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感染症の類型(感染症予防法)

木曜日, 8月 16th, 2007

*感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染予防・医療法=感染症予防新法)

分類 感染症名・感染症の 概要 性格
[主な対応・措置]
一類感染症 エボラ出血熱:エボラウイルスの感染により多臓器が侵され、出血傾向を示す。特異的な治療法はなく、死 亡率が高い。患者の血液、体液の接触により感染するが、手術用手袋等による接触感染予防により感染拡大を予防できる。
クリミア・コンゴ出血熱:ウイルスによる出血傾向を示す感染症。ウイルスを保有した成熟ダ ニの刺咬による。未成熟ダニは保有動物宿主から感染し、卵巣内で継代されると考えられている。患者の血液・体液の接触により感染し、人から人の感染が多数
報告されている。罹患後少なくとも1年間は免疫が残る。特異的な治療法なく、死亡率高い。*重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る):SARSコロ ナウイルスの感染による重症急性呼吸器症候群である。多くは2-7日、最大10日間の潜伏期間の後に、急激な発熱、咳、全身倦怠、筋肉痛などのインフルエ
ンザ様の前駆症状が現れる。2-数日間で呼吸困難、乾性咳嗽、低酸素血症などの下気道症状が現れ、胸部CT、X線写真などで肺炎像が出現する。肺炎になっ
た者の80-90%が1週間程度で回復傾向になるが、10-20%がARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし、人工呼吸器などを必要とするほど重症となる。致死率は10%前後で、高齢者での致死率はより高くなる。
痘そう:痘そうウイルスによる急性の発しん性疾患である。現在、地球上では根絶された状態 にある。主として、飛沫感染によりヒトからヒトへ感染する。患者や汚染された物品との直接接触により感染することもある。エアロゾルによる感染の報告もあ
るが稀である。潜伏期間はおよそ12 日(7-17 日)で、感染力は病初期(ことに4-6病日)に最も強く、発病前は感染力はないと考えられている。すべての発しんが痂皮となり、これが完全に脱落するまで
は感染の可能性がある。皮(かさぶた)の中には、感染性ウイルスが長期間存在するので、必ず滅菌消毒処理をする。
ペスト:黒死病。腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であるYersinia pestis の感染によって起こる全身性疾患である。リンパ節炎、敗血症等を起こし、重症例では高熱、意識障害等を伴う急性細菌性感染症であり、死に至ることも多い。
臨床的に腺ペストと肺ペストの2型に分類される。我が国では大正8年以後発生していない。
マールブルグ病:ウイルス感染により多臓器が侵され、出血傾向を示す。特異的治療法なく、 死亡率高い。患者の血液・体液の接触により感染するが、手術用手袋等による接触感染予防により感染拡大を予防できる。看護婦の院内感染例報告。
ラッサ熱:ウイルス感染。ウイルス血症により肝臓をはじめ多臓器が侵される。多彩な症状を 示し、重篤なものでは出血傾向がある。腎不全、ショック等で死亡することもある。昭和61年1例報告。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が極めて高い感染症。
*患者、疑似症患者及び無症状病原体保有者について入院等の措置を講ずることが必要。
[主な対応・措置]
*原則入院
*消毒等の対物措置(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適用対象とする)。
患者・疑似症患者及び無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届出。

医師の届出:直ちに
(法律)
二類感染症 急性灰白髄炎(ポリオ):ポリオウイルス1-3 型感染による急性運動中枢神経感染症である。潜伏期は3-12日で、発熱(3日間程度)、倦怠感、頭痛、嘔気、項部・背部硬直などの髄膜刺激症状を呈する
が、軽症例(不全型)では軽い風邪症状または胃腸症状で終わることもある。髄膜炎症状だけで麻痺を来さないもの(非麻痺型)もあるが、重症例(麻痺型)で
は発熱に引き続きあるいは一旦解熱し再び熱発した後に、突然四肢の随意筋(多くは下肢)の弛緩性麻痺が現れる。罹患部位の腱反射は減弱ないし消失、知覚感
覚異常を伴わない。
コレラ:コレラはコレラ毒素(CT)産生性コレラ菌(Vibrio cholerae O1)またはV. cholerae O139に汚染された飲料水や食品を介した経口感染により、激しい水様性下痢と嘔吐、著しい脱水と電解質の流失をきたす疾病である。コレラの潜伏期間は数
時間から5日、通常1日前後である。近年のエルトールコレラは軽症の水様性下痢や軟便で経過することが多いが、まれに“米のとぎ汁”様の便臭のない水様便
を1日数リットルから数十リットルも排泄し、激しい嘔吐を繰り返す。その結果、著しい脱水と電解質の喪失、チアノーゼ、体重の減少、頻脈、血圧の低下、皮
膚の乾燥や弾力性の消失、無尿、虚脱などの症状および低カリウム血症による腓腹筋(ときには大腿筋)の痙攣がおこる。胃切除を受けた人や高齢者では重症に
なることがあり、また死亡例もまれにみられる。
細菌性赤痢:赤痢菌(Shigella dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、S.sonnei )の経口感染で起こる急性感染性大腸炎である。1-5日の潜伏期の後に、発熱、腹痛、下痢、時に嘔吐によって急激に発症し、重症例では頻回の便意とともに
粘血便を排泄する。志賀菌では重症例が多く、ソンネ菌では軽症例が多い。*ジフテリア:ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の感染による急性感染症である。ジフテリア菌が咽頭などの粘膜に感染し、感染部位の粘膜や周辺の軟部組織の障害を引き起こし、扁
桃から咽頭粘膜表面の偽膜性炎症、下顎部から前頚部の著しい浮腫とリンパ節腫張(bullneck)などの症状が出現する。重症例では心筋の障害などによ
り死亡する。
腸チフス:腸チフスはチフス菌(Salmonella serovar Typhi)の感染による全身性疾患である。
腸チフスの潜伏期間は7-14 日で発熱を伴って発症する。患者、保菌者の糞便と尿が感染源となる。39℃を超える高熱が1 週間以上も続き、比較的徐脈、バラしん、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。重症例では意識障害や難聴が起きることもある。
健康保菌者はほとんどが胆嚢内保菌者であり、胆石保有者や慢性胆嚢炎に合併することが多く、永続保菌者となることが多い。
パラチフス:パラチフスはパラチフスA菌(Salmonella serovar Paratyhi A)の感染によって起こる全身性疾患である。(Salmonella
Paratyphi B、Salmonella Paratyphi Cによる感染症はパラチフスから除外され,サルモネラ症として取り扱われる)。臨床的症状は腸チフスに類似する。7-14
日の潜伏期間の後に38℃以上の高熱が続く。徐脈、脾腫、便秘、時には下痢、等の症状を呈する。症状は腸チフスと比較して、軽症の場合が多い。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が高い感染症。
*患者及び一部の疑似症患者について入院等の措置を講ずることが必要。[主な対応・措置]
*状況に応じて入院
*消毒等の対物措置
患者・政令で定める感染症の疑似症患者及び無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届 出。

