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O-157と生野菜の調理

火曜日, 8月 14th, 2007

?KW:滅菌・消毒・O-157・生野菜・次亜塩素酸・強酸化水

Q:栄養科からの質問で、O-157に対し生野菜を消毒できる薬剤はあるか。特にレタス等、十分流水、洗剤で洗浄しているが心配なため。

A:「病原性大腸菌O-157による食中毒の発生防止対策について」として、厚生省から次の文書連絡がされている。

 

  1. 細菌検査(検便)を定期的に実施することとされている職員に対して、臨時に病原性大腸菌O-157を含めた検査を速やかに実施すること。
  2. 職員の定期的細菌検査にあたっては、当分の間、O-157を含めて検査を実施すること。
  3. 調理室内及び調理機器の拭き取り検査については、当分の間、月2回、病原性大腸菌O-157を含めた検査を速やかに実施すること。
  4. 調理に関する衛生管理について
  1. 献立作成において危険度の高い生食の献立は避けて、当面、加熱調理を主としたものにすること。
  2. ハンバーグ、ミートローフ等については、むら焼けによる危険性が高いため、当分の間、献立に入れることを中止する等の措置を講ずること。
  3. 原材料の下処理後は常温放置しないこと。また、調理を開始する際は食事時間から逆算して調理を開始すること。
  4. 原材料を保管する際は、害虫等の侵入を防止するため病院の容器に移し保管するよう努められたいこと。
  5. 納入業者の容器等の衛生管理について指導の強化を行うこと。

その他、O-157に関する次の調理上の注意が報告されている。

  1. 加熱前の食肉類などの食品から、加熱調理済みの食品が二次汚染されないよう手指や調理器具は十分に洗浄する。
  2. O-157は75℃-1分以上の加熱で死滅する。調理するときは十分に加熱する。
  3. .調理した食品は速やかに食べること。直ぐに食べない場合には冷蔵庫に入れ、低温で保存し、菌の増殖を防止する。
  4. 井戸水や受水槽の衛生管理に注意する。
  5. 生肉が触れたまな板、包丁、食器等は熱湯で十分消毒し、手洗いを励行する。 通常、大腸菌は塩素に対する感受性が高く、0.5?1.0ppmで死滅すると報告されている。
  6. その他、水道法施行規則第16条(衛生上必要な措置)として、給水栓における遊離残留塩素を0.1mg/L (0.1ppm)[結合残留塩素の場合は0.4mg/L(0.4ppm)]以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原微生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原微生物に汚染されたことを疑わせるような生物もしくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は0.2mg/L[結合残留塩素の場合は1.5mg/L]以上とするの規定が見られる。

今回の質問では「流水を用いて洗剤で洗浄し」とされているが、水道水の残留塩素の問題及び使用している洗剤の種類によっては、必ずしも十分な消毒効果が得られていると限らない。

従って、食品洗浄時の使用水に次亜塩素酸を添加し、洗浄するか強酸化水(活性塩素0.5-500ppmとされている)により洗浄することで生野菜の殺菌効果は得られるが、野菜中の有用成分に対する影響等は不明である。また、高濃度の次亜塩素酸を使用した場合、野菜に付着した残留塩素の濃度も検討しなければならない。

入院中の患者は、健康人とは異なり何等かの疾病を持っている状況下にあり、病原性大腸菌O-157による感染が生じた場合、生命に影響する重篤な状態に陥る可能性もあるため、現在のように病原性大腸菌O-157が蔓延する状況下では「冷野菜」によるメニューを「温野菜」のメニューに変更することが重要である。

また、国立病院等では厚生省からの上記文書が発出されているため、それに従うのが原則である。

[1996.7.29.古泉 秀夫] [1998.10.6.修正]


  1. 病原性大腸菌O-157による食中毒の関係について;厚生省政策医療課課長(政策医療第227号)通知,1996.7.19.
  2. 古橋 正吉:プリンシパル滅菌・消毒の実際;日本医事新報社,1977
  3. 実務衛生行政六法 平成7年版;新日本法規,1995
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1347,1996.7.31.