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ノロウイルスによる院内食中毒

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

東京都福祉保健局は9月5日、昭和大学附属烏山病院(東京都世田谷区)で、病院給食を食べた45人(25-86歳)が下痢や吐き気などの食中毒症状を訴え、検査の結果、ノロウイルスが検出されたと発表した。同局食品監視課によると、給食は430人に提供されており、8月30日(水曜日)夕方から31日にかけて発症。ノロウイルスは冬場に発生しやすく、8月に検出されたのは都内では初めて。病院は5日から給食の提供を自粛している。世田谷保健所は、調理の関係者や食品などを調べるとともに、病院への処分を検討している。

更に9月16日(土曜日)から前回同様ノロウイルスによる食中毒と見られる下痢・嘔吐・発熱の症状を発症した患者数名が見られたため、病院側は再発の疑いを持ち9月17日(日曜日)世田谷区の世田谷保健所に通報したとされる。

感染経路・感染原因については、現在保健所において調査中であり、大学内にも調査委員会を設置し、原因究明に当たっているといわれている。前回の食中毒事件に関連して6日間にわたる給食調理の業務停止処分を受け、厨房(ちゅうぼう)内を消毒するなどして9 月12日の夕食から給食の提供を再開していた。

つまり今回は、院内で給食調理が再開されたわずか2日後に発症しており、都福祉保健局では「これほど短期間に同じ施設で食中毒が連続するのは例がない事態」としている。世田谷保健所では9月21日にも、同病院の給食調理について、食品衛生法に基づく無期限の業務禁止処分を出すとしている。更に同局では、ノロウイルスの潜伏期間は数日と短いうえ、2度とも発症した患者が2人しかいないことから「新たな食中毒の発生」と断定。前回は、男性調理師の便からもノロウイルスが検出されており、前回はこの調理師が原因となった可能性もあるとみている。

世田谷区の昭和大付属烏山病院で院内調理の給食による食中毒が2週間に2度も発生した問題で、世田谷保健所は13日、同病院に対する給食調理の業務禁止処分を解除した。病院側は手洗いの徹底などの再発防止策をとったうえで、調理スタッフを内部職員から外部への業務委託に切り替える。

同病院では今年8月30日-9月1日に患者45人、更に同14-19日にも患者49人が食中毒を発症。1度目は調理師、2度目は栄養士の便からノロウイルスが検出されたことから同保健所が厨房内部の不衛生が原因と断定した。

病院側は厨房の手洗い設備を1カ所増設し、手や調理器具の洗浄・消毒回数を増やすなどの改善策を実施する。再開する給食調理を外部委託することについては、「2度も食中毒を起こした言い訳はできず、リスクを少しでも回避するため」と説明している。

さて、今回の病院の対応は、ある意味どさくさ紛れということで、このような対応でいいのかどうか、甚だしく疑問である。感染症対策が主体である以上、何処に原因があったのか、その原因となった出来事は何故起こったのか等の詳細な検討が必要であり、一回目も二回目も職員の便からウイルスが検出されたからその職員が原因だ等ということでいいのかどうか。更に厨房の手洗い設備を1カ所増設しということであるが、いってみれば、今までの設備そのものが不備だったということではないのか。給食調理を外部委託すれば、病院側の責任がなくなるわけではない。外部委託すれば、食中毒が根絶されるわけではなく、病院の責任迄委託することはできない。

ところで、ノロウイルス感染症の頻発時期になったということから、行政の広報が出ているが、記載内容がそれぞれ微妙に異なっているのは、如何なものか。ノロウイルスの感染は、医療機関のみではない。感染の専門家のいない老人施設等でも利用するマニュアルとする気なら、記載の統一がされていないのは問題ではないか。

  大田区報No.1120
(2006.12.1)
広報東京都第732号(2006.12.1) 東京都感染症マニュアル等
感染源 カキなどの二枚貝を生で食べたり、汚染された食品を食べることで食中毒を起こします。また、感染した人の
排せつ物やおう吐物から、直接人に感染する場合があります。免疫機能の低下している高齢者は重症化しやすいので特に注意が必要です。
集団感染は、秋から春先にかけて、多く報告されます。人から人
に感染する感染性胃腸炎の他、食品を汚染して食中毒の原因にもなります。感染力が強く、少量でも感染します。感染した人の便やおう吐物には、多量のノロウ
イルスが含まれていますので注意が必要です。
いずれのウイルス性胃腸炎でも糞口感染が主要ルートになるが、
ノロウイルス(Norovirus)では汚染された水や貝、特にカキ類を介した感染、発症が認められている。また
沫による感染も推定
されている。
症状 食べてから1-2日で発症し、吐き気・おう吐・下痢・腹痛・発熱といった風邪に似た症状が出ます。 潜伏期間は1-2日。下痢、吐き気、おう吐、腹痛、発熱などで、一般的には数日で回復します。 1-3日程度。有症期間中は便からウイルス分離が認められるので、その間は当然のことながら感染する。悪
心79%、おう吐69%、下痢66%、発熱37%、腹痛10%で、小児ではおう吐が成人では下痢が多い。有症期間は平均24-48時間である。
治療 ? 現在、有効な治療薬はありません。乳幼児や高齢者では、下痢による脱水症状を生じることがあるので、早め
に医師に受診し適切な処置を受けて下さい。
病原体になるウイルス群への特効的薬剤がないので対症的に処置
するが、急速に脱水に陥る症例があるので、経口、非経口的輸液を常に考慮する。
食中毒予防の方法 [1]調理・食事の前、トイレの後は石けんで十分に手を洗いましょう。[2]カキなどの二枚貝は中心部が硬くなるまで十分に加熱して食べましょう。生で食べる時は「生食用」の表示のあるものを消費期限内に食べましょう。 [1]最も有効な予防方法は手洗い:調理や食事の前、トイレの後や
おう吐物等の処理をした後は、石けんと流水で手を洗いましょう。また、二枚貝を調理する時は、中心部まで十分に加熱して下さい。[2]感染の拡大を防ぐために:感染した人の便やおう吐物を処理する時は、手袋やマスクを着用し、拭き取ったペーパータオル等は、ビニール袋に入れて処理した
下さい。
[1]手洗いの励行[2]汚染された衣類などの次亜塩素酸による消毒

