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ヘルシーUについて

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:薬名検索・ヘルシーU・大豆レシチン・DHA・ビタミンE・組成

Q:ヘルシーUとはどのようなものか

A:ヘルシーUについて、次の資料を入手した。

  • 輸入発売元:和幸物産株式会社
    [埼玉県所沢市東狭山ケ丘1-660-73TEL.0429(28)6288]

    なお、同社発行のパンフレットを要約すると次の通りである。

    本品は広大な米国の大自然の中で育てられた栄養価の高い良質な大豆から抽出、分離した大豆レシチンを中心にDHA(ドコサヘキサエン酸)や天然ビタミンEとリノール酸に富んだ小麦胚芽油を効果的に配合し、厳しい品質管理の下に作られた機能性食品である。

    本品中の大豆レシチンは液状であるため、吸収がよくまた液状大豆レシチンは他の難吸収性の食品の吸収を大いに高めるので、ビタミンE、カルシウム、鉄分などを飲用する際の同時飲用を勧める。なお、液状と顆粒状のレシチンは大いに異なるため注意すること。

    本品は、レシチンを高単位に含有しているが、純生の原料を使用しているため、澄明で黄褐色となっている。

    ヘルシーUの成分表(製品1g中)

    • 大豆レシチン 808mg
    • ビタミンE 31mg
    • EPA・DHA 16mg
    • リノール酸(ビタミンE)117mg
    • その他の不飽和脂肪酸等 28mg

    [799.011.1HEL][1996.10.25.・1999.3.19.一部改訂.古泉秀夫]


    1. ヘルシーUパンフレット
    2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1596,1997.8.6.

    ブスコパン注の授乳婦への投与

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:臨床薬理・母乳中移行・ブスコパン注射液・臭化ブチルスコポラミン・scopolamine butylbromide・臭化水素酸スコポラミン・scopolamine hydrobromide・ハイスコ注・ADME・血中濃度

    Q:ブスコパン注の母乳中移行について

    A:ブスコパン注射液(日本ベーリンガーインゲルハイム)の組成等は次の通り報告されている。

    成分・含量 臭化ブチルスコポラミン(scopolamine butylbromide) 20mg
    添加物 塩化ナトリウム 6mg

    本剤の適用部位は『静脈内又は皮下、筋肉内注射』である。1回の使用量は10-20mg。

    なお、本剤の添付文書中に『授乳婦への投与』に関する注意事項は記載されていない。

    scopolamine butylbromideについて、血中濃度の資料については『該当する資料がない』とされており、半減期・体内排泄動態等のADME(吸収 absorption・分布distribution・代謝metabolism・排泄elimination)に関連する資料の報告は見られない。

    但し、作用発現時間については、次の報告がされている。

    作用発現時間 作用持続時間
    内服 20-30分 2-6時間
    皮下・筋注 8-10分 2-6時間
    筋注(検査領域) 5-10分 40分
    静注 3-5分 ?
    外用 15-30分 2-6時間

    なお、他のスコポラミン製剤である臭化水素酸スコポラミン(scopolamine hydrobromide)[ハイスコ注(杏林)]で、母乳中移行性及び乳児への影響について『授乳期の婦人にスコポラミンを投与しても、乳汁中へは殆ど移行しない。』とされている。また、米国・小児科学会の報告として、scopolamine hydrobromideについて、『*米・小児科学会見解:通常授乳婦へ投与し得る薬剤』とする意見が、『乳児臨床的影響:non data』とする資料が報告されている。

    以上の報告から授乳婦に投与する場合、可能であればscopolamine hydrobromideを使用することが考えられるが、同じscopolamine製剤と考えれば、scopolamine butylbromideにおいても、同様の判断が可能と考えるが、授乳婦に対する単回投与の場合、上記作用持続時間内の授乳は回避し、注射後第1回目の授乳時の貯留乳を搾乳し廃棄することで特に問題はないのではないかと考える。

    [015.4SCO:2006.6.26.古泉秀夫]


    1. ブスコパン注射液添付文書,2005.4.改訂
    2. 厚生省薬務局研究開発振興課・監修:JPDI;薬業時報社,1996
    3. Committee on Drugs.American Academy of Pediatrics,The transfer of drugs and chemicals into human breast milk,Pediatrics,72:375-383(1983)
    4. Committee on Drugs.American Academy of Pediatrics,The transfer of drugs and chemicals into human milk,Pediatrics,93(1):137-150(1994)

    プエラリア・ミリフィカについて

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:健康食品・プエラリアミリフィカ・ Pueraria mirifica・白ガウクルア・White kwao keur・赤ガウクルア・Butea superba・イソフラボン・フィトケミカル

    Q:TVの娯楽健康番組で話題にしているプエラリア・ミリフィカとはどの様なものか。

    A:プエラリア・ミリフィカは、タイ北部を中心とする山岳地帯に自生するマメ科の多年性草本で、根が大きな塊状になるのが特徴であるとされている。

    学名:Pueraria mirifica。

    タイでは白ガウクルア(英名:White kwao keur)と呼ばれ、その塊根は若返りの薬として摂取されていたと報告されている。また、食用としても使用されていたとする報告もみられる。従前は赤ガウクルア(学名:Butea superba)と呼ばれる植物と混同されていたが、現在では違う植物として区別されている。日本でよく知られている葛(クズ、学名Pueraria lobata)の近縁種とされる。

    娯楽健康番組におけるPueraria mirificaの番宣惹句は、「豊胸」・「美肌」・「若返り」・「強壮」・「不妊」・「更年期」・「骨粗鬆症あるいは高脂血症」等がみられる。

    但し、ヒトにおけるPueraria mirificaの有効性については、更年期症状の緩和を示唆する報告があるが、その他については十分な情報は見当たらない。ヒトにおける安全性については、貧血や肝機能検査値の変動が認められたという報告がある。強い女性ホルモン様物質を含有する可能性があることから、安易に利用せず、特に妊娠中・授乳中・小児の摂取は避けるべきであるとする報告がされている。

    Pueraria mirificaの含有成分については、polyphenoの一種であるisoflavone配糖体であるプエラリン(puerarin)、ダイズイン (daidzin)が存在する。その他、ダイゼイン(daidzein)、ゲニステイン(genistein)などのイソフラボンやクメスタン誘導体 (coumestane誘導体)であるクメステロール(coumestrol)等のフィトケミカル(phytchemical)が存在する。

    isoflavone配糖体 プエラリン(puerarin)、ダイズイン(daidzin)
    isoflavone ダイゼイン(daidzein)、ゲニステイン(genistein)
    coumestane誘導体 クメステロール(coumestrol)
    isoflavonoid系物質 ミロエステロール(miroestrol)(含量0.002%程度)

    植物性estrogenであるmiroestrolは、その女性ホルモン様の活性の強さから、1960年の発見当初より医薬品用として研究されたが、効果が出るのに時間がかかること、使用中止後直ちに効果が終了しないことなどから、医薬品としての開発が中止された経緯があるとの報告がみられる。

    miroestrolは、植物起源の女性ホルモン作用物質であり、強いエストロゲン作用を示す。その強さは卵胞ホルモンであるエストラジオール(estradiol)や他の治療用エストロゲン薬物と同等の強さを示す等の報告がされている。

    なお、phytchemicalであるisoflavoneの摂取について、厚生労働省医薬食品局食品安全部から下記の資料が発出されている。

    平成18年2月2日

    厚生労働省医薬食品局食品安全部

    新開発食品保健対策室長

    大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aについて

    1.食品安全委員会では、厚生労働省の依頼を受け、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品の安全性評価を行い、現在、安全性評価結果の報告書として「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」の取りまとめの作業が行われているところです。

