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水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

『PL法上の初欠陥 医薬品で初認定』

『名古屋地裁が賠償判決』

『輸入漢方薬の副作用で、腎障害を起こしたとして、愛知県の40代の主婦が、医薬品輸入販売会社「カーヤ」(大阪府吹田市)を相手取り、総額6,024万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、名古屋地裁であった。黒岩巳敏裁判長は「製造物責任法(PL法)上の欠陥があった」と認め、同社に3,336万円の支払いを命じた。原告側代理人によると、医薬品の製造物責任を認めた判決は全国初という [読 売新聞,第45995号,2004.4.10.]』。

ところでこれだけでは、肝心な点の幾つかが解らない。輸入漢方薬というが、個人で勝手に買って服用していたのか。漢方薬の内容はどういう内容なのか。医師の処方が必要な薬であれば、処方医の判断は。調剤に薬剤師が関与していたとすれば、薬剤師は漢方薬の処方内容をみてどういう判断をしたのかなどである。 調査した結果によると

『主婦は冷え性の治療のため、カーヤ社が中国から輸入した漢方薬「天津当帰四逆加呉茱萸生姜湯(てんしんとうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)エキス顆粒KM医療用(KM-38)」を、1995年7月から約2年間服用した。その後、1997年12月に腎障害と診断された。同社は1997年に、この漢方薬を自主回収した』。

『黒岩裁判長は「KMの成分は有毒なアリストロキア酸を含み、腎障害を起こした症例が論文などで紹介されており、1994年1月に知ることは可能だった」と指摘し、「副作用として腎障害があることを表示せず、他の成分に替えることもできたのにしなかった」としてPL法上の責任を認定した。』

『KMがPL法上の「欠陥」にあたり、通常あるべき安全性を欠いているかどうかが争われた。原告側は「冷え性の薬として服用したのに通常の許容範囲をはるかに超える結果を生じさせた上、こうした副作用が出ることを警告しなかった」などと主張していた。黒岩裁判長は「KMは長期間、継続的な服用によって腎障害という副作用を引き起こし得るが、それについての表示や警告はなかった」とした上で「効能に比べ副作用の重さは顕著であり、別の成分の漢方薬で代替することも可能だった」としてPL法による賠償責任を認めた。』

『女性は冷え性治療のために、1995年から2年間、婦人科医から処方されたKMを服用していた。96年から全身のけん怠感などを感じ、病院で腎障害と診察され、人工透析を受けるほどに悪化した。この漢方薬をめぐっては、慢性腎不全になった名古屋市西区の女性二人がカーヤに計8,160円の損害賠償を求める訴訟を起こし、一審・名古屋地裁が2002年4月、カーヤに計約3,300円の支払いを命じたが、PL法については1995年の同法施行後の服用は短期だったとして適用しなかった[北陸中日新聞,2004.4.10.]』。

aristolochic acidに由来する腎症の報告は、1993年ベルギーで肥満治療のため漢方薬が投与された患者(女性)で、腎機能障害が多発し、Chinese herbs nephropathy(CHN)であるとする報告がされた[Vanherweghem,JL.et al:Rapidlyprogressive interstitial renal fibrosis in young women:association with slimmingregimen including Chinese herbs.Lancet,341:387-391(1993)]。原因物質として、漢方薬中のアリストロキア酸(aristolochic acid)が挙げられている。

我が国では1997年に成人発症のFanconic症候群を報告[田中敬雄・他:関西地方におけるChinese herbs nephropathyの多発状況について;日腎誌,39:438-440(1997)]し、その原因として服用漢方薬「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」からアリストロキア酸を同定した。この事例が関西地方で多発していることに憂慮し、社団法人日本腎臓学会では、「薬剤有害事象報告」として学会誌に公告している [社団法人日本腎臓学会:薬剤有害事象報告;日腎誌,39:vi,(1997)]。

また、同時期アトピー性皮膚炎に悩む患者が種々雑多な茶葉で構成された健康食品を摂取し、腎機能低下を来した症例を報告[田中敬雄・他:症例 急速な腎機能低下をきたした民間療法によるChinese herbs nephropathy;日腎誌,39(8):794-797(1997)]し、健康食品に「関木通」含まれ、分析の結果同じくアリストロキア酸を検出したとしている。この他に国外でも15例で、CHNの自然経過、移植後の経過等に関するまとまった報告がある [Reginster F,et al:Chinese herbs nephropathy presentation,natural history and fate after transplantation.;Nephrol Dial Transplantation,12:81-86(1997)]とする報告がされている。

国外で製造される漢方薬の場合、その配合される生薬は、必ずしも我が国で承認された生薬ばかりではない。配合される生薬によっては、上記のような副作用の報告がされている。医師の処方に基づく漢方薬で、なぜ中国産の“当帰四逆加呉茱萸生姜湯”が調剤されたのか知らないが、漢方薬については、原則的には国内製薬企業の製造した漢方薬を使用することが無難である。

初めてPL法上の欠陥を指摘された医薬品が、中国から輸入された漢方薬であるということは、健康食品として中国から輸入される種々のherb製品が、問題を起こしていることを、あたかも象徴しているようにみえる。

(2004.4.11.)


  1. 厚生省医薬安全局:医薬品・医療用具等安全性情報 No.161,2000.7.
  2. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント-健康食品Q&A;じほう,2003