[3]汚染された水、食品の摂取を避ける


泄物・嘔吐物の処理
[1]排せつ物やおう吐物を片付ける時は直接手で触らないように、
ビニール手袋とマスクをしましょう。[2]排せつ物やおう吐物で汚れた雑巾はビニール袋に密閉して捨て、汚れた場所は塩素系漂白剤で消毒しましょう。

[3]排せつ物やおう吐物を片付けた後はしっかりと手を洗い、うがいをしましょう。

[4]手をふく時はペーパータオルを使いましょう。

基本的には経口感染で、主に次の場合が考えられます。
[1]感染した人の便やおう吐物に触れた手指を介してノロウイルスが口に入る。[2]乾燥した便やおう吐物から空中に浮遊したノロウイルス粒子を吸い込む
[3]感染した人が、不十分な手洗いで調理して食品を汚染する。
[4]ノロウイルスが内臓に蓄積することがあるカキやシジミなど二枚貝を生で、又は不十分な加熱調理で食べる。
消毒・滅菌法加熱殺菌:流水により対象物を十分に洗浄したの
ち、一般の病原性菌の消毒法として用いられている次の方法により完全に滅菌される。 オートクレーブ ・乾熱滅菌・煮沸消毒(15分以上)
薬物消毒
調理器具等は洗剤を使用して十分に洗浄した後、
0.02%-次亜塩素酸ナトリウム液(塩素濃度 200ppm)で浸すように清拭することでvirusを失活できる。
俎板、包丁、へら、食器、布巾、タオル等は
0.02%-次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度
200ppm:)に10分以上浸漬。塩素剤による腐蝕が考えられる器具等は、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効である。
手洗いの励行
[1]看護、介護前後、特に吐物処理や糞便処理等の後には丁寧な手洗いを励行する。

[2]手洗い後に使用するタオルはペーパータオルとする(手洗い後アルコール系消毒剤の使用を示唆する報告も見られる)。手洗い後、足踏み等でない蛇口は
ペーパータオルで締める。
糞便・吐物の処理
[1]ディスポーザブルのマスク、ビニール手袋を装着する。
[2]汚物中のvirusの飛散を避けるため、糞便、吐物等をペーパータオルで静かに拭き取る。オムツ等はできるだけ揺らさないように取扱う。
[3]糞便、吐物が付着した床等は0.1%-次亜塩素酸ナトリウム液 (1,000ppm)で浸すようにして清拭する。
[4]清拭に使用したペーパータオル等は、0.1%-次亜塩素酸ナトリウム液 (1,000ppm)に5-10分間浸漬した後、処分する。
[5]患者の使用したベッドパンは、フラッシャーディスインフェクター(ベッドパンウオッシャー)で90℃-1分間の蒸気による熱水消毒。熱水消毒できな
い場合は、洗浄後に0.1%-次亜塩素酸ナトリウム液(1,000ppm)に 30分間浸漬。又は2%-グルタラールに30分-1時間浸漬。
[6]患者の使用したトイレの便座、flushvalve(水洗用弁)、ドアノブ等直接接触する部分を0.1%-次亜塩素酸ナトリウム液
(1,000ppm)で清拭。塩素剤による腐蝕が考えられる場合、アルコールで浸すように清拭。

[註1]Norovirusは乾燥すると容易に空中に漂い、経口感染を惹起することがある。
便、吐物等は乾燥させないよう処理
する。
[註2]エタノールも若干の効果が期待できるが、高い不活性化率は期待できない。ウイルスの物理的な除去を兼ねて清拭法により用いるか、洗浄後の補完とし
て使用するの注意が見られる。
寝間着、リネン等:熱水洗濯(80℃-10分
間)。熱水洗濯できない場合、0.1%-次亜塩素酸ナトリウム液(1,000ppm)の濯ぎ液に30分間浸漬。

発信元 生活衛生課食品衛生担当
祉保健局感染症対策課

飛沫:空気中に排出される液状粒子。飛沫は空中に浮遊し続けることはないので、特別の空調や喚起を必要としない。

飛沫核(飛沫が乾燥した後の残留小粒子。空気中を長時間、長距離に渡って漂う):空気の流れによって広く撒き散らされ、遠く離れて感染を起こす。飛沫感染と空気感染を混同してはならない。

(2006.12.1.)


  1. 読売新聞,第46887号,2006.9.21.
  2. 読売新聞,第46941号,2006.11.14.
  3. 東京都新たな感染症対策委員会・監修:東京都感染症マニュアル;東京都生活文化局広報広聴部広聴管理課,2005
  4. 小林寛伊・編:改訂消毒と滅菌のガイドライン;へるす出版,2004