    2.今回の大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価においては、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品そのものの安全性を問題としているのではなく、大豆イソフラボンのみを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性が検討されたものです。

    3.厚生労働省では、大豆及び大豆由来食品等に関する正確な情報提供を行うため、今般、大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(PDF:197KB)を作成し、厚生労働省のHPに掲載することとしましたので情報提供いたします。

    4.大豆及び大豆由来食品等は、良質のタンパク質源であるだけでなく、カルシウム等にも富む重要な栄養源ですので、厚生労働省では、広く国民の皆様に、食生活の中で他の食品と組み合わせてバランスよく食べることをお勧めしているところです。

    (以下一部抜粋)

    問10:子どもに大豆イソフラボンを含む食品を食べさせても大丈夫ですか。また、妊婦についてはどうですか。

    [1] 子どもについてはどのくらいの大豆イソフラボンの摂取であれば心配がないのか、妊婦についてはどのくらいの大豆イソフラボンの摂取であれば胎児に影響がないのか、現時点では科学的に明らかになっていません。

    そのため、子どもや妊婦が、日常の食生活で食べている「伝統的な大豆食品」に加えて、特定保健用食品などにより、日常的な食生活に上乗せして大豆イソフラボンを摂取することは、推奨されていません。

    [2]豆腐、納豆、煮豆、みそなどの「伝統的な大豆食品」については、大人と同様に、日常の食生活の中で他の食品とともにバランスよく食べることに気をつければ、心配する必要はありません。

    問12:厚生労働省では今後どのような対応をとりますか。

    [1] 現段階では、食品安全委員会新開発食品調査会において、議論されているところですので、議論が終了し、厚生労働大臣に評価結果が通知された段階で、食品安全委員会、農林水産省など関係府省と連携し、必要な対応を図ることとしています。

    [2] 特定保健用食品の表示等についても、食品安全委員会の評価結果を踏まえ、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会において検討し、必要な対応を図る予定です。

    いずれにしろPueraria mirificaには、植物起源の女性ホルモン作用物質であり、強いエストロゲン作用を示すとされるmiroestrolを含有することからその摂取量については十分注意することが必要である。

    原則的にいえば、生命維持物質としての摂取ではないため、摂取することで発現する問題と摂取しないことで発現する問題点を考量するとき、特に摂取の必要があるものであるとは考えられない。

    [015.9.PUE:2006.5.2.古泉秀夫]


    1. http://www.shiratori-pharm.co.jp/paten/patent02_01.html,2006.5.1.
    2. http://www.prepremama.net/supple/pue.htm,2006.5.
    3. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 2002-2003改訂新版;東洋医学舎,2002
    4. http://www.b-health.jp/material/ingredient.html,2006.5.1.
    5. http://chatnet.client.jp/Pueraria/,2006.5.1.
    6. http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail673.html,2006.5.1.
    7. http://www2.odn.ne.jp/~had26900/topics_&_items2/about_Guaokrua.htm,2006.5.1.
    8. 廣川薬科学大辞典 第3版;廣川書店,2001

    フェノチアジン系薬剤と有機リン系殺虫剤の相互作用

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:相互作用・フェノチアジン系薬剤・有機リン系殺虫剤・ fluphenazine・抗コリンエステラーゼ作用・抗ChE作用・毒性

    Q:フェノチアジン系薬剤の添付文書中に相互作用として有機リン系殺虫剤との接触注意の記載があるが、実際にそのような事例は存在するのか

    A:フェノチアジン系薬物の添付文書中に記載されている有機リン系殺虫剤との相互作用は、下記の通りである。

    ■fluphenazine maleateの添付文書(フルメジン錠:三菱ウェルファーマ)参照

    薬剤名 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
    接触注意(接触しないように注意すること)

    有機燐殺虫剤

    縮瞳、徐脈等の症状があらわれることがある。 本剤は有機燐殺虫剤の抗コリンエステラーゼ作用を増強し毒性を強めることがある。

    この相互作用は、フェノチアジン系薬物及び有機リン系殺虫剤ともに抗コリンエステラーゼ作用(抗 ChE作用)を有するためであり、抗ChE作用を増強して縮瞳、徐脈等の症状が発現するとする記載がされている。

    添付文書中に有機リン系殺虫剤との相互作用が記載されたのは、昭和50年以前に有機リン系の殺虫剤を使用していて中毒を発症した者が、フェノチアジン系薬剤を服用していたためとされているが、具体的な薬品名、服用量、症例数等の詳細は不明だとされている。

    その他、フェノチアジン系薬剤は有機リン殺虫剤のコリンエステラーゼ阻害作用を増強し、その毒性を強めるとの報告がある一方、フェノチアジン系薬剤の抗コリン作用により、有機リン中毒の症状である縮瞳や徐脈が隠蔽されたとの報告もある。

    また、ラットによる報告として、フェノチアジン誘導体によって有機リン系殺虫剤の中毒が増強されたとの報告がある。フェノチアジン誘導体であるクロルプロマジンとプロマジンを繰り返し投与した雄のラットで、パラチオンの単一用量の毒性を増強させた。

    雌ラットでプロマジン5mg/kgの投与でパラチオンの毒性を増強させたが、ホスドリンの毒性には影響がなかったとしている。職業上有機リン系殺虫剤を使用する者では、注意を要する相互作用であるが、通常家庭で使用される園芸用の殺虫剤には、有機リン系殺虫剤を原料とする製品の使用はされていないとされている。

    [015.2.CHE:2005.3.7.古泉秀夫]


    1. フルメジン糖衣錠添付文書,2004.4.改訂
    2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
    3. 国立国際医療センター医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27(4): 324-326(2000)
    4. 仲川義人・編:医薬品相互作用 第2版;医薬ジャーナル社,1998

    フィブラート系薬剤・HMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:副作用・横紋筋融解症・フィブラート系薬・HMG-CoA還元酵素阻害薬・pravastatin・atorvastatin・fluvastatin・simvastatin・pitavastatin

    A:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)に起因する横紋筋融解症の発現について、次の報告が見られる。

    スタチンの物理化学的特徴に基づく治療効果の差異が、臨床研究の結果明らかにされている。スタチンは脂溶性の薬物と水溶性の薬物に分けられるが、脂溶性スタチンは、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)によって代謝されるためCYPを阻害する薬と併用すると、スタチンの代謝は阻害される。その結果、血中スタチン濃度が著しく上昇し、筋障害を誘発する危険性が高くなる。一方、水溶性スタチンは、CYPで代謝されないため、薬物相互作用による有害作用をきたす心配は少ない。

    なお、横紋筋融解症の発現頻度について、次の報告が見られる。

    1. フィブラート系薬剤:本系薬剤の単独投与による横紋筋融解症の発生頻度は不明であるが、HMG-CoA還元酵素阻害薬との併用では発生頻度が高くなるとする報告が見られる。
    2. HMG-CoA還元酵素阻害薬
    薬品名 溶解性 代謝酵素 厚生労働省hp 石村1999 添付文書
    pravastatin sodium

    メバロチン錠(三共)

    水溶性 CYP3A4

    代謝受けず

    1998年:4例

    1999年:11例

    2000年:24例

    2001年:23例

    2002年:31例

    8例* 頻度不明
    atorvastatin calcium hydrate

    リピトール錠(山之内)

    脂溶性 CYP3A4 2000年:12例

    2001年:44例

    2002年:51例

      頻度不明
    fluvastatin sodium

    ローコール錠(田辺)

