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3.服む時間使う時間(のむ時間)

木曜日, 8月 16th, 2007

[1]はじめに

経口投与される薬剤の服用時間が、原則として“食事時間”に合わせてある のは、服用忘れを防止するためであり、薬効その他、特に支障のない場合は、食直後の服用指示で、特に問題はないと考えられる。また高齢者では、服み忘れを防止する意味で、『食直後』での服用が適している。また、高齢者では、薬の服用時間が複雑な組み合わせとならないよう、処方せんの記載に際して注意することが必要である。

薬の用法は、医師によって処方せんに記載されるべきものであって、記載さ れていない処方せんは“不備処方せん”ということである。院内処方せんの場合、院内の約束事に従って、薬剤師の判断により用法の決定をすることができるが、院外処方せんの場合は、処方医に確認することが求められる。

処方せんに関する薬剤師からの疑義照会を回避するためには、医師は処方せ んの記載に正確を期すことが第一である。また患者の安全確保の点からも処方せんの記載は常に吟味することが必要である。

[2]服む時間の基本的事項

(1)薬の作用を迅速・的確にするためには、空腹時(食前30分又は食後2 時間)に服用する。

理由:食物等に吸着されることがなく、吸収が良いと考えられている。

(2)薬の副作用を少なくするためには、満腹時(食直後)に服用する。

理由:胃粘膜に直接の刺激が少なく、吸収も緩慢となるため。

(3)薬の効力(血中濃度)を常に一定するためには数回(1日4-5-6 回・4時間おき又は6時間おき)に服用する。

理由:血管内に吸収された薬は普通4-5時間後に分解排泄し始める。ただ し、持効性製剤は別。

[3]通常使用薬剤の服用時間

服用時間 該当薬
毎食前30分 整腸剤、食欲増進剤、鎮吐剤、その他一般水剤、漢方薬
食直後又は毎食後30分 消化剤、解熱剤、その他一般散剤・錠剤・カプセル剤
毎食後2時間又は毎食前1時間 鎮静剤、鎮咳剤、強心剤、制酸剤、胃酸により効力を減ずる薬剤。
朝・昼・就寝前又は朝・就寝前 胃酸分泌抑制剤(ヒスタミンH2拮抗剤、抗コリン剤等)、気管支拡張剤(交感神経興奮剤)、抗ア レルギー剤。
1日1-2回(朝・昼) 強力利尿剤、利尿性強心剤、利尿降圧剤、精神神経賦活剤(覚せい剤)。
毎食直後 胃粘膜を障害(強刺激性)する薬剤。
就寝前30分(午後9時-10時) 催眠剤、緩下剤、筋弛緩剤、ヒスタミンH2拮抗剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー 剤、鉄剤。
就寝前空腹時又は早朝空腹時 駆虫剤
1日4-5-6回・毎4時間又は6時間(又は毎食後及び就寝前、毎食間及び就寝前) 化学療法剤、抗生物質、プロスタグランジン剤[ornoprostil(胃潰瘍:アロカ・ロノッ ク)1日4回(食間・就寝前)]
1日1回-毎24時間又は1日2回-毎12時間あるいは朝夕 持続性(持効性)薬剤

[4]常用される用法指示例

服用回数 用法指示例
1日1回 朝(食前・食直後)、早朝空腹時、起床時、夕食後、就寝前、毎24時間
1日2回 朝夕(食前・食後)、朝昼(食後)、朝晩、朝・就寝前、午前○時と午後○時、毎12時間
1日3回 食前30分、食前1時間、食後30分、食後1時間、食後2時間、食直前、食直後、毎8時間
1日4回 毎食後と就寝前、毎食後1(2)時間と就寝前、毎6時間
1日6回 毎食前と毎食後、哺乳時(哺乳前15分)、毎4時間
週2-3回(2-3日) 週2回○曜と○曜(週3回○曜・○曜・○曜)
隔日 1日おきに、隔日に
頓服 頭痛時、疼痛時、胸痛時、胃(腹)痛時、発作時、発熱時、肩こり時、吐き気のある時、咳のでる 時、不眠時、便秘時、空腹時
その他 乗車・乗船前30分、手術前○時間、検査日前○日より

[5]摂取食物の移動時間

薬物の服用時間を食事時間に合わせる以上、摂取食物の移動時間を確認して おくことも必要である。次に標準的な推移時間を紹介する。

移動時間 部位
食事後15分 胃から十二指腸に移行し始める。
食事後2-5時 胃内容は空になる。
食事後3.5時 回盲部に達する。
食事後4.5時 結腸に移行し始める。
食事後6 時 栄養物は殆ど吸収され、上行結腸局に達する。
食事後9 時 下行結腸局に達する。
食事後12時 S状結腸に達する。
食事後12-24時 排便する。

[015.11.REC: 2004.1.4.]


  1. 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003