トップページ»

無塩醤油について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:薬物療法・無塩醤油・減塩醤油・塩化カリウム・腎障害・食事制限・人工透析

Q:無塩醤油を透析患者に使用することの可否について

A:無塩醤油(理研化学株式会社)の配合成分について、次の通り報告されている。

  • 100mL中
  • リンゴ酸1.5g
  • 塩化カリウム9.0g
  • 塩酸リジン200mg
  • L-アスパラギン酸600mg

以上の他「その他の調味料」が含まれるとされるが、本品中のNaCl含有量は3%と報告されている。 一般に市販されている醤油のNaClの含有量が平均で18-19%、減塩醤油中のNaCl含有量が9%とされている量からみると、NaCl量は遙かに少ないといえる。

ただし、無塩醤油については、平成13年9月(2001年)に製造中止されたの報告がされており、現在は減塩醤油以外入手できないようである。

また、透析患者に対する『無塩醤油』の使用は、カリウム含有量が多いため、不適であるとされている。

保存期慢性腎不全の食事指導(日本腎臓学会:腎疾患患者の生活指導・食事療法に関するガイドライン)

  Ccr≦70mL/min
総エネル ギー

(kcal/kg*/日)

35が基準

ただし、年齢や運動量によって、適正エネルギー量は28- 40の範囲になりうる。

蛋白質

(g/kg*/日)

0.6以上0.7未満

ただし、Ccr50mL/min以上で尿蛋白1g/日以下 であれば、0.9前後で開始することも可

食塩

(g/日)

7以下
カリウム 低蛋白食が実行されていれば通常制限しないが、血清カリウム 5.5mEq/L以上の時、カリウム制限を加える。
水分 ネフローゼ症候群及びCcr 15mL/min以下では尿量+不感蒸泄量とする。
リン

(mg/日)

低蛋白食が実行されていれば制限無し。

ただし、尿中リン排泄量500mg/日以上の時はリン制限 を加える。

*標準体重

腎障害時の食事療法の注意点は、

  1. カロリーを十分に摂取する
  2. 蛋白質の制限
  3. 塩分の制限
  4. カリウム・リンの制限
  5. 適切な水分量の摂取

等である。しかし、その程度は慢性腎不全の原因となった病気や合併症あるいは年齢によって異なるとされている。

カリウムの制限

腎不全患者が、一度に多くのカリウムを摂取すると、直ちにカリウムを尿中に排泄することが出来ず、高カリウム血症をきたす可能性が考えられる。尿素やクレアチニンは正常値の10倍になっても、すぐに生命に関わることはないが、カリウムが正常値の2倍(正常値約4mEq/L)に上昇すると、危険な不整脈が出現し、生命に関わることがあるとされる。従って5.5mEq/L以上にならないよう、カリウムの制限が必要であるとされている。

蛋白質の多い食品はカリウムも多いので、蛋白制限をしている場合には、カリウムを制限していることにもなる。カリウム制限で問題となるのは、野菜や果物である。いずれもカリウム含有量が多く、食べ過ぎると高カリウム血症の原因となる可能性が考えられる。透析患者に対し、NaClの代わりにKClを主成分とした『無塩醤油』を使用することは、高カリウム血症を来しやすいので注意が必要である。

[035.1.KCL:2005.4.26.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・代表編著:医薬品情報Q&A[2];株式会社ミクス,1990
  2. http://www.riken-kagaku.co.jp/company/history.html,2005.4.14.
  3. 大阪府立急性期・総合医療センター腎臓内科:
    http: //plaza.umin.ac.jp/~kidney/manseijinfuzen_shokuji.html,2005.4.14.