医師の届出:直ちに
(法律)
三類感染症 腸管出血性大腸菌感染症:ベロ毒素(Verotoxin ,VT)を産生する腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli,EHECあるいはShigatoxin-producing
E. coli ,STEC)の感染によっておこる全身性疾病である。臨床症状はその血清型により差異があるが、一般的な特徴は腹痛、水様性下痢および血便である。嘔吐や
38℃台の発熱を伴うこともある。さらにベロ毒素の作用により溶血性貧血、急性腎不全をきたし、溶血性尿毒症症候群( Hemolytic Uremic
Syndrome, HUS ) をひきおこすことがある。小児や高齢者では痙攣、昏睡、脳症などによって致命症となることがある。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が高くないが、特定の職業への就業にによって感染症の集団発生を起こし得る感染症。
*患者及び無症状病原体保有者について就業制限等の措置を講ずることが必要。
[主な対応・措置]*特定職業への就業制限
*消毒等の対物措置
患者・無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届出。
医師 の届出:直ちに
(法律)
四類感染症 E型肝炎:E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。我が国では、これまでの報告のほとんどは 発展途上国などの流行地域での海外感染例であったが、2002
年から国内感染例の報告が増加している。途上国では主に水系感染であるが、我が国では汚染された食品や動物の臓器や肉生食による経口感染が指摘されてい
る。潜伏期間はA型肝炎より長く、平均6週間といわれている。臨床症状はA型肝炎と類似しており、予後も通常はA型肝炎と同程度で、慢性化することはな
い。しかし、妊婦(第3三半期)に感染すると劇症化しやすく、致死率も高く20%に達することもある。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む):フラビウイルス科に属するウエストナイル ウイルスによる感染症で、蚊によって媒介される。2-14日の潜伏期の後に高熱で発症する。発熱は通常3-6日間持続する。同時に頭痛、背部の痛み、筋肉
痛、食欲不振などの症状を有する。約半数で発しんが胸部、背、上肢に認められる。リンパ節腫張通常認められる。症状は通常1週間以内で回復するが、その後
倦怠感が残ることも多い。特に高齢者においては、上記症状とともにさらに重篤な症状として、激しい頭痛、方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、痙攣等の症状が
出現し、脳炎、髄膜脳炎を発症することがある。特に米国では重篤な例で筋力低下が約半数に認められている。
A型肝炎:A型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。我が国では衛生状態の向上と ともに患者数は減少したが、最近でも年間500 例近い報告があり、そのほとんどは国内感染例である。汚染された食品や水などを介して、通常経口感染により伝播する。しかし、一部には性感染症として伝播
する例もある。潜伏期間は平均4週間程度である。感染期間は、ウイルスが便に排泄される発病の3-4週間前から発症後数週間にわたることもあり、数ヶ月に
わたって便からウイルスが排出されるという報告もある。主な臨床症状は全身倦怠感、食思不振で、黄疸、肝腫大などの肝症状が認められる。一般に予後は良
く、慢性化することはないが、まれに劇症化することがある。小児では不顕性感染や軽症のことが多い。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
エキノコックス症:エキノコックス(Echinococcus) による感染症で、単包条虫(Echinococcus granulosus)と多包条虫(Echinococcus
multilocularis)の2種類がある。ヒトへの感染はキツネやイヌなどから排泄された虫卵に汚染された水、食べ物、埃などを経口的に摂取した時
に起こる。体内に発生した嚢胞は緩慢に増大し、周囲の臓器を圧迫する。多包虫病巣の拡大は極めてゆっくりで、肝臓の腫大、腹痛、黄疸、貧血、発熱や腹水貯
留などの初期症状が現れるまで、成人では通常10 年以上を要する。放置すると約半年で腹水がたまり、やがて死に至る。
黄熱:フラビウイルス科に属する黄熱ウイルスの感染によるウイルス性出血熱である。南米や アフリカの熱帯地域にみられる。潜伏期間は3-6日間で発症は突然である。悪寒または悪寒戦慄とともに高熱を出し、嘔吐、筋肉痛、出血(鼻出血、歯齦出
血、黒色嘔吐、下血、子宮出血)、蛋白尿、比較的除脈、黄疸等を来す。普通は7-8病日から治癒に向かうが、重症の場合には乏尿、心不全、肝性昏睡など
で、5-10 病日に約10%が死亡する。*オウム病:クラミジアChlamydia psittaci を病原体とし、オウムなどの愛玩用のトリからヒトに感染し、肺炎などの気道感染症を起こす疾患である。1-2週間の潜伏期の後に、突然の発熱で発病する。
軽い場合はかぜ程度の症状であるが、老人などでは重症になることが多い。初期症状として悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛など
がみられる。呼吸器症状として咳、粘液性痰などがみられる。胸部レントゲンで広範な肺病変はあるが理学的所見は比較的軽度である。重症になると呼吸困難、
意識障害、DIC などがみられる。発症前にトリとの接触があったかどうかが報告のための参考になる。
回帰熱:シラミ或いはヒメダニ(Ornithodoros 属:ヒメダニ属) によって媒介されるスピロヘータ(回帰熱ボレリア)感染症である。コロモジラミ媒介性Borrelia
recurrentis やヒメダニ媒介性B.duttonii 等がヒトに対する病原体である。菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3
ないし5 回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を主訴とする。感染後5-10 日を経て菌血症による頭痛、筋肉痛、関節痛、羞明、咳などをともなう発熱、悪寒がみられる(発熱期)。またこのとき点状出血、紫斑、結膜炎、肝臓や脾臓の
腫大、黄疸もみられる。発熱期は3-7日続いた後、一旦解熱する(無熱期)。無熱期では血中から菌は検出されない。発汗、倦怠感、時に低血圧や斑状丘しん
をみることもある。この後5-7日後再び発熱期に入る。上記症状以外で肝炎、心筋炎、脳出血、脾破裂、大葉性肺炎などがみられる場合もある。
Q熱:リケッチアの一種であるCoxiella burnetii の感染によって起こる動物由来感染症である。急性感染ではインフルエンザ様で突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、眼球後部痛の症状で始まる。未治療の
場合、有熱期間は5-57 日とされるが、多くは14日以内に解熱する。肺炎や肝機能障害を起こすこともあるが、予後は一般に良い。慢性感染では心内膜炎を起こし死亡率が高くなる。
急性症例の20-40%に慢性疲労症候群に類似した症状がみられたという報告もある。
狂犬病:ラブドウイルス科に属す狂犬病ウイルスの感染による神経疾患である。狂犬病は狂犬 病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリ、キツネ、スカンク、コヨーテなどの野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染し、発症する。潜伏期は
1-3カ月で、まれに1年以上に及ぶ。臨床的には咬傷周辺の知覚異常、疼痛、不安感、不穏、頭痛、発熱、恐水発作、麻痺と進む。発症すると致命的となる。
感染動物の唾液中にはウイルスが存在していることがある。米国ではアライグマやコウモリにおける狂犬病の増加が問題となっているが、狂犬病ウイルス感染動
物との接触が明らかでないヒトの感染事例が時々報告され、コウモリが原因と推測される場合がある。ワクチン接種により防御免疫を確立できる。狂犬病ウイル
ス暴露後であっても、ワクチン接種により発症予防が可能である。
高病原性鳥インフルエンザウイルス:高病原性鳥インフルエンザウイルスによるヒトの感染症 をいう。鳥インフルエンザウイルスのうち、特にH5及び(又は)H7亜型のヘマグルチニンを持つものはニワトリに対する病原性が強い。ヒトに対しても強い
病原性を獲得する可能性が高い。H5N1ウイルスの感染により、1997 年に香港で6名が死亡し、さらに2003 年に2名が死亡した。2003 年にオランダでニワトリにH7N7ウイルスの感染症が発生、流行した際に、獣医師が1名死亡した。現在のところ、我が国では家禽類からは、H5及びH7ウ
イルスは検出されていない。感染した家禽あるいは野生鳥などからヒトにH5またはH7ウイルスが感染することがごく稀にある。オランダでのA/H7N7に
よる事例では、ヒトからヒトへの感染も起こったと報告されている。潜伏期間は通常のインフルエンザと変わりなく、1-3日と考えられており、症状は突然の
高熱、咳などの呼吸器症状の他、重篤な肺炎、全身症状を引き起こす。A/H7N7ウイルスの感染では結膜炎を起こした。過去の香港でのA/H5N1ウイル
スによる事例では、感染拡大防止のために大規模な家禽の屠殺処分が行われた。上述の症状のごとくインフルエンザを疑わせる症状があり、A型インフルエンザ
ウイルスが分離同定されるものの、A/H1N1あるいはA/H3N2に対する抗血清と反応せず、亜型判別不能の場合には本疾患を疑う。

