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フィブラート系薬剤・HMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:副作用・横紋筋融解症・フィブラート系薬・HMG-CoA還元酵素阻害薬・pravastatin・atorvastatin・fluvastatin・simvastatin・pitavastatin

A:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)に起因する横紋筋融解症の発現について、次の報告が見られる。

スタチンの物理化学的特徴に基づく治療効果の差異が、臨床研究の結果明らかにされている。スタチンは脂溶性の薬物と水溶性の薬物に分けられるが、脂溶性スタチンは、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)によって代謝されるためCYPを阻害する薬と併用すると、スタチンの代謝は阻害される。その結果、血中スタチン濃度が著しく上昇し、筋障害を誘発する危険性が高くなる。一方、水溶性スタチンは、CYPで代謝されないため、薬物相互作用による有害作用をきたす心配は少ない。

なお、横紋筋融解症の発現頻度について、次の報告が見られる。

  1. フィブラート系薬剤:本系薬剤の単独投与による横紋筋融解症の発生頻度は不明であるが、HMG-CoA還元酵素阻害薬との併用では発生頻度が高くなるとする報告が見られる。
  2. HMG-CoA還元酵素阻害薬
薬品名 溶解性 代謝酵素 厚生労働省hp 石村1999 添付文書
pravastatin sodium

メバロチン錠(三共)

水溶性 CYP3A4

代謝受けず

1998年:4例

1999年:11例

2000年:24例

2001年:23例

2002年:31例

8例* 頻度不明
atorvastatin calcium hydrate

リピトール錠(山之内)

脂溶性 CYP3A4 2000年:12例

2001年:44例

2002年:51例

  頻度不明
fluvastatin sodium

ローコール錠(田辺)

脂溶性 CYP2C9 1998年:0例

1999年:4例

2000年:5例

2001年:13例

2002年:16例

  頻度不明
pitavastatin calcium

リバロ錠(興和)

脂溶性 CYP3A4

代謝受けず

    頻度不明(IF,2003)
simvastatin

リポバス錠(万有)

脂溶性 CYP3A4 1998年:3例

1999年:8例

2000年:15例

2001年:26例

2002年:17例

5例(海外文献) 頻度不明

*8例中7例はフィブラート系薬剤との併用例で、投与前に腎機能障害を有していた例が多い。単独使用例での発生は1例のみで透析例である。

横紋筋融解症に特徴的な症状は、筋肉痛と筋力低下であって、ほぼ必発とされる。筋の硬結、腫脹を伴うこともあり、これらは下腿を中心に出現しやすい。横紋筋融解症の診断には上記筋肉症状とともに、CK(CPK)の上昇のみならず、高ミオグロビン血症又はミオグロビン尿を証明する必要がある。血中並びに尿中ミオグロビン尿の上昇を伴わないCKのみの上昇の場合は、ミオパシーとして横紋筋融解症とは区別する。

myopathy[筋症]

筋肉自体が侵されて生じる疾患の総称。筋肉は神経に支配されて機能を果たしているため、筋肉に症状が発現するとき神経の病変が原因である場合と、筋肉に病変が起きている場合とに大別できる。筋肉に病変が起きている場合がミオパシーである。

[065.HMG:2004.7.27.古泉秀夫]


  1. 藤村昭夫:臨床薬理のトピックス?副腎機能に及ぼすスタチンの影響;日本医事新報,No.4186:30-31(2004.7.17.)
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  3. 加藤 健:HMG-CoA還元酵素阻害剤による横紋筋融解症;日本医事新報,No.4004(2001.1.20.)
  4. 石村孝夫:治療薬の副作用と現場から見た発現頻度;臨床と薬物治療,18(9):816-819(1999)
  5. 村井ユリ子・他:横紋筋融解症に関する副作用情報の評価と活用;医薬ジャーナル,38(6):1773-1782(2002)
  6. メバロチン錠添付文書,2003.10.改訂
  7. リピトール錠添付文書,2004.6.改訂
  8. ローコール錠添付文書,2003.6.改訂
  9. リポバス錠添付文書,2002.6.改訂
  10. 医学大辞典;南山堂,1992
  11. リバロ錠インタビューフォーム,2003.7.作成