トップページ»

メサラジンの服用と葉酸の併用について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:副作用・併用療法・メサラジン・葉酸・サラゾピリン錠・フォリアミン錠・ペンタサ錠・salazosulfapyridine・sulfasalazine・mesalazine

Q:サラゾピリン錠とフォリアミン錠が併用投与されていた患者が、今回、サラゾピリン錠からペンタサ錠に処方変更されたのに伴い、フォリアミン錠の服用は必要ないのではないかといっているが、どう対応すべきか。

A:両薬剤の作用機序、副作用等は下記の通り報告されている。

一般名 salazosulfapyridine(sulfasalazine) mesalazine
商品名

会社名

サラゾピリン錠・坐薬

(三菱ウェルファーマ)

ペンタサ錠・注腸

(日清キョーリン)

適応症 経口:潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、非特異性大腸炎。

挿入:潰瘍性大腸炎

経口:潰瘍性大腸炎(重症を除く)、クローン病。

注腸:潰瘍性大腸炎(重症を除く)

作用 投与の約1/3は小腸でそのままの形で吸収されるが、大部分は大腸に移行し、腸内細菌で5-アミ ノサリチル酸とスルファピリジンに分解・吸収される。

その治療活性部分は5-アミノサリチル酸である。

5-アミノサリチル酸は組織学的に変化の認められる粘膜上皮細胞の結合組織に対して特異な親和力を示し、この5-アミノサリチル酸の抗炎症作用により効果を現す。

本剤は5-ASAを有効成分として炎症性細胞から放出される活性酸素を消去し、炎症の進展と組織 の障害を抑制すること及びロイコトリエンB4の生合成を抑制し、炎症性細胞の組織への浸潤を抑制することが考えられている。

マクロファージや好中球などの炎症性細胞から放出される過酸化水素や次亜 塩素酸イオンなどの活性酸素を消去し、炎症の進展と組織の障害を抑制する。

副作用 重大:1)再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、貧血 [溶血性貧血、巨赤芽球性貧血(葉酸欠乏)等] 重大:4)再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少症
その他 葉酸の吸収低下(大赤血球症、汎血球減少を来す葉酸欠乏症のおそれ)→欠乏症が疑われる場合に は、葉酸を補給。 葉酸の吸収阻害等に関する報告は見られない。

salazosulfapyridine(sulfasalazine) は、腸内細菌によりスルホンアミドのスルファピリジンと5-アミノサリチル酸に分解される。

スルホンアミド類は構造上、細菌のジヒドロ葉酸(DHF)合成の構成要素であるパラアミノ安息香酸(PAB)に類似する。偽の基質としてスルホンアミド類は競合的にパラアミノ安息香酸の利用を妨げ、ジヒドロ葉酸合成を阻害すると報告されている。

その意味では5-アミノサリチル酸を単独の有効成分とするmesalazine製剤では、葉酸欠乏を惹起せず、葉酸欠乏を原因とする巨赤芽球性貧血等は発現しないと考えられる。

mesalazineによる副作用としての貧血は、国内における治験段階では1例の報告もなく、1999年9月段階での市販後の報告として4例の貧血と1例の再生不良性貧血が報告されているが、葉酸欠乏による副作用とは確認されていないとされる。 salazosulfapyridine(sulfasalazine) は、その薬理作用上、葉酸欠乏の可能性があり、葉酸の補充が必要であったが、mesalazineではその必要性はないと考えられる。

従ってサラゾピリン錠の副作用防止目的で、葉酸製剤が投与されていたのであれば、サラゾピリン錠からペンタサ錠に処方変更された段階で、葉酸製剤は不要ということになるが、処方内容の変更は医師の専権事項であり、医師に相談するよう患者に伝えることが必要である。

[065.ASA:2005.3.8.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  2. 名尾良憲・他編著:臨床医薬品副作用ハンドブック;南山堂,1999
  3. 福原武彦・監訳:薬理学アトラス;文光堂,1998
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27 (4):323-324(2000)