コクシジオイデス症:カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州をはじめとする米国 西南部各州、メキシコの太平洋側の半乾燥地帯、ベネズエラのコロ地方、アルゼンチンのパンパ地域に発生する風土病で、原因菌は真菌で
Coccidioides immitis である。北アメリカ、特にカリフォルニア州のサンホアキン渓谷で患者が多発している。強風や土木工事などにより土壌中のC.
immitis の分節型分生子が土埃と共に空中に舞い上がり、これを吸入することにより肺感染が起こり、そのうち約0.5%の患者が全身感染へと進み、約半数が死亡する
最も危険な真菌症である。特に皮膚病巣は特徴があり、結節、潰瘍を繰り返し、花キャベツ状の腫瘤を形成する。
サル痘:サル痘ウイルス(Monkeypox virus)による急性発しん性疾患である。野生動物との接触が多い、西アフリカ、中央アフリカの熱帯雨林で多く見られる。げっ歯類やサルなどの野生動
物、あるいはそれらから感染したペットに咬まれる、あるいは血液、体液、発しんなどに触れることで感染する。ヒトからヒトへの感染は稀ではあるが、飛沫に
よる感染、あるいは体液、衣類・寝具などとの接触による感染がありうる。潜伏期間は7-21 日(大部分は10-14 日)である。発熱、不快感、頭痛、背部痛、発しんなど、痘そうとよく似た症状がみられるが、傷などから入るので、局所リンパ節の腫脹がある。致死率は低
い。
腎症候性出血熱(HFRS):ハンタウイルス(ブニヤウイルス科ハンタウイルス属)による 熱性・腎性疾患で、極東アジアから東欧、北欧にかけて広く分布する。HFRS ウイルスとも称する。ネズミに咬まれたり、排泄物(エアロゾルの吸入を含む)に接触することによりヒトにウイルスが伝播する。このウイルスはヒトに感染す
ると状況により重篤な全身感染、あるいは腎疾患を生じ、以下の型が知られている。
1) 重症アジア型:ドブネズミ、高麗セスジネズミが媒介する。潜伏期間は10-30日で、発熱で始まる有熱期、低血圧期(ショック)(4-10 日)、乏尿期(8-13
日)、利尿期(10-28日)、回復期に分けられる。全身皮膚に点状出血斑が出ることがある。発症から死亡までの時間は4-28日で尿素窒素は50-
300mgに達する。常時高度の蛋白尿、血尿を伴う。
2) 軽症スカンジナビア型:ヤチネズミによる。ごく軽度の発熱、蛋白尿、血尿がみられるのみで、極めてまれに重症化する。
炭疽:本症は炭疽菌(Bacillus anthracis)によるヒトと動物の感染症で、温血動物、主にウシなどの草食獣に急性敗血症死を起こす。ヒト炭疽には4つの主要な病型がある。国内の
動物の発生はほとんどがウシで、感染の機会は農業従事者、獣医師、動物産品処理従事者などに多い。

1)皮膚炭疽:全体の95-98%を占める。潜伏期は1-7日である。初期病変はニキビや虫さされ様で、かゆみを伴うことがある。初期病変周囲には水疱が
形成され、次第に典型的な黒色の痂皮となる。およそ80%の患者では痂皮の形成後7-10 日で治癒するが、20%では感染はリンパ節および血液へと進展し、敗血症へと進展し致死的である。2)肺炭疽:上部気道の感染で始まる初期段階はインフル
エンザ等のウイルス性呼吸器感染や軽度の気管支肺炎に酷似しており、軽度の発熱、倦怠感、筋肉痛等を訴える。数日して第2の段階へ移行すると突然呼吸困
難、発汗およびチアノーゼを呈する。この段階に達すると通常、24 時間以内に死亡する。3)腸炭疽:本症で死亡した動物の肉を摂食した後2-5日で発症する。腸病変部は回腸下部および盲腸に多い。初期症状として悪心、嘔
吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、吐血をあらわし、血液性の下痢を呈する場合もある。毒血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し死亡する。
腸炭疽の死亡率は25-50%とされる。4)髄膜炭疽:皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の2/3 に引き続いて起こるが、稀に初感染の髄膜炭疽もある。髄膜炭疽は治療を行っても、発症後2-4日で100%が死亡する。
つつが虫病:ツツガムシ病リケッチア(Orientia tsutsugamusi)に感染した「つつが虫(恙虫)」の幼虫がヒトを刺すことによって経皮感染する急性感染症である。5-14
日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。体温は段階的に上昇し数日で40 度にも達する。刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。第3-4病日より不定型の発しんが出現するが、発しんは顔面、体幹に多く四肢には
少ない。治療が適切に行われると早期に消退する。重症になると肺炎や脳炎症状を来す。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。発生は初夏および晩秋から
冬で、初夏の発生は主として東北・北陸である。
デング熱:フラビウイルス科に属するデングウイルス感染症で、蚊によって媒介される。2- 15 日(多くは3-7日)の潜伏期の後に突然の高熱で発症。頭痛、眼窩痛、顔面紅潮、結膜充血を伴う。発熱は2-7日間持続(二峰性であることが多い)。初期
症状に続いて全身の筋痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈する。発症後3-4日後胸部、体幹からはじまる発しんが出現し、四肢、顔面へ広がる。症状は1週間程度
で回復する。血液所見では軽度の白血球減少、血小板減少がみられる。出血やショック症状を伴う重症型としてデング出血熱*があり、全身管理が必要となるこ
ともある。ヒトからヒトへの直接感染はないが、熱帯・亜熱帯(特にアジア、オセアニア、中南米)に広く分布する。日本国内での感染はないが、海外で感染し
た人が国内で発症することがある。*デング出血熱:デング熱とほぼ同様に発症経過するが、解熱の時期に血液漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が
出現し、死に至ることもある。
ニパウイルス感染症:ニパウイルスによる感染症であり、発熱、倦怠感など、インフルエンザ 様症状を呈し、一部は重症の脳炎を発症する。1999 年にマレーシアで大きなアウトブレイクを起こし、死者105
人を数えた他、直接の感染源と考えられるブタ100 万頭規模の殺処分を招いたことにより、同国の養豚業に壊滅的な打撃を与えた。感染経路は感染動物の体液や組織との接触によると考えられている。ヒトからヒ
トへの感染例は報告されていない。通常、発熱と筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈し、その一部が意識障害、痙攣などを伴い、脳炎を発症する。
日本紅斑熱:新型の紅斑熱リッケチア(Rickettsia japonica)による感染症である。マダニに刺されることで感染すると考えられている。刺されてから2-8日頃から頭痛、全身倦怠感、関節痛、発熱な
どを伴って発病する。発熱とほぼ同時に紅色の斑丘しんが四肢末端から求心性に多発する。リンパ節腫脹はあまりみられない。CRP 陽性、白血球減少、肝機能異常などはツツガムシ病と同様である。発生は主として夏である。

