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無水エタノールの止血効果について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:臨床薬理・無水エタノール・95%-エタノール・無水アルコール・止血効果・エタノール・アルコール・エチルアルコール

Q:無水エタノールを止血目的で使用していると医師に言われたが、無水エタノールに止血効果はあるか

A:無水アルコール(absolute alcohol)=無水エタノール(absolute ethanol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)。CH3CH2OH。

アルコールは15℃で、C2H5OH 85.80-87.35%又は90.09-91.29v/v%を含有する。

  • 性状:本品は無色澄明、揮発性の液で特異な臭いと灼くような味を有し、点火すると淡藍色の炎を上げて燃える。本品は水、エーテル又はクロロホルムと混和する。

    通常の含水エタノールを何回蒸留しても、5%の水を含む95%-エタノールしか得ることができない。この95%-エタノールから水を除いたものが、無水エタノールである。

    普通、95%-エタノールにベンゼンを加えて蒸留し、共沸混合物として水を除く。

    極めて純粋な無水アルコールは殆ど臭いがない。無色澄明の液で引湿性が強い。

    水とは任意の比例で混じり、その際熱を生じ且つ収縮して容積を減ずる。この容積の減少は15℃でアルコール53.94ccに水49.83ccを混和するときが最大で混和液100ccを得る。これはC2H5OH+3H2Oを生成するためである。

  • 応用:アルコールの殺菌力はその濃度により左右される。70%が最高力を有し、60% のものに比べて30倍、80%のものの40倍も強力である。60%以下及び80%以上は消毒、殺菌力はないと同様である。また殺菌剤のアルコール溶液における効力は、例外もあるが、アルコール含有量に逆比例する。
25% 50% 70% 80% 99%
四連球菌 60分 30分 10分 60分 9時間
霊菌 60分 30分 30分 9時間 24時間
黄色ブドウ状球菌 18時間 60分 60分 >3日 >3日
大腸菌 24時間 60分 60分 24時間 12時間
脾脱疽菌 >50日 >50日 >50日 >50日 >50日

本品は外用防腐殺菌剤として、あるいは手、皮膚等の消毒にまた器具類の消毒殺菌に用いる。これには70%に稀釈したものがよい。その他興奮剤とし、皮膚刺激の目的で掻痒、足汗に塗布し、丹毒、せつ等の皮膚炎症、湿疹に罨法料、伝染性炎症の繃帯料、溶剤、製剤の製造に用いられる。

その他、本品の刺激性は濃度の高いときに強く、殺菌力は約70%の濃度において強い。脂肪族麻酔薬に属し、麻酔薬の他麻酔初期の発揚期を利用して興奮薬、種々の濃度でチンキ剤、酒精剤、エリキシル剤、エキス剤などの製剤原料として使用される。またアルコール性飲料として食欲増進剤にも利用される。局所的に蛋白質を凝固させるため消毒、滅菌、局所刺激剤として用いられる。

その他、無水エタノールの利用について、出血性潰瘍に対する緊急内視鏡による止血術の手技の一つとして『99.5%エタノールの強力な脱水固定作用により血管が収縮、更に血管内に血栓が形成され止血する。露出血管周囲1-2mmの3-4カ所に、0.1-0.2mLずつ注入し、血管が白色に変化した時点で終了する。1回の注入量は1-2mL以下、合計の注入量もなるべく少なくする。注入量が多くなると潰瘍が拡大することがある。』の報告が見られる。

上記は、確かに無水エタノールによる止血効果についての報告ではあるが、無水エタノールを小壜に入れておいて、頻回に使用するという今回の質問の内容の範囲で、止血効果があるかどうかの確認をすることはできない。無水アルコールは『引湿性が強い』とされており、頻回の蓋の開閉の間に環境中の水分を吸湿し、含水量は通常のエタノールと同等程度まで増加するものと考えられる。

[015.4.ABS:2004.7.26.古泉秀夫]


  1. 伊藤正男・他総編集:医学大辞典;医学書院,2003
  2. 南山堂医学大辞典 18版,1998
  3. 縮刷第六改正日本薬局方注解;南江堂,1952
  4. http://www.dokidoki.ne.jp/home2/shiminhp/ulcerbleeding.htm,2004.7.15.