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抗コリン作用を有する薬剤  第3改訂

金曜日, 8月 17th, 2007

*抗コリン作用(アトロピン様作用)により発現する副作用で、著明なものとしては唾液分泌減少がある。これに鼻閉が加わると口呼吸となるため、結果として口渇を生じる。ただし、口渇は次第に慣れが生じる副作用である。近くのものを見るとき、焦点が合わなくなる視力調節障害もよく見られる。毛様体筋を緊張させているアセチルコリンニューロンが拮抗されて弛緩し、水晶体の彎曲が不十分になることによって起こる副作用で、狭隅角(閉塞隅角)緑内障が悪化することがある。便秘と排尿障害は抗コリン性副作用のうち注意しなけれ ばならない副作用である。

慢性患者ではしばしば慢性便秘が放置され、巨大結腸、小腸拡張が生じ、更に麻痺性イレウスを発症することもあり、死に至ることもある。排尿障害が続くと、溢流性尿失禁(排尿障害によって残尿が多くなり膀胱内圧が高まり、括約筋がその圧に耐えられなくなって尿が漏れる状態)を見る。中枢のムスカリン性アセチルコリン受容体が強く遮断されると意識障害を生じる。軽い譫妄が起こることが多い。

*その他、抗コリン作用により房水通路が狭くなり眼圧が上昇し緑内障悪化、上昇した眼内圧の結果生じる散瞳効果が、狭隅角緑内障を促進させることがある等の報告がされている。また、抗コリン作用による膀胱平滑筋(排尿筋)の弛緩、膀胱括約筋の緊張により排尿障害が悪化するとされている他、前立腺肥大では、排尿障害を来していない場合でも抗コリン薬投与で排尿障害を惹起する等の報告が見られる。

*その他、散瞳、起立性低血圧、頻脈等の心臓毒性が発現する。閉塞性黄疸等の発現が報告されている。

*緑内障について、次の報告がされている。

[015.11.GLA:2001.3.6.古泉秀夫・第 3 改訂2003.8.28.・2005.6.21.・2005.8.8.修正]


  1. 高野智美・他:抗コリン作用を有する薬剤;THPA,44(3):155-160(1995
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2001
  3. 融 道男:向精神薬マニュアル;医学書院,1998
  4. 仮家公夫・他:疾患別薬理学;廣川書店,1988
  5. 矢野啓子:緑内障を理解する;都薬雑誌,22(11):13-19(2000)
  6. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  7. 河野眞一郎:原発閉塞隅角緑内障の治療指針;薬局,48(2):215-219(1997)
  8. 東 郁郎・編:緑内障の薬物療法;株式会社ミクス,1990
  9. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2002
  10. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003