日本脳炎:フラビウイルス科に属す日本脳炎ウイルスの感染による急性脳炎である。ブタが増 幅動物となり、蚊が媒介する。感染後1-2週間の潜伏期を経て、急激な発熱と頭痛を主訴として発症する。その他、初発症状として全身倦怠感、食欲不振、嘔
気、嘔吐、腹痛も存在する。その後、症状は悪化し、項部硬直、羞明、意識障害、興奮性の上昇、仮面様顔貌、筋硬直、頭部神経麻痺、眼振、四肢振戦、不随意
運動、運動失調、病的反射が出現する。知覚障害はまれである。発熱は発症4-5日に最も高くなり、発症後1週間程度で死亡する例が多い。熱はその後次第に
低下する。致命率は約25%、患者の50%は後遺症を残して回復、25%はほぼ完全に回復する。
ハンタウイルス肺症候群:ブニヤウイルス科、ハンタウイルス属のウイルス(Sin Nombre virus)による急性呼吸器感染症で、現在米国あるいは一部南米の国で発生がある。前駆症状として発熱と筋肉痛が100%にみられる。次いで咳、急性に
進行する呼吸困難が特徴的で、消化器症状及び頭痛が70%以上に伴う。最もありふれた症状は頻呼吸(100%)、頻拍である。半数に低血圧等を伴う。発
熱・悪寒は1-4日続き、次いで進行性呼吸困難、酸素不飽和状態に陥る(肺水腫、肺浮腫による)。早い場合は発熱等発症後24 時間以内の死亡も頻繁にみられる。肺水腫等の機序は心性ではない。X線で肺水の貯留した特徴像が出る。死亡率は約60%という報告もある。感染経路として
は、手足の傷口からウイルスに汚染されたネズミの尿、唾液が接触して入る、ネズミに咬まれる、ウイルスを含む尿、唾液により汚染されたほこりを吸い込む
(これが最も多い)等による。媒介動物は、米国ではシカシロアシネズミ(Permyscus maniculatus)がウイルス保有動物として最も一般的である。ウイルスを媒介するこの群のネズミは米国、カナダ、南米(チリ、アルゼンチン等)に
も存在する。このネズミとウイルスは日本では見つかっていない。
Bウイルス病:マカク属のサルに常在するBウイルス(ヘルペス群ウイルス)による熱性・神 経性疾患である。サルによる咬傷後、症状発現までの潜伏期間は早い場合2日、通常2-5週間である。早期症状としてはサルとの接触部位(外傷部)周囲の水
疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変、接触部位の疼痛、掻痒感、所属リンパ節腫大を来し、中期症状としては発熱、接触部位の感覚異常、接触部位側の筋力低下あ
るいは麻痺、眼にサルの分泌物等のはねがとんだ際に結膜炎を来す。晩期には副鼻腔炎、項部強直、持続する頭痛、悪心・嘔吐、脳幹部症状として複視、構語障
害、目まい、失語症、交差性麻痺及び知覚障害、意識障害、脳炎症状を来し、無治療での死亡率は70-80%で、生存例でも重篤な神経障害が後遺症としてみ
られる。感染経路は実験室、動物園あるいはペットのマカク属サルとの接触(咬傷、擦過傷)及びそれらのサルの唾液、粘液とヒト粘膜との接触(とびはね)の
経過があることが重要な点である。また実験室ではサルに使用した注射針の針刺し、培養ガラス器具による外傷によっても感染する。
ブルセラ症:本症はウシ、ブタ、ヤギ、イヌおよびヒツジの感染症であるが、原因菌 (Brucella abortus、B. suis、B. melitensis、B.
rangiferi、およびB. canis)がヒトに感染して発症する。波状熱、マルタ熱、地中海熱などの名前でも呼ばれる。感染源は感染動物の組織、乳汁、血液、尿、胎盤、膣排泄物、
流産胎児などである。B. canisに感染したイヌの尿も感染源になるとされる。潜伏期間は1-18 週、通常2-8週との報告がある。感染によって誘導される所見として比較的共通のものは脾腫、リンパ節特に頚部および鼠径部リンパ節の腫脹、および関節の
腫脹と痛みがあり、その他に20-50%の患者に、進行の時期によって泌尿器生殖器症状があらわれる。B. melitensis の感染では約70%の患者に肝腫大が認められる。本感染による死亡率は一般的には低率であるが、心内膜炎を併発している場合には致死率は上昇し、ヒトのブ
ルセラ症による死亡の多くはこれが原因である。ヒトブルセラ症の3-5%に神経症状や精神神経的な症状との関連性があるとされる。
発しんチフス:Rickettsia prowazekii による急性感染症で、シラミによって媒介される。発熱、頭痛、悪寒、脱力感、手足の疼痛を伴って突然発症する。熱は39-40
度に急上昇する。発しんは発熱第5-6病日体幹から全身に拡がるが、顔面、手掌、足底に出現することは少ない。発しんは急速に暗紫色の点状出血斑となる。
患者は明らかな急性症状を呈するが、発熱からおよそ2週間後に急速に解熱する。重症例の半数に精神神経症状が出現する。初感染後潜伏感染し数年後に再発す
ることがある( BrillZinsser病)。症状は軽度である。

