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「かかりつけ薬局」は得られるか

火曜日, 8月 14th, 2007

医薬品情報21

古泉秀夫

「市のがん検診で新しくできた病院の産婦人科を受診。診察室は二重ドアになっており、周りの人に話が聞こえないよう、配慮されていて、安心して受診できたという。その後、院外処方を持参した調剤薬局では、薬剤師が若い女性に、処方した薬の内容を説明し始め「前回は○○という病気でしたよね?。痛みはひどいのですか?」などと尋ねているのが、聞こえてきました。子供の薬を取りに来た男性は気まずいのか、薬剤師とその女性から背を向けていました。

順番待ちをしていた他の人達も、その女性の病名と症状を知ってしまいました。薬剤師は女性でしたが、同じ女性として思いやりの気持をもって対応してほしいと思いました。 別の調剤薬局でも、今回と同じように、薬剤師と患者のやり取りが筒抜けでした。いくら病院の対応がよくても、調剤薬局で病気の内容があからさまになってしまうのでは、と不安になりました。薬局でも患者のプライバシーを大切にしてほしいと思います。」

以上は読売新聞(第46182号,2004.10.14.)の読者投書欄“気流”に掲載されていた内容である。

ところで次の話は、ある調剤薬局での目撃談であるが、調剤薬局の薬剤師の対応のまずさ、薬に対する知識のなさを考えると、厚生労働省が期待するかかりつけ薬局などというのは当面望むべくもないと思われてしまう。

薬剤師『今日の処方せんには下剤が書いてありませんが、下剤は要らないのですか』と大声で患者に質問している。患者は薬剤師の言葉の意味が一瞬理解できなかったのか、沈黙を守っている。 薬剤師『下剤の替わりに今日は乳酸菌製剤が書いてあるんですけど、下剤は必要なんですよね。先生にいって書いてもらいますか』。なお、患者沈黙。

まず、患者の病状に直接触れる様な内容を、他の患者のいる前で、大声で叫ぶというのは、無神経の謗りを免れない。何のつもりか知らないが、もし、私は良く気の付くできる薬剤師なんてことを吹聴しよう等と考えての行動であるとすれば最悪である。

処方された他の薬がなんの薬であるのか分からないので、緩下剤が処方された目的は推測するしかないが、薬の副作用から来る便秘の解消か、あるいは大腸の機能低下による便秘の解消目的ということであろうか。

いずれにしろ緩下剤は、長期にわたって服用すべき薬ではなく、自然排便を目指すための一時的な処置でしかない。一端緩下剤を処方したからといって、未来永劫、緩下剤を出し続けなければならないということにはならない。まして乳酸菌製剤が処方されているとすれば、緩下剤を処方した当初の目的は一応果たしたと考えた医師が、腸内細菌叢を調整することで、なるべく自然排便に近いものを考え、緩下剤の替わりに乳酸菌製剤を処方したと考えられることから、決して文句を言う筋合いのものではない。

少なくとも薬剤師は、医師の処方からそのへんの意図は読み取るべきで、もし患者に声をかけるとすれば、『今日は処方が変更されていますが、先生からお聞きですね』位のところである。第一、処方内容は、患者を診察した医師が決定するものであって、患者が欲しがったからといって、病状に合わない薬を、無闇に処方せんに書き加えるなどということはあり得ない。

“気流”の読者投書ではないが、薬局の設備を整備しなければ、『かかりつけ薬局』を選定することは困難である。少なくとも、『相談専用の個室あるいは窓口』の設置は絶対に必要であり、患者の私的権利を守るための設備を整備することを忘れてもらっては困るということである。更に薬局の薬剤師は、薬剤師の資格を持っているから薬に詳しいなどという思い上がりは捨て、臨床的な薬の使用についての知識を十分に身につけなければならない。中途半端な知識で、服薬指導などを行い、もし誤った情報を伝達し、患者に事故が発生した場合、その責任は重いということを理解しておかなければならない。

(2004.11.4.)