    脂溶性 CYP2C9 1998年:0例

    1999年:4例

    2000年:5例

    2001年:13例

    2002年:16例

      頻度不明
    pitavastatin calcium

    リバロ錠(興和)

    脂溶性 CYP3A4

    代謝受けず

        頻度不明(IF,2003)
    simvastatin

    リポバス錠(万有)

    脂溶性 CYP3A4 1998年:3例

    1999年:8例

    2000年:15例

    2001年:26例

    2002年:17例

    5例(海外文献) 頻度不明

    *8例中7例はフィブラート系薬剤との併用例で、投与前に腎機能障害を有していた例が多い。単独使用例での発生は1例のみで透析例である。

    横紋筋融解症に特徴的な症状は、筋肉痛と筋力低下であって、ほぼ必発とされる。筋の硬結、腫脹を伴うこともあり、これらは下腿を中心に出現しやすい。横紋筋融解症の診断には上記筋肉症状とともに、CK(CPK)の上昇のみならず、高ミオグロビン血症又はミオグロビン尿を証明する必要がある。血中並びに尿中ミオグロビン尿の上昇を伴わないCKのみの上昇の場合は、ミオパシーとして横紋筋融解症とは区別する。

    myopathy[筋症]

    筋肉自体が侵されて生じる疾患の総称。筋肉は神経に支配されて機能を果たしているため、筋肉に症状が発現するとき神経の病変が原因である場合と、筋肉に病変が起きている場合とに大別できる。筋肉に病変が起きている場合がミオパシーである。

    [065.HMG:2004.7.27.古泉秀夫]


    1. 藤村昭夫:臨床薬理のトピックス?副腎機能に及ぼすスタチンの影響;日本医事新報,No.4186:30-31(2004.7.17.)
    2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
    3. 加藤 健:HMG-CoA還元酵素阻害剤による横紋筋融解症;日本医事新報,No.4004(2001.1.20.)
    4. 石村孝夫:治療薬の副作用と現場から見た発現頻度;臨床と薬物治療,18(9):816-819(1999)
    5. 村井ユリ子・他:横紋筋融解症に関する副作用情報の評価と活用;医薬ジャーナル,38(6):1773-1782(2002)
    6. メバロチン錠添付文書,2003.10.改訂
    7. リピトール錠添付文書,2004.6.改訂
    8. ローコール錠添付文書,2003.6.改訂
    9. リポバス錠添付文書,2002.6.改訂
    10. 医学大辞典;南山堂,1992
    11. リバロ錠インタビューフォーム,2003.7.作成

    プール熱について

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:語意解釈・プール熱・poolfever・咽頭結膜熱・ pharyngoconjunctival fever・PCF・プール性結膜炎・swimming-pool conjunectivitis

    Q: プール熱という言葉を耳にするがこれはどの様な病気なのか

    A:プール熱(poolfever)→咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever;PCF)。アデノウイルス感染により発症し、発熱、咽頭炎、結膜炎を主症状とする急性伝染性疾患。

    発症形態により流行型と散発型に分けられ、流行型ではアデノウイルス3型、7型によるものが多い。

    潜伏期間は約5-7日間で、症状・所見として咽頭結膜熱に特徴的な発熱、咽頭炎、結膜炎の三主徴を常に伴うとは限らない。

    発生は年間を通じてみられるが、夏季、プールを介して流行するものはプール熱(プール性結膜炎;swimming-pool conjunectivitis) の別名を持つ。

    プール熱といわれる理由は、プール用水の消毒の不徹底により、プール利用者に感染が拡大することに由来する。

    第5類感染症(定点把握)[咽頭性結膜熱・流行性角膜炎の診断をした指定届出機関(小児科定点・眼科定点)の医師は、翌週の月曜日迄に最寄りの保健所に年齢・性別毎の患者発生数を届け出る。

    学校保健法では、主要症状が消退した後 2日を経過するまで出席停止(咽頭結膜熱)、病状により学校医その他の医師が伝染の恐れがないと認めるまで、出席停止(流行性角膜炎)]。

    [615.8.PCF:2004.3.9.古泉秀夫]


    1. 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典,2003

    副腎皮質ステロイド外用剤の催奇形性

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:副作用・催奇形性・催奇形作用・皮膚外用剤・副腎皮質ステロイド剤・デルモベート軟膏・トプシム軟膏・clobetasol propionate・fluocinonide

    Q: デルモベート軟膏、トプシム軟膏の催奇形性について

    A:皮膚外用剤の催奇形性については、『原則的に経皮吸収されない限り発現しない』と考えられる。両剤の経皮吸収等について調査した結果は、下 記の通りである。

    商品名(会社名) デルモベート軟膏 (GSK) トプシム軟膏(田辺)
    組成 clobetasol propionate0.05% fluocinonide0.05% (0.5mg)
    基剤 白色ワセリン(疎水性基剤)

    プロピレングリコール

    白色ワセリン(油脂性基剤)

    プロピレングリコール

    添加物 セスキオレイン酸ソルビタン 炭酸プロピレン
    ラノリンアルコール
    重要な基本的注意 大量又は長期にわた る広範囲の密封法(ODT)等の使用により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様の症状があらわれることがある。
    副作用-全身性 本剤の使用により下 垂体・副腎皮質系機能抑制を来すことがあるので、短期の使用が望ましい。

    特別の場合を除き、密封法(ODT)等の使用に際しては特に注意すること。

    大量又は長期にわた る広範囲の使用、密封法(ODT)により、後嚢白内障、緑内障(頻度不明)があらわれることがある。
    妊婦、産婦、授乳婦 への投与 妊婦又は妊娠してい る可能性のある婦人に対しては使用しないことが望ましい[動物実験(ラット:皮下投与)で催 奇形作用が報告されている。 ] 妊婦又は妊娠してい る可能性のある婦人に対しては、大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること[動物実験(ラット・マウス:連日皮下投与)で催奇形作用(外形異常)があらわれたとの報告がある。]
    血中濃度 ※ラットに3H- clobetasol propionate 0.15%含有軟膏、クリーム及び0.05%外用液を経皮投与した結果、いずれも血中濃度は投与後8時間まで上昇した後、その後96時間まではほぼ一定若しくは非常に緩やかに減少した。

    ※乾癬及び湿疹で入院中の患者各6例に、0.05%-clobetasol propionate軟膏25gを単回塗布したところ、最初の3時間でclobetasol propionateの血中濃度は急速に上昇し、最高血中濃度は0.6-15.8ng/mLであった。

    ただし、本実験に参加した患者の体表面積に対する病変の割合は約50-65.3%であり、相当広範囲に塗布されたことになる。

    資料無

    clobetasol propionate及びfluocinonideの動物実験における催奇形の報告は、いずれも皮下投与の報告例であり、皮膚に塗布した結果ではない。また、clobetasol propionateの血中濃度測定事例は、25g軟膏を広範囲(体表面積の約50-60%)に塗布した例であり、通常副腎皮質ステロイド外用剤が使用される事例との比較で見ると大量・広範囲の部類に入るのではないかと考えられる。

    一般に、副腎皮質ステロイド外用剤の大量を連用した場合の全身的影響の一応の目安として、プレドニゾロン軟膏1日20gを連用した場合、同剤 10mgを内服したのと同様の全身的影響を示すものと考えられているの報告がされている。

    また、その他の報告として1日20-30gを全身又は極めて広い範囲に塗布した場合、全身性の副作用が報告されているが、小範囲の湿疹等に塗布 する場合、胎児の催奇形性について危惧する必要はないのではないかとする報告も見られる。

    従って、妊娠中の副腎皮質ステロイド外用剤投与については、『大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)』を回避する投与法を取る限り問題はないものと考えられる。

    [065.DER:2003.10.21.古泉秀夫]


    1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
    2. デルモベート・軟膏添付文書,2001.1.改訂
    3. トプシムクリーム・軟膏添付文書,2003.4.改訂
    4. デルモベート軟膏・クリーム・スカルプインタビューフォーム,1996.9.改訂2版
    5. トプシムクリーム・軟膏インタビューフォーム,1995.1.改訂
    6. 野波英一郎:妊婦へのコルチコステロイド外用剤投与;日本医事新報,No.3146(1984.8.11.)
    7. 我妻 堯:妊婦への副腎 皮質ステロイド外用剤使用;日本医事新報,No.3151(1984.9.15.)