ボツリヌス症:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス毒素、またはC. butyricum、C. baratii などが産生するボツリヌス毒素により発症する神経、筋の麻痺性疾患である。ボツリヌス毒素またはそれらの毒素を産生する菌の芽胞が混入した食品の摂取など
によって発症する。潜伏期は、毒素を摂取した場合(食餌性ボツリヌス症)には、5時間-3日間(通常12-24 時間)とされる。神経・筋接合部、自律神経節、神経節後の副交感神経末端からのアセチルコリン放出の阻害により、弛緩性麻痺を生じ、種々の症状(全身の違
和感、複視、眼瞼下垂、嚥下困難、口渇、便秘、脱力感、筋力低下、呼吸困難など)が出現し、適切な治療を施さない重症患者では死亡する場合がある。発症機
序の違いにより、1) 食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)(食品中でボツリヌス菌が増殖して産生された毒素を経口的に摂取することによって発症)、2)
乳児ボツリヌス症(1歳以下の乳児が菌の芽胞を摂取することにより、腸管内で芽胞が発芽し、産生された毒素の作用によって発症)、3) 創傷ボツリヌス症(創傷部位で菌の芽胞が発芽し、産生された毒素により発症)、4)
成人腸管定着ボツリヌス症(ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取した1歳以上のヒトの腸管に数ヶ月間菌が定着し毒素を産生し、乳児ボツリヌス症と類似の症
状が長期にわたって持続する)の4つの病型に分類される。
マラリア:マラリアはPlasmodium 属原虫のPlasmodium vivax(三日熱マラリア原虫)、Plasmodiumfalciparum(熱帯熱マラリア原虫)、Plasmodium
malariae (四日熱マラリア原虫)、Plasmodiumovale(卵形マラリア原虫)などの単独または混合感染に起因する疾患であり、特有の熱発作、貧血および
脾腫を主徴とする。最も多い症状は発熱と悪寒で、発熱の数日前から全身倦怠や背痛、食欲不振など不定の前駆症状を認めることがある。熱発は間隔をあけて発
熱期と無熱期を繰り返す。発熱期は悪寒を伴って体温が上昇する悪寒期(1-2時間)と、悪寒がとれて熱感を覚える灼熱期(4-5時間)に分かれる。典型的
には三日熱及び四日熱マラリアでは悪寒期に戦慄を伴うことが多い。発熱期には頭痛、顔面紅潮や嘔気、関節痛などを伴う。その後に発汗・解熱し、無熱期へ移
行する。発熱発作の間隔は虫種により異なり、三日熱と卵形マラリアで48 時間、四日熱マラリアで72 時間である。熱帯熱マラリアでは36?48 時間、あるいは不規則となる。他の症状としては脾腫、貧血、血小板減少、低血糖、腎肺機能不全、錯乱などがあげられるが、原虫種、血中原虫数及び患者の免
疫状態によって異なる。未治療の熱帯熱マラリアは急性の経過を示し、中枢神経(マラリア脳症)、急性腎不全、重度の貧血、DIC や肺水腫を併発して発病数日以内に重症化し、致死的となる。
野兎病:野兎病菌(Francisella tularensis )による発熱性疾患である。哺乳類の100種以上、鳥類30種以上、両生類、魚類、更に約100種類の節足動物から菌検出例が報告されている。野生鳥獣類
の間で、吸血性節足動物(ダニ類や昆虫類)をベクターとして維持されている。保菌動物の解体や調理の時の組織あるいは血液との接触、あるいはマダニ、アブ
など節足動物の刺咬により感染する。また、汚染した生水からも感染する。ヒトは感受性が高く、健康な皮膚からも感染する。ヒトからヒトへの感染の報告はな
い。潜伏期間は3日をピークとする1-7日である。初期症状は菌の侵入部位によって異なり、潰瘍リンパ節型、リンパ節型、眼リンパ節型、肺炎型などがあ
る。一般的には悪寒、波状熱、頭痛、筋肉痛、所属リンパ節の腫脹と疼痛などの症状がみられる。
ライム病:マダニ(Ixodes 属)刺咬により媒介されるスピロヘータ(ライム病ボレリア;Borreliaburgdorferi sensulato)感染症である。北米、欧州、ロシア、本邦を含む極東地域で広くみられ、患者は皮膚症状、神経症状、心筋炎など多様な症状を示す。本邦
では国内例、輸入例ともに見られる。感染初期(stage I)には、マダニ刺咬部を中心として限局性に特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などのイ
ンフルエンザ様症状を伴うこともある。紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑または均一性紅斑がほとんどである。播種期(stage
II)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。これに伴い、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。感
染から数カ月ないし数年を経て、慢性期(stage III)に移行する。患者は播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれる。本邦では、慢性期に移行したとみられる症例は現在のとこ
ろ報告されていない。症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられる。
リッサウイルス感染症:狂犬病ウイルスを除くリッサウイルス属のウイルスによる感染症であ る。主にヨーロッパ、オーストラリア、アフリカに分布している。本ウイルスを保有する野生のコウモリとの接触により感染すると考えられている。リッサウイ
ルス感染症の中で最も患者発生数が多いのは狂犬病(狂犬病の項を参照)で、それ以外のリッサウイルス感染症の情報は非常に少ない。潜伏期間は狂犬病ウイル
スに準じた期間と考えられる(20-90日が基本的な潜伏期間。咬傷部位や数によって潜伏期間も異なってくると思われる)。臨床症状としては、頭痛、発
熱、倦怠感、創傷部位の知覚過敏や疼痛を伴う場合があり、興奮、恐水症状、精神錯乱などの中枢神経症状を伴う場合もある。一般的に、発症後2週間以内に死
亡する。

レジオネラ症:Legionella 属菌(Legionella pneumophila)が原因で起こる感染症の総称である。在郷軍人病(レジオネラ肺炎)とポンティアック熱が主要な病型である。免疫不全者に感染する
と、時に心内膜炎や腹膜炎など全身の化膿性病変を起こす。臨床症状で他の細菌性肺炎と区別することは困難である。
レプトスピラ症:病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans など)により生じ、黄疸・出血・腎障害などを主徴とする重症型のものから、軽症のものまで、多様な症状を示す急性の熱性疾患である。病原性レプトスピラに
は230 種以上の血清型が存在する。病原性レプトスピラを保有しているネズミ・イヌ・ウシ・ウマ・ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に、時
には汚染された飲食物の摂取により経口的にヒトに感染する。重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプト
スピラ病などがある。ワイル病は黄疸・出血・蛋白尿を主徴とし、最も重篤である。潜伏期間は3-14 日で、突然の悪寒・戦慄・高熱、筋肉痛、眼球結膜の充血が生じ、4-5病日後、黄疸や出血傾向が増強する場合もある。

*動物、飲食物等の物件を介 して感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症(人から人への伝染はない)。
*媒介動物の輸入規制、消毒、物件の排気筒の物的措置が必要。[主な対応・措置]

*感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供。

医師の届出:直ちに
(政令)

五類感染症 アメーバ赤痢:赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染に起因する疾患で、消化器症状を主症状とするが、それ以外の臓器にも病変を形成する。病型は腸管アメーバ症と腸管外アメー
バ症に大別される。腸管アメーバ症は下痢、粘血便、しぶり腹、鼓腸、排便時の下腹部痛あるいは不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイ
チゴゼリー状の粘血便を排泄するが、数日から数週間の間隔で憎悪と寛解をくり返すことが多い。潰瘍の好発部位は盲腸から上行結腸にかけてとS字結腸から直
腸にかけての大腸である。まれに肉芽腫性病変が形成されたり潰瘍部が壊死性に穿孔することもある。腸管外アメーバ症は多くは腸管部よりアメーバが血行性に
転移することによるが、肝膿瘍が最も高頻度にみられる。成人男性に多い。発熱(38-40℃)、季肋部痛、嘔気、嘔吐、体重減少、寝汗、全身倦怠などを伴
う。膿瘍が破裂すると腹膜、胸膜や心外膜にも病変が形成される。その他、皮膚、脳や肺に膿瘍が形成されることがある。*ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く):ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎、C 型肝炎、その他のウイルス性肝炎)である。慢性肝疾患、無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない。一般に全身倦怠感、感冒様症状、食思不振、悪
感、嘔吐などの症状で急性に発症して、数日後に褐色尿や黄疸をともなうことが多い。発熱、その他の全身症状を呈する発病まもない時期には、感冒あるいは急
性胃腸炎などと類似した症状を示す。臨床病型は、黄疸をともなう定型的急性肝炎のほかに、顕性黄疸を示さない急性無黄疸性肝炎、高度の黄疸を呈する胆汁
うっ滞性肝炎、急性肝不全症状を呈する劇症肝炎などに分類される。
急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く):ウイルスなど種々の病原体の感染によ る脳実質の感染症である。ただし、病原体が特定され、他の届出基準に含まれるものを除く。炎症所見が明らかではないが同様の症状を呈する脳症もここには含
まれる。多くは何らかの先行感染を伴い、高熱に続き意識障害やけいれんが突然出現し、持続する。髄液細胞数が増加しているものを急性脳炎、正常であるもの
を急性脳症と診断することが多いが、その臨床症状に差はない。
クリプトスポリジウム症:クリプトスポリジウム属原虫(Cryptosporidium spp.)のオーシストを経口接種することによる感染症である。潜伏期は4-5日ないし10
日程度と考えられ、無症状のものから、食思不振、嘔吐、腹痛、下痢(水様性下痢や粘血便)などを呈するものまで様々である。患者の免疫力が正常であれば通
常は数日間で自然治癒するが、エイズなどの各種の免疫不全者には重篤な感染を起こすことがあり、1日に3-5リットル、時に10 リットルをこえる下痢によって脱水死することもある。
クロウイツフェルト・ヤコブ病:クロイツフェルト・ヤコブ病(以下、「CJD」という。) は、脳内に異常なプリオン蛋白(蛋白性感染粒子、プリオン、proteinaceous
infectious particle、prion)が蓄積し、脳が海綿状となる「伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform
encephalopathy、TSE)」又は「プリオン病」と呼ばれる疾患の代表的な疾患。本疾患の有病率は100 万人に1人前後、その8割は孤発性CJD
で、地域差、男女差はない。発病は50-70 歳代が多い。約2割に遺伝性CJD があり、発病が早い(40 歳代)ものもある。また、医原性感染が疑われるものに、ヒト由来脳下垂体製剤(成長ホルモン等)、ヒト乾燥硬膜移植等がある。孤発性CJD
では、初老期以降に不定の精神・神経症状が生じ、急速に憎悪し、数ヶ月で無動性無言状態となり、全経過は1-2年といわれている。家族性CJD では、プリオン蛋白遺伝子の変異に応じて臨床症状、経過が異なる。この場合は、静脈血から遺伝子診断が可能である。新変異型CJDは、近年、英国で報告さ
れ、20 歳代の若年に発症し、不安、感覚障害等で初発し、経過が従来のCJD よりやや長い。この新変異型CJD は、異常なプリオン蛋白の泳動パターンが牛海綿状脳症(狂牛病)のものと類似していることが指摘されている。この他、亜型として、GSS(ゲルストマン・
ストロイスラー・シャインカー症候群、GerstmannStrausslerScheinkersyndrome)、FFI(致死性家族性不眠症、
Fatal Familial Insomnia)がある。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症:突発的に発症し、急激に進行するA群レンサ球菌による敗血 症性ショック病態である。初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、
明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固症状、腎肝症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状
態から24 時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾
患である。

