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水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

 既に旧聞に属するが、「病院・診療所・薬局における覚醒剤原料の取扱について」(Q&A)が、平成11年2月に、厚生省医薬安全局麻薬課から発行された。

これはたぶん新たに発売された「セレギリン」を対象として発行されたものと考えられるが、その問18に「医薬品である覚せい剤原料を服用している入院患者が死亡した場合、病棟に保管されている残余は、どのように処理すればよいのですか。」といものがある。その回答として「返却された医薬品である覚せい剤原料は、廃棄する(廃棄届は必要です。)か、又は汚染がなく品質等に問題がない場合は、他の患者に使用しても差し支えありません。」という項がある。

この文書を読む限り、死亡した患者に処方された『覚醒剤原料』は、そのまま他の患者に流用してよいと読めるが、果たしてそれで問題はないのだろうか。

かって病棟から返戻された薬を、勿体ないという単純な理由から、他の患者に流用していた施設が、マスコミに取りあげられ、一度患者に処方して、患者に所有権が移行した薬を、他の患者に流用するのは、医薬品費の二重取りだということになり、厚生省も好ましくないという判断を示したはずである。

もし、今回の事例で、この二重取り問題を回避するとすれば、取りあえず回収した薬は医事課に連絡し、回収残薬の医薬品費を患者家族に返戻するという作業が必要であり、甚だ面倒な手続きを経由しなければならない。まして国立病院の場合、一端納入した金額は簡単に返せないという仕組みになっている。それとも『覚醒剤原料』にかぎっては、二重取りは問題はないと考えているのか、それとも金の出し入れに関する国の仕組みを、簡素化するとでもいうのであろうか。

更に問題なのは『覚醒剤原料』については、病棟で1錠無くしても届を出せという位、厳しい管理を求めている。しかし、この解答を素直に読めば、廃棄するときは廃棄届がいるが、他の患者に流用する際には、何もしなくていいように読める。

だが常識的に考えれば、受払の帳簿に記載のない『覚醒剤原料』を使用するわけにはいかない。従って、入院患者死亡による受入であれ、廃棄しない場合、受入の記載をしなければならないことになるはずである。手続きにかかる諸経費と廃棄することの経費とでは、差し引き幾らになるのか。

[2000.10.4]