    フェノキシエタノールについて

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:薬名検索・フェノキシエタノール・phenoxyethanol・phenoxyethanolum・抗菌保存剤・消毒剤・添加物・医薬 品添加物・香粧品

    Q:フェノキシエタノールとはどの様なものか

    A:フェノキシエタノールについて、次の通り報告されている。

    一般名 phenoxyethanol[BP]・phenoxyethanolum[PhEur]
    別名 ethyleneglycol monophenyl ether;β-hydroxyethl phenyl ether;1-hydroxy-2-phenoxyethane;phenoxetol;β-phenoxy-ethyl alcohl
    その他 2-Phenoxyethanolの標記で、別名としてβ-Phenoxyethanol、ethyleneglycol monophenyl ether、フェニルセロソルブとする報告が見られる。
    示性式・分子量 C8H10O2=138.16(又は138.17)。

    本品はグリコールエーテルの一種である。

    分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。

    その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また緑膿菌に対して殺菌作用をもち香粧品分野にも利用されている(化粧品種別許可基準,1994に収載)。

    用途分類 抗菌保存剤・消毒剤
    性状 phenoxyethanolは、僅かに芳香を有する無色透明な粘稠な液体。焼けるような味がある。1%v/v水溶液のpH6.0。

    自動発火温度:135℃

    沸点:245.2℃

    引火点:121℃(開封)

    融点:14℃。

    本品は広いpH域でPseudomonas aeruginosaの種族に対し抗菌保存の効果があるが、Proteus vulgaris及び他のグラム陰性菌に対しては活性は弱い。

    他の保存剤、例えば、パラベン類との併用でしばしば用いられ、より広い抗菌活性スペクトルが得られるとする報告が見られる。

    安定性 phenoxyethanolの水溶液は安定で、高圧蒸気滅菌器でおそらく無菌化される。 バルクも安定であり、密閉容器中で冷所、乾燥した場所に貯蔵すべきである。
    安全性 phenoxyethanolは口、舌及び他の粘膜に局所麻酔効果を生じる。純品は皮膚及び眼に適度の刺激性がある。動物実験では 10%v/v溶液はウサギの皮膚に刺激を与えず、2%v/v溶液はウサギの眼に刺激を与えなかった。
    微生物 MIC(μg/mL ) Aspergillus niger ATCC16404(黒色麹菌クロカビ)Candida albicans ATCC 10231(真菌)

    Escherichia coli ATCC8739(大腸菌)

    Pseudomonas aeruginosa ATCC9027(緑膿菌)

    Staphylococcus aureus ATCC6538 (黄色ブドウ球菌)

    33005400

    3600

    3200

    8500

    製剤への応用 phenoxyethanolは化粧品及び局所医薬品製剤中に0.5-1.0%濃度で用いられる抗菌保存剤である。牛痘種 (vaccines、ワクチン)の保存剤としても用いられる。治療的には2.2%溶液又は2.0%クリームが表面の傷及び火傷の消毒剤として用いられるの報告。 phenoxyethanolの抗菌活性スペクトルは狭いので、しばしば他の保存剤と併用して用いられる。

    [011.1.PHE:2003.10.21.古泉秀夫]


    1. 永井 恒司・監修:医薬品添加物ハンドブック;薬事日報社,2001
    2. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003

    ブルーベリーの効果について

    月曜日, 8月 13th, 2007

    Q:ブルーベリーの効果について

    A:ビルベリー(Bilberry)。

    • 学名:Vaccinium myrtillus L.。
    • ツツジ科。
    • 別名:Whortleberry、ブルーベリー。
    • 原産地:北ヨーロッパ。
    • 使用部位:果実。
    • 作用:視覚機能改善。循環機能改善。抗酸化作用。抗炎症作用。流通品規格:アントシアジニン含量25%。
    • 推奨量:1日50?600mg。安全性:北欧での長い食経験により、安全性は高いと考えられている。

    5種のアントシアジニンをアグリコンとして、3位に3種の糖が結合した合計15種類のアントシアニン(アントシアジニン配糖体)を高含量含む。

    その他、次の報告がみられる。

    ブルーベリー(blue berry)は、ツツジ科スノキ属の一種で、北米原産の低木性果樹である。野生種のhybush・blueberry・の優良個体を選抜し、次々に新品種が育成されている。

    種類 野生種 栽培種(野生種を改良し栽培化)
    lowbush・blueberry hybush・blueberry rabbiteye・blueberry
    分布 米国北東部の諸州ミギメイン州)からカナダ東部にかけて自生。

    寒冷地。

    フロリダ州北部からメイン州南部、ミシガン州南部にかけて自生 。

    寒冷地。

    南東部諸州の平地・森林の端に自生。

    暖地。

    樹木 樹高は15?40cm程度の低木。 樹高は1.5?3m。 樹高は3m以上、樹勢が強い。
    果実 果実は小さく酸味が強い。 果実が大きく、皮も薄く、甘味が強いため生食に適す。
    anthocyanin 栽培種の数倍    
    優良品種   コリンズ、ブルークロップ、バークレイ、ジャージ等 ティフブルー、ウッダード、ブライトブルー、デライト(大粒)等
    成分 品種
    hybush・blueberry

    - ジャージ-

    rabbiteye・blueberry

    -ティフブルー-

    廃棄率(%) 0 0
    エネルギー(Kcal) 52 66
    水分(g) 85.5 81.6
    蛋白質(g) 0.5 0.4
    脂質(g) 0.1 0.1
    炭水化物(g) 13.7 17.7
    水溶性食物繊維(g) 0.6 0.4
    不溶性食物繊維(g) 3.2 3.7
    灰分(g) 0.2 0.2
    β-カロチン(mg) 65 15
    ビタミンA効力(IU) 36 8
    α-トコフェロール(mg) 1.8 1.5
    ビタミンE効力(mg) 1.9 1.6
    ナイアシン(mg) 0.2 0.3
    ビタミンC(mg) 8 17

    blueberry果実の特徴は、15種類のanthocyanin色素を含んでいることである。anthocyanin色素は、水溶性の色素でリンゴ、スモモ、ブドウ、イチゴの果皮、朝顔、アジサイ等に含まれ赤紫色を呈する色素である。