後天性免疫不全症候群:レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus; HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態。感染からエイズ発症まで通常約10
年の無症候期がある。感染症新法における発生動向調査においては、HIV 感染症を診断した時点から報告することが求められている。HIV に感染した後、CD4
陽性リンパ球数が減少し、無症候性の時期(無治療で約10 年)を経て、生体が高度の免疫不全症に陥り、日和見感染症や悪性腫瘍が生じてくる[サーベイランスのためのHIV
感染症/AIDS 診断基準(厚生省エイズ動向委員会、1999)抜粋]。
ジアルジア症:ジアルジア(消化管寄生虫鞭毛虫の一種)による原虫感染症である。糞便中に 排出された原虫により食物や水が汚染されることによって経口感染を起こす。糞便中に排出された原虫により食物や水が汚染されることによって経口感染を起こ
す。健康な者の場合には無症状のことも多いが、食欲不振、腹部不快感、下痢等の症状を示すこともあり、免疫不全者では重篤となることもある。
髄膜炎菌性髄膜炎:Neisseria meningitidis による急性化膿性髄膜炎で、ヒトからヒトへ飛沫感染し、ときに流行性発症があるので流行性髄膜炎ともいわれる。突然の発症がみられ(潜伏期は2-4日)、
髄膜炎症状(頭痛、発熱、痙攣、意識障害、髄膜刺激症状、乳児では大泉門膨隆)を示す。点状出血斑がみられることもある。敗血症例ではショックならびに
DIC を来し(WaterhouseFriderichsen症候群)、細菌性の関節炎を伴うこともある。世界各地に散発性または流行性に発生し、温帯では寒い
季節に、熱帯では乾季に多発する。本邦では稀である。
先天性風しん症候群:風しんウイルスの経胎盤感染によって起こる先天異常である。先天異常 の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12 週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20
週を過ぎるとほとんどなくなる。三徴は、難聴、白内障、動脈管開存症であるが、その他知能障害、小頭症、緑内障、角膜混濁、脈絡網膜炎、小眼球、斜視、心
室中隔欠損症などを来しうる。
梅毒:スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum )の感染によって生じる性感染症である。I期梅毒として感染後3-6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性のそけい部リンパ節腫脹が
みられる。II期梅毒では、感染後3カ月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラしんや丘しん性梅毒しんなどの特有な発しんが見られる。感染後3年以上を経過
すると晩期顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認め
られない無症候梅毒もある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、胎内感染を示す検査所見のある症例、II期梅毒しん、骨軟骨炎など早期
先天梅毒の症状を呈する症例、乳幼児期は症状を示さずに経過し学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinton
歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。

破傷風:破傷風毒素を産生する破傷風菌(Clostridium tetani)が、外傷部位などから組織内に侵入し、嫌気的な環境下で増殖した結果産生される破傷風毒素による神経刺激伝達障害を起こす。外傷部位などで
増殖した破傷風菌が産生する毒素により、運動神経終板、脊髄前角細胞、脳幹の抑制性の神経回路が遮断され、感染巣近傍の筋肉のこわばり、顎から頚部のこわ
ばり、開口障害、四肢の強直性痙攣、呼吸困難(痙攣性)、刺激に対する興奮性の亢進、反弓緊張(opisthotonus)などの症状が出現する。
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症:獲得型バンコマイシン耐性遺伝子を保有し、バン コマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。バンコマイシンの長期間投与を受けた患者の検体などから検出される可能性がある。
バンコマイシン耐性腸球菌感染症: バンコマイシン耐性遺伝子(vanA, vanB など)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。主に悪性疾患などの基礎疾患を有する易感染状態の患者において、日和見感染症や術後感染症、カテー
テル性敗血症(line sepsis)などを引き起こす。発熱やショックなどの症状を呈し、死亡することもある。

