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副作用情報全面公開

水曜日, 8月 15th, 2007
厚生労働省は2005年11月18日、製薬企業から報告される医薬品や医療機器の副作用情報を、2006年1月から全件公表する方針を決めたという [読売新聞,第46582号,2005.11.19.]。

現在迄のところ厚生労働省が公表していたのは、因果関係が強く疑われる事例、未知の事例など、影響の大きなものに限られいた。しかし、副作用によるとみられる死者が多数出ている肺癌治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の問題を契機に、情報公開を求める声が強まって来たとされる。

今回の措置で、医療関係者が副作用情報を幅広く入手出来るようになり、副作用被害の拡大防止に繋がると厚生労働省は期待しているとされるが、副作用情報の公開は、医療関係者のみを対象としても意味がない。

副作用の被害を受けるのは、薬を服用している患者であり、広い意味でいえば国民全体なのである。薬といわれると直ちに思い浮かぶのは治療目的で通院中の患者ということになるが、副作用は医療用医薬品のみで起こるわけではない。やれ鼻水だ、咳だ、頭痛だのということで、自己判断で購入するOTC 薬にも副作用は存在する。

厚生労働省は、医薬品関連企業から報告のあった副作用情報について、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」のホームページで公開している。しかし公表の範囲を限定しているため、報告件数の一部しか明らかになっていないといわれる。そのため副作用情報の公開を求める市民団体などからは「不透明だ」との批判の声が高まり、対応策を検討していた。その結果、これまで非公表だった医療機器の不具合も含め、2004年4月以降に報告された全件が報告される。

公表項目は、副作用が疑われる症状が起きた患者の性別・年齢、病名と、薬品名、併用薬、副作用の症状など。

同機構が昨年度公表した副作用情報は1,872件だったが、一気に25,142件に増える。同年度の医療機器の不具合は15,714件。子供 12人が服用後死亡した事例が報告されたインフルエンザ治療薬タミフル(一般名オセルタミビル)は、2000-2004年に1,176件の副作用報告があったが、公開されたのは133件だけだったとされている。

薬の副作用は、添付文書に書かれているものだけではないはずである。添付文書に記載されている副作用情報は、発現する副作用のほんの一部であり、更に記載された直後からその薬の過去の情報となってしまう。

つまり患者が日々服用を続けいる限り、新たな副作用が発現する可能性は常に存在する。医師等が添付文書に記載されている情報が全てだと思いこんでいるとすれば、その時点で患者の身に起こっている新しい副作用を否定してしまうことになる。

患者の質問に対する医師の回答として、『長いこと使用しているが、そのような副作用は経験したことがない』というのがある。

一体全体どの程度の長きにわたってその薬を使用した経験があり、どの程度の数の患者に使用した結果としての評価なのか。患者の声に素直に耳を傾け、あるいはそのような副作用があるのではないかという、真摯な対応をすべきである。 疑いも含めて、副作用を数多く集め、電算処理することにより、薬品名を固定化することは可能である。多くの情報は、いずれかの部分に集約され、集合体化され、その頂点の基盤となる部分にある薬品名が、当該副作用の発生原因となる薬品であることが推定できる。

それを公表することによって、隠れていた副作用を明らかになり、そういえば患者の訴えにそういう症状があったという、現任も可能になる。更にはその薬の持つ薬理作用から類似の副作用の発生も予測することが出来るようになると考えられる。

(2005.12.25.)