    種類 anthocyanin
    野生種 0.33?0.38
    ティフブルー 0.14
    ウッダード 0.14
    ホームベル 0.15

    また、blueberry中のanthocyanin色素の種類別含有割合(%)は、次の通り報告されている。

    nthocyanin色素 野生種 ティフブルー
    デルフィニジン系

    シアニジン系

    ペチュニジン系

    ペオニジン系

    マルビジン系

    38.7

    28.8

    14.9

    4.4

    13.2

    26.8

    17.2

    16.9

    5.5

    33.6

    • 薬効・薬理:anthocyanin色素は、網膜にある色素体であるロドプシン(視紅素)の分解・再合成を促進させることにより視覚機能を高める作用があると報告されている。
      更にanthocyaninの暗視野における視力の改善、視野拡大、夜盲症患者の光感受性の改善、抗潰瘍性、抗炎症作用などについての動物実験・臨床試験成績が発表されている。
      また、活性酸素による脂質の過酸化やDNAの損傷が問題視されるようになって以来、anthocyaninがビタミンP(ルチン)と類似の作用を持つことが注目されている。
      ビタミンCとの共同作用により体内の活性酸素を消去し、血管に過酸化脂質が蓄積することを防いで末梢血管の弾力を保つ結果、網膜を活性化して視力を回復し、白内障や眼精疲労を抑え、老化防止、抗潰瘍活性や抗炎症作用の増強につながるのではないかとの期待がもたれているとする報告が見られる。

    アントシアジニン(anthocyanidin)

    アントシアニンを加水分解して得られるアグリコン(配糖体のうち、構成糖以外の非糖部をいう)である。置換基の位置によりペラルコニジン、シアニジン、デルフィニジンの3種に大別される。

    アントシアニン(anthocyanin)

    植物の花、果実などに存在する色素である。これは配糖体であり、アグリコンはアグリコンはanthocyanidin、等としてはグルコース、ガラクトース、ラムノース等が多い。

    [015.9BLU:2000.5.29.古泉秀夫]


    1. Japan Blueberry Association:village.infoweb.ne.jp/,2000.5.29.現在
    2. 株式会社パシフィックワールド東京営業所・資料,2000.5.29.現在
    3. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
    4. 健康産業新聞/「ハーブ」プロジェクトチーム・編:薬用ハーブの機能研究;株式会社健康産業新聞社,1999
    5. 薬科学大辞典 第2版;廣川書店,1990

    プラセンタエキスの効用について

    月曜日, 8月 13th, 2007

    Q:健康食品としてのプラセンタエキスの効用について

    A:プラセンタ(placenta)とは、胎盤のことであり、胎児の発育成長のためには必要不可欠な組織である。

    プラセンタエキス(placenta extract)は、胎盤の持つ生理活性を失活させることなく有効成分を抽出したもので、本来、身体が保持している生理活性を高めることにより、新陳代謝の促進、自律神経・ホルモンのバランス調整、免疫力、抵抗力の強化等の作用を持つとされている。また、シミ、シワ、肌荒れ等の皮膚の老化を解消し、メラニン色素の形成・定着を防止する等の作用も報告されている。

    placentaは中国でも古くから強壮・強精・不老長寿の薬として「紫河車(シカシャ)」・「胞衣(ホウイ・エナ)」の名称で利用されてきたとされている。また、加賀の三大秘薬の一つである「昆元丹(コンゲンタン)」中にも配合されているとする報告もされている。

    placenta extractは、既に医薬品として市販されており、作用機序等については、医療用医薬品の添付文書を参照することで対応可能であるが、漢方薬として使用されている本品の報告されている成分、効能について以下に紹介する。

    紫河車(シカシャ;本草綱目)

    • 異名:胞衣(ホウイ・エナ)、混沌皮(コントンヒ)、昆元丹(コンゲンタン)、胎衣(タイイ)、混沌衣(コントンイ)
    • 基原:健康人の胎盤
    • 成分:胎盤の成分はかなり複雑である。胎盤グロブリン製品には多種の抗体が含まれ、臨床上長い間受動(受け身)免疫に用いられている。ヒト胎盤にはインターフェロンが含まれ、ヒト細胞に対する多種のウイルスを抑制する作用がある。
      またインフルエンザウイルスを抑制するβ-抑制因子とされるマクログロブリンも含んでいる。胎盤には血液凝固に関連した成分が含まれ、血液凝固因子XIIIに類似したフィブリン安定因子-ウロキナーゼがプラスミノゲンを活性化するのを抑制するウロキナーゼ抑制物とプラスミノゲンを活性化する物質がある。
      通常の状況下では、プラスミノゲン活性化物質の作用は、ウロキナーゼ抑制物より遙かに低い。
      ヒト胎盤中に含まれるホルモンは、性腺刺激ホルモンA及びB、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、オキシトシン状物質、多種のステロール体ホルモン-エストロン、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、アンドロステロン、デオキシコルチコステロン、11-デヒドロコルチコステロン(化合物A)、コルチゾン(化合物E)、17-ヒドロキシコルチコステロン(化合物F)等がある。
      ヒト胎盤のプロラクチンとヒトの下垂体成長ホルモンの化学構造は関連があり、胎盤プロラクチンには成長ホルモン作用があるのではとする考えと、成長ホルモン作用はないとする報告がある。
      ヒト胎盤の酸性抽出物からラット十二指腸を弛緩させ、血圧を下降させるプロスタグランジンE1と類似の作用を有する成分がかなり大量に得られている。またヒトの胎盤には有用な酵素-リゾチーム、キニナーゼ、ヒスタミナーゼ、オキシトシナーゼ等が含まれ、またエリスロポエチン、リン脂質(フスファチジル-コリン:45.5?46.5%)、多種の多糖類が含まれるとされている。
    • 薬理:1.抗感染作用:胎盤のγ-グロブリンには麻疹、インフルエンザ等の抗体及びジフテリア抗毒素などが含まれ、これらの感染症の予防と症状軽減に用いることができるが、蛋白質であるため経口服用では無効で、必ず注射によらなければならない。胎盤のγ-グロブリンにはインターフェロンが含まれ臨床的にもウイルス感染の予防と抑制に使用できる。胎盤にはまた溶菌酵素リゾチームが存在し、腸炎サルモネラ菌、ネズミ腸チフスサルモネラ菌、フレキシナー菌の内毒素によるマウスの死亡を防止する(腹腔内注射)。大腸菌による内毒素血症には作用がない。

      2.抵抗力強化作用:マウスに胎盤粉末を経口投与すると、結核病変を軽減できるが、in vitroでは却って結核菌の成長を促進する。この事実から胎盤粉末の主な作用は生体の抵抗力を増加させることにあると認められる。脱脂後の胎盤を塩酸で加水分解してできた物質をラットに腹腔内注射すると、四塩化炭素及びエチオニンによって惹起される肝脂肪沈着に対し明らかな抑制作用がある。マウスに胎盤抽出物を皮下注射すると水泳時間が延長される。またラットに筋肉内注射すると実験的胃潰瘍に対しある程度の予防・治療効果が見られる。

      3.ホルモン類似作用:胎盤は生理上、絨毛性性腺刺激ホルモンを作り出すことができ、卵巣に対する作用は極めて小さいが、睾丸に対しては興奮作用がある。この他プロゲスチン、エストロゲンを作ることができる。胎盤中に含まれているホルモンの薬理作用が発現する可能性があるが、絨毛性性腺刺激ホルモンは蛋白質類の物質で、経口投与では効果が発現しないため、注射しなければならない。哺乳期の若いウサギに胎盤抽出物を注射すると、発育促進作用と考えられる胸腺・脾臓・子宮・膣・乳腺等は著しく発育が促進され、甲状腺・睾丸等に対しても発育促進作用があるが、下垂体・副腎・膵臓・肝臓・腎臓などには影響がない。

