トップページ»

リン酸コデインと麻黄湯の相互作用

月曜日, 8月 13th, 2007

Q:リン酸コデインと麻黄湯の併用は可能か

A:麻黄湯は、麻黄4-5g・桂皮3-4g・杏仁4-5g・甘草1.5-2gが配合された発汗解熱剤である。

本剤の使用上の注意を見る限り、リン酸コデイン等他剤との併用については、何等記載されていない。

また、リン酸コデイン[codeinephosphate](田辺製薬)の添付文書中に、併用又は飲酒により作用が増強されるとして挙げられている薬剤は「フェノチアジン誘導体・バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤、吸入麻酔剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、三環系抗欝剤、β-遮断剤、クマリン系抗凝血剤」である。

尚、麻黄湯中に配合されている各生薬に含まれる成分について、調査した結果は次の通りである。

麻黄(EphedrasinicaStapf)

地上茎にアルカロイドのL-エフェドリン、d-プソイドエフェドリン、L-メチルエフェドリン、L-ノルエフェドリンの他、エフェドラキサン、オキサゾリジン誘導体を含む。根にはエフェドリン型アルカロイドは存在せず、ベタイン、アフェランドリン、チロシン等が単離されている。

  • 薬効・薬理:エフェドリンはアドレナリンに似た交感神経興奮作用があり、エピレナミンより作用は弱いが毒性も弱い。眼交感神経末梢刺激による散瞳作用があり、比較的短時間で消失する。また、痙攣毒の有無にかかわらず気管支筋を弛緩させ、その作用は緩和で持続性がある。

その他発汗、血圧上昇作用が認められ、発汗、鎮咳、去痰薬として喘息、肺炎、皮膚の排泄機能障害による呼吸困難等に用いられる。

桂皮(CinnamomumcassiaBlume)

樹皮にケイアルデヒド、ケイヒ酸、オイゲノールを含む。

  • 薬効・薬理:桂皮の精油は、腸の蠕動運動を亢進し、グラム陽性菌、皮膚真菌に対して殺菌作用が認められている。精油の主成分であるケイアルデヒドは、dd系雄性マウスの腹腔内投与で睡眠延長、体温下降、緩和な中枢神経抑制による鎮静作用等が認められ、作用発現量は LD50の1/4以下だった。

桂皮、肉桂子は健胃、駆風矯味、解熱、鎮痛薬として頭痛、熱感、身体疼痛等に用いられる。

杏仁(PrunusaremeniacaL.)

杏仁は、アミグダリン約3%、脂肪油35-50%を含む。アミグダリンは酵素エムルシンで加水分解されベンズアルデヒド、青酸、ブドウ糖を生ずる。また、最近はバンガミン酸が発見されている。

  • 薬効・薬理:鎮咳・去痰薬として喘息、咳、呼吸困難、身体の浮腫等に用いられる。

甘草(GlycyrrhizaglabraL.)

トリテルペン系サポニンであるグリチルリチン(甘味物質)を4 -12%含む。その他、フラボノイド(リクイリチゲニン等)やその配糖体(リクイチリン等)を含有。フラボノイド関連化合物は、近縁植物の間で分布を異にしている。

  • 薬効・薬理:エキスには抗潰瘍作用、副腎皮質ホルモン様作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、慢性肝炎に対しても有効である。これらの薬理作用は主成分のグリチルリチンに関連している。一方、グリチルリチンを含まない甘草エキスにも抗潰瘍作用、胃液分泌抑制作用があり、フラボノイド成分がこれに関連している。甘草が持つ筋肉弛緩作用もフラボノイドに基づく作用である。

以上、各生薬成分中に含まれる各成分の薬理作用と、リン酸コデインで報告されている相互作用該当薬とを比較検討する限り、リン酸コデインと麻黄湯の併用について特に問題とする点はないといえる。

[59.FD19.015.21MA][1992.1.24.・1999.4.13.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本製薬団体連合会安全性懇談会・編:一般用漢方製剤使用上の注意-解説-;薬業時報社,1989,p.298
  2. リン酸コデイン添付文書,1989
  3. 三橋博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.272,1992.3.5.より転載