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尋常性白斑治療に用いられる薬剤について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬物療法・尋常性白斑・Vitiligo Vulgaris・光毒性物質・ソラレン・psoralen・ステロイド外用療法・紫外線療法・活性型ビタミンD3外用療法・ステ ロイド内服療法・furocoumarin・フロクマリン・セロリ

Q:尋常性白斑の治療に用いられる薬剤について

A: 尋常性白斑(Vitiligo Vulgaris)は、色素脱失をきたす皮膚疾患の中で最も普通に見られるもので、後天性に出現し境界鮮明なほぼ完全な脱色斑で「白なまず」とも呼ばれる。

本症の原因はなお不明であるが、自己免疫的ないし神経性機序の関与が有力になっており、精神的ストレスによるとする意見もある。

白斑部皮膚の病理組織像では、表皮のメラニン顆粒は著明な減少ないし消失が見られ、DOPA反応を行うとDOPA陽性メラノサイトは殆ど見られなくなる。

白斑は皮膚のいずれの部位にも発生するが、露出部位、間擦部位や器官開口部、更に外傷、刺激を受けやすい部位に好発する。

尋常性白斑の治療には光毒性物質のソラレン(psoralen)を内服ないし外用し、長波長紫外線(UVA)を照射する光化学療法が主流を示している。

投与法の選択は汎発型では内服が優先される。

副腎皮質ホルモンの外用のみでも色素再生を期待し得るが、白斑の初期ないし進行期に効果的である。また、尋常性白斑は、汎発型(単発型を含む)と神経分節型に分類される。

汎発型は自己免疫機序が想定されており、神経分節型は末梢神経異常を想定されている。

治療方針

ステロイド外用と光化学療法が第1選択である。年齢が若く、罹病期間が短いほど反応がよい。難治例ではステロイド内服(汎発型)又は植皮術(限局型)を試みる

1)ステロイド外用療法

  • fluocinonide–1日1-2回–外用
  • トプシムクリーム(田辺)

発症部位に応じて適切なランクを選択する。6カ月間を投与の目安とする。

2)活性型ビタミンD3外用療法

  • tacalcitol–1日1-2回–外用[保険適応外]
  • ボンアルファ軟膏(帝人)
  • calcipotriol–1日1-2回–外用[保険適応外]
  • ドボネックス軟膏(藤沢)

軽度の炎症反応の後色素回復が見られる。被覆部では光化学療法を併用すると効果が増強される。6カ月を投与の目安とする。

3)紫外線療法

  • methoxalen–1週1-2回–外用
  • オクソラレンローション0.3%・1%(大正富山)[エタノールで0.05-0.1%に希釈]

上記外用後、長波長紫外線を照射する(光化学療法)。

照射量は光毒性反応量以下とする。

6カ月を目安とする。

Narrow-band中波長紫外線(311nm)の単独照射も光化学療法と同等の効果があると報告されている。本剤の外用部は治療当日1日、遮光を徹底させる。 methoxalenはオランダセリ科の植物Ammi majus Linnの種子より単離されたfurocoumarin系化合物の一種で、フロクマリンを含有する食物*:セロリ、ライム、ニンジン、パセリ、イチジク、アメリカボウフウ、カラシ等により光毒性が増強されるおそれがあるとしている。

4)ステロイド内服療法

  • methylprednisolone–8-12mg—分1—朝食後[保健適応外]
  • メドロール錠(4mg)–(住友-ファイザー)

他の治療法に抵抗し拡大する汎発型に用いる。2-3カ月間を目安とする。

5)自己表皮植皮術

限局する難治性白斑に適用される。

尋常性白斑は、難治であるが対症療法を根気よく行うことによってよくなる可能性はある。日常生活では、強い日光曝露を避ける。美容的にはカバー マークの使用、ダドレス(dhadress)による着色で隠す等の報告がされている。

*セロリを扱う労働者にアレルギー性過敏症が見られることはよく知られているとされる。

1962年に仏のLegrain、Bartheはセロリを収穫する栽培者の日光露出部に典型的な紅斑、浮腫、小水疱の発生を観察している。

1960 -1961年にBirninghamらはミシガンのセロリ栽培地区でセロリ摂取者の日光露出部位に色素沈着及び色素脱出を伴った小水疱及び水疱性病巣が見られたことを報告している。

セロリ皮膚炎の原因物質は真菌のSclerotina sclerotiorumの感染によりPink rot病になったセロリが作り出した光感作力の強いメトキサレン(8-メトキシソラレン)が原因であろうと考えられた。

その他の原因物質として5-メトキシソラレンも含まれており、これらはfurocoumarinと呼ばれている。

一般的に野菜中のfurocoumarin含量は低いことが知られているが、真菌の侵入、UV(ultraviolet)照射、冷却、化学物質への曝露等のセロリに対するストレスによってセロリ中のfurocoumarinの濃度が上昇することがあるとされる。

真菌感染による誘導、furocoumarinの真菌に対する毒性から、セロリが作るfurocoumarinは抗菌物質として作用すると考えられる。真菌に感染したセロリやニンジンでは、正常時の数倍のfurocoumarinが含まれているとする報告がされている。

尋常性白斑の治療に使用されるmethoxalenは、furocoumarinの一種であり、服用中の患者が大量のセロリ等を摂取すれば、服用中の薬剤の作用を増強する可能性が予測される。

ただし、現在までに具体的な報告はないとされている。

[035.1.VIT:2003.12.5.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,1992
  2. 山口徹・他総編:今日の治療指針;医学書院,2003
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  4. 澤田康文・他:I.薬と食・嗜好品の出会いで起こる有害作用b)薬とセロリ;医薬ジャーナ,38(1):576-578(2002)