      4.血液凝固への影響:胎盤にはウロキナーゼ抑制物がウロキナーゼがプラスミノゲン活性を抑制する。このことから妊娠時におけるプラスミノゲン活性低下の説明が付く。測定によると妊娠時における子宮筋層中のプラスミノゲン活性化物とウロキナーゼ抑制物の比率は1: 3.4であるが、胎盤中では1:1197に高まっている。ヒトの胎盤には低分子量の血液凝固因子XIII(一種の糖蛋白)があるので、血液凝固因子 XIIIの欠乏による出血患者の治療に用いることができる。この因子はフィブリンの凝血塊を安定させるだけでなく、傷口の癒着も促進する。この他動物実験では抗ヒスタミン作用も報告されている。

      5.その他の作用:摘出臓器による実験では、胎盤の抽出物は抑制を受けている心臓の回復を促す。胎盤蛋白にはレニン様の昇圧物質があり、血液循環の調節におけるその意義の解明が待たれている。ヒトの胎盤のある種の糖蛋白成分はin vitro試験で細胞の活力に影響することなく、リンパ細胞内のDNAの合成を抑制する。胎盤抽出物を大量に用いれば、デオキシエフェドリンによる発熱を抑制できる。

    placenta extractについては医療用医薬品としても使用されており、一定の薬理作用が証明されている。しかし作用の全てが解明されているわけではなく、健康食品として本品を用いる際には注意が必要である。

    化粧品等に配合されているplacenta extractの場合、経皮吸収の量にもよるが、極く少量であれば、全身性の副作用は殆ど発現しないと考えられるが、アレルギー症状の発現については、注意が必要である。

    現在、医師の治療を受けている患者では、placenta extractの経口摂取については、注意を要するものと考えられるので、医師に相談すること。

    [015.9PLA:2000.7.4.古泉秀夫]


    1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
    2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998

    プロポリスについて

    月曜日, 8月 13th, 2007

    Q:プロポリスの薬理作用と副作用について

    A:プロポリスについて、次の報告がされている。

    国立予防研究所と協和醗酵研究所の研究グループは、抗癌効果のある新たな化合物を発見した。蜜蜂が集めた樹脂や花粉、有機物などに酵素を加えたプロポリスというニカワのようなものからこの化合物の抽出に成功、更に抗癌作用のあることを確認した。

    プロポリスは蜜蜂が巣を外敵や雑菌から防御するために壁などに付着させる物質。抗炎症作用があるため欧州では古くから広く民間薬として利用している他、日本では痔の薬の成分に含まれているという。最近ブラジルで癌に効果があると騒がれた。

    子宮頸癌患者や肝癌患者など数人にプロポリスを経口投与したところ、3カ月から1年後には癌細胞が殆ど死滅してしまったという。

    ブラジル産プロポリスの成分を調べたところ、クレロダン系ジテルペンの一種である新化合物を発見した。同化合物を肝臓癌や子宮頸癌などの患者から採取した癌細胞に加えたところ実験開始10時間後の癌細胞にはDNA(デオキシリボ核酸)を合成し分裂増殖するS期に限って抑制効果があり、1日後には死滅した。

    ウサギの正常な腎臓細胞に加えて見ると、増殖を抑制したり細胞を損傷することがなく、副作用も殆どないことが判った。

    新タイプの健康補助食品スーパーヘルスケアフードシリーズ第一弾として、「プロフィーラ」(林原商事・本社岡山)が発売された。本品は蜜蜂が作りだす天然物質“プロポリス”に水溶性ルチン及びビタミンCを加えた健康補助食品で、健康維持や滋養強壮に適する。プロポリスは蜂蜜やローヤルゼリーと同じく、蜜蜂が樹木から集めてきた木の芽や蕾に蜜蜂の唾液中の酵素が作用してできたもので、優れた抗菌性を持つ。各種フラボノイド、ミネラル、ビタミン等健康維持に有用な成分が豊富に含まれる。

    プロポリスは蜜蜂が葉芽や樹皮から集めてくる樹脂性の物質で、蜜蜂はこれを使って巣を作る。腹部の臘腺から分泌する蜜臘とその間隙をつなぐ接着剤の役割を果たすのがプロポリスであり、連結したり、充填したりするだけでなく、臘のブロックを補強したり、巣蓋を作るのもプロポリスでされる。プロポリスは抗菌力が強いため巣の内部を衛生的に保つ働きをする。

    蜜蜂の巣の中に二十日鼠を追込んだ実験では、刺殺した二十日鼠をプロポリスで被包したが、5年間に亙って防腐保存されたとする報告もされている。

    プロポリスの組成は約55%が各種の樹脂、30%が蜜臘、10%が油、5%が花粉である。微量栄養素の中では、バイオフラボノイド(ビタミンP)の含有率が極めて高い。優れたバイオフラボノイド源であるとされるオレンジの約500倍である。柑橘類の黄色やオレンジ色はフラボノイドによる色調であるがプロポリスの含有率は、それらの柑橘類より高い。ビタミンPはビタミンCと相乗的に作動するので、ビタミンCの効果が高まる。

    最近の研究では抗菌作用のみならず、胃潰瘍、インフルエンザ、風邪、鼻・気管の炎症にも効果があることが確かめられている。喉、舌、口腔内の炎症をやわらげるため、欧米ではプロポリス入りの歯磨やドロップまで市販されている。

    ■ エスタプロント(estapronto)

    [日本プロポリス株式会社〒101東京都千代田区神田泉町1-6-16ヤマトビル5FTEL.03-3865-0468]

    蜜蜂の巣から取れる有用物には大きく分けて3種類ある。蜂蜜、ローヤルゼリー、そしてプロポリスである。プロポリスは蜜蜂が集めた樹脂類や花粉、蜜臘などが混ぜ合わされてできたゼラチン様の物質で、巣の保護や補集のために使われる。プロポリス等の有用物によってガードされた巣はほぼ無菌に近い状態となり、蓄えられた蜜が腐敗することがない。

    プロポリスの語源は、プロ(前)+ポリス(都市=巣)からなるギリシャ語に由来し、巣の前にあって巣を守ると言う意味であるとされている。古代からヨーロッパではプロポリスを貴重な資源として活用してきた。近年では化学分析等により、その組成や優れた特性が明らかにされつつあり、数々の可能性を秘めた物質として注目を集めている。

    プロポリスは蜜蜂の巣の構成成分の一部であり、そのまま服用したり摂取することは困難である。プロポリスを採取し、それを液状にするかあるいは摂取しやすい形態に変えることが必要である。エスタプロントは最初の段階からアルコール及び溶剤を使用しておらず、酵素の働きを応用したミセル抽出を行っている。その結果、細かい粒子にプロポリス成分が包み込まれた状態になっているため無駄なく速やかに体内に吸収される。

    プロポリス分析試験結果

    テトラサイクリン系抗生物質は検出しなかったと報告されている。その他、分析結果としてアミノ酸の含有率の報告がされている。

    尚、プロポリス飲用に伴う副作用について、特にこれといって報告されていないが、稀に湿疹が出ることがあるとする報告が見られる。

    現在、プロポリスは健康食品として市販されており、漢方薬としての取扱いはされていない。

    成分 含有率 成分 含有率
    水分 3.5% 総カロチン 0.20mg/100g
    蛋白質 10.3% サイアミン(ビタミンB1) 0.18mg/100g
    脂質 55.1% リボフラビン(ビタミンB2) 0.60mg/100g
    灰分 1.9% ビタミンB6 0.15mg/100g
    炭水化物 29.2% ナイアシン 1.61mg/100g

    [510.011.1PRO][1994.1.11.・1999.3.19.一部修正.古泉秀夫]


