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硝酸銀棒について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:院内特殊製剤・硝酸銀棒・硝酸銀桿・製剤処方・調製法・臍の緒・潰瘍・疣贅・コンジローマ・尖圭コンジローマ

Q:硝酸銀棒の入手法について

A:現在、硝酸銀(silver nitrate)棒の製造は中止されたため、製品として入手することは出来ない。硝酸銀棒を必要とするなら院内製剤により調製することが必要である。製剤処方及び調製法は下記の通り。

硝酸銀棒

処方

(局)硝酸銀—–1g

(局)硝酸カリウム——10g

  • 調製法:水ガラスを先端から2cm位まで付け、乾燥させた竹串を用意する。ルツボ中で硝酸銀、硝酸カリウムを熔融し、用意した竹串の先を溶融した液の中に適当に浸けて取り出し、乾燥させる。附着させる硝酸銀は、マッチ軸頭程度の大きさとする。
  • 貯法:遮光・室温・防湿保存。
  • 適応:臍の緒を焼く。
  • 備考:水ガラスは、ケイ酸ナトリウム:水=1:2を温めて融解する。防湿のためシリカゲルを入れて黒いテープを巻いた試験管の中に保存する。なお、水ガラス(ケイ酸ナトリウム溶液)は市販されている。その他、硝酸銀桿(Styl.Arg.Nitr.)として次の報告がされている。

硝酸銀桿(styla argenti nitratis)

処方

硝酸銀——950g

硝酸カリウム——50g

全量——-1000g

以上を秤取し、注意して熔和し、桿状として製する。

  • 性状:本品は白色?灰白色桿状の塊で、破折面は結晶性を呈し、光により灰黒色となる。本品は水に溶け易く、アルコールに溶け難い。 貯法:遮光した気密容器に貯えなければならない。
  • 備考:硝酸銀・硝酸カリウムを乳鉢中で搗砕(とうさい;つき砕く)して緊密に混和し、カセロール(磁製の口付き平底の皿で、取扱いに便利なように柄が付いている)中で溶融し、鋳型に注入して造る。
  • 応用:硝酸銀は有機物を破壊する作用がある。蛋白質を凝固し、これと化合して不溶性の銀化合物を造る。故に粘膜潰瘍面、皮膚に適用するとその局所を腐蝕し、浅表性の痂皮を生成する。この腐蝕作用は激しいが表面に止まり、且つ炎症を伴わない。痂皮下に速やかに上皮細胞を新生し治癒する。また、強い防腐作用も有している。故に腐蝕、収斂薬として一般に表在した慢性炎症、潰瘍等に対し病変する組織を破壊除去し、健全な組織の再生を促す作用がある。本品には硝石(硝酸カリウム)を熔和してあるため硝酸銀のみによる作用よりは緩和である。
  • 適応:潰瘍、疣贅、コンジローマ(comdyloma)等

*尖圭コンジローム(尖圭湿疣、尖圭疣贅、陰部疣贅):ヒト乳頭腫ウイルス感染症。

*扁平コンジローム(扁平湿疣):第二期丘疹性梅毒疹の一つ。

[014.16.SIL.:2001.3.12.古泉秀夫・2004.3.15.改訂]


  1. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第4版;薬事日報社,1997
  2. 第六改正日本薬局方注解;南江堂,1954
  3. 医学大辞典;南山堂,1992
  4. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第5版;薬事日報社,2003
  5. 薬科学大辞典第3版;廣川書店,2001