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アロンアルファの毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 『アロンアルファA(三共)』
成分 1管(0.5g)中にシアノアクリレート系のα-cyanoacrylatemonomer(α-シアノアクリレートモノマー)を含有する無色透明な液体である。溶媒は含有しない。
一般的性状 *瞬間接着剤の接着作用は、空気、圧力、また僅かな水分の存在により直ちに重合(アルキル-α-シアノアクリレートモノマー → アルキル-α-シアノアクリレートポリマー)し、硬化して接着する。
*通常使用されている『アロンアルファ』は、医療用『アロンアルファA』と同様、その成分はα-cyanoacrylate
monomer単体である。しかし、合成の過程で用いられる原料薬は、医療用『アロンアルファA』とは異なる規格のものが使用されているといわれているが、その詳細については不明である。
*接着速度:使用個所と使用量により異なるが、およそ20秒-6分程度で硬化する。*耐薬品性及び耐組織液性:接着面は、水及び有機溶媒によりほとんど影響を受けず、また体液(血清、胃液)によっても影響を受けない。
毒性 接着剤による中毒は、主として有機溶剤によると考えられる。α-cyanoacrylatemonomer単体である瞬間接着剤は、粘膜、皮膚、眼瞼等が付着する以外の毒性は殆ど無い。
その他、次の報告がされている。
シアノアクリル酸系の瞬間接着剤で、光沢のある線維等を爪に貼り付けるものが出回っているが、シアノアクリル酸によるアレルギー性の爪囲炎を起こし、爪の異栄養と脱落を起こす。シアノアクリル酸系の瞬間接着剤の成分はシアノアクリル酸メチル、-エチル、-ブチルである。接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息を起こすことがある。義歯の接着のため瞬間接着剤を使用していた39歳の男性が腸閉塞を起こし、開腹手術を行ったところ、小腸から白色粘着性の板状物が見つかり、瞬間接着剤による食餌性イレウスと診断された。
症状 経口:瞬間接着剤を服用した場合、直ちに口中や舌に付着して灰白色の斑点が生じる。咽頭や食道に到達し、付着することは殆ど無い(灰白色の斑点は自然に取れるので、そのまま様子を見る。)。
処置 経口の場合:通常、経口の場合、処置は不要。口内を水で濯ぐ。また、粘膜、皮膚、眼球、眼瞼等に付着した瞬間接着剤は、体組織を損傷することなく剥離する。
眼に入った場合:水で洗眼し、点眼液を点眼し、眼
帯をしておく。ほぼ24時間以内に眼球より剥離し、異物として取り除ける。眼を擦ることは避ける。その他直ちに流水を用いて洗眼する。洗浄後も疼痛、腫脹流涙、羞明などの症状があるときはFDA点眼液や炎症の防止に抗生物質の点眼をする。約1日程度で自然に眼球より剥離して異物(樹脂の塊)として排泄される。又は眼科を受診することでピンセット等で剥離してもらう。
事例 医療用の瞬間接着剤「アロンアルファA」を使用している時に、誤って眼に入ってしまった。この場合、どの様な処置を必要とするか。
備考 *適用上の注意-(1)使用時
2)本品は接着力が強く、組織を急速に接着するので、眼に入らないように注意すること。
3)本品が手術用具などに付着した場合は、アセトン(溶剤)で清拭すること。
文献 1)アロンアルファA添付文書,1998.10.改訂
2)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999
3)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(1):42-43(1999)
4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2001
調査者 古泉秀夫 記入日 2002.7.10.