    1. ハチの巣の物質から抗ガン化合物を抽出:日本経済新聞,1991.10.5.
    2. ミツバチ分泌の天然物質を配合-林原商事が健康食品-:化学工業日報,1991.10.23.
    3. 丸元淑生:プロポリス-みつばちが集める樹脂性物質抗菌力強く、ビタミンP豊富;読売新聞,1990.4.19.
    4. 日本プロポリス株式会社・私信,1994
    5. 松野哲也:プロポリスの抗腫瘍作用;日本医事新報,No.3600:128(1993)
    6. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.833,1994.6.24.より転載

    フコイダンの効用

    月曜日, 8月 13th, 2007

    Q:健康食品としてフコイダンを含む清涼飲料水『アポイダン-U(宝酒造)』が市販されている。このフコイダンというのはどの様な食効がいわれているのか

    A:『アポイダン-U』の原材料としてU-フコイダン含有昆布抽出物、麦芽糖、安定剤(ペクチン)、レモン果汁、香料、凍結乾燥梅肉粉末、ビタミンC、酸味料、紅麹色素が報告されている。

    また、本品1本50mL当たり栄養成分標準値として

    エネルギー 蛋白質 脂質 糖質 ビタミンC ナトリウム ヨウ素
    6 Kcal 0.0g 0.1g 1.3g 7.0mg 13.0mg 検出限界以下

    の表示がされている。

    フコイダン(Fucoidan)については、次の報告がされている。宝酒造株式会社バイオ研究所等で、褐藻類の複合多糖に2種類のフコイダン分子が存在することを見出した。一つは主に硫酸化フコース(糖の硫酸化物)からなるfucoidanで、他はグルクロン酸を約20%含むfucoidanである。硫酸化フコースからなるfucoidanをF-fucoidanと命名し、硫酸化フコース・マンノース・グルクロン酸からなるfucoidanをU-fucoidanと命名した。

    U-fucoidanは、シャーレ上で活発に増殖するヒト前骨髄白血病細胞、ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞、ヒト胃癌細胞、結腸癌細胞、結腸腺癌細胞の生存細胞数を限りなく減少させる作用があることが確認された。この作用は生命の設計図であるDNAが切断され、生存不能にするアポトーシス(細胞自殺)により惹起されることが確認された。一方、対照とした正常細胞に対し殆ど影響がないことも確認されている。

    褐藻類として昆布、若布・モズク・ヒジキ等が存在するが、fucoidanは北海道産のガゴメ昆布から独自の方法で抽出し、過剰摂取が問題となるヨード・塩化ナトリウムを限外ろ過法により完全に除去し、凍結乾燥した粉末として提供している。fucoidanは分子内に多くの硫酸基を持つため、それぞれの硫酸基にカウンターイオンとしてカルシウムを保持しているが、通常の硫酸カルシウムのように不溶性ではなく、少なくとも5%以上の濃度で水に溶解する可溶性のカルシウムとして存在するとされている。

    製品化されたfucoidanは、約100℃の熱水で抽出されているため、中性水溶液中100℃程度の処理で、殆ど変化しない。高温下で酸・アルカリ条件に曝すと、著しい低分子化が引き起こされるが、室温以下では殆ど影響を受けない。

    fucoidanはカルシウム塩として供給しているので、リン酸、クエン酸、アルギン酸等を多量に含む食品に添加する際は、沈殿形成の可能性をあらかじめ考慮しておく必要がある。またfucoidanは様々な蛋白質と相互作用を起こすので、蛋白質含有液に添加すると著しく粘性を増したり、凝集物を形成することがあるので注意を要する。

    血中コレステロール低下作用、血圧低下作用、抗アレルギー作用等が報告されている。これらの報告から『生活習慣病』やアレルギー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等に対する効用も期待されている。また、可溶性のカルシウムを含むため、カルシウムの補給にも期待がもたれている。

    ヒト腸内にはfucoidanを消化分解する腸内細菌を持っていないので、fucoidanは他の食物繊維と同等以上の効果を持つものと考えられるの報告もされている。また、fucoidanがアルミニウムイオンを強力に捕捉する能力を持つことからアルミニウムの蓄積がアルツハイマー病に関与するとされていることを考えれば、fucoidanが腸内でアルミニウムイオンを除去することによって、痴呆症発症を防ぐ可能性も期待される。 fucoidanは過剰の鉄イオンとも強力に結合することから、過剰の鉄イオンが体内で発ガン性を持つ脂肪酸の過酸化物の生成を触媒するとされており、これの防止にも期待がもたれている。

    以上の各報告から、鉄欠乏性貧血の患者では、食品中の鉄吸着の可能性があるため、摂食注意。また、鉄剤服用中の患者では、摂食時間注意。その他、薬剤服用中の患者では、服用薬剤の吸着が考えられるので、摂食時間を検討することが必要である。その他、金属イオンの吸着作用については、服用中の薬剤による副作用防御に利用の可能性があるのではないかと思われる。

    この他、fucoidanについて、モズク由来のfucoidan入り化粧水が市販されており、保湿効果が見られるとする報告がされている。

    [015.9FUC:2000.7.31.古泉秀夫]


    1. 健康は宝:宝酒造株式会社バイオ事業部門製品カタログ,00023K
    2. TAKARAバイオサイエンスNEWS
    3. 酒井 武・他:昆布由来フコイダンの特性と食品への利用;食品と科学,40(6),1998
    4. 株式会社沖縄醗酵化学;沖縄県糸満市西崎町5-2-2,発行資料

    ビタミンCとビタミンCナトリウムの物性

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:物理化学的性状・ビタミンC・ビタミンCナトリウム・ascorbic acid・アスコルビン酸・アスコルビン酸ナトリウム・sodium ascorbate

    Q:ビタミンCとビタミンCナトリウムの表記を見るが、素人には区別がつかない。何処が違うのかの質問を受けましたが、調査していただけますか。

    A:次の通り、報告されている。

    一般名 L-ascorbic acid sodium L-ascorbate
    和名 L-アスコルビン酸 L- アスコルビン酸ナトリウム
    別名 ビタミンC、略号:AsA。

    [英]ascorbic acid

    [独]Ascorbin

    ピメクロリムスについて

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:薬名検索・アトピー性皮膚炎治療薬・ピメクロリムス・pimecrolimus・Elidel・アスコマイシン・ascomycin

    Q:アトピー性皮膚炎治療薬とされるピメクロリムスについて

    A:アトピー性皮膚炎治療薬・局所用ピメクロリムス(pimecrolimus)とする報告がされている。

    pimecrolimus[商:Elidel(Novartis)日本未開発]は、アスコマイシン(ascomycin)から誘導されたマクロライドで、T-リンパ球による前炎症性サイトカインの産生を阻害し、皮膚肥満細胞及び好塩基球から炎症性メディエーターが遊離されるのを防ぐ。

    pimecrolimusは皮膚萎縮を起こさず、広範な皮膚の炎症部位に塗布しても吸収は僅かである。

    tacrolimusとpimecrolimusを比較した動物実験では、皮下投与による全身性の免疫抑制効果は、pimecrolimusがより大量の薬物を必要とした。

