀夫 | 記入日 | 2005. 11.18. |