* 国が感染症の発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を国民一般や医療関係者に情報提供・公開していくことによって、発生・まん延を防止すべ
き感染症。
[主な対応・措置]
後天性免疫不全症候群、梅毒、マラリアその他厚生労働省令で定めるものの患者。但し、後天性免 疫不全症候群、梅毒その他厚生労働省令で定める感染症については、無症状病原体保有者を含む。
医師の届出:7日以 内
(省令)
□ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症又は薬剤耐性緑膿菌感染 症に係るものにあっては、診断した日の属する月の翌月の初日に最寄りの保健所に届出。
五類感染症
・定点把握対象
RSウイルス感染症:RSウイルス(respiratory syncytial virus)による急性呼吸器感染症である。乳児期の発症が多く、特徴的な病像は細気管支炎、肺炎である。2日-1週間(通常4-5日)の潜伏期間の後
に、初感染の乳幼児では上気道症状(鼻汁、咳など)から始まり、その後下気道症状が出現する。38-39 度の発熱が出現することがある。25-40%の乳幼児に気管支炎や肺炎の兆候がみられる。1歳未満、特に6ヵ月未満の乳児、心肺に基礎疾患を有する小児、
早産児が感染すると、呼吸困難などの重篤な呼吸器疾患をひき起こし、入院、呼吸管理が必要となることがある。乳児では、細気管支炎による喘鳴(呼気性喘
鳴)が特徴的である。その後、多呼吸、陥没呼吸などの症状あるいは肺炎を認める。新生児期あるいは生後2-3か月未満の乳児では、無呼吸発作の症状を呈す
ることがある。再感染の幼児の場合には、細気管支炎や肺炎などは減り、上気道炎が増える。中耳炎を合併することもある。
咽頭結膜熱:発熱・咽頭炎および結膜炎を主症状とする急性のアデノウイルス感染症である。 潜伏期は5-7日、症状は発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎が3主症状である。アデノウイルス3型が主であるが、他に7、11、4型なども本症を
起こす。発生は年間を通じてみられるが、さまざまの規模の流行的発生をみる。とくに夏季、プールを介して流行的発生をみるので、プール熱の病名がある。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:レンサ球菌のうち、Lancefield の血清型分類のA群に分類されるものによる上気道感染症である。乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎が現れ、発赤毒素に免疫のない人は猩紅熱といわ
れる全身症状を呈する。気管支炎を起こすことも多い。リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次疾患を起こすこともある。
感染性胃腸炎:細菌あるいはウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢を主症状とし、そ の結果種々の程度の脱水、電解質喪失症状、全身症状が加わるものである。1才以下の乳児は症状の進行が早い。乳幼児に好発し、主症状は嘔吐と下痢である
が、嘔吐または下痢のみの場合、嘔吐の後下痢がみられる場合とさまざまで、症状の程度にも個人差がある。37-38℃の発熱がみられることもある。年長児
では嘔気や腹痛がしばしばみられる。嘔吐や下痢、発熱で脱水症状を来すことがあるので注意が必要である。原因はウイルス感染(ロタウイルス、小型球形ウイ
ルス(SRSV)など)が多く、毎年秋から冬にかけて流行する。また、エンテロウイルス、アデノウイルスによるものや細菌性のものもみられる。*水痘:水痘・帯状疱しんウイルスの初感染による感染症である。冬から春の感染症であるが、 年間を通じて患者の発生をみる。飛沫あるいは接触感染で感染し、潜伏期は2-3週間である。乳幼児や学童いずれの年齢でも罹患する。母子免疫は麻しんほど
強力ではなく、新生児も罹患することがある。症状は発熱と発しんである。それぞれの発しんは紅斑、紅丘しん、水疱形成、痂皮化を順次約3日で経過するが、
次々の発しんが出現するので新旧種々の段階の発しんが同時に混在する。発しんは体幹に多発し、四肢に少ない。発しんは頭皮及び粘膜にも出現する。健康児の
罹患は軽症で予後は良好であるが、免疫不全状態の小児の罹患は重症で、致死的経過をとることもある。
手足口病:主として乳幼児にみられる手、足、下肢、口腔内、口唇に小水疱が生ずる伝染性の ウイルス性感染症である。コクサッキーA16 型、エンテロウイルス71
型のほか、コクサッキーA10 型その他によっても起こることが知られている。典型的なものでは、軽い発熱、食欲不振、のどの痛み等で始まり、発熱から2日ぐらい過ぎた頃から、手掌、足
底にやや紅暈を伴う小水疱が多発し、舌や口腔粘膜に浅いびらんアフタを生じる。この水疱はやや楕円形を呈し、殿部、膝部などに紅色の小丘しんが散在するこ
ともある。皮しんは1週間から10 日で自然消退するが、ごくまれに髄膜炎や脳炎などが生じることがあるので、発熱や嘔吐、頭痛などがある場合は注意を要する。
伝染性紅斑:ヒトパルボウイルスB19 型の感染による紅斑を主症状とする発しん性疾患である。幼少児(2-12 歳)に多いが、乳児、成人が罹患することもある。潜伏期は4-15
日。顔面、とくに頬部に境界明瞭な紅斑が突然出現し、鼻背で融合して蝶型の紅斑になる。つづいて四肢に対側性に小紅斑が出現し、環状又は融合して地図状に
なる。消退後さらに日光照射、外傷などによって再度出現することがある。発しんの他に発熱、関節痛、咽頭痛、鼻症状、胃腸症状、粘膜しん、リンパ節腫脹、
関節炎を合併することがある。予後は通常、良好である。
突発性発しん:乳幼児がヒトヘルペスウイルス6、7型の感染による突然の高熱と解熱前後の 発しんを来す疾患である。乳児期とくに6-18 カ月の間に罹患することが多い。突然、高熱で発症、不機嫌で大泉門の膨隆をみることがある。咽頭部の発赤、とくに口蓋垂の両側に強い斑状発赤を認めること
がある。軟便もしくは下痢を伴うものが多く、発熱は3-4日持続した後に解熱する。解熱に前後して紅色の丘しんが出現し、散在性、時に斑状融合性に分布す
る。発しんは体幹から始まり上肢、頚部の順に広がるが、顔面、下肢には少ない。発しんは1-2日で消失する。
百日咳:Bordetella pertussis によって起こる急性の気道感染症である。かぜ様症状で始まるが、次第に咳が著しくなり百日咳特有の咳が出始める。この咳込みは、顔を真っ赤にしてコンコン
と激しく咳込み、最後にヒューッと音を立てて大きく息を吸う発作でレプリーゼと呼ばれる。嘔吐も伴い、眼瞼の浮腫や顔面の点状出血がみられることがある。
乳児では重症になり、特に新生児がかかると無呼吸となり、致死的となることがある。

風しん:風しんウイルスによる急性発しん性疾患である。潜伏期は2-3週間で、 経気道飛沫感染により、冬から春に流行する。症状は、斑状の紅丘しん、リンパ節腫脹(全身とくに頚部、後頭部、耳介後部)、発熱を三主徴とする。リンパ節
腫脹は発しん出現数日前に出現し、3-6週間で消退する。発熱は38-39℃で3日程度続くため、三日はしかの病名があるが、無熱のものも存在する。妊婦
の風しん感染が、先天性風しん症候群(出生児に白内障、心疾患、難聴などを来す)の原因となることがある。
ヘルパンギーナ:コクサッキーウイルスA群による口峡部に特有の小水疱と発熱を主症状とす る夏かぜの一種である。潜伏期は2-4日、初夏から秋にかけて、乳幼児に多い。突然の38-40℃の発熱が1-3日間続き、全身倦怠感、食欲不振、咽頭
痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もある。咽頭所見は、軽度に発赤し、口蓋から口蓋帆にかけて1-5mmの小水疱、これから生じた小潰瘍、その周辺に発赤を
伴ったものが数個認められる。コクサッキーウイルスA群1-10、17、22 型、まれにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスも病原として分離されることがある。
麻しん(成人麻しんを除く):麻しんウイルスによる赤い発しんを呈する急性発しん性疾患で あり、ここでは成人を除く。潜伏期は9-11 日であり、症状はカタル期(2-4日)には38℃前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、眼脂、羞明などであり、熱が下降した頃に頬粘膜にコプリック
斑が出現する。発しん期(3-4日)には一度下降した発熱が再び高熱となり(39-40℃)、特有の発しんが出現する。発しんは耳後部、頚部、顔、体幹、
上肢、下肢の順に広がる。回復期(7-9日)には解熱し、発しんは消退し、色素沈着を残す。
流行性耳下腺炎:ムンプスウイルス感染による耳下腺の腫脹する感染症である。上気道を介す る飛沫感染をし、好発年齢は乳児や学童である。潜伏期は2-3週間で、両側又は片側の耳下腺が腫脹し、ものを噛むときに顎に痛みを訴えることが多い。この
とき数日の発熱を伴うものが多い。耳下腺腫脹は有痛性で、境界不鮮明な柔らかい腫脹が耳朶を中心として起こる。他の唾液腺の腫脹をみることもある。耳下腺
開口部の発赤が認められるが、膿汁の排泄はない。合併症としては、髄膜炎、脳炎、膵炎、難聴などがあり、その他成人男性には睾丸炎、成人女子には卵巣炎が
みられることがある。
インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く):インフルエンザウイルス感染による急 性気道感染症である。上気道炎症状に加えて、突然の高熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うことを特徴とする。流行期(我が国ではおおむね例年11
月?3月)にこれらの症状のあったものはインフルエンザと考えられるが、非流行期での臨床診断は困難である。