    中程度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者34例を対象とした無作為化試験で、pimecrolimus 1%クリーム又はその基剤のみを1日2回3週間、狭い範囲(body surface areaの1-2%)に塗布したところ、塗布部位におけるアトピー性皮膚炎の症状は72%程度に改善が見られたが、基剤のみの場合10%程度の改善であった。改善は治療開始2日後より見られた。

    body surface areaの5-30%を占める中等度から重症のアトピー性皮膚炎を有する成人患者260例を対象とした研究で、0.05%-pimecrolimus、 0.2%-pimecrolimus、0.6%-pimecro-limus、1.0%-pimecrolimus、基剤単独及び中等度ステロイドの betamethasone-17-valerate 0.1%-クリームを1日2回、最大3週間まで投与して比較した結果、高濃度のpimecrolimus 3剤は基剤単独よりはいずれも有効で明らかな用量反応関係が見られたが、いずれの濃度のpimecro-limusも、局所ステロイドほどの効果はなかった。

    pimecrolimusクリーム使用初期は軽度から中程度の灼熱感、温感又は刺痛を伴う一過性の局所刺激が起こり易い。光線過敏症に注意。

    イギリスのNICE(国立中央臨床研究所)は本日(2004年8月26日)、イングランドとウエールズのNHS(国民健康サービス機関)へ、成人の中程度から重症のアトピー性湿疹に対するタクロリムスとピメクロリムスの使用ガイダンスを送付した。

    また、子供と成人のアトピー性湿疹の治療として用いられる外用ステロイドの使用頻度についてのガイダンスを発した。NICEはこのガイダンスの中で、タクロリムスは、中程度から重症のアトピー性湿疹の成人と子供でステロイド外用薬が効かなくなっている人、あるいはステロイドを続けることで副作用、とりわけ回復できない皮膚の薄層化とあざ(皮膚萎縮)のリスクが十分考えられる人、これらの人々に対して第2選択肢の薬剤として使うことができると勧告している。このガイダンスはまた、ピメクロリムスは、子供の顔と首にあるアトピー性湿疹に対し、上記と同じ判断基準を満たす場合に第2選択肢の薬剤として使うことができると勧告している。

    [011.1.PIM:2005.2.1.古泉秀夫]


    1. アトピー性皮膚炎治療薬・局所ピメクロリムス(Elidel):The Medical Letter <日本語版> ,18(11):40(2002)
    2. アトピー性湿疹の塗り薬について勧告:http: //www.h3.dion.ne.jp/~kelkans/tacrolimus.html,2005.2.1.

    枇杷種子について

    月曜日, 8月 13th, 2007

    KW:健康食品・枇杷種子・ビワ種子・枇杷葉・枇杷仁・アミグダリン・amygdalin・ビタミンB・レートリル・レアトリル・ laetrile

    Q:枇杷の種子に含まれる成分は癌に有効か

    A:枇杷はバラ科(rosaceae)の植物

    学名:Eriobotrya japonica Lindl.。

    枇杷葉は枇杷の葉を乾燥したもので、含有成分として次のものが報告されている。

    • 精油としてtransnerolidol、α-pinene、camphene、trans-trans-farnesol 等
    • トリテルペノイ ドのursolic acid、oleanolic acid
    • 糖類としてD-glucose、D-fructose、sucrose等
    • 有機酸としてtartaric、citric acid等
    • その他alkaloid、tannin、amygdalin(20ppm)、vitamin B、vitamin C、sarbitol、ceryl alcohol等

    を含んでいる。

    暑気当たり、健胃薬として用い、民間ではあせもや湿疹に湯浴料として用いる。

    薬理作用

    1. 抗菌作用
    2. 鎮咳去痰抗喘息作用
    3. 健胃作用
    4. 止血作用
    5. 弱い持続性の利胆作用

    等が報告されている。

    枇杷仁(ビワニン)

    枇杷の種子で、amygdalinを含み、杏仁水の代用とされたこともあるが、市場性は少ない。

    ただし、枇杷仁中の amygdalinの含有量は、種子成分の約3%に相当し、100g中に3.5gのamygdalinが存在する。これは葉中のamygdalinの約 2000倍に相当する。

    アミグダリン[amygdalin] C20H27NO11、配糖体の一種。

    β-ゲンチオビオースとD-マンデルニトリルとからなる。

    バラ科植物の杏子(アンズ)、モモ、苦扁桃などの実、葉、木質部に含まれる。

    扁桃油(へんとう油)の有効成分。

    無色の結晶、融点210℃。

    β-グルコシダーゼ(エムルシン)で加水分解され、D-glucose、シアン化水素(HCN)、ベンズアルデヒドを生ずる。

    vitamin B17 (amygdalin)

    アンズの種子から発見されたvitamin様物質で、レートリル又はレアトリル(Laetrile)の名称で表記されている。抗癌作用があるとして、米国では多くの州で、癌の治療薬として認められているとされるが、一方で効果に関する評価は確定していないとされている。

    vitamin B17 の抗癌作用は、本品中に含まれるシアン化合物が、シアンに分解され、正常細胞は攻撃せずにがん細胞のみを攻撃するためとされているが、シアンは毒性物質であるため、大量摂取は危険である。

    なお、Laetrile・amygdalin・vitamin B17に 関係する報道を次に紹介する。

    『アンズの核の“制がん剤”「レアトリル」で警告-FDA』(2000年9月 27 日)

    アンズや桃の核から取った成分を調合してつくった薬剤が、がんに効くといわれインターネットでこれを購入するがん患者が米国で増えている。

    FDA(米食品医薬品局)は、9月6日、この薬は効用が証明されていない違法な薬剤だとして厳重な警告を出した。

    この薬は「レアトリル」(laetrile)と呼ばれ、70年代にがんに効くとして患者の間でブ?ムが起きた。

    この時は何万人という米国人患者がlaetrileを求めてメキシコに渡った。その後、NCI(米国立がん研究所)の試験によって、laetrileはがんには効かないことが証明され、FDAはこの薬を違法と断定した。

    また、このレアトリルは効かないばかりか毒性のあるシアン化合物(青酸カリなど)が含まれている可能性があるとされ、80年ごろまでに laetrile・ブームは沈静化した。

    ところが、最近になって今度はインターネットを通じでlaetrileの販売が始まり、ふたたびこの薬に頼る患者が増え始めたのである。しかも、今度はlaetrileでなく「アミグダリン」(amygdalin )とか、「ビタミンB17」(vitamin B17 )といった名前で販売されている。

    これに対してフロリダの裁判所がlaetrileの販売は違法であるとして、インターネットで販売していた3社に販売中止命令を出した。

    FDAのスポ?クスマンは、「laetrileは、安全性も有効性も証明されていない。患者がこれに頼って、正規のがん治療法を受けないとなったら大変だ」と述べている。

    (参考サイト)http://www.cancernet.nci.nih.gov/cam/laetrile.htm

    がんの薬としてlaetrileを販売していた業者に長期の拘留判決 [Lengthy Jail Sentence for Vendor of Laetrile-A Quack Medication to Treat Cancer Patients(June 22, 2004)]

    (参考サイト)http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01080.html

    がん患者に効き目のない毒性の高い薬物laetrile(別名:amygdalin、vitamin B17、アプリコットピッツ)を広告・販売していたニューヨークの 会社の社長に2004 年 6 月 18日、懲役63ヵ月と監視下の保釈 3 年の判決が下された。社長はlaetrileの違法販売によって少なくとも50 万ドルを得ている。

    FDA のコミッショナー代理は、「laetrileには抗がん作用があるという科学的証拠はなく、がん患者に間違った希望を与え、患者は通常の治療を受ける機会を逸してしまう。今回の 判決は、偽の薬を我々はもはや容認しないという強力なメッセージである。」と述べている。

    [015.9.AMY:2004.10.6.古泉秀夫]


    1. 曾野維喜:続東西医学臨床漢方処方学;南山堂,1996
    2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
    3. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
    4. 中村丁次・監修:からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
    5. http://medwave.nikkeibp.co.jp/health/news/200009/2000092701.html, 2004.10.5.