急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70 型及びコクサッキーウイルスA24 亜型の感染によって起こる急性結膜炎である。潜伏期は1日で強い眼の痛み、異物感で始まり、結膜の充血、とくに結膜下出血を伴うことが多い。眼瞼の腫脹、
眼脂、結膜浮腫、角膜表層のび慢性混濁などがみられ眼痛、異物感がある。約1週間続いて治癒することが多いが、この疾患に罹患したのち6-12 カ月後に四肢の運動麻痺を来すことがある。
流行性角結膜炎:アデノウイルス8、19、37、4型などによる眼感染症である。約1-2 週間の潜伏期の後、急性濾胞性結膜炎の臨床症状を示して発病する。結膜の浮腫や充血、眼瞼浮腫が強く、流涙や眼脂を伴う。耳前リンパ節の腫脹と圧痛を来
す。角膜にはび慢性表層角膜症がみられ、異物感、眼痛を訴えることがある。偽膜を伴うことも多い。発病後2-3 週間で治癒することが多い。
性器クラミジア感染症:Chlamydia trachomatis による性感染症である。男性では、尿道から感染して急性尿道炎を起こすが、症状は淋菌感染症よりも軽い。さらに、前立腺炎、副睾丸炎を起こすこともある。
女性では、まず子宮頚管炎を起こし、その後、感染が子宮内膜、卵管へと波及し、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内感染、肝周囲炎を起こす(しかし女性の場合、症
状が軽く自覚のないことも多い)。また、子宮外妊娠、不妊、流早産の誘因ともなる。妊婦が感染している場合には、主として産道感染により、新生児に封入体
結膜炎を生じさせることがある。また、1-2カ月の潜伏期を経て、乳幼児の肺炎を引き起こすことがある。淋菌との混合感染も多く、淋菌感染症の治癒後も尿
道炎が続く場合にはクラミジア感染症が疑われる。
性器ヘルペスウイルス感染症:単純ヘルペスウイルス(HSV1型または2型)が感染し、性 器またはその付近に発症したものを性器ヘルペスという。性器ヘルペスは、外部から入ったウイルスによる初感染の場合と仙髄神経節に潜伏しているウイルスの
再活性化による場合の二つがある。初感染では、感染後3-7日の潜伏期の後に外陰部に小水疱または浅い潰瘍性病変が数個ないし集簇的に出現する。発熱など
の全身症状を伴うことが多い。2-4週間で自然に治癒するが、治癒後も月経、性交その他の刺激が誘因となって、再発を繰り返す。再発しんは外陰部のほか、
臀部、大腿にも生じる。病変部位は男性では包皮、冠状溝、亀頭、女性では外陰部や子宮頚部である。HSV2 型による場合はより再発しやすい。
尖圭コンジローマ:尖形コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス、 HPV)の感染により、性器周辺に生じる腫瘍である。ヒトパピローマウイルスは80
種類以上が知られているが、尖形コンジローマの原因となるのは主にHPV6型とHPV11 型であり、時にHPV16 型の感染でも生じる。感染後、数週間から2-3カ月を経て、陰茎亀頭、冠状溝、包皮、大小陰唇、肛門周囲等の性器周辺部に、イボ状の小腫瘍が多発する。腫
瘍は、先の尖った乳頭状の腫瘤が集簇した独特の形をしており、乳頭状、鶏冠状、花キャベツ状等と形容される。尖形コンジローム自体は、良性の腫瘍であり、
自然に治癒することも多いが、時に癌(悪性の腫瘍)に移行することが知られている。特に、HPV16、52、58、18 型などに感染した女性の場合、子宮頚部に感染し、子宮頚癌の発癌要因になると考えられている。

淋菌感染症:淋菌(Neisseria gonorrheae)による性感染症である。男性は急性前部尿道炎として発症するのが一般的であるが、放置すると前立腺炎、副睾丸炎となる。後遺症とし
て尿道狭窄が起こる。女子は子宮頚管炎を起こすが、自覚症状のない場合が多い。感染が上行すると子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内感染症を起こし、発熱、下腹痛
を来す。後遺症として不妊症が起きる。その他、喉頭や直腸などへの感染や新生児結膜炎などもある。
クラミジア肺炎(オウム病を除く):Chlamydia trachomatis, Chlamydia pneumoniae の感染による肺炎である。いずれも発熱に乏しい下気道感染症である。Chlamydia
trachomatis は新生児乳児に多く、主に産道感染で間質性肺炎像を呈することが多く、C. pneumoniae は飛沫感染により異型肺炎像を呈することが多い。
細菌性髄膜炎:種々の細菌感染による髄膜の感染症である。発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とす る。項部硬直、Kernig 徴候、Brudzinski 徴候などの髄膜刺激症状が見られることがあるが、新生児や乳児などではこれらの臨床症状が明らかではないことが多い。
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症:ペニシリンGに対して耐性のある肺炎球菌による感染症であ る。小児及び成人の化膿性髄膜炎や中耳炎で検出されるが、その他、副鼻腔炎、耳炎、髄膜炎、心内膜炎、心嚢炎、腹膜炎、関節炎、髄膜炎、まれには尿路生殖
器感染から菌血症を引き起こすこともある。
マイコプラズマ肺炎:Mycoplasma pneumoniae の感染によって発症する肺炎である。好発年齢は、6-12 歳の小児であり、小児では発生頻度の高い感染症の一つである。潜伏期は2-3週間とされ、飛沫で感染する。異型肺炎像を呈することが多い。頑固な咳嗽と発
熱を主症状に発病し、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する症例も報告されている。

成人麻しん:18 歳以上の成人に見られる急性麻しんウイルス感染症である。小児の麻しんと同様で、発熱、カタル症状、咳嗽、コプリック斑、色素沈着を残す発しんが特徴であ
る。
無菌性髄膜炎:種々のウイルス感染による髄膜の感染症である。発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴 とするが、新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い。項部硬直、Kernig
徴候、Brudzinski 徴候などの髄膜刺激症状が見られるが同じく新生児や乳児などではこれらが明らかではないことも多い。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症:メシチリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β- ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。外科手術後の患者や免疫不全者、長
期抗菌薬投与患者などに日和見感染し、腸炎、敗血症、肺炎などを来し、突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血小板減少、腎機能
障害、肝機能障害などの症状を示す。
薬剤耐性緑膿菌感染症:ペニシリン剤、β-ラクタム剤等多くの薬剤に対して耐性を示す緑膿 菌による感染症である。感染防御機能の低下した患者や抗生物質長期使用中の患者に日和見感染し、敗血症や骨髄、気道、尿路、皮膚、軟部組織、耳、眼などに
多彩な感染症を起こす。

[DID-0062.INF:2000.9.4.古泉秀夫・2003.12.9.改訂]


  1. 桜山豊夫:感染症予防新法の概要;都薬雑誌,20(8):4-8(1998)
  2. 基本医療六法 平成12年版;中央法規,2000
  3. 厚生省保健医療局結核感染症課・監修:改訂・感染症マニュアル;株式会社マイガイア,1999
  4. 森 良一・他編:戸田新細菌学;南山堂,1985
  5. 改正感染症法・検査法が施行される;日本医事新報,No.4150:72-73(2003.11.8.)
  6. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律:官報号外第239号;